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第一章
二人の幼馴染
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「よ、レイプ魔。女の子に乱暴したって聞いたんだけど?」
「なんだロリコン。俺はレイプ魔になった覚えはないぞ」
「分かってるよそんなことは、日向、レイプにだけは興味が無いからなあ」
「だけは余計だ」
「そう冷たいからモテないんだよ日向は」
クラス内で浮いている俺にそう話しかけてきたこの男子の名前は火神大聖。俺の幼馴染だ。
こいつは俺のことを小さいころから知っているから偏見も無く、普通に話しかけてくる。
大聖は俺と普通に接してくれる、数少ない人の一人だった。
いつもハイテンションで、俺とは対照的なやつだ。
「いっつも義母(かあ)さんが気にしてるぞ。早く日向くんに彼女ができないものかねえって」
「おばさん、そんなこと言ってんのか!」
俺と大聖は共に孤児院で育った。俺も大聖も六歳で親を無くしてしまったからだ。
大聖には里親が見つかったが、俺には訳があって里親がいない。そのため俺はアルバイトをしながら一人暮らしをしている。
ちなみに、大聖の家にはよくご飯をごちそうになっている。一人暮らしの俺には本当にありがたい。
「日向……お前はいつも険悪な顔してるから駄目なんだよ」
大聖の紹介もそこそこに、当人はやれやれといった様子で俺に余計なことを言ってきた。
「別に、意識してやってるわけじゃないんだがな……」
俺は全く意識していないのだが、いつの間にか険悪な顔になっているらしい。直したいとは思っているのだが……なかなか上手くいかない。
そんな俺の心中も知らずに、大聖は続ける。
「顔自体は良いんだからさ、絶対彼女できるって」
「言ってるお前の方がイケメンだろうが」
と言うのも、大聖は校内で一、二を争う程のイケメンなのだ。告白もたくさんされているらしいのだが、いまだに彼女はいない。
大聖と初めて会ったやつは、全員このことに驚くのだが……こいつのことをよく知っている俺からしてみれば、驚くことなんて何もない。
「俺はイケメンかもしれない! だが……校内で彼女なんか作ったりしない! なぜなら……」
「おい、続きは分かってるから、言わなくていいから」
「俺のストライクゾーンは九歳以下だからだ!」
「人の話聞けよ!」
要するにこいつ、ロリコンなのである。それも、かなり重度のだ。いつからこうなったのかは覚えていないが。
コイツが重度のロリコンであることは学校全体に知られているはずなのだが……大聖はそれでもモテる。これが顔面の力なのだろうか……。
「とにかく、一度頑張ってさ、自然な顔でいろって」
そんな謎のモテモテ少年は超上から物を言ってきた。腹立つ。
「顔直したところで意味ねえだろ。すでに手遅れだろうからな……」
俺が表情を崩したところで、いまさら不良というイメージは消えないだろうから意味はないと思う。
しかし、俺の言葉を聞いた大聖はフフンと鼻で笑った。
「なんだよ……」
「フッフッフ……日向くん、君は誰かのことを忘れていないかい?」
「は?」
上から目線がとても鼻について、つい険悪な声が出てしまう。
「君のことをずっと昔から好きで、さらに君と普通に接してくれる女の子が!」
「ん? ……お前! それって……」
「お、噂をすれば……」
ニヤニヤと笑みを浮かべた大聖の視線の先には一人の少女がいた。
見ていたら吸いこまれそうなほど透き通った赤い瞳に、肩まで伸びた黒いポニーテール。スレンダーな体つきをしていて、かなり美人な少女だ。
「おはよ! 二人で何話してたの?」
その少女はスタスタとこちらの机まで歩いてくると、勢いよく声を上げた。
「ちょうどお前の話をしてたんだよ凛音」
「え? 私の?」
そう言ってきょとんとした顔をする少女の名前は夢崎凛音。
凛音も大聖と同じく、俺と孤児院で共に過ごした俺の幼馴染で、妹的存在だ。というのも、俺と大聖は同じ時期に孤児院に入ったが、凛音は俺たちとは少し遅れて入ったのだ。
頭の上に「?」を浮かべている凛音に大聖がことの次第を話した。
「凛音が日向のことが大好きだって話をしてたんだよ」
「そんなわけねえだろ……」
