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第二章
剣聖の使徒と聖霊
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そう言い終えて、シーナは自分のお茶に口につけた。
その様子見ながら、俺は改めて世界の複雑さについて考えていた。
お茶を飲み終えたシーナは話を続けた。
「そのような理由もあり、残された道も一つに限られていた神々が考えだした策は、一部の人間――悪魔に恨みを持つ人間に自分たちの力を分け与え、代わりに戦わせるということでした」
シーナはまたペンを取り出し、上の円から中心の円へ点線の→を引っ張った。
「神自身は〝人間界〟へと行かずに、その力だけを人間へと貸し与えるという画期的な方法でした。そして、これによって生み出された人間の戦士たちを『使徒』と名付けました」
なるほど……。
つまり俺は今日その『使徒』になったということか。
悪魔たちと戦う〝人間界〟の戦士として。
「そして、『使徒』が力を悪用しないように監視し、なおかつ悪魔討伐のために『使徒』をサポートする〝天界〟のものたちを送ることにしました。そのものたちを『聖霊』と呼びました」
「要するに、シーナのことか」
「はい! そうです!」
シーナは嬉しそうに返事を返し、ホワイトボードに書いたものを消し始めた。
「こうして、〝天界〟は無事、〝魔界〟の放埓を防ぐことに成功したのですが……完全に防げているわけではないですし、悪魔たちは〝人間界〟に増え続ける一方なんです……」
シーナは困ったような笑みを浮かべながら、ホワイトボードを玄関まで持って帰っていった。
少し間を開けて、シーナがリビングに帰って俺の前へと座った。
そして、空になっていた俺の湯飲みにお茶を注いだ。……本当に気が利く娘だな。
俺が入れてもらった二杯目のお茶をすすっていると、シーナが再び声をかけてきた。
「以上で私からは終わりますが……なにかあるでしょうか?」
「んー……ま、割とあるかな」
俺は少しだけ頭の中で思考の整理をした。それをもとに質問をしていく。
「まず最初に、俺が『使徒』だっていうのは分かったけど……『剣聖の』ってのは一体何なんだ?」
これはシーナがこぼしていた言葉だった。なぜ頭にそんな言葉が付いているのか……少し気になった。
「それはですね、他の『使徒』と区別をつけるために、契約した神によって名前分けをしているんですよ。日向さんの場合は須佐之男命のイメージから、剣聖という冠詞にしてみまた。私が」
「決定権シーナにあんのかよ……」
まあ、特に不満も無いから別に構わないのだが……。
とにかく、一つ目の疑問が解消されたので、次の質問に移る。
「あの化け物……魔獣って言うんだっけ? ま、そいつと戦ってた時に周りにあったあの半透明の謎の壁……あれって一体何なんだ?」
シーナは一瞬きょとん、とした顔になったが、すぐに元の顔つきになって答えた。
「ああ、あれは『魔の封陣』といってですね、目立つのを避ける悪魔たちが使う結界の様なもので、何も知らない人間はその中に近づくことはおろか、認識することさえできません」
シーナは今の言葉に補足をする。
「あの魔獣は恐らく、本能的にそれを広げていたんだと思います。〝魔界〟にいるものたちであれば、無意識でも使うことができますし……。あ、それと私たちの様な知っているものであれば、あの壁をすり抜けることができます」
「じゃあ、別に閉じ込められるとか、入れないとかいう類のものではないんだな……」
どうやら普段はさっきの戦いのように壁として機能するようだが……意識すれば通れる代物なようだ。
だったら、そこまで深刻に考えなくてもよさそうだな……。
もしも閉じ込められるとか、入れないものだったら厄介だったのだが……問題無いな。
次に、俺が今、不可解に思っていることを聞いた。
「そういえば……魔獣との戦いが終わった後、力が無くなっちまったんだが……どういうことなんだ?」
「きっとそれはまだ力のコントロールができていないんだと思います。場数を踏んでいけば、自分で力のオンオフができるようになると思いますよ」
もう少し深刻にとらえられると思ったのだが……意外とあっさり返事が返ってきた。
俺は力を失ったんじゃなくて……抑えているだけなのか。
まあ、常時あんな運動神経してたら隠すのに困るよな……。
しかし焦ったな、力が無かったら何も始まらないし……何よりキスした意味が……。
そこまで考えて、俺はシーナとしたことを思い出した。
いろいろあってぶっ飛んでたけど……俺、この子とキスしたんだよな……。
思わず目線がシーナの色の良い桜色の唇へと向かってしまう。
俺の様子が変わったことをおかしく思ったのか、シーナは首を傾げた。
「どうかされたのですか?」
「え? いや、なんでもねえよ……」
