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第二章
第二十八話 言い訳と眼差し
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「殿下、これは何かの間違いです!」
髪を乱した壮年の女は、目の前の恐ろしいほどに美しい女性に懇願する。美しい女性――この国の王妃、セレーネは全く感情の読めない瞳でベルナデッタを見つめていた。ベルナデッタの手には枷が付けられていて、両隣にはセレーネ専属の護衛騎士が厳しい目で監視している。
ベルナデッタは今自分がどれほど危ない状況にいるは理解していた。しかし、目の前のこの女さえどうにかすれば上手くいくだろうとも高を括っていた。何せ今まで自分にシュテルの世話を任せっぱなしで、仕事ばかりに目を向けていたような女だ。シュテルと違って自分が牽制していない王女たちに対しても、ほとんど会っていないという。
ベルナデッタは知っている。それは愛がないからではなく、本当に彼女が忙しいことと自分が彼女の自信を削いできたことが原因だと。ベルナデッタはシュテルの乳母になってすぐこの王妃セレーネに、シュテルがあなたを嫌っていると告げ始めた。本当はむしろ母に会いたいと言っていたのだが、セレーネにそう嘘をつくと面白いほどに効果があった。
セレーネは王妃としては完璧だったが、母としては未熟だった。今まで王女たちに対しても母として見守ることができなかった罪悪感からか、シュテルが嫌っているという嘘はすんなり信じた。それでも何度か直接会いに行こうとしたこともあったが、ベルナデッタは得意の話術でそれを止めた。
馬鹿な女だ。他人の言葉を信じて、自分の子供にすら会いに行かないとは。ベルナデッタはいつもそう思い、セレーネを見下していた。
澄ました顔をしながらも、話を聞いてどんどん自信が失われていったのだろう。セレーネは同時に第二王女と会う頻度も減っているようだった。第一王女は常に何かしらの問題を引き起こしたり、逆に英雄と称えられるような功績を重ねていたりしているようだったから、話す機会は減らなかっただろうが。
ベルナデッタはあの王女たちのことを思い返す。
本当に最悪な王女たちだった。第二王女は突然何の前触れもなく、私のシュテルに接触してお茶をしようなどと誑かした。自分が第二王女の卑劣さを教えている時にシュテルが反発してきたことには、途方もない怒りがこみ上げてきた。今まで自分に逆らうことなんてほとんどなかったのに。
その上シュテルに私が嫌いだと嘘をつかせるなんて、幼いくせに本当に下劣な女だ。シュテルを自分の物にしていい気になっているようだから、絶対に後で仕返しをしてやる。
第一王女は突然現れたかと思うと、あろうことか王女とは思えない品のない言葉遣いでこの私を罵り、廊下を引きずり回したのだ。すれ違う使用人たちの困惑した顔を思い出して、再び怒りがこみ上げてくる。そして私を地下の牢獄に投げ込み、ゴミを見るような目を向けながら去って行った。この屈辱は絶対に晴らす。
とにかく、セレーネなどに自分が負けるはずがない。上手く言い逃げて、シュテルの乳母でなくなったとしても城には残ってやる。そしてまたシュテルと話す機会を待つのだ。あの憎らしい第二王女に何を吹き込まれたのかは知らないが、私の可愛いシュテルなら、私の想いを受け止め、許してくれるだろう。
ベルナデッタはふ、と勝利を確信して笑いそうになり、慌てて我慢する。ここは王女たちの暴走に巻き込まれ、罪を被せられた可哀そうな乳母を演じなければならない。
「シュテル様が家族を嫌っていることを案じ、距離を置かせようとしたのです。確かに、侍女がシュテル様の名を騙り過激な手紙を作って送り付けるという悪質な事件は、しっかり侍女の管理ができていなかった私にも責任があります。しかし、全てはその手紙に対して怒りのままに私とシュテル様を攻撃しようとしてきたミティア殿下に非があるのです!ミティア殿下の大切な腕に痣を付けてしまったことは後悔しています……しかし、あちらがナイフを握っていた以上、私も焦ってしまい、手加減をすることができませんでした」
ベルナデッタは責任をミティアに押し付けながら、自分がした明らかな証拠も揉み消そうとする。
セレーネはそんな彼女に怒るわけでも同情するわけでもなく、淡々と質問する。
「侍女はあなたに金を渡されて指示されたことだと言い、シュテルやミティアはあなたがナイフを握って攻撃してきたと言っていました。それにエステルはあなたがミティアにナイフを振り被っているところを目撃したとか」
