戦人学園

ゆうむ

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思いがけない課外授業~3

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 そして30分後、皆のPTが決まってたのであった。

 人数限界の8人が10組、7人が2組、私達の5人1組である。




「よしそれぞれのPT及び教官は決まったな、では実習内容だか……」 

 教官達がそれぞれの担当するPTの前に移動していく。

「……あれっ、教官~私達には教官がいないんですけど」

 しかし私達の前には誰も教官がいません、もしかして虐めでしょうか。虐めかっこ悪いです。

 私は正義を貫く為、その巨悪に立ち向かうことに、皆の見ている前ではっきりとウル教官に発言しました。

「お前達には、私と保険医のアテネ先生が付くとさっき話しただろう。聞いていなかったのか」

(ん? そうだっけ、それならいいけど。なんで私達にはアテネ先生がつくの?)




「ウル教官なら1人でも見える範囲であれば、私達1年全員まとめて見れるじゃないですかなんでわざわざ保険医のアテネ先生まで私達につくんですか」 

「俺はお前達が他のPTに危害を加えないためのお目付け役だ、そしてアテネ先生は実践なのでもしもの時の回復にだ」

「……は~い…私達ってなんでそれほど信用されてないのかな」

 メルはふてくされた様子で足元の小石を蹴っていた。




「よし内容は学園裏の森で今大量発生している熊タイプの魔物退治だ、一応低LVだとはいえ力は強いので十分気をつけるように。それと退治した魔物は学食や街の様々な施設に配られることになっているので、日ごろの恩返しと思い気合入れていけ」

 国に多数ある学園や特殊科の資金のほとんどが税金でまかなわれている。なのでたまには街の人々に恩を返しておく必要がある。




「あとまずないであろうが、運悪く小型の闇喰いに遭遇した場合、絶対に戦おうとせず教官の指示で撤退するように……いいか絶対に戦おうとするな、今のお前達の力量ではまず歯が立たないからな。かっこ悪くてもいい逃げることだけ考えろ」




 ふぅーん、そんなに強いのかな、まぁ私は噂でしか聞いたことないから。でもまぁ中型以上の闇喰いなんて絶滅した大昔の敵でしょ、今の最新鋭の魔法科学や、磨き抜かれた技なら小型程度の相手なんか楽勝でしょ。

 多分、実際見たことのあるみんなが大げさにいってるだけよね。それに平和ボケした冒険者達の言葉なんかどこまでが本当なんだか。




 学園の校庭からいくつもの校舎を横切り、敷地内多数ある森の奥深くにひときわ頑丈に作られた重厚な金属の裏門に到着した。辺りはいくつかの外灯で照らされているが、人の手が入っていない奥側の森であるため草や木々で生い茂り日中でも薄暗く感じる。

 時折学園の敷地内に放し飼いされ、個々で繁殖した鳥や動物達の鳴き声が響いている。

 最奥の校舎より門までは最短距離でも軽く50キロ以上ある、生徒達はここまでは学園の専用馬車でやってきていた。

 学園専用馬車、一般に使用されている10~20人乗り馬車とは違い、最大50人乗車可能の街間移動でも使用されるもの。それを引くのもただの馬ではなく、召還された大型の魔獣(学園では草食の魔獣)

 馬車を降りた生徒達はあまりの迫力に圧倒されていた。

 彼女達が通学で毎日見ている表側とは門や壁の高さが格段に違った、高さ10M 以上はありその向こう側はまず見ることが出来ない。

 厚さも対物理魔法陣が描かれた鉄筋コンクリート製で1Mもある、その壁のすぐ向こうから結界が見えている。つまりこの壁の向こう側は結果外となっている。

 この学園設立以後、この壁側からの魔物の進入はない(ガードのみ許可された転送魔法で彼が見回っている)

 いまだかつて破られたことのない無敵の壁といわれている。




 大きな分厚い門を越え、中とはまったく違う空気をその肌で感じ取る生徒達。

 緊張の隠せない1年生達、なんの抵抗もなく結界外で出ることが出来た。

 皆の目の前に続く道は結界内の舗装された街道の森とは違い、朝だというのに中側よりさらに薄暗く深い森、 木々も軽く10Mの高さはある巨木ばかりである。多くの魔物や野生の獣である動物達の気配が周囲から漂っている。

