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第二章
え? ここ?
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問題も全て解消され、シーナもお茶の片づけを始めた所で、説明会はここでお開きにすることにした。もう遅いしな。
「そろそろ解散にしようぜ。ありがとうな、シーナ。……改めて、俺は悪魔たちをこの身朽ち果てるまで斬って斬って斬って……いつか、俺の仇も……斬る」
「はい、これからもがんばっていきましょう!」
俺が決意を固めると、シーナはそう言って拳を天井へ向かって突き上げた。
だが、そのせいで手に持っていた湯飲みを、地面へと落とした。
パリーン!
そこまで丈夫なものでも無かったので、床に落ちた湯飲みはあっけなく割れてしまった。
シーナはそのことに泣きそうになりながら、必死に頭を下げてきた。
「ご、ごめんなさい! その、ようやく悪魔退治が始まったんだなって思うと、うれしくってつい……」
「いや、大丈夫だから……」
それより湯飲みを持った状態でつい、手を離してしまう方が不思議なのだが。
危ないんで割れた湯飲みの破片を、さっさとシーナと共に拾い始めた。
そのうちに聞いてみる。
「そういえばさ、シーナは今どこに住んでるんだ?」
「ここですよ?」
………………ん?
「もう一回言ってくれないか? ……よく聞こえなかったんだ」
「ですから、この、日向さんのお家ですよ?」
「……へえ」
へえ、じゃねえよ俺! もっと言うことあるだろうが!
あまりの衝撃に俺はへえ、としか言えなかった。そんな心境なんだ。
今のシーナの言葉を真に受けると……同じ屋根の下で一緒に寝るってことになるけど…………え? 嘘でしょ?
突然のことに言葉を失っている俺に、シーナは追い打ちをかけてきた。
「ほら、ちゃんと着替えや寝具も持ってきたんですよ! 準備は万端です! あ、寝る時はリビングを使わせてもらうので、大丈夫ですよ」
「何が大丈夫なんだよ!」
俺はようやく正気に戻り、言葉を絞り出した。
「よーく考えてみろ、シーナ。異性が……まあ、世界は違うけどもとにかく! 同じ屋根の下で一緒に住むっていうのは、とっても危険なことなんだぞ?」
しかし、シーナは気にしたそぶりも見せずに首を傾げた。
「いやいや、男っていうのは皆狼なんだぞ? シーナみたいな……かわいい娘がそんなことしたら、襲われちまうかもしれないじゃねえか」
自分のことなのに何を言っているのか、訳が分からなくなってきた。
これ、俺暗に「お前が俺ん家泊まったら犯すぞ」って言ってねえか? ちょっとヤバい奴になってるんだが……。
だが、シーナはこのキチガイ発言にも動じなかった。
「大丈夫ですよ。日向さんはそんな人じゃありません」
シーナはまるで自分のことのように胸を張って言った。
会ったばかりだというのに、こんなに信頼してくれるなんて……あんまり経験ないから、少し嬉しかった。
それと、期待はしていたわけでは無いのだが……異性としては見られていないようだ。
「それにまあ……無いですし」
「……」
何が無いのかはあえて聞くまい。
湯飲みの片づけが終わってから一息つくと、シーナがこちらへと近づいてきた。
「あの……〝人間界〟は初めてでして、分からないことだらけなので……明後日、案内をしていただけませんか? この辺りだけでもいいので……」
あまりにも不安そうに言ってきたので、思わず吹き出してしまった。
断られてしまうとでも思っているのだろうか。
笑われた本人は頬を膨らませて、俺に不満をぶつけてきた。
「なんで笑うんですかあ……」
「いや、ちょっとおかしくってさ」
プリプリとしたシーナをなだめて、俺は真面目に答えた。
「別にいいよ。まあ、そういうのはきっと『使徒』として当然のことだろうからな」
「本当ですか? ありがとうございます!」
シーナはパアッと表情を明るくさせ、頭をぶんぶんと下げてきた。
そんなシーナの様子を見て、俺は少し穏やかな気分になった。
よく表情の変わる子だな、と思いつつ。
その後はちゃんとした風呂に入って床に就いた。とてもじゃないが、勉強する気にはなれなかった。
明日からの新しい日々に期待を抱きながら、俺は静かに眠った。
無論、その夜、狼は現れなかった。
「そろそろ解散にしようぜ。ありがとうな、シーナ。……改めて、俺は悪魔たちをこの身朽ち果てるまで斬って斬って斬って……いつか、俺の仇も……斬る」
「はい、これからもがんばっていきましょう!」
俺が決意を固めると、シーナはそう言って拳を天井へ向かって突き上げた。
だが、そのせいで手に持っていた湯飲みを、地面へと落とした。
パリーン!
