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第三章
ガチ謝罪
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凛音はこの世に氷河期が訪れるんじゃないかと思うくらいに冷え切った声で言った。
「ねえ、日向。私、二人っきりでって言ったよね? それなのに、どういうことかな?」
「すいません! 言う! 言うからこの手を離して……!」
俺がそう懇願すると、何とか苦行から解放されることができた。
頭に響く痛みに耐えながら俺は会話を続けた。
「実はこの娘とも予定が被っててさ……前、不良に絡まれてたから助けてあげたんだけど……その時に友達になっってさ。椎名がこの街の地理を良く知らないって言うからさ、案内してやることにしたんだよ」
これは、昨日シーナと一緒に考えた設定だ。まあ一緒にっつってもシーナが非折りで考えたみたいなものだが。俺いらない子だったなあ……。
「ふーん……で、本当は?」
「忘れてましタアッ!」
正直に言ったら顔面に上段回し蹴りが来た。痛ってえ……。
凛音はすっきりしたのか、普通の笑顔でシーナに向き直った。
「ごめんね。こんなバカに付き合わせちゃって。あ、私、夢崎凛音って言うの、よろしくね!」
「あ、はい。よろしくお願いします!」
「じゃあ、せっかくだし映画でも見に行かない? ちょうど一人分チケットが余ったからさ、今さっき」
俺が痛みに耐えられず、地面に伏せている内に、話はどんどん進んでいっていた。
俺は慌てて起き上り、そして、
「すいませんでしたあっ!」
公衆の面前でガチ土下座をした。
死ぬほど恥ずかしい! マジ恥ずかしい! 死ぬほど、マジで!
でも効果は覿面だった様で、凛音は戸惑いを見せた。
「分かった! 分かったから顔を上げてよ!」
よし、何とかスルー攻撃を免れたようだ。
俺は一応もう一度謝った。
「ごめん! 本当にごめん!」
「いいよ……日向のこういうとこ、今に始まったわけじゃないし……」
なぜか凛音が呆れたような目でこちらを見てきた。おかしい、なぜだ。
その様子を見ていたシーナは、凛音に対して苦笑を浮かべた。
「凛音さん、大変ですね」
「分かってくれるの? ……うう、ありがとう」
俺の頭の中が整理できてないうちに、女子二名の絆が深まっていった。もう何が起きているのか分からん。
シーナと凛音はしばらく楽しそうに談笑した後、俺の方へと向いた。
「日向、とりあえず最初は映画見に行こう」
「え? 今日ケーキ食いに行くだけじゃないのか?」
「そんなこと言ってないし、だいたいケーキ食べるだけならこんな朝早くから呼ばないよ。だいたい、誘ったの日向でしょ?」
そうでした。
「ま、私が日向ごときとデートするお代として、今日は一日遊びまくるよ!」
「おー!」
凛音の掛け声にシーナが楽しそうに乗っていた。何でそんなに楽しそうなんだよ……。
俺はケーキ屋に行って終わりだと思っていたのだが……まあ、凛音と遊ぶのなんて久しぶりだし、まあいいか。
話が落ち着いたところで、俺たちは商店街でひときわ目立つ映画館へと足を運んだ。
見る映画は凛音によって決まっており、チケットをすでに抑えているそうなので、お金だけ払って後のことは凛音に任せた。
だが、当然のことながらシーナの分は無かったので、彼女だけは自分で並んで買っていた。まあ、俺の金だけど……。
「すごい雰囲気ですね……ここが『えーがかん』ですか!」
「確かに……映画館って独特の雰囲気あるよねー」
「それは激しく同意だな」
久しぶりに来てみたが、いつ見ても映画館っていうのはかなり不思議な場所だと思う。
施設内の照明は暗めで、落ち着いた雰囲気を出している。だが、その演出を崩すように映画を見る人、見終わった人の楽しそうな会話や延々と流され続けている映画のコマーシャルが、空間をにぎわせている。
その何とも言えない空気は、きっと他の場所ではなかなか味わえないだろう。
しみじみとそう思っていると、少し前方から子どものはしゃぎ声が、
「わー! 日向さん、凛音さん見て下さい! 『ぽっぷこーん』っていうおいしそうなお菓子がありますよ」
いや、シーナの心底楽しそうなはしゃぎ声が聞こえてきた。
「ポップコーンくらいではしゃぐなんて……一体いくつなのあの娘?」
「……楽しそうだからいいんじゃね、別に」
「それもそうだね」
凛音ははしゃぎ回っているシーナのもとへと駆けより、そのまま一緒にポップコーンを買いに行った。
実は打ち解けられないのではないかという不安があったのだが……どうやら無用な心配だった様だ。
楽しそうにポップコーンを買いに行く二人を眺めつつ、俺はふと思った。
――そういや、俺、今一人ぼっちじゃねえ?