 そう今にも生徒のすぐ横の茂みから魔物が飛び出し、極度の緊張で隙だらけの生徒に襲い掛かってくるようである。




 そんな中メル達はすでにおのおの武器防具を取り出し、完全に戦闘体制に入っていた。

 流石、先ほどから自信満々のメル達であった、数回この実戦訓練を経験している他の生徒達以上に、リラックスしながらも周囲の気配を探っていた。

 

 周囲を警戒しながら、簡易ではあるが舗装された道をゆっくりとした足どりで進む生徒達。

 5キロほど進んだ所で少し脇道に入ると、獣達の気配のない全員が集まれるほどの広場が見えてきた。教官の指示により整列すると彼らは安堵の息を吐くことができた。

 しかし極度に緊張していた彼らにとっては、普段ではどうでもない5キロほどの距離と時間でさえ数百キロ・何十時間にも感じていたであろう。




「よし全員そろったところで、おのおの各組戦闘訓練開始しろ、範囲はここより学園の敷地側を除いた半径10キロまでとする、では解散」 

 しかしそのわずかな安堵感もむなしく、すぐに現実に引き戻され実戦が開始されたのである。




「ね~ね~ピナ~、実際闇喰いってどれくらい強いのかな~~真剣な話し、私達なら倒せるんじゃないかな。ね~みんなもそう思わない」

 軽く30キロはあるであろう金属製のハンマーを、片手で振り回しながらメルが聞く。 

「あんた……教官の話ちゃんと聞いてたの? 私達の力量じゃ無理だって、それに私達には・あ・の・ウル教官がつくのよ」




 あきれた顔をされてしまった、あっ……そうだった教官がいたんだ。

 まぁ、もし戦うことになってもウル教官なら余裕で倒せるだろうし。なんたってこの国最強とまで言われてる鬼教官でもあることだし、まったく私達の出番なんてないと思う。

 そうね最強の教官がついている私達の組が、逃げる状況なんてありえないわね。

 漁夫の利……虎の意をかりる狐、などのことわざが頭に思い浮かびそうな、彼女発言(脳内発言)であるが。




「そうだな、もしかしたら私達5人なら倒せるかもしれないが、指示無視でそのあとウル教官の説教12時間+素振り5千回+校庭100周くらいは覚悟しないとな」

「うむ、罰を受けるならメル1人だけにしてくれ。私達は関係ないし、当然逃げるぞ」

「う~説教……嫌」

 クリスとモー君の発言に、いつの間にかちゃっかりクリスの背中のバッグに入り込んで楽をしていたナナが唸る。

 

「だ・か・ら・闇喰いが出たら、教官の指示で撤退するのよ♪」




「ーーひっ、ひああぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 私達は本当に心臓が飛び出るほど驚いた(モー君はウニのように毛が立っている)

「アテネ先生……びっ、びっくりした~いつの間に後ろに……」

「ふふっ……まぁあなた達は確かにそこそこ強いけど、注意力が散漫すぎるわね♪」

「ん? あれっ、そういえばアテネ先生って学園の保険医で介護師ですよね、戦闘になったら危ないんじゃ?」




 ※アテネ 保険医(学園の特殊科専門の保険医、特殊科に配属されているので回復魔法と薬学に精通している)

 武器・防具ともになし(見た目的には)

 ピンク色のニットのセーターと、タイトな黒のミニスカート姿の上から白衣を着用している。

 完全な場違いな格好、いいのかなこんな素人丸出しの服装で。

 外見は切れ長の眼、きめの細かい真っ白な美肌に、真っ赤なルージュがポイント。

 そして黒いサラサラロングヘアーの超がつくほどの美人、スタイルも……くっ。まさに全女生徒の敵、いえ嫉妬するほど完璧で清楚な美女。

(神様は不公平、二物を与えるなんて……ふん、でも私達には若さがある、そう若さが)




 その瞬間、何故か私達の周囲の空気が凍りついた気がしました。

  ーーびくっ、と一瞬無防備な背筋に、真冬の氷水をかけられたようでした。

(……なっ、なによ今の殺気は)

 私は気配を察知するように見回したのだが、隣にアテネ先生が微笑んでるだけ……なんだったの?

