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風、吹き荒ぶ
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安藤を盾にしながら、皆瀬川が最終通告をした。所沢は別にどうということもなく、柔らかそうな髪を掻き上げて余裕をかます。
「あの天然筋肉バカに何かできるとは思えないが、……今日は一旦引くとしよう。ところで、遠矢」
名指しされた遠矢は所沢を睨みつける。先程、手首を掴まれて拘束されていたのだから、当然の反応であった。
「今度の期末試験で、君から学年一位の座を奪い取る」
「さっきも言ってたな。だったら何だっていうんだ」
「そしたら、ぼくと正式に付き合ってくれ。そこの鈍感ボーイより、格段に良い思いをさせてやるさ」
最後に所沢は、部員全員の顔を舐めるように見回してから部室を去っていった。漸く平和が訪れた室内はうんと湿度が高まっており、もはやサウナ状態だった。皆一様に疲弊した顔で席へ戻る。遠矢だけはまだ不機嫌な様子で口を斜めにしていた。
「正式に、って使い方おかしくないか? 仮にもいつ付き合ったんだよ」
「はあ、疲れた。……手を洗いに行く気力も湧かないわ」
「頭痛がするな。アセトアミノフェンが必要だ」
各々の愚痴を耳にしながら、創一は止みそうにない雨の風景に目を遣った。
「あの天然筋肉バカに何かできるとは思えないが、……今日は一旦引くとしよう。ところで、遠矢」
名指しされた遠矢は所沢を睨みつける。先程、手首を掴まれて拘束されていたのだから、当然の反応であった。
「今度の期末試験で、君から学年一位の座を奪い取る」
「さっきも言ってたな。だったら何だっていうんだ」
「そしたら、ぼくと正式に付き合ってくれ。そこの鈍感ボーイより、格段に良い思いをさせてやるさ」
最後に所沢は、部員全員の顔を舐めるように見回してから部室を去っていった。漸く平和が訪れた室内はうんと湿度が高まっており、もはやサウナ状態だった。皆一様に疲弊した顔で席へ戻る。遠矢だけはまだ不機嫌な様子で口を斜めにしていた。
「正式に、って使い方おかしくないか? 仮にもいつ付き合ったんだよ」
「はあ、疲れた。……手を洗いに行く気力も湧かないわ」
「頭痛がするな。アセトアミノフェンが必要だ」
各々の愚痴を耳にしながら、創一は止みそうにない雨の風景に目を遣った。
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