3 / 38
第3話:新たな生活
しおりを挟む
「うぅ、体がチリチリする……でもみんないい動きだったよね! ないすー!」
明里はまだ焼け跡が少し残っていたが、すぐに笑顔を浮かべて手を振った。犬の耳と尻尾はいつの間にか消えていた。
「おう、お疲れ様!」
「お疲れ様でした。無事に成功してよかったですね」
天音も、ふっとその翼と光輪を消す。同時に髪色ももとに戻っていく。
「お疲れ様」
三者三様の返事をしながら、戦闘は無事に終了した。
『おつかれー。今日はほんとに変わった探索だったな。面白かったわ』
「でしょう? 楽しんでくれたようで何より……」
連理は誇らしげに言う。
「うし、報酬も出たな。布と鍵か……鍵は確定だけど、布は低レアだから微妙だな」
それから、独り言を言いながら落ちていた報酬を拾った。
その鍵は、奥にある下階層への階段の途中にある宝箱を開けられるものだ。宝箱はダンジョンによって時間経過で復活するため、すぐ前に探索されていなければ宝箱が見つかることだろう。
『毎回宝箱復活させてくれるダンジョンくん優しい』
「確かに我々に毎回ゲーム感覚で提供してくれるの優しいな。ありがとうダンジョン」
連理はコメントを読み上げてから反応する。
「彼らもそれで生計を立てているので、優しいという話ではないような気がしますが……」
生計、というと冗談のように聞こえるが『ダンジョン生物説』という説は広く知られている。そこでは、ダンジョンは生き物と似た性質を持っており、魔力エネルギーを収集して進化しながら増えていく、というのが通説だ。
「……多分そういう話じゃないと思うぞ」
連理は天音に小声で話した。
「えっ違うんですか? ですが、実際ダンジョンは生物と言われているわけですから……いえ、なんでもないです」
そこまで言って、冗談だということに気がついたのか、コホンと咳払いをし恥ずかしそうに顔を背けた。
『かわいい』
『JK可愛い』
「いやお前ら……」
視聴者には同じ高校の人間も居る上、配信者でもない本人が目の前に居るのにそんなことを言うとは、と連理は呆れてため息を吐く。
「……どうかしましたか?」
「い、いやぁなんでもないぞ! さあ報酬だぁ!」
わざとらしく話を逸らしながら、彼は宝箱のある奥の扉へ向かった。
『主が最後の一撃だけ取ったことについて誰もツッコんでいない件』
静かにコメントが一つ残された。他のメンバーにも見られていない以上、わざわざ連理がこれに反応することはないだろう。
◇
空は晴れ渡り、まだ明るい太陽が降り注ぐ涼しい午後の時間帯。
有名チェーン喫茶店のテラス席に連理たちは座っていた。。
「それでさ、結局配信どうだったの⁉」
明里は目をキラキラ輝かせながらずい、と前のめりになって訊く。
チリチリしていた髪と肌は、天音の回復魔術で直し、髪はクシで軽く梳いたことでそこそこ元に戻っていた。
「結構成功だと思うぞ。同時接続はまあ……いつもより数人多い程度だったけど、反応は悪くなかった。あとはこれから次第だけど、ポテンシャルは感じる配信だったな」
連理はスマホで配信を見返しながら分析する。
(案外冷静な分析。実はストイックなんでしょうか)
天音は頼んだジュースを飲みながら内心思った。
「えー、なんかこう、もっと一気にドカーン! みたいなのは無理なの?」
明里が言っているのは俗に言うバズりだろう。
だが、それは狙えるものではない。
「それが無理なんだなぁ。現実そう簡単じゃないんだ……結局は今やれることを地道にやってくしかないんだぞ」
「そっかぁ……」
明里は残念そうに身を引いた。
「まあ、好感触だったのでいいんじゃないでしょうか?」
「そうだな……」
零夜はどこか落ち着かなさそうだ。
「……零夜さん、そのドリンクは結構美味しいので飲んでみてはいかがでしょうか? リラックスできますよ」
それを見かねてか、天音が声をかけた。
「ん? あ、ああ、そうだな」
不思議そうな表情をしながら、言葉通り飲み物に口をつけた。案外美味しかったのか、目を見開いている。
「えーと……そうだなぁ……」
一方、明里はブツブツ言いながらスマホを弄っていた。
「何してるんだ?」
「やっぱりさぁ、せっかくならもっとSNSとか使いたいよね。それに、ここだけの関係ってつまんなくない?」
「――ごほっごほっ!」
言葉と同時に零夜がむせた。
なんだか辛そうだ。
「え? まあ確かに一理あるかもしれませんが……」
「ということで――じゃーん! アカウント作りましたー!」
明里が他三人に見せた画面には『青幻✕鳥里学園交流祭・ダンジョン探索部』と書かれたアカウント。
インターネット上でつぶやきを投稿するアプリがあった。
(こ、行動があまりにも早い……! これが陽キャ……!)