(う~~ん、何かこの気配、昔感じたような、懐かしいというか……いや恐怖は……駄目だ何か霧でかすんだようにまったく思い出せない) 




「何だお前達おぼ……いやそうだったな、このアテネは以前戦闘師範だったんだぞ、私達の教え子の中でも優秀な師範だったぞランクも……」

「う、ウ ル 教かぁぁぁぁぁーーーーん」

 ーーアテネ先生の声がウル教官の言葉を遮り、よく聞き取れなかった。

「あぁ……すまん………しかしあの鬼軍曹と呼ばれ……」

「 おっ、いえ、いい加減にしてください教官っっーーーーーーーーーーーーーーーー」

 アテネ先生の声が森に響き渡ったが、すぐに木々のざわめきや獣達の鳴き声により、かき消されていきました。

「鬼軍曹? ……それにおって?」

「 ふふふ……メル、いいこと……なんでもないのよ♪」

 私はアテネ先生の背後に恐ろしい気配を感じました、これ以上聞くと命の危険があると本能が直感的に察知しました。




 その後は多少は真面目な表情で索敵しながら、目的の魔物を求め深い森の中へと移動するメルPT。

 先ほどより10分後ほど経過した頃。

 私達は目標である、熊タイプ魔物の大群と対峙していいました。

 外見は2M足らずですがかなりの巨体、熊に良く似ているがものすごく大きな目で、手の先より50センチは飛び出した5本の爪がかなりの脅威。

「えっと……この数は……魔物ってこんなに大量にいるのね」

 目前に迫る魔物の大群、私は一瞬思考が停止した気がしていた。

 それに教官達は私達の後方10Mほどの位置で傍観に徹している、でもしかし、教官にいたってはいつでも武器を取り出し攻撃態勢に移行できるような姿勢。




「あんた本当に教官の話聞いてないのねっーー大量発生っていってたでしょ」

 ピナは囲まれないように多数の魔物の爪攻撃を、横やバック移動でさけながら、箒を前に突き出し発動の速い名称のみで氷の魔法を放つ。

 ナナはその小柄な身体を最大限に生かし、巨体な魔物の足元を回転回避しつつ、的確に弓矢で仕留めていく。しかし時折クリスの背後に隠れていたのを私は見逃さなかった。

 まぁしかしそのクリスも、まるで彼女がそうするのがわかっていたかのような動きで、自身に向かってきた魔物を左右の拳で仕留めていく。




「まったく~だから実習で、数を減らすんじゃないの」

「まぁまぁ、メルが人の話を聞かないのは、今に始まったことじゃないですから」

 体? から無数の槍が飛び出し、そのまま体当たり攻撃で次々と仕留めていくモー君。

 かなり目の良い私から見ても、彼はやっぱりずば抜けた速度です。しかしその様は高速移動するウニそのものだよ(いや普通のウニはそんな速度で動かないけど)

  

 かなり速いペースで魔物の数を減らしていく彼女達。

「なんだよーーみんなして、ちょっと聞いただけなのにそこまで言わなくても……」

 少しへこんだ様子のメル、両手で武器を握り締めると、目の前にいた3体の魔物に向かって武器を振り下ろした。

「「「「……あっ、……」」」」

「えっ、……?」




 彼女は、いやその場にいた教官2人を除いた生徒達は、周囲の木々や草花を消し炭にするほどの大きな爆発とともに吹き飛ばされていた。




 メル達は今まさに迫りくる地面の光景を最後に、意識を失ったのである。

「……はぁ~~、まったくこいつらは、やはりこうなったか。すまないが回復を頼む」

「はい、お、いえウル教官」

 