「そんな……あの侍女がそんなことを⁉自分の罪を軽くするために…そんな子だったなんて。……王妃殿下、シュテル様はミティア殿下に脅されているのです。恐怖で本当のことを言えないのかもしれません。エステル殿下も、私がナイフを取り上げたところを目撃して、勘違いされたのでしょう。扉の近くにいた兵士たちに聞いてみてください、私がミティア殿下を止めようとした声が聞こえたはずです」
「兵士たちは何故そんな状況になっても動かなかったのですか?」
「ミティア殿下は最初普通に部屋の中に入ってきたのですが、シュテル様に近付くと突然ナイフを突きつけてきたのです。兵士が慌てて部屋に入ってきたところ、今すぐ部屋から出ないとシュテル様を刺すと脅し、兵士たちを外に立たせました。誰かを助けに呼んで欲しかったのですが、気が動転していたのかもしれませんね……」
ベルナデッタはかなり良い言い訳だと心の中で笑った。牢屋に閉じ込められた後、侍女からこう言うように指示された紙を受け取った。その紙ももう処分したようなので見つかる心配はない。あの兵士たちがここまで気を利かせてくれるなんて思わなかった。まあかなり高く金は積んであるし、あちらもバレるとひとたまりもないから必死なのだろう。
「ミティアは部屋に来る前に、侍女へエステルを呼ぶよう頼んでおいたそうですが…暴走して犯罪紛いのことをしようとするミティアがそんなことをする理由はあるのでしょうか?」
「……私も詳しいことはわかりませんが、こういう事態になることを見越してわざと侍女にそう頼んだのでは?全て後先考えずに行動したとは思えませんし、こうして私に罪を被せたかったのかもしれません。…ミティア殿下がこんなことをするなんて…王妃殿下、私が悪かったのでしょうか?侍女の様子に気付かず、シュテル様を大切に想い過ぎた故に、こんな事件が……」
被害者ながらも他人のことを想うことのできる、優しい乳母。この演技を嘘と思えるわけがない。それほどまでにベルナデッタは自信があった。
セレーネは無表情でこちらを見つめているが、きっと心の中では私の慈悲深さに感動しているだろう。
だが、まだセレーネはベルナデッタに許しの言葉を吐かなかった。
「……それと、シュテルは家族を嫌いになってなどいない。あなたによって遠ざけられていたのだという証言がありましたが」
……本当に煩わしい王女だと、ベルナデッタは舌打ちをしたくなる。しかしこの程度で自分を追い詰めた気でいるなら、やはりおめでたい王女だ。
ベルナデッタは目を伏せ、ぽろりと目から一粒の涙を流す。
「それに関しては……本当に申し訳ございません。今は覚えていらっしゃらないようですが、シュテル様が今よりもっと幼い頃は本当によく家族に会いたくないと言っていました。しかし、最近は心変わりなさったようです。それを知らない私がミティア殿下に対して神経質になり…今回のような事件が起こってしまったようです」
「……そうですか。あなたの言い分はわかりました」
(――勝った)
ベルナデッタは口元をにやけるのを抑えるので必死だった。さあ、無能なセレーネよ、どちらを選ぶ?先日も問題を起こしていたような王女と、王子の乳母として五年間真面目に城に仕え、完璧な証言が存在するこの私。いくら子供が可愛いからといっても、王妃として見て見ぬふりをするわけにはいかないだろう?
それに私の話を受け入れることになったら、暴走した王女から王子を守った乳母として名もあがる。ただの乳母といえど、今後城内での地位は揺るぎないものになるだろう。そうしたら、自分とシュテルを阻むものは何もない。
ベルナデッタは高笑いしたくなるのを堪えて、セレーネからの返答を待った。
「では、今回の事件とは少し関係ない質問をしてもよろしいでしょうか」
「……はい、もちろんです」
関係ない質問?何のことだとベルナデッタは眉を顰めた。まあどんなものがきても自分なら受け答えられると、余裕の笑みで質問を待つ。
「ベルナデッタ…あなたがシュテルの乳母として働きたいと言った理由は何だったでしょうか?」
「……五年前にも申し上げた通り、私の一人息子は幼くして病気で亡くなりました。一方私の主人はそれを気にせず毎日毎日知らない女を家に連れ込みました……。私は息子の死に絶望し、身勝手な夫の振る舞いにも耐えきれなかった……そんな時に第一王子殿下の乳母を探しているという話を聞き、自ら申し出たのです。夫から逃げたい思いもありましたが、何より育てきることのできなかった息子を想い、王子殿下を幸せにしたいと感じたのです」
ベルナデッタは当時のことを思い出してグッと唇を噛んだ。
息子の死にも興味がないというように、酒と女に溺れていたあの男。どうして昔はあんな男を好きだったのか。ああ、あの子を思い出すと、シュテルに会いたくなる。今度は死なせない、私が守ってあげるのよ……!