「ねえ、日向。私、二人っきりでって言ったよね? それなのに、どういうことかな?」
「すいません! 言う! 言うからこの手を離して……!」
俺がそう懇願すると、何とか苦行から解放されることができた。
頭に響く痛みに耐えながら俺は会話を続けた。
「実はこの娘とも予定が被っててさ……前、不良に絡まれてたから助けてあげたんだけど……その時に友達になっってさ。椎名がこの街の地理を良く知らないって言うからさ、案内してやることにしたんだよ」
これは、昨日シーナと一緒に考えた設定だ。まあ一緒にっつってもシーナが非折りで考えたみたいなものだが。俺いらない子だったなあ……。
「ふーん……で、本当は?」
「忘れてましタアッ!」
正直に言ったら顔面に上段回し蹴りが来た。痛ってえ……。
凛音はすっきりしたのか、普通の笑顔でシーナに向き直った。
「ごめんね。こんなバカに付き合わせちゃって。あ、私、夢崎凛音って言うの、よろしくね!」
「あ、はい。よろしくお願いします!」
「じゃあ、せっかくだし映画でも見に行かない? ちょうど一人分チケットが余ったからさ、今さっき」
俺が痛みに耐えられず、地面に伏せている内に、話はどんどん進んでいっていた。
俺は慌てて起き上り、そして、
「すいませんでしたあっ!」
公衆の面前でガチ土下座をした。
死ぬほど恥ずかしい! マジ恥ずかしい! 死ぬほど、マジで!
でも効果は覿面だった様で、凛音は戸惑いを見せた。
「分かった! 分かったから顔を上げてよ!」
よし、何とかスルー攻撃を免れたようだ。
俺は一応もう一度謝った。
「ごめん! 本当にごめん!」
「いいよ……日向のこういうとこ、今に始まったわけじゃないし……」
なぜか凛音が呆れたような目でこちらを見てきた。おかしい、なぜだ。
その様子を見ていたシーナは、凛音に対して苦笑を浮かべた。
「凛音さん、大変ですね」
「分かってくれるの? ……うう、ありがとう」
俺の頭の中が整理できてないうちに、女子二名の絆が深まっていった。もう何が起きているのか分からん。
シーナと凛音はしばらく楽しそうに談笑した後、俺の方へと向いた。
「日向、とりあえず最初は映画見に行こう」
「え? 今日ケーキ食いに行くだけじゃないのか?」
「そんなこと言ってないし、だいたいケーキ食べるだけならこんな朝早くから呼ばないよ。だいたい、誘ったの日向でしょ?」
そうでした。
「ま、私が日向ごときとデートするお代として、今日は一日遊びまくるよ!」
「おー!」
凛音の掛け声にシーナが楽しそうに乗っていた。何でそんなに楽しそうなんだよ……。
俺はケーキ屋に行って終わりだと思っていたのだが……まあ、凛音と遊ぶのなんて久しぶりだし、まあいいか。
話が落ち着いたところで、俺たちは商店街でひときわ目立つ映画館へと足を運んだ。
見る映画は凛音によって決まっており、チケットをすでに抑えているそうなので、お金だけ払って後のことは凛音に任せた。
だが、当然のことながらシーナの分は無かったので、彼女だけは自分で並んで買っていた。まあ、俺の金だけど……。
「すごい雰囲気ですね……ここが『えーがかん』ですか!」
「確かに……映画館って独特の雰囲気あるよねー」
「それは激しく同意だな」
久しぶりに来てみたが、いつ見ても映画館っていうのはかなり不思議な場所だと思う。
施設内の照明は暗めで、落ち着いた雰囲気を出している。だが、その演出を崩すように映画を見る人、見終わった人の楽しそうな会話や延々と流され続けている映画のコマーシャルが、空間をにぎわせている。
その何とも言えない空気は、きっと他の場所ではなかなか味わえないだろう。
しみじみとそう思っていると、少し前方から子どものはしゃぎ声が、
「わー! 日向さん、凛音さん見て下さい! 『ぽっぷこーん』っていうおいしそうなお菓子がありますよ」
いや、シーナの心底楽しそうなはしゃぎ声が聞こえてきた。
「ポップコーンくらいではしゃぐなんて……一体いくつなのあの娘?」
「……楽しそうだからいいんじゃね、別に」
「それもそうだね」
凛音ははしゃぎ回っているシーナのもとへと駆けより、そのまま一緒にポップコーンを買いに行った。
実は打ち解けられないのではないかという不安があったのだが……どうやら無用な心配だった様だ。
楽しそうにポップコーンを買いに行く二人を眺めつつ、俺はふと思った。
――そういや、俺、今一人ぼっちじゃねえ?
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