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第三章
ケーキ選び
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白を基調としたメルヘンチックな店内で、そこらかしこにケーキが並んでいた。
この『ケーキショップ・アヤ』では、時間制限のバイキング形式になっており、店内はにぎわいを見せていた。
ただ……俺としては何か落ち着かない。
席に案内された後、俺たちはケーキを取りに向かったのだが……当然のことながら、周りにいるのは若い女性ばかり。ここにいるのが場違いの様な気がして、何かと気まずい。
「ちょ、何でこんなところに不良がいるの……?」
「警察呼ぼうよ、警察!」
あと耳に入ってくる言葉と、俺の周りにだけ広がっている誰もいない空間がつらい。それと、警察を呼ばれる筋合いはねえよ!
少々気を悪くしていると、後ろから背中をドンッと叩かれた。
「いってえな……何するんだよ!」
「ぼさっとしてるからでしょ? ほら、さっさと好きなもん取っちゃわないと、どんどん無くなってっちゃうよ!」
「いや、でも……まあ、いいや」
この状況を理解できていない凛音に「取らなくたってこの辺のは無くならないよ、ははっ」と言ったところで何もならないだろう。俺は凛音の言う通りにケーキあさりを始めた。
おっ、おいしそうなショートケーキがあるな……最後の一つっぽいが、誰も誓ってこないし、ありがたく頂いてしまおう。
俺がケーキを取ろうと、そばに置いてあったトングを掴むと――その前に横からケーキが掻っ攫われた。
「わー! これも美味しそうですね! 噂には聞いていましたが、こんな夢のようなお菓子とは……いや、百聞は一見にしかずとはこのことですね、日向さん! ……ふみゅっ! 何でデコピンするんですかあ……?」
「……椎名が俺のショートケーキを盗んだからだ」
「そんな! ……世の中早い者勝ちですよ!」
そう言って頬をむくれるシーナさん。かわいいとです。
いつものパターンなら、しょげて大人しくケーキを渡してくれるかと思ったが、今回は譲ってくれそうもない。くそう。
「私、今日でここのお店のケーキを制覇したいんです!」
何も言ってないのに、シーナは輝いた顔でそう返してきた……ああ、『心暴』使ったのか。
こんなどうでもいい場面で術を使う聖霊の気が知れんな。
「失礼ですね日向さん! 女の子には、譲れない戦いがあるんです!」
いや、知らねえよ。
そう言おうとしたが、シーナはぷんすかとしながらどこかへ行ってしまった。
乙女心……いや、シーナ魂は理解ができない。
俺はショートケーキを諦め、横にあるモンブランを狙った。
うむ、これも美味しそうだな。
俺がケーキを取ろうと、そばに置いてあったトングを掴むと――横からタックルされた。
「うおっ! って凛音! 何するんだよ! そんなにモンブランが欲しかったのか?」
ショートケーキとは違い、まだたくさんあるというのに……欲張りなやつだ。
しかし、どうやら俺の見当違いだったらしく、凛音は首を横に振った。
「ねえ、日向……この辺で、変な雰囲気の子見なかった?」
「変な雰囲気……? 心当たりが無いが……」
「そう……おかしいな……?」
そう言って凛音は店内をきょろきょろと見回した。
「不審者でも出たのか?」
「ん……ま、そんなところ」
何とも歯切れの悪い返事だったが、深くは追求しないでおこう。
しつこいやつは嫌われると、どこかで聞いたことがある、気がするし……。
とりあえず俺は手にできなかったモンブランを、今さっき取ったトレーの上に載せ、ちょうど来た新しいショートケーキを見て歓喜した。
人間万事塞翁が馬である。
テンションの異常な上がり方に店員さんに引かれたが……。
この『ケーキショップ・アヤ』では、時間制限のバイキング形式になっており、店内はにぎわいを見せていた。
ただ……俺としては何か落ち着かない。
席に案内された後、俺たちはケーキを取りに向かったのだが……当然のことながら、周りにいるのは若い女性ばかり。ここにいるのが場違いの様な気がして、何かと気まずい。
「ちょ、何でこんなところに不良がいるの……?」
「警察呼ぼうよ、警察!」
あと耳に入ってくる言葉と、俺の周りにだけ広がっている誰もいない空間がつらい。それと、警察を呼ばれる筋合いはねえよ!
少々気を悪くしていると、後ろから背中をドンッと叩かれた。
「いってえな……何するんだよ!」
「ぼさっとしてるからでしょ? ほら、さっさと好きなもん取っちゃわないと、どんどん無くなってっちゃうよ!」
「いや、でも……まあ、いいや」
この状況を理解できていない凛音に「取らなくたってこの辺のは無くならないよ、ははっ」と言ったところで何もならないだろう。俺は凛音の言う通りにケーキあさりを始めた。
おっ、おいしそうなショートケーキがあるな……最後の一つっぽいが、誰も誓ってこないし、ありがたく頂いてしまおう。
俺がケーキを取ろうと、そばに置いてあったトングを掴むと――その前に横からケーキが掻っ攫われた。
「わー! これも美味しそうですね! 噂には聞いていましたが、こんな夢のようなお菓子とは……いや、百聞は一見にしかずとはこのことですね、日向さん! ……ふみゅっ! 何でデコピンするんですかあ……?」
「……椎名が俺のショートケーキを盗んだからだ」
「そんな! ……世の中早い者勝ちですよ!」
そう言って頬をむくれるシーナさん。かわいいとです。
いつものパターンなら、しょげて大人しくケーキを渡してくれるかと思ったが、今回は譲ってくれそうもない。くそう。
「私、今日でここのお店のケーキを制覇したいんです!」
何も言ってないのに、シーナは輝いた顔でそう返してきた……ああ、『心暴』使ったのか。
こんなどうでもいい場面で術を使う聖霊の気が知れんな。
「失礼ですね日向さん! 女の子には、譲れない戦いがあるんです!」
いや、知らねえよ。
そう言おうとしたが、シーナはぷんすかとしながらどこかへ行ってしまった。
乙女心……いや、シーナ魂は理解ができない。
俺はショートケーキを諦め、横にあるモンブランを狙った。
うむ、これも美味しそうだな。
俺がケーキを取ろうと、そばに置いてあったトングを掴むと――横からタックルされた。
「うおっ! って凛音! 何するんだよ! そんなにモンブランが欲しかったのか?」
ショートケーキとは違い、まだたくさんあるというのに……欲張りなやつだ。
しかし、どうやら俺の見当違いだったらしく、凛音は首を横に振った。
「ねえ、日向……この辺で、変な雰囲気の子見なかった?」
「変な雰囲気……? 心当たりが無いが……」
「そう……おかしいな……?」
そう言って凛音は店内をきょろきょろと見回した。
「不審者でも出たのか?」
「ん……ま、そんなところ」
何とも歯切れの悪い返事だったが、深くは追求しないでおこう。
しつこいやつは嫌われると、どこかで聞いたことがある、気がするし……。
とりあえず俺は手にできなかったモンブランを、今さっき取ったトレーの上に載せ、ちょうど来た新しいショートケーキを見て歓喜した。
人間万事塞翁が馬である。
テンションの異常な上がり方に店員さんに引かれたが……。
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