「そうです。私はあなたのその身の上に同情し、あなたならシュテルを不幸にすることはないと思い、シュテルの世話を任しました。ですが……それが嘘ならあなたを乳母にする気なんて一つもありません」
「………は?」
耳を疑った。この女は何を言っているんだ?これが作り話だとでも言うのか。夫に捨てられ子供を失った悲しみを……何一つ経験していないこの女が嘘だと言ったのか‼
ベルナデッタは一気に怒りがこみ上げ、冷静さを失った。
「嘘……何が嘘だと言うのですか?息子を失った私の悲しみを嘘だと言うなら、いくら王妃殿下でも許しません!」
護衛騎士たちがセレーネを庇うようにして、ベルナデッタの前に剣を突きつける。それに怯えてベルナデッタはいくらか冷静になるが、その心には不安が生まれていた。
「あなたは以前息子を何よりも大切にしていたと言っていましたが……大切なら何故放っておいたのです?」
「……え」
「少し調べさせていただきましたよ。といってもモデナ子爵家の使用人からいろいろ話を伺った程度ですが。少しあなたのプライベートに踏み込んだ話を致しますが、構いませんね?」
「……はい。もちろん、です」
プライベートな話とはどういう意味だろうか。よくわからないがここで拒否すると要らぬ疑いがかかることは確実だ。しかし何故?自分は何も間違ったことはしていないはずなのに、何故悪い予感がするのだろう。何を考えているのかわからないセレーネの瞳が、どんどん恐ろしいものに見えてくる。
「あなたは若い頃子爵に一目惚れし、婚約を申し込んだらしいですね。利益のある話にモデナ家は喜んでその婚約を受け入れ、あなたはめでたく子爵夫人になった、と」
ベルナデッタは冷たい目でセレーネを見つめる。何が言いたいんだこの女は。いきなり人の昔話を聞かせてきて…確かにモデナ家の古い使用人ならこのことを知っているだろう。しかし五年前、王家には余計なことを言わないように釘を刺していたのに。それに「めでたく子爵夫人になった」だと?その後の悲惨な生活を知っておいてよくもそんな残酷なことが言える。
セレーネはそんなベルナデッタの心情など知ったことではないというふうに続ける。
「しかし子爵はあなたに冷たくあたり、夜出かけたまま帰らないこともあった。そして子供が生まれた後もそれは変わらなかった。子爵の愛を求めるのに必死だったあなたは、たった一人の幼い息子を使用人に任せきりにしていた。使用人たちが子供を気に掛けるように進言しても、余計なことを言うなと怒鳴ってばかりだったようですね。そして子供が高熱を出した日も、あなたの態度は変わらなかった」
「……そ、れは」
やめてくれ。そう言おうとしたのに喉が枯れたように上手く声が出せない。既にベルナデッタは先ほどの余裕が嘘のように動揺していた。
「明らかにただの風邪ではない、異様な病状に使用人たちはすぐに気が付きました。そして彼らは医者を呼んでくれとあなたに頼み込みました。子爵が家を空けていたのであなたにしか頼めなかったのでしょう。しかしあなたは面倒くさがり、何度お願いされても放っておけの一点張り。使用人たちも料理を作ったり薬を買ってみたりして手を尽くしましたが、その努力も虚しく子供は亡くなってしまった」
「やめて……ください」
「子供が亡くなった後、子爵はあなたにさらに冷たく接するようになり、、あなたは以前にも増して物や使用人に当たるようになった。そしてある日あなたは王子の乳母になると言って子爵家を出て行きました。その際に息子が亡くなった原因は未知の病気ということにして、使用人には王家に本当のことを言うなと告げて。…使用人から聞いた話は以上です」
「なんで……」
「今のモデナ家は酷い有様のようですね。子爵はまともに仕事をする気はなく、子供がいないので一族間で連日相続騒ぎ……今は使用人たちのおかげでなんとか回っているようですが、疲れ切った彼らに自分たちを見捨てた夫人を配慮する余裕などなかったようです」
「黙れ……」
まるで責任が私にあるような言い方をして。全てはあの男が私を愛さなかったのが悪いのに。
次々とセレーネから聞かされる思い出したくもない昔話に、ベルナデッタはぐつぐつと煮えるような怒りを抱き始めた。こんなに惨めに侮辱されるなんて耐えられないと、思い切りセレーネを睨む。それを見た騎士が嫌悪感を露にし、剣を向ける。
「貴様……!」
「良いのです。ベルナデッタ、言いたいことがあるのなら言いなさい」
