転生したら石でした!

むねじゅ

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第19話 石と朝

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二人ともすっかり汚れを落とし、野営地に戻ってくると良い匂いがした。
そうだ!さっきまでセシルが肉を焼いていたんだっけ!少しこげているが、香ばしい程度だろう。
あまりにすごい出来事が起こったからか、グリズリーとの一件が何時間いや何日もたったような感覚におちいっていた。
しかし、たぶん一時間かそこらに違いない。

セシル 「さっぱりしたら、腹が減ったなー!さっきあんな大変な事が起こったんだ。当たり前だな!いただきまーす。」

と言って、セシルは肉をほおばった。ものすごく豪快ごうかいかつおいしそうな食べ姿だ。
俺は食べれないが、満足感を感じた。

セシル 「おまえ、ほんとスゲーな!また、悪霊に乗っ取られた奴が来た時はよろしくな!」

俺は光らなかった・・・だって、あんな臭くて屈辱的くつじょくてきな思いはしたくないだもん・・・

セシル 「どうした?疲れちゃったか?寝ていいんだぞ。」

そう言うと、セシルはヒョイと俺を持ち上げて、胸の谷間に俺を押し込んだ。

セシル 「ゆっくり寝ろよ。お疲れさん!あたいはもうちょっと食ってからにするからさ。」

さっきセシルにお願いされた事で、少し不機嫌だった俺は、居心地の良すぎる場所ですっかり上機嫌だった。
男って単純よね!と自分で自分に突っ込みを入れつつ眠りに落ちた。

そして、数時間が過ぎ朝日が昇ってきた。
とても清清しい朝だった。
セシルはまだ寝ている、なんだか寝言を言っているようだ。女の子の寝顔は、本当にかわいいのだと知る事ができた。

セシル 「もう飲めねーよ!腹もいっぱいだよー!!!!ふがっ!」

セシルはびくっとして、起きたようだ。寝起きはいいらしい。

セシル 「もう、朝かー!天気いいじゃん!石!起きてっかー!」

俺は光った。

セシル 「おはよ!朝飯の前に顔でも洗うか!」

セシルはそう言って、魔石を取り出し鍋に水を溜め始めた。
自分の顔が終わると、俺も少しだけ水を掛けてくれた。

セシル 「朝飯の準備!準備!と。」

セシルは鼻歌を歌いながら、軽い食事を作っている。俺はそんな様子を見ながら、もし自分に恋人がいて、二人で朝を迎えたらこんな感じなのかなーと妄想していた。

セシル 「そういえばさー。おまえとくっついていると、なんか調子がいいし元気になるんだよなー!やっぱりおまえはいい石だ!!!」

とセシルは言うと豪快ごうかいに笑うのであった。

俺はめられてすごく恥ずかしかったが、うれしかった。20年生きてきて、こんなに頻繁ひんぱんに褒められる事があっただろうか?
いや、ありえない。だって、事故にあった日にも就職面接先でバカにされて、面接官に失笑しっしょうされたのだから・・・
俺は元の世界の嫌な出来事を思い出していた。しかし、ふとセシルの顔を見ただけで、その思いは、消えてしまっていた。
今、俺は生きていると実感できる。怖い思いや辛い事もあるが、それ以上に充実感や幸福感がある。人間ではなくなって、石になってしまったというのに・・・
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