剣聖の使徒

一条二豆

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第四章

真実

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 私は悪魔だけど、物心ついた時にはもう、〝人間界〟にいたんだ。
 父さんと母さんはね、悪魔だけど、好き勝手されてる人間を助けるために活動してたの。
 私は、まだひ弱な子どもたちを守るために、人間の子どもと同じ環境に住むように言われたんだ。
 そこで入れられたのが――孤児院だったの。少しずれてると思うよね。
 でも、そのおかげで日向や大聖と出会うことができたんだよ? 偶然ってすごいよね。

 話が少しずれちゃったね……とにかく、私たち家族はずっと、人間たちを守り続けてたんだ。

 でも、私が中学三年生の頃、悲しいことに、事件が起こっちゃったんだ。
 母さんが、悪魔と結託していた人間たちに殺されちゃったの……『使徒』が主導してね。
 本当に突然だった。

 悲しかったよ。

 ……今まで信じていた人たちに、急に裏切られたんだから。本当に、悲しかった。
 でも、私とは違って父さんは、悲しみよりも……憎しみのほうが上回っちゃったんだ。
 それから、私の日常は本当に変わった。
 優しかった父さんの面影はなくなっちゃってね。

 父さんは人間を……特に『使徒』を中心に殺し始めた。
 怖かったよ。でも、それを父さんは言えないし、日向たちにも言えなかった。
 今日のことは、その延長。
 父さんは『使徒』を殺せって私に言ったんだ。
 本当は嫌だった。でも、私にもやっぱり恨みはあって……私は覚悟を決めた。
 けど、それが日向たちだなんて、夢にも思わなかった。
 気づいたのも、本当に今さっきで……。
 でも、私は覚悟を決めたからって意地張って……。

 ごめんね。



 本当に……ごめんね。



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