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26.フィーリアス王太子妃の華麗なる日々

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ジルと結婚して王太子妃となった、私の日常をお届けしたいと思います。

王太子妃という立場ですが、正直かなり忙しかったりします。ブラック企業まではいかないものの結構キャリアウーマン?的な??

この国は風が吹き抜ける特徴を生かして、農業と畜産業をメインに営んでいる。風車によって粉引きを行い、小麦の産地でもあるわけです。食物の自給自足は元より、大量に収穫できる小麦のおかげで、この世界においてはご飯関係輸出国だったりするのです! おかげさまで毎日美味しいふわっふわのパンが食べられるのだよ~。ご飯に困らないのってとってもありがたい事です。

さて、こうした農業国において私のお仕事といえばっ!もちろん水魔法の出番なわけですよ。雨降らしたり貯水池の管理したり。農業においては非常に重要な位置にあります。水属性で本当良かった~。ちなみに、ジルの風魔法は風車において必須だし、隠していた土魔法を公開したら国民に大喜びされてた。農業助かる土魔法。さすがジルっ!
というわけで王太子妃である私は、今日も各領地の灌漑計画やら収穫値の管理やら色々な国務に携わっています。

まぁ国政の携わり方でいえばジルがメインになるから、ジルはもっと忙しいんだけどね。
そしてもう一つ大きな仕事といえば、社交会である。
各貴族の奥様及び令嬢方とのお茶会は、単なる女性同士の噂話だけでなく王族として各領地の情報収集の意味合いが大きい。
いずれ王妃となる私もこうした貴族の女性方とは仲良くもし過ぎず、かと言って距離を置き過ぎてもいけないという、ちょっとポンコツな私には非常に難しい国務なのである。

そう。このお茶会がひっじょーーーーに苦手なのです私……


そもそも今の私は、社交会でも1番ホットな話題の人物であることは間違いない。
長年トリスティン様の婚約者でありながら婚約破棄をされ、そしてそのトリスティン様を押し除け彗星の如く現れた美貌の第二王子の奥方の座をゲット!
多分、トリスティン様に捨てられた挙句第二王子に取り入り失脚させ復讐を遂げた悪女、といったシナリオが1番主流なのではないかと予想される。
おぉ。悪役令嬢だ私~!

そんな王太子妃と仲良くしたい人っているのでしょうか……

婚約期間の間実家に引き篭もっていた時には、こんなこともぐずぐずと思ったりしてました。
でも、こうなってみて。私から離れていった人もいれば逆にきてくれるようになった人もいた。侍女の3人がいい例だ。貴族令嬢なのに私をちゃんと見て接してくれる。
前世の記憶が蘇り生まれ変わった私は、もう自分を偽るのではなくありのままの自分でいようと思った。
嫌なことは嫌だし、苦手なことも苦手。出来ない事があってもいいじゃないか。出来ない自分も自分なんだって。

ーーーそれに、ジルがいつも一緒にいてくれるから。ジルはこんなに情けない私でもいいって言ってくれるから……

ちなみにそんな旦那様のジルは、実家に引き篭もり中の私にまで噂話が届いていたぐらいその優秀さを惜しみなく発揮して、すぐに皆に認められたようだった。それに伴って、ジル目当ての令嬢が列を成したとか成してないとか。
ジルと目があえば気絶する令嬢が続出、とか。どこまでが本当で嘘なのやら……

そんな旦那様にヤキモキする気持ちは勿論あるけれど! ジルの事が気になる令嬢達にモヤモヤする気持ちがあるけれどっ! 私は王太子妃なのです! そんなことは考えちゃダメだし、ジルのそばに堂々と居れるようにお仕事しなきゃね。
なので、苦手なお茶会も大事な国務として割りきって行う。
こういった仕事ばかりだったら結構辛かったけど、ありがたいことに王太子妃は国民の生活向上がメインのお仕事だから、本当やりがいはあるのです!

さてさて、今日もまたお茶会という名の戦場へと赴きまーす!



今日のお茶会は、結構上流貴族の集まりだ。まぁ、私とのお茶会に参加してくれるってことは王太子妃と敵対しようとまでは思っていないってことだ。完全アウェーではないのが少しだけ救いである。

「本日は私のお茶会に参加してくださって、皆様ありがとう存じます」

主催者として、そして身分が上のものとしてこの場の皆に挨拶を行う。

「いえいえフィーリアス様のお茶会に参加できるなんてとても光栄ですわ」

こうして令嬢たちによるお茶会は進んでいくのです。
そして、挨拶が終わり最近の話題だったりで場が温まって口もだいぶ軽くなった時に、大体ぶっ込んでくるのがこうしたお茶会のセオリーだったりする。

