シンデレラフィットの異世界で、愛される伯爵夫人を目指していいですか？

甘やかな月（11）

「あなたがそう言ってくれるのを初めて聞いた」

え。

ガイの目がちょっと凝らしてわたしを見つめる。

本当にそうなのだろうか。

彼に恋してからずっと長く、胸の中でその言葉はあふれ返っていたのに。

「ねえ、もう一度言ってほしい。代償がないと言ってくれないの？」

そう言い、ガイがわたしの頬を指でちょんと突く。

「嫌なガイ」
「それはよく聞くけど」

彼がわたしを抱き上げ、ひざに乗せた。懐中時計が床にすべり落ちる。

「あ」

拾おうと身を屈めるのを彼が許してくれない。

彼の手がドレスをくぐり、素肌の脚に触れる。指がちょっとさまよって、ももの内がわをいたずらのようにたどるから、くすぐったい。

「ん…、ふふ…」

恥ずかしい声がもれそうで、頬が熱くなる。

「ねえ、早く言ってくれないと。あなたがもっと困ったことになる」
「意地悪」
「あなたの前だと、時に、そんな気分になる」

ほんのり、指が女の部分に触れ、ぴくんと敏感に身体が反応するのだ。わずかに熱く潤んでいくのがわかる。

瞳を閉じて、彼の胸に頬を当てた。

吐息に混じるから、囁くような声になる。

「ガイが好き」

わたしの奥をいたずらに遊ぶ彼の指。

その手の中で、好き勝手にもてあそばれるのだ。

すっかりぬれて、それらを容易くのみ込んでしまう。

そんな自分をいやらしいと思った。

「あ...」
快感の波が立ちのぼってきて、もれる声までがひどくぬれた。

「ガイが好き」

わたしの耳を軽く噛んで彼が聞く。

「止めてほしいの？」
「…わからない……」

「不快なのじゃないね？」
「...うん...」
「ちょっと、待って」

彼がわたしを放し、上着を脱いだ。それを床に投げ、その上にわたしを抱いて寝かせた。

寝室でもない。床の上で彼にドレスの脚を開かれる自分がたまらない。

恥ずかしさに目を手でおおった。

「あ、んっ…」

そのまますぐにつながった。いたずらな愛撫に焦らされた切なさが埋まり、別な興奮が頬を上る。

タイをした彼。ベストもシャツも乱れていない。

なのに、その腕がわたしの脚を広げ、自身でわたしの奥へ押し入っているのだ。

果てた後で、彼がわたしを抱き起こした。

「こんな場で申し訳ない。怒っていない？」
「…ううん」
「すぐにほしくなったから」

衝動につかれたのはわたしも同じ。

とても口に出来ないけど、指じゃない彼がほしかった。

「ガイが好き」
「日を追うごとにあなたはなまめかしくなって、僕は悩ましくてたまらない」

「え」
「愛してる」

彼が口づける。

わたしの何かがガイを性的に刺激するのだとして、それは彼のせいだ。

彼がわたしにそれを教えて、わたしのどこか一部は、彼の好む彼の色になっているのかもしれない。

「ガイの好きにして」
「あなたはなんて愛らしいの」

全部あなたの色に染めてほしい。