 彼女達の身に何が起きたのであろうか、教官達は予想していたようであるが。

 実は彼女達、能力、実力的には問題ないのであるが、個々の能力が平均より高すぎて、それを制御しきれず自爆することが多々あるのであった。

 それに能力が他の生徒より高いせいか個人技に頼りすぎて、うまく連携が取れずパーティーとしては、学年で最低とまで言われるほど欠陥だらけであるのだった。




 先ほどの出来事は、メルが仕留めようとしていたのだが、その周囲でも同じく他のメンバーが同じ相手を仕留めようと魔法や武器で攻撃。

 普通のPTなら連携を意識し戦うので、このような初歩的なミスは起こさない。

 止める暇もなくピナの魔法が彼女に命中、そしてそれによりすっぽ抜けたハンマーがモー君を直撃すると、彼の身体から槍が飛び出し、クリスの背中に突き刺さった。

 その拍子に彼のアイアンナックルがナナの下っ腹に……そして彼女の発動前の魔法力が暴発したのであった。

 ……とまぁ、まるでコントのようなその光景ではあったが、それがさきほどの出来事の一部始終である。

 さらに彼女達には個々致命的な欠点がある、今回はナナで例をあげるとしよう。

 彼女能力のみで見れば一級品、新1年生ながら中級ランクの魔法を簡単に使いこなす実力。しかし気が動転した場合暴発したり、基本の魔法がまともに使えないという欠点がある。




 保険医のアテネの回復により復帰した彼女達、少しぼやける頭を振る。

「回復したわね、それじゃあいくわよ」 

 次の瞬間、数回はじけるような乾いた音が森に響き渡った。

 そして数秒後、頬の痛みによりわれに返った彼女達。

「ーーっ、わ、私達はなんて……」

 彼女達は保険医であるアテネに、思い切り強い平手打ちを受けていたのであった。

 そして自分達の愚かな行いを、心より恥て後悔していた。

 初の実戦だというのに、最初からうまく対処できたことにより戦闘をなめてかかっていたのであった。

 これが教官がいない本当の実戦であったなら、彼女達は間違いなく、残った魔物により全員殺されていたであろう。

 反省した顔つきなったメル達、その様子を少し離れた場所で魔物を、彼女達に近寄らせないように戦っていたウルが交代するよう声をかけた。 




 その後、完全に心を入れ替えたメル達は、魔物の群れを慎重にそして確実に1体ずつ仕留めていくのであった。

 先ほどとは違い、ぎこちない動きながら連携して戦っている。

 そして数十分後、彼女は最後の1匹、この群れの魔物のボスと向かい合っていた。

 今までの熊型魔物とは少々サイズが違う、巨人族のクリスでさえまるで子供のように感じる250センチはある巨大な身体であった。

 しかし今回はなんとかうまく連携が取れている、4人の連続攻撃を受けた巨体の魔物がふらついた。




「これで~~最後だーーーー!!」

 大地に打ち付けられたハンマー、その威力に大地が割れ、大小の岩が次々と魔物に襲い掛かった。大量の砂煙が辺り一面に舞い散り、メルの一撃が炸裂(クリーンヒット)したのである。

 断末魔の叫びをあげる間もなく、その魔物は絶命していた。

 彼女は地面にめり込んだ武器を片手で拾い上げると、軽々と肩に背負う。

 戦闘方法はどうみても神官のそれではない気がするが、とりあえずすべて終わったようである。

 数にして27体(ウルが倒したものはカウントなし)の魔物を倒しきったメル達、問題はあるもののかなりの能力であることは間違いない。

 倒した魔物をモー君がその体内に取り込んでいく。

 実際魔物が生きている場合は収納不可能であるが、倒すとアイテム扱いになるので可能となる。

 

「ふ~~いい汗かいた、準備運動には丁度よかったね、ねぇみんな」

「いや、私達はそうだろうけど、クラスメイト達には重労働なんじゃ」

 先ほどの失態をまるで何事もなかったかのような態度で、自信満々に言い放つ彼女達であった。

 しかしこのような軽口を言う彼女達の顔つきはいたって真剣であった、けっして先ほどのことは忘れてはいないようだ。

 彼女なりに重い空気をどうにかしようとしていたのであろう。…………と思いたいが。




「ん……他のPTはかなりギリギリだと……こんなに大量だと」

「そうだね、でも教官がついてるから大事にはいたらないと……」

「う~んそうかな、そんなにきついかなこの敵……こんなに弱いのに」

 やはり失敗をなかったこととしているようだ。




「この馬鹿者どもがぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー」

「「「「「ごっ、ごめんなさぁぁーーーーーい」」」」」
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