そこまで丈夫なものでも無かったので、床に落ちた湯飲みはあっけなく割れてしまった。
シーナはそのことに泣きそうになりながら、必死に頭を下げてきた。
「ご、ごめんなさい! その、ようやく悪魔退治が始まったんだなって思うと、うれしくってつい……」
「いや、大丈夫だから……」
それより湯飲みを持った状態でつい、手を離してしまう方が不思議なのだが。
危ないんで割れた湯飲みの破片を、さっさとシーナと共に拾い始めた。
そのうちに聞いてみる。
「そういえばさ、シーナは今どこに住んでるんだ?」
「ここですよ?」
………………ん?
「もう一回言ってくれないか? ……よく聞こえなかったんだ」
「ですから、この、日向さんのお家ですよ?」
「……へえ」
へえ、じゃねえよ俺! もっと言うことあるだろうが!
あまりの衝撃に俺はへえ、としか言えなかった。そんな心境なんだ。
今のシーナの言葉を真に受けると……同じ屋根の下で一緒に寝るってことになるけど…………え? 嘘でしょ?
突然のことに言葉を失っている俺に、シーナは追い打ちをかけてきた。
「ほら、ちゃんと着替えや寝具も持ってきたんですよ! 準備は万端です! あ、寝る時はリビングを使わせてもらうので、大丈夫ですよ」
「何が大丈夫なんだよ!」
俺はようやく正気に戻り、言葉を絞り出した。
「よーく考えてみろ、シーナ。異性が……まあ、世界は違うけどもとにかく! 同じ屋根の下で一緒に住むっていうのは、とっても危険なことなんだぞ?」
しかし、シーナは気にしたそぶりも見せずに首を傾げた。
「いやいや、男っていうのは皆狼なんだぞ? シーナみたいな……かわいい娘がそんなことしたら、襲われちまうかもしれないじゃねえか」
自分のことなのに何を言っているのか、訳が分からなくなってきた。
これ、俺暗に「お前が俺ん家泊まったら犯すぞ」って言ってねえか? ちょっとヤバい奴になってるんだが……。
だが、シーナはこのキチガイ発言にも動じなかった。
「大丈夫ですよ。日向さんはそんな人じゃありません」
シーナはまるで自分のことのように胸を張って言った。
会ったばかりだというのに、こんなに信頼してくれるなんて……あんまり経験ないから、少し嬉しかった。
それと、期待はしていたわけでは無いのだが……異性としては見られていないようだ。
「それにまあ……無いですし」
「……」
何が無いのかはあえて聞くまい。
湯飲みの片づけが終わってから一息つくと、シーナがこちらへと近づいてきた。
「あの……〝人間界〟は初めてでして、分からないことだらけなので……明後日、案内をしていただけませんか? この辺りだけでもいいので……」
あまりにも不安そうに言ってきたので、思わず吹き出してしまった。
断られてしまうとでも思っているのだろうか。
笑われた本人は頬を膨らませて、俺に不満をぶつけてきた。
「なんで笑うんですかあ……」
「いや、ちょっとおかしくってさ」
プリプリとしたシーナをなだめて、俺は真面目に答えた。
「別にいいよ。まあ、そういうのはきっと『使徒』として当然のことだろうからな」
「本当ですか? ありがとうございます!」
シーナはパアッと表情を明るくさせ、頭をぶんぶんと下げてきた。
そんなシーナの様子を見て、俺は少し穏やかな気分になった。
よく表情の変わる子だな、と思いつつ。
その後はちゃんとした風呂に入って床に就いた。とてもじゃないが、勉強する気にはなれなかった。
明日からの新しい日々に期待を抱きながら、俺は静かに眠った。
無論、その夜、狼は現れなかった。
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