「そういえば、聞きまして皆様? リアム公爵令嬢のお話。あれから領地から出て来られなくなったみたいですって」
「まぁそうでしたの! まぁ、あれだけ自信があっての方でしたものねぇ」
「でも、それこそ恥知らずですわよねぇ。ねぇ、フィーリアス様?」

きたきた。リアム公爵令嬢とは誰でしょうか? はい、お答えしましょう。婚約期間中のジルに言い寄った挙句こっぴどくフラれた公爵令嬢のことですね。
ふふぅーんだ! このぐらいはちゃんと耳に入れてるもん!
この話題をぶっ込んだ令嬢をちゃぁんと把握しておく。どういった立場なのか、王家に対してどういった態度をとってくるのか。そこを今後見計らわないといけない。

「そうですわね。ジルヴェール殿下は私の旦那様ですが、それはもうとても素敵な方ですもの。リアム様が心惹かれてもしょうがない事だと思いますわ。ーーーでも、ジルヴェール殿下はとっても私を愛してくださっていますから」

にっこり笑って、これぐらいじゃ動じないぞ~とアピール。おまけに私が本妻だと強くアピール。

……いや、自分で愛されてますって言うのってマジで恥ずかしい……

いやいや、ジルは本当に私のこと愛してくれてるし、私もジルを愛しているんだけどね!
って!! うぎゃ~~めちゃ恥ずかしいわーーー!!!

絶対顔が赤くなってる気がする……! 淑女なのにっ! 顔面がゆるいよ私~。

「きゃぁっ! フィーリアス様ってそのようなお顔されるのですね。素敵ですわ! そのように愛されているなんて、本当お羨ましいですわ」
「本当ですわっ!」

何故かものすごく盛り上がる令嬢たちに、にっこり笑いかけながら別の話題へとスライドさせていく。

ーーーふぅ。愛されてますアピって精神的にきついけど、舐められるわけにはいかないからね!


こうしてなんとか無事?本日のお茶会を終了する事ができた。
最後何人か仲良くしてくれそうな令嬢がいたので、今日の収穫はボチボチじゃないだろうか。こうして仲良くなって色々お話する機会も増えれば、貴族間の繋がりやら入ってくる情報量が段違いだからね。


ジルとは、朝食と夕食を一緒に取っている。たまに時間が合えば昼食も一緒に取る。基本的には王太子夫妻の部屋で給仕をして貰いながら2人で食事を取るのだけれど、国王夫妻だったり他の方々と会食をする場合は広間で皆で食べるようになる。
王太子妃だから当たり前だけど、ジルと領地で過ごしたフリーな時間が恋しくなるぐらいプライベートな時間はごく僅かだ。
会食だと緊張するしあまり食べた気にならず、笑顔で固定された表情筋が死んでいるのが自分でも分かる。
ジルはそんなポンコツな私をよく理解してくれているのか、とても私を甘やかしてくれている。

夫婦の寝室って王族になると別々になるのが基本らしい。王城にある王太子夫妻の部屋も、各々寝室があって扉で仕切られている形だ。もちろん各々の部屋にベッドも浴室も備え付けられている。
でも、実は婚約期間までずーっとジルと一緒に寝ていた私には正直耐えられそうになかった。それが規則なら従うしかないんだけど……

ジルはそんな私のわがままを聞いてくれたのか、私は毎日ジルの寝室で寝ていたりする。おまけに、ジルは謎の侍女スキルを発揮し、今まで通り入浴してくれたり髪を結ってくれたりしてくれてる。
しかもしかも、朝食は基本寝室でジルの膝の上に乗って食べさせてもらっているのだ!!

……めっちゃ恥ずかしいし、慣れないんだけどね……しかも子どもだよね完全に……

でも、あんなにいい侍女を3人も付けられたのに、ついついジルに甘えちゃうんだよね~。

だけど、非常に厄介な問題が1つだけある。


ーーーそれは閨事だった……


国務が次の日にある時は、えっと、その……致す回数を1回でってお願いしたのだ。
ジルには最初すごく反対されたけど、それ以上だと翌朝確実に起きられない。
やっぱり、王太子妃としてジルの奥さんとしてこれ以上評判を下げたくないのです。

でも、ジルがすっごく我慢してくれているのも分かっている。
翌日が休みの時は大体抱き潰されるから、きっとすごく我慢しているんだろうなぁって……
我慢しているのに、1回だけでも嬉しそうにしてくれるジルを見ると、2回ぐらい大丈夫じゃないかなぁと決心が揺らいでくる。

今日こそ、2回までは良いよって言うべきか。
待て待て、それは絶対にやめといた方がいい!とどこかで囁く自分もいて。

そんな悩みを抱えたまま今日もジルが部屋に帰ってくる時間になり、決心のつかぬまま今日も流されるようにジルに抱かれちゃうわけです。


ーーー王太子妃である私の、華麗?な日々でございました。
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