零夜は戦慄していた。
「はいはーい、それじゃあみんな集まって! 写真撮るよー」
「え? これ投稿すんのか?」
連理は不思議に思いながらも、画面に入った。
「は、話が早いですね……まあ、写真くらいならいいですけど」
少し恥ずかしそうにしながらも、言われた通り画面に入り、カメラの方を見る天音。
「ほらほら、零夜くんも」
「お、おう……」
「それじゃ、はい、チーズ――!」
パシャリ。
四人が収まった写真が撮られた。
笑顔でピースをしている明里。
真面目そうな顔で少しだけ頬を赤く染めながら控えめにポーズを取る天音。
楽しそうな笑みでピースしている連理。
引きつった笑みで形にならないピースをする零夜。
『学園交流祭スタート! ダンジョン探索部の方はこんな感じー。楽しいよ! 他のみんなはどう⁉ #青幻✕鳥里学園交流祭 #スカフ #ダンジョン探索 #青春』
彼らの青春は、今始まる。
……の、かもしれない。
◇
スレッドタイトル:今の高校生、ダンジョン探索において強すぎる件
▼0001 ぷにぷにパイロット 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
最近クソ強いスキル持った高校生多すぎやろ。これ現実のバグな
▼0002 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
ぶっちゃけ分かるわ。実力自体はそりゃ若いから低かったりもするけど、スキルがな。そこが俺らの世代より圧倒的すぎる。俺も同じ時代に生まれたかった。うらやま。
▼0003 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
そうか? そもそもダンガー持ってるヤツしか探索できないし、バイアス掛かってるような気もするが
▼0004 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
実際色々なところで最近の学生が強いとは言われてる。実際、今の世代はいろんなデータ参照しても実力高い人間が多いみたいだし
▼0005 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
なるほど、つまり黄金の世代か
▼0006 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
>>5
ガチで後にそう言われてる可能性はあるんよなぁ……すでに結果出してるヤツも居るし。若いのにマジですげぇ。
▼0007 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
https://www.~~~.com/watch?v=~~~
▼0008 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
>>7
すまん、この配信アーカイブ見たらなんも言えんくなったわ。
▼0009 ぷにぷにパイロット 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
>>7
エグいわこれ。つかこれ青幻学園と鳥里学園の学園交流のヤツか。まあどっちもダンジョン活動すげぇし納得っちゃ納得
▼0010 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
>>7
最近はこういうのも増えてきて凄いよなぁ。学校とかでもダンジョン探索しちゃうもんな。特に郷迷市の学校とか多いけどさ
これに関しては学生さんらゲキツヨでもう涙出てくる(´;ω;` )
▼0011 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
こんくらいだったら全然いるやろ。アホか
▼0012 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
>>10
高校生でこれがエグいって言ってんだよ。プロと高校生比べんな。
▼0013 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
ネット掲示板は今日も平和なンゴねぇ
――
――――
明里はまだ焼け跡が少し残っていたが、すぐに笑顔を浮かべて手を振った。犬の耳と尻尾はいつの間にか消えていた。
