剣聖の使徒

一条二豆

文字の大きさ
4 / 62
第一章

二人の幼馴染

しおりを挟む
「よ、レイプ魔。女の子に乱暴したって聞いたんだけど?」
「なんだロリコン。俺はレイプ魔になった覚えはないぞ」
「分かってるよそんなことは、日向、レイプにだけは興味が無いからなあ」
「だけは余計だ」
「そう冷たいからモテないんだよ日向は」

 クラス内で浮いている俺にそう話しかけてきたこの男子の名前は火神かがみ大聖たいせい。俺の幼馴染だ。

 こいつは俺のことを小さいころから知っているから偏見も無く、普通に話しかけてくる。
 大聖は俺と普通に接してくれる、数少ない人の一人だった。

 いつもハイテンションで、俺とは対照的なやつだ。

「いっつも義母(かあ)さんが気にしてるぞ。早く日向くんに彼女ができないものかねえって」
「おばさん、そんなこと言ってんのか!」

 俺と大聖は共に孤児院で育った。俺も大聖も六歳で親を無くしてしまったからだ。

 大聖には里親が見つかったが、俺には訳があって里親がいない。そのため俺はアルバイトをしながら一人暮らしをしている。
 ちなみに、大聖の家にはよくご飯をごちそうになっている。一人暮らしの俺には本当にありがたい。

「日向……お前はいつも険悪な顔してるから駄目なんだよ」

 大聖の紹介もそこそこに、当人はやれやれといった様子で俺に余計なことを言ってきた。

「別に、意識してやってるわけじゃないんだがな……」

 俺は全く意識していないのだが、いつの間にか険悪な顔になっているらしい。直したいとは思っているのだが……なかなか上手くいかない。

 そんな俺の心中も知らずに、大聖は続ける。

「顔自体は良いんだからさ、絶対彼女できるって」
「言ってるお前の方がイケメンだろうが」

 と言うのも、大聖は校内で一、二を争う程のイケメンなのだ。告白もたくさんされているらしいのだが、いまだに彼女はいない。
 大聖と初めて会ったやつは、全員このことに驚くのだが……こいつのことをよく知っている俺からしてみれば、驚くことなんて何もない。

「俺はイケメンかもしれない! だが……校内で彼女なんか作ったりしない! なぜなら……」
「おい、続きは分かってるから、言わなくていいから」
「俺のストライクゾーンは九歳以下だからだ!」
「人の話聞けよ!」

 要するにこいつ、ロリコンなのである。それも、かなり重度のだ。いつからこうなったのかは覚えていないが。
 コイツが重度のロリコンであることは学校全体に知られているはずなのだが……大聖はそれでもモテる。これが顔面の力なのだろうか……。

「とにかく、一度頑張ってさ、自然な顔でいろって」

 そんな謎のモテモテ少年は超上から物を言ってきた。腹立つ。

「顔直したところで意味ねえだろ。すでに手遅れだろうからな……」

 俺が表情を崩したところで、いまさら不良というイメージは消えないだろうから意味はないと思う。
 しかし、俺の言葉を聞いた大聖はフフンと鼻で笑った。

「なんだよ……」
「フッフッフ……日向くん、君は誰かのことを忘れていないかい?」
「は?」

 上から目線がとても鼻について、つい険悪な声が出てしまう。

「君のことをずっと昔から好きで、さらに君と普通に接してくれる女の子が!」
「ん? ……お前! それって……」
「お、噂をすれば……」

 ニヤニヤと笑みを浮かべた大聖の視線の先には一人の少女がいた。
 見ていたら吸いこまれそうなほど透き通った赤い瞳に、肩まで伸びた黒いポニーテール。スレンダーな体つきをしていて、かなり美人な少女だ。

「おはよ! 二人で何話してたの?」

 その少女はスタスタとこちらの机まで歩いてくると、勢いよく声を上げた。

「ちょうどお前の話をしてたんだよ凛音りんね
「え? 私の?」
 そう言ってきょとんとした顔をする少女の名前は夢崎ゆめさき凛音。
 凛音も大聖と同じく、俺と孤児院で共に過ごした俺の幼馴染で、妹的存在だ。というのも、俺と大聖は同じ時期に孤児院に入ったが、凛音は俺たちとは少し遅れて入ったのだ。

 頭の上に「?」を浮かべている凛音に大聖がことの次第を話した。

「凛音が日向のことが大好きだって話をしてたんだよ」
「そんなわけねえだろ……」

 俺は大聖が言ったことを凛音よりも先に否定した。

「凛音には……好きな人がいるんだぞ?」

 そう、好きな人。凛音には好きな人がいるのだ。

 今でも忘れない。俺たちがまだ幼い頃のある日、凛音は泣いていた。
 俺がなぜ泣いているのかを聞くと、どうやら好きな人ができたらしかった。
 それだけ聞いたらおかしなことこの上なかったが、次に聞いた言葉で俺は得心した。

 その好きな人とは、なにをしても結ばれることは無いと言うのだ。

 その理由を聞いても教えてもらえず、慰(なぐさ)めても、しばらく泣き止むことは無かった。
 このことは大聖も知っているはずなんだがな。

 俺の言葉を聞いた大聖は、一瞬きょとんとした顔になると、大声で笑いはじめた。

「あっはっは! 凛音には好きな人がいるんだってよ! 当の本人はどう思われますか?」
「え……ま、まあ、好きな人は……いるけど……」
「ほら見ろ、凛音だってこう言ってるじゃねえか」

 そう言うと大聖はさらに大声で笑い始めた。

「何がおかしいんだよ」
「いや、どんだけ鈍感なんだよ日向」
「鈍感? ……もしかしてお前、凛音が俺のことを好きだとでも言いたいのか?」

 俺は本日三回目のため息を吐くと、嫌々話すことにした。

「お前だって分かってるだろ? 俺にとって凛音は妹みたいなもんで、凛音にとっても俺は兄みたいなもんのはずだ。な、凛音?」
「ま、そ、そうだけど……そうやって決めつけるのもどうかなあって……」
「ん? なんつった?」

 最後の方が小声でよく聞こえなかったので、俺は凛音に聞き返した。

「なんでもないです」

 しかし、凛音は拗(す)ねた様子で顔をそむけてしまった。そして、大聖はまた爆笑しだした。なぜだ。
 そんな俺の戸惑いも知らず、大聖はしばらく爆笑した後、心底おかしそうに言う。

「気の毒にな、凛音。もう少し素直になった方がいいんじゃないか?」
「大聖には関係ないでしょ! だ、だいたい私はいつも素直だよ!」

 大聖にからかわれたのが嫌だったのか、凛音はむっとした態度になった。

「なあ、俺にも分かるように話してくれないか?」
「知らない」

 俺がそう話しかけると、凛音にまたそっぽを向かれてしまった。ほんとに何でだ。
 そんな様子の凛音に戸惑っている最中、俺はあることを思い出ついた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...