キスした時のことなんて、思い出してないよ。断じて。
俺はお茶を一気に飲み、気持ちを切り替えた。
その様子見ながら、俺は改めて世界の複雑さについて考えていた。
お茶を飲み終えたシーナは話を続けた。
「そのような理由もあり、残された道も一つに限られていた神々が考えだした策は、一部の人間――悪魔に恨みを持つ人間に自分たちの力を分け与え、代わりに戦わせるということでした」
シーナはまたペンを取り出し、上の円から中心の円へ点線の→を引っ張った。
「神自身は〝人間界〟へと行かずに、その力だけを人間へと貸し与えるという画期的な方法でした。そして、これによって生み出された人間の戦士たちを『使徒』と名付けました」
なるほど……。
つまり俺は今日その『使徒』になったということか。
悪魔たちと戦う〝人間界〟の戦士として。
「そして、『使徒』が力を悪用しないように監視し、なおかつ悪魔討伐のために『使徒』をサポートする〝天界〟のものたちを送ることにしました。そのものたちを『聖霊』と呼びました」
「要するに、シーナのことか」
「はい! そうです!」
シーナは嬉しそうに返事を返し、ホワイトボードに書いたものを消し始めた。
「こうして、〝天界〟は無事、〝魔界〟の放埓を防ぐことに成功したのですが……完全に防げているわけではないですし、悪魔たちは〝人間界〟に増え続ける一方なんです……」
シーナは困ったような笑みを浮かべながら、ホワイトボードを玄関まで持って帰っていった。
少し間を開けて、シーナがリビングに帰って俺の前へと座った。
そして、空になっていた俺の湯飲みにお茶を注いだ。……本当に気が利く娘だな。
俺が入れてもらった二杯目のお茶をすすっていると、シーナが再び声をかけてきた。
「以上で私からは終わりますが……なにかあるでしょうか?」
「んー……ま、割とあるかな」
俺は少しだけ頭の中で思考の整理をした。それをもとに質問をしていく。
「まず最初に、俺が『使徒』だっていうのは分かったけど……『剣聖の』ってのは一体何なんだ?」
これはシーナがこぼしていた言葉だった。なぜ頭にそんな言葉が付いているのか……少し気になった。
「それはですね、他の『使徒』と区別をつけるために、契約した神によって名前分けをしているんですよ。日向さんの場合は須佐之男命のイメージから、剣聖という冠詞にしてみまた。私が」
「決定権シーナにあんのかよ……」
まあ、特に不満も無いから別に構わないのだが……。
とにかく、一つ目の疑問が解消されたので、次の質問に移る。
「あの化け物……魔獣って言うんだっけ? ま、そいつと戦ってた時に周りにあったあの半透明の謎の壁……あれって一体何なんだ?」
シーナは一瞬きょとん、とした顔になったが、すぐに元の顔つきになって答えた。
「ああ、あれは『魔の封陣』といってですね、目立つのを避ける悪魔たちが使う結界の様なもので、何も知らない人間はその中に近づくことはおろか、認識することさえできません」
シーナは今の言葉に補足をする。
「あの魔獣は恐らく、本能的にそれを広げていたんだと思います。〝魔界〟にいるものたちであれば、無意識でも使うことができますし……。あ、それと私たちの様な知っているものであれば、あの壁をすり抜けることができます」
「じゃあ、別に閉じ込められるとか、入れないとかいう類のものではないんだな……」
どうやら普段はさっきの戦いのように壁として機能するようだが……意識すれば通れる代物なようだ。
だったら、そこまで深刻に考えなくてもよさそうだな……。
もしも閉じ込められるとか、入れないものだったら厄介だったのだが……問題無いな。
次に、俺が今、不可解に思っていることを聞いた。
「そういえば……魔獣との戦いが終わった後、力が無くなっちまったんだが……どういうことなんだ?」
「きっとそれはまだ力のコントロールができていないんだと思います。場数を踏んでいけば、自分で力のオンオフができるようになると思いますよ」
もう少し深刻にとらえられると思ったのだが……意外とあっさり返事が返ってきた。
俺は力を失ったんじゃなくて……抑えているだけなのか。
まあ、常時あんな運動神経してたら隠すのに困るよな……。
しかし焦ったな、力が無かったら何も始まらないし……何よりキスした意味が……。
そこまで考えて、俺はシーナとしたことを思い出した。
いろいろあってぶっ飛んでたけど……俺、この子とキスしたんだよな……。
思わず目線がシーナの色の良い桜色の唇へと向かってしまう。
俺の様子が変わったことをおかしく思ったのか、シーナは首を傾げた。
「どうかされたのですか?」
「え? いや、なんでもねえよ……」
キスした時のことなんて、思い出してないよ。断じて。
俺はお茶を一気に飲み、気持ちを切り替えた。
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