俺は大聖が言ったことを凛音よりも先に否定した。
「凛音には……好きな人がいるんだぞ?」
そう、好きな人。凛音には好きな人がいるのだ。
今でも忘れない。俺たちがまだ幼い頃のある日、凛音は泣いていた。
俺がなぜ泣いているのかを聞くと、どうやら好きな人ができたらしかった。
それだけ聞いたらおかしなことこの上なかったが、次に聞いた言葉で俺は得心した。
その好きな人とは、なにをしても結ばれることは無いと言うのだ。
その理由を聞いても教えてもらえず、慰(なぐさ)めても、しばらく泣き止むことは無かった。
このことは大聖も知っているはずなんだがな。
俺の言葉を聞いた大聖は、一瞬きょとんとした顔になると、大声で笑いはじめた。
「あっはっは! 凛音には好きな人がいるんだってよ! 当の本人はどう思われますか?」
「え……ま、まあ、好きな人は……いるけど……」
「ほら見ろ、凛音だってこう言ってるじゃねえか」
そう言うと大聖はさらに大声で笑い始めた。
「何がおかしいんだよ」
「いや、どんだけ鈍感なんだよ日向」
「鈍感? ……もしかしてお前、凛音が俺のことを好きだとでも言いたいのか?」
俺は本日三回目のため息を吐くと、嫌々話すことにした。
「お前だって分かってるだろ? 俺にとって凛音は妹みたいなもんで、凛音にとっても俺は兄みたいなもんのはずだ。な、凛音?」
「ま、そ、そうだけど……そうやって決めつけるのもどうかなあって……」
「ん? なんつった?」
最後の方が小声でよく聞こえなかったので、俺は凛音に聞き返した。
「なんでもないです」
しかし、凛音は拗(す)ねた様子で顔をそむけてしまった。そして、大聖はまた爆笑しだした。なぜだ。
そんな俺の戸惑いも知らず、大聖はしばらく爆笑した後、心底おかしそうに言う。
「気の毒にな、凛音。もう少し素直になった方がいいんじゃないか?」
「大聖には関係ないでしょ! だ、だいたい私はいつも素直だよ!」
大聖にからかわれたのが嫌だったのか、凛音はむっとした態度になった。
「なあ、俺にも分かるように話してくれないか?」
「知らない」
俺がそう話しかけると、凛音にまたそっぽを向かれてしまった。ほんとに何でだ。
そんな様子の凛音に戸惑っている最中、俺はあることを思い出ついた。
「なんだロリコン。俺はレイプ魔になった覚えはないぞ」
「分かってるよそんなことは、日向、レイプにだけは興味が無いからなあ」
「だけは余計だ」
「そう冷たいからモテないんだよ日向は」
クラス内で浮いている俺にそう話しかけてきたこの男子の名前は火神大聖。俺の幼馴染だ。
こいつは俺のことを小さいころから知っているから偏見も無く、普通に話しかけてくる。
大聖は俺と普通に接してくれる、数少ない人の一人だった。
いつもハイテンションで、俺とは対照的なやつだ。
「いっつも義母(かあ)さんが気にしてるぞ。早く日向くんに彼女ができないものかねえって」
「おばさん、そんなこと言ってんのか!」
俺と大聖は共に孤児院で育った。俺も大聖も六歳で親を無くしてしまったからだ。
大聖には里親が見つかったが、俺には訳があって里親がいない。そのため俺はアルバイトをしながら一人暮らしをしている。
ちなみに、大聖の家にはよくご飯をごちそうになっている。一人暮らしの俺には本当にありがたい。
「日向……お前はいつも険悪な顔してるから駄目なんだよ」
大聖の紹介もそこそこに、当人はやれやれといった様子で俺に余計なことを言ってきた。
「別に、意識してやってるわけじゃないんだがな……」
俺は全く意識していないのだが、いつの間にか険悪な顔になっているらしい。直したいとは思っているのだが……なかなか上手くいかない。
そんな俺の心中も知らずに、大聖は続ける。
「顔自体は良いんだからさ、絶対彼女できるって」
「言ってるお前の方がイケメンだろうが」
と言うのも、大聖は校内で一、二を争う程のイケメンなのだ。告白もたくさんされているらしいのだが、いまだに彼女はいない。
大聖と初めて会ったやつは、全員このことに驚くのだが……こいつのことをよく知っている俺からしてみれば、驚くことなんて何もない。
「俺はイケメンかもしれない! だが……校内で彼女なんか作ったりしない! なぜなら……」
「おい、続きは分かってるから、言わなくていいから」