「おう、お疲れ様!」
「お疲れ様でした。無事に成功してよかったですね」
天音も、ふっとその翼と光輪を消す。同時に髪色ももとに戻っていく。
「お疲れ様」
三者三様の返事をしながら、戦闘は無事に終了した。
『おつかれー。今日はほんとに変わった探索だったな。面白かったわ』
「でしょう? 楽しんでくれたようで何より……」
連理は誇らしげに言う。
「うし、報酬も出たな。布と鍵か……鍵は確定だけど、布は低レアだから微妙だな」
それから、独り言を言いながら落ちていた報酬を拾った。
その鍵は、奥にある下階層への階段の途中にある宝箱を開けられるものだ。宝箱はダンジョンによって時間経過で復活するため、すぐ前に探索されていなければ宝箱が見つかることだろう。
『毎回宝箱復活させてくれるダンジョンくん優しい』
「確かに我々に毎回ゲーム感覚で提供してくれるの優しいな。ありがとうダンジョン」
連理はコメントを読み上げてから反応する。
「彼らもそれで生計を立てているので、優しいという話ではないような気がしますが……」
生計、というと冗談のように聞こえるが『ダンジョン生物説』という説は広く知られている。そこでは、ダンジョンは生き物と似た性質を持っており、魔力エネルギーを収集して進化しながら増えていく、というのが通説だ。
「……多分そういう話じゃないと思うぞ」
連理は天音に小声で話した。
「えっ違うんですか? ですが、実際ダンジョンは生物と言われているわけですから……いえ、なんでもないです」
そこまで言って、冗談だということに気がついたのか、コホンと咳払いをし恥ずかしそうに顔を背けた。
『かわいい』
『JK可愛い』
「いやお前ら……」
視聴者には同じ高校の人間も居る上、配信者でもない本人が目の前に居るのにそんなことを言うとは、と連理は呆れてため息を吐く。
「……どうかしましたか?」
「い、いやぁなんでもないぞ! さあ報酬だぁ!」
わざとらしく話を逸らしながら、彼は宝箱のある奥の扉へ向かった。
『主が最後の一撃だけ取ったことについて誰もツッコんでいない件』
静かにコメントが一つ残された。他のメンバーにも見られていない以上、わざわざ連理がこれに反応することはないだろう。
◇
空は晴れ渡り、まだ明るい太陽が降り注ぐ涼しい午後の時間帯。
有名チェーン喫茶店のテラス席に連理たちは座っていた。。
「それでさ、結局配信どうだったの⁉」
明里は目をキラキラ輝かせながらずい、と前のめりになって訊く。
チリチリしていた髪と肌は、天音の回復魔術で直し、髪はクシで軽く梳いたことでそこそこ元に戻っていた。
「結構成功だと思うぞ。同時接続はまあ……いつもより数人多い程度だったけど、反応は悪くなかった。あとはこれから次第だけど、ポテンシャルは感じる配信だったな」
連理はスマホで配信を見返しながら分析する。
(案外冷静な分析。実はストイックなんでしょうか)
天音は頼んだジュースを飲みながら内心思った。
「えー、なんかこう、もっと一気にドカーン! みたいなのは無理なの?」
明里が言っているのは俗に言うバズりだろう。
だが、それは狙えるものではない。
「それが無理なんだなぁ。現実そう簡単じゃないんだ……結局は今やれることを地道にやってくしかないんだぞ」
「そっかぁ……」
明里は残念そうに身を引いた。
「まあ、好感触だったのでいいんじゃないでしょうか?」
「そうだな……」
零夜はどこか落ち着かなさそうだ。
「……零夜さん、そのドリンクは結構美味しいので飲んでみてはいかがでしょうか? リラックスできますよ」
それを見かねてか、天音が声をかけた。
「ん? あ、ああ、そうだな」
不思議そうな表情をしながら、言葉通り飲み物に口をつけた。案外美味しかったのか、目を見開いている。
「えーと……そうだなぁ……」
一方、明里はブツブツ言いながらスマホを弄っていた。
「何してるんだ?」
「やっぱりさぁ、せっかくならもっとSNSとか使いたいよね。それに、ここだけの関係ってつまんなくない?」
「――ごほっごほっ!」
言葉と同時に零夜がむせた。
なんだか辛そうだ。
「え? まあ確かに一理あるかもしれませんが……」
「ということで――じゃーん! アカウント作りましたー!」
明里が他三人に見せた画面には『青幻✕鳥里学園交流祭・ダンジョン探索部』と書かれたアカウント。
インターネット上でつぶやきを投稿するアプリがあった。
(こ、行動があまりにも早い……! これが陽キャ……!)
