蜜葉

夏蜜

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梅雨入り

6

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 翌朝、堪えかねた高城は一度上司へ相談してみることにした。
 未だはっきりとしないストーカーの存在を口にするのは抵抗があったが、不審な者が会社の敷地内をうろついているようだ、さらにはその不審者に夕べ車で後をつけられたと遠回しにでも言えば、何かしら対策が得られると期待していたからだ。
 だが、直属の上司で信頼ある営業部課長の岩村へ相談してみたものの、「俺はそんなヤツ目にしたことはない」「気にはなるがお前も気にし過ぎだ」の一点張りで、相談に乗ってくれたとは言い難かい言葉が返ってきた。
 それどころか、「今夜は本社との会合があるので忙しい」のだと、最後には呆気なくあしらわられ、高城の期待は大きく裏切られる結果となった。

「ちっく……しょう!」
 拳で叩いた流し台がいびつに凹む。玄関の廊下明かりが差し込むだけの薄暗い自室で、水を飲んだあとのグラスが流し台を転がり洗い場で鈍い音をたてた。
 高城は再度拳を振りあげたが、そのまま崩れるように床へ膝をつくと、がっくりと独り肩を落とした。 
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