戦人学園

ゆうむ

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再会~2

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「……え~~と教官、あのですね」

「どうしたのかしら私達、ねえナナは覚えてる」

「ん、覚えてない、確かに1度」

 どこかで聞いた声。

 緊張したこの場所に、まったく似つかわしくない間の抜けた声。




「クリスよ、君や私はあの時確かに」

「あぁ、そうだ」

 呆然とする学園長と教官達。

 なかには、まるで金魚のように口をパクパクさせるものもいた。

 ウルや学園長は完全に目をまるくしたまま動かなくなっていた。

 なんと完全に死んだはずの彼女達、ゆっくりと起き上がり喋りだしたのだった。

 ありえない光景、ウルや学園長は自ら彼女達の身体を確認し、完全な死を見届けていた。 



 完全に時が止まっていた。
 
 すると静寂を打ち消すように、突如地面が揺れまた聞き覚えのある声が近づいてくる。

「お~~い、お前達無事だったのか~~無事なら返事をしろ~~」

 陽もだいぶ傾き、長い影がこちらに向かって伸びてくる。

 逆光で誰なのか良くわからないが、かなり、いやものすごく大柄な人物であった。

 その人物は大きなスライドでジャンプし、学園長達の目の前でなんとか止まった。

 ものすごい砂煙が、静まりかえった校庭に舞い上がり、その人物を覆い隠す。




 霧が晴れるかのように、ゆっくりと砂煙が薄れていく。

 皆の目に、その人物の正体がはっきりと映し出される。




 あの時、皆を救い、そして彼女達の目の前で崩れ落ち、死んだはずのアイアンゴーレムの彼が目の前に立っていた。

「「「あっ、あっ、アゴちゃぁぁぁぁーーーーーーーーーん」」」


 


 感動の再会も終わり積もる話は後にして、一先ず彼女達の体の状態を見ることに。

 学園長とウルはその場に残り、あの後の話をガードから聞いていた。




 保健室へやってきたメル達。

「まったく一体どうなっているんだ、うわっ制服が血まみれだ」

「そうだなクリス、俺のもボロボロでもう使い物にならない」

 いきなり血で染まり、ボロボロになった制服を脱ぎだす男子2人(モー君は体内よりボロになった制服を排出? していた)

「----!、って、純情な乙女の前でいきなりぬぐなぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー」

「「おしおき」」

「「ぐぁぁぁーーーーー何するんだよーーーーーー」」

 女子3人の連携技(コンボ)攻撃が見事に炸裂した。

 光と消えた2人、残された女子は個室に入ると服を脱ぎ始めた。

「……う~~~ん、これは、いえ……まさか」

 メルのきめ細かい肌のお腹を、穴が開くほど見つめる女保険医。

「あの~~どうかしましたか」

「いえ、なんでもないの。それよりあなた、すぐに隣の治療室にいって頂戴」

 学園内で怪我をした場合、保健室に常勤している保険医の回復魔法で傷はほとんど治る(傷が塞がるが体力は回復しない)

 保健室の隣に位置する治療室、別名学園研究室。

 多数のQ先生が配置されている学園の機関、一般にはあまり知られていないが、戦闘訓練中の不慮の事故で回復が間に合わないほどの大怪我(指や腕を失うなど)の治療をすることが出来る。

「えぇぇ~~なんでマッド研究所ーーいや、治療室へいかないといけないの」

 下着の上からボロボロに破れ、駄目になった制服の変わりの白衣を羽織り、ぶつくさ言いながらも隣へ移動するメル。

 隣と言っても保健室はかなり広く作られている、廊下を20Mほど歩くと治療室と書かれたプレートが見える。




 部屋の前には他の皆もそこにいた。

 いつもは騒がしい学園内、しかし今は静かで誰一人としていない廊下。

 暗くなった廊下にいるのはこの場の5人だけ、明かりすらない廊下に不気味な治療室から明かりが漏れていた。

「うぅぅ~~嫌だな、こんな不気味な部屋に入りたくないよ~~」

「ん、私も嫌」

「そうよ、なんで……か、わからないけど無事だったんだから、かっ、帰りましょうかメル」

「そっ、そうよね、アレは夢だったのよ、そう、夢なのよ。じゃあ私達女子は帰るから後はよろしくね」

 男子2人に押し付け、あの経験地豊富なメタルスラ〇ムのように逃げ出した女子達。




 暗い廊下を無我夢中で失踪する彼女達、女子とはいえ流石特殊科の生徒であった。

 100Mなら、軽くオリンピックで金を取れる速度で走っている。

 さらにメルは毎朝の訓練(寝坊の為全力疾走)のおかげで脚力には自信があった。

 今彼女達の頭の中では、長い間虐げられ、光のさす事のない長く暗い場所から逃げ出し、ようやく自由を掴み取れる所まであと一歩のイメージが思い浮かんでいた。

  

「ふふふ……流石まだN、いえ、モー君ね。この私達に追いつくなんて」

 しかし、その自由はもろくも崩れ去ることになった。

 光(あのイメージ)が流れる中、鼻歌交じりの余裕さえうかべた看守、--いや白いマリモが表れ横に並んで走って? いた。

「甘い、甘すぎるぞメル、1年の中で、速度で私に勝てるものはいない。しかも今は妙に体が軽い」

 彼女は、いやアンタ空中に浮いてるから、重いも軽いもないだろう……と思ったのだが、ぐっと堪えていた。

「こらっ、はなせーー、いや離してください。お願いそこは嫌ぁーーーー」

 自由への逃亡は失敗に終わった、彼の体内から無数のロープが彼女達の身体を縛り付けていた。




 扉を開け中へ入る、薄暗い10畳ほどの室内に最新の治療機器が所狭しと並んでいる。

 壁際に並ぶ沢山のモニターに、様々な情報が映し出されていた。

 さらにこの部屋の奥には、強化ガラスで仕切られたここと同じくらいの部屋、そこにはいくつかのベッドと謎の巨大な円柱のガラスが見える。

 巨大円柱ガラスは天井まで届く高さ、中には液体が充満しているようだ。

 そこに忙しく駆け回るQ先生達の姿が見て取れた。

「アっ、体ノスきャんですネ。1人ズつこちラのベッどへ」

 キーボードと格闘していた、1人のQ先生が彼女達に気づき声をかけた。

 

 全員の全身スキャンは、あっけないほどすぐに済んだ、今彼女達は部屋の外の廊下で待たされていた。

「何なのよ~~うら若い乙女の柔肌を、いくらQ先生が肉体を持たない種族だとしても……」

「ん、メル言いたいことはそこじゃない」

「……わかってるわよナナ、私達のこと、いや、傷跡すら残ってないこの体のことでしょ」

 極力考えないようにしていた、あの時のことは、あの瞬間のことは。

 そう、確かにあの時、自分達はあの急激に進化した闇喰いによって致命傷を受けたはず。

 メル本人も、失いつつある意識の中、この親友の無残な姿を確かに見たのだ。

 これまでの言動や言葉。彼女なりに、この嫌な空気を和ませたかったのであろう。
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