零夜は戦慄していた。
「はいはーい、それじゃあみんな集まって! 写真撮るよー」
「え? これ投稿すんのか?」
連理は不思議に思いながらも、画面に入った。
「は、話が早いですね……まあ、写真くらいならいいですけど」
少し恥ずかしそうにしながらも、言われた通り画面に入り、カメラの方を見る天音。
「ほらほら、零夜くんも」
「お、おう……」
「それじゃ、はい、チーズ――!」
パシャリ。
四人が収まった写真が撮られた。
笑顔でピースをしている明里。
真面目そうな顔で少しだけ頬を赤く染めながら控えめにポーズを取る天音。
楽しそうな笑みでピースしている連理。
引きつった笑みで形にならないピースをする零夜。
『学園交流祭スタート! ダンジョン探索部の方はこんな感じー。楽しいよ! 他のみんなはどう⁉ #青幻✕鳥里学園交流祭 #スカフ #ダンジョン探索 #青春』
彼らの青春は、今始まる。
……の、かもしれない。
◇
スレッドタイトル:今の高校生、ダンジョン探索において強すぎる件
▼0001 ぷにぷにパイロット 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
最近クソ強いスキル持った高校生多すぎやろ。これ現実のバグな
▼0002 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
ぶっちゃけ分かるわ。実力自体はそりゃ若いから低かったりもするけど、スキルがな。そこが俺らの世代より圧倒的すぎる。俺も同じ時代に生まれたかった。うらやま。
▼0003 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
そうか? そもそもダンガー持ってるヤツしか探索できないし、バイアス掛かってるような気もするが
▼0004 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
実際色々なところで最近の学生が強いとは言われてる。実際、今の世代はいろんなデータ参照しても実力高い人間が多いみたいだし
▼0005 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
なるほど、つまり黄金の世代か
▼0006 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
>>5
ガチで後にそう言われてる可能性はあるんよなぁ……すでに結果出してるヤツも居るし。若いのにマジですげぇ。
▼0007 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
https://www.~~~.com/watch?v=~~~
▼0008 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
>>7
すまん、この配信アーカイブ見たらなんも言えんくなったわ。
▼0009 ぷにぷにパイロット 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
>>7
エグいわこれ。つかこれ青幻学園と鳥里学園の学園交流のヤツか。まあどっちもダンジョン活動すげぇし納得っちゃ納得
▼0010 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
>>7
最近はこういうのも増えてきて凄いよなぁ。学校とかでもダンジョン探索しちゃうもんな。特に郷迷市の学校とか多いけどさ
これに関しては学生さんらゲキツヨでもう涙出てくる(´;ω;` )
▼0011 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
こんくらいだったら全然いるやろ。アホか
▼0012 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
>>10
高校生でこれがエグいって言ってんだよ。プロと高校生比べんな。
▼0013 名無しの探索者 203X/4/20(木) 19:~~:~~.~~ ID:~~~
ネット掲示板は今日も平和なンゴねぇ
――
――――
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
14
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる