剣聖の使徒

一条二豆

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第二章

夕飯

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 シーナに引っ張られ、家の中に入ると、とりあえず俺は軽くシャワーを浴びて部屋着に着替えた。
 黒で統一されたジャージでとても動きやすく、俺は長年この服を愛用していた。

 風呂場から出てリビングへ向かうと、そこには目を見張る光景が広がっていた。
 テーブルの上に、所せましと料理が並んでいたのだ。
 ちなみに、俺の家にはダイニングが無いので、リビングがそこの代わりになっている。

 ふっくらとしていて、ほかほかとした白いご飯。わかめ、豆腐などのメジャーな具材がふんだんに使われた味噌汁。焼きたてなのか、香ばしい香りがほんのりと漂っている鰆の塩焼きなどなど。どれもこれもおいしそうな、和食のオンパレードだ。

「お風呂から上がられたんですか?」

 俺が唖然としていると、シーナがキッチンからこちらへと来た。
 何かを両手で持っているが……あれは、かぼちゃの煮つけかな?

「はい、そうですよ。きっと喜んでもらえると思います」

 そう言ってシーナは優しく微笑んだ。シーナの笑顔のはとても癒されるが、今はそれよりも優先すべきことがある。

 俺はシーナと出会った時から気になっていた疑問をぶつけてみた。

「なんでシーナは、俺の心を読めるんだよ? 魔法でも使ってんのか?」
「まあ……魔法と言えば魔法ですけど……『心暴しんばく』という術なんです」
「術……またでてきたな……」

 さっきもシーナは『解錠』の術とやらを使ったと言っていた。術とは一体何なのだろうか。
 俺が考えにふけっていると、それに気付いたシーナが俺に声をかけてきた。

「細かい話は後にしませんか? せっかく作ったのに、ご飯が冷めてしまいます」
「ん……それもそうだな」

 俺は一旦思考を中止して、テーブルの前に座った。
 テーブルにそこまで高さは無いので、座布団の上に座るようにしている。

 しかし……改めて見てもすげえな。こんな量の飯を作るなんて……。

「これ……全部シーナが作ったのか?」
「はい! まあ、張り切りすぎちゃいましたけどね」
「いや、本当にうれしいよ。こんな豪華な飯食うの久しぶりだし」

 一人暮らしを始めてからはお金のこともあってか、しっかりとした食事をあまり食べられていなかった。

「とりあえず食べちゃいましょう! その後で、私から日向さんへお話をさせていただきます」
「そうだな、俺も気になることが山ほどあるが……後で話そうか」

 そう話が決着すると、俺とシーナは手を合わせその豪勢な料理に手をつけた。

 どれもとてもおいしかったのだが……量はやっぱり多い気がしたな……。
 
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