「俺のストライクゾーンは九歳以下だからだ!」
「人の話聞けよ!」
要するにこいつ、ロリコンなのである。それも、かなり重度のだ。いつからこうなったのかは覚えていないが。
コイツが重度のロリコンであることは学校全体に知られているはずなのだが……大聖はそれでもモテる。これが顔面の力なのだろうか……。
「とにかく、一度頑張ってさ、自然な顔でいろって」
そんな謎のモテモテ少年は超上から物を言ってきた。腹立つ。
「顔直したところで意味ねえだろ。すでに手遅れだろうからな……」
俺が表情を崩したところで、いまさら不良というイメージは消えないだろうから意味はないと思う。
しかし、俺の言葉を聞いた大聖はフフンと鼻で笑った。
「なんだよ……」
「フッフッフ……日向くん、君は誰かのことを忘れていないかい?」
「は?」
上から目線がとても鼻について、つい険悪な声が出てしまう。
「君のことをずっと昔から好きで、さらに君と普通に接してくれる女の子が!」
「ん? ……お前! それって……」
「お、噂をすれば……」
ニヤニヤと笑みを浮かべた大聖の視線の先には一人の少女がいた。
見ていたら吸いこまれそうなほど透き通った赤い瞳に、肩まで伸びた黒いポニーテール。スレンダーな体つきをしていて、かなり美人な少女だ。
「おはよ! 二人で何話してたの?」
その少女はスタスタとこちらの机まで歩いてくると、勢いよく声を上げた。
「ちょうどお前の話をしてたんだよ凛音」
「え? 私の?」
そう言ってきょとんとした顔をする少女の名前は夢崎凛音。
凛音も大聖と同じく、俺と孤児院で共に過ごした俺の幼馴染で、妹的存在だ。というのも、俺と大聖は同じ時期に孤児院に入ったが、凛音は俺たちとは少し遅れて入ったのだ。
頭の上に「?」を浮かべている凛音に大聖がことの次第を話した。
「凛音が日向のことが大好きだって話をしてたんだよ」
「そんなわけねえだろ……」
俺は大聖が言ったことを凛音よりも先に否定した。
「凛音には……好きな人がいるんだぞ?」
そう、好きな人。凛音には好きな人がいるのだ。
今でも忘れない。俺たちがまだ幼い頃のある日、凛音は泣いていた。
俺がなぜ泣いているのかを聞くと、どうやら好きな人ができたらしかった。
それだけ聞いたらおかしなことこの上なかったが、次に聞いた言葉で俺は得心した。
その好きな人とは、なにをしても結ばれることは無いと言うのだ。
その理由を聞いても教えてもらえず、慰(なぐさ)めても、しばらく泣き止むことは無かった。
このことは大聖も知っているはずなんだがな。
俺の言葉を聞いた大聖は、一瞬きょとんとした顔になると、大声で笑いはじめた。
「あっはっは! 凛音には好きな人がいるんだってよ! 当の本人はどう思われますか?」
「え……ま、まあ、好きな人は……いるけど……」
「ほら見ろ、凛音だってこう言ってるじゃねえか」
そう言うと大聖はさらに大声で笑い始めた。
「何がおかしいんだよ」
「いや、どんだけ鈍感なんだよ日向」
「鈍感? ……もしかしてお前、凛音が俺のことを好きだとでも言いたいのか?」
俺は本日三回目のため息を吐くと、嫌々話すことにした。
「お前だって分かってるだろ? 俺にとって凛音は妹みたいなもんで、凛音にとっても俺は兄みたいなもんのはずだ。な、凛音?」
「ま、そ、そうだけど……そうやって決めつけるのもどうかなあって……」
「ん? なんつった?」
最後の方が小声でよく聞こえなかったので、俺は凛音に聞き返した。
「なんでもないです」
しかし、凛音は拗(す)ねた様子で顔をそむけてしまった。そして、大聖はまた爆笑しだした。なぜだ。
そんな俺の戸惑いも知らず、大聖はしばらく爆笑した後、心底おかしそうに言う。
「気の毒にな、凛音。もう少し素直になった方がいいんじゃないか?」
「大聖には関係ないでしょ! だ、だいたい私はいつも素直だよ!」
大聖にからかわれたのが嫌だったのか、凛音はむっとした態度になった。
「なあ、俺にも分かるように話してくれないか?」
「知らない」
俺がそう話しかけると、凛音にまたそっぽを向かれてしまった。ほんとに何でだ。
そんな様子の凛音に戸惑っている最中、俺はあることを思い出ついた。
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