「……私は気付いたのよ、本当に愛するべきだったのはあんな男じゃなくてあの子だったんだって。でも気付いた時には全てが遅かった。死んでしまいたいと思うほどに後悔した。だからこそ、シュテルに会った時に大切にしよう、守り抜こうと誓ったのに……」
ブツブツと恨みを吐き出すように喋るベルナデッタを、セレーネは深く青い瞳で見つめる。ベルナデッタはそんなセレーネに怒りが収まらなかった。
「その結果がこれですか⁉ありもしない罪を押し付けられ、消してしまいたい過去を掘り返され……!あなたは何がしたいのよ‼セレーネ・ノヴァ・ロワイヤル!!」
今にもセレーネに飛び掛かりそうなベルナデッタを、今度こそ騎士たちは抑えつける。床に体を押し付けられる屈辱に耐えきれず、セレーネをキッと睨み上げる。だがセレーネはそれに何の感情も表さず、美しい顔で負け犬のように喚く女を見下ろすだけだった。
「ベルナデッタ、あなたはまだ勘違いしているようですね。あなたはシュテルを愛していると思い込んでいるようでしたが、実際は自分の過去の鬱憤を晴らすためにシュテルを利用しているだけです。あなたの眼に映っているもの、あなたが可愛いと思っているものはシュテルではありません。我が身だけなのです」
ベルナデッタが信じられない気持ちで呆然としていると「話は以上です」というセレーネの声とともに部屋の扉が開き、兵士たちが入って来る。兵士たちはベルナデッタを無理やり連れて行こうとするが、ベルナデッタはそれを拒むように声を上げる。
「殿下!私は本当に何もしていません、こんな扱いはあんまりです‼」
「ああ、言い忘れていましたがあなたに紙を渡した侍女と、それを指示した兵士たちは既に捕らえられており、自白しています。想像以上に余罪が多いようで、尋問している者は手を焼いているそうですね」
ベルナデッタは鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。
(この女……今まで全て知った上で私を喋らせていたの⁉)
途端に目の前のセレーネが、ベルナデッタにとって無能な母親から悪魔のような女へと認識が変わった。人生で一度も感じたことのないような悔しさが胸を支配する。
「セレーネ‼今まで私の行動に気付かなかったくせに澄ました顔をするな!見下しやがって、お前も私と同じで子供の世話なんてできていなかったくせに……地獄に落ちればいい‼」
もはや取り繕う必要のなくなったベルナデッタの本性はこの上なく醜かった。兵士から「黙れ‼」と怒鳴られてもこの世の全てを恨むような罵声が止むことはなかった。対してセレーネはそんなベルナデッタに対して、最初から最後まで眉一つ動かすことはなかった。ただその青い瞳で、かつて自分が同情し信頼していたはずの乳母が連れていかれるのを見つめていた。
髪を乱した壮年の女は、目の前の恐ろしいほどに美しい女性に懇願する。美しい女性――この国の王妃、セレーネは全く感情の読めない瞳でベルナデッタを見つめていた。ベルナデッタの手には枷が付けられていて、両隣にはセレーネ専属の護衛騎士が厳しい目で監視している。
ベルナデッタは今自分がどれほど危ない状況にいるは理解していた。しかし、目の前のこの女さえどうにかすれば上手くいくだろうとも高を括っていた。何せ今まで自分にシュテルの世話を任せっぱなしで、仕事ばかりに目を向けていたような女だ。シュテルと違って自分が牽制していない王女たちに対しても、ほとんど会っていないという。
ベルナデッタは知っている。それは愛がないからではなく、本当に彼女が忙しいことと自分が彼女の自信を削いできたことが原因だと。ベルナデッタはシュテルの乳母になってすぐこの王妃セレーネに、シュテルがあなたを嫌っていると告げ始めた。本当はむしろ母に会いたいと言っていたのだが、セレーネにそう嘘をつくと面白いほどに効果があった。
セレーネは王妃としては完璧だったが、母としては未熟だった。今まで王女たちに対しても母として見守ることができなかった罪悪感からか、シュテルが嫌っているという嘘はすんなり信じた。それでも何度か直接会いに行こうとしたこともあったが、ベルナデッタは得意の話術でそれを止めた。
馬鹿な女だ。他人の言葉を信じて、自分の子供にすら会いに行かないとは。ベルナデッタはいつもそう思い、セレーネを見下していた。
澄ました顔をしながらも、話を聞いてどんどん自信が失われていったのだろう。セレーネは同時に第二王女と会う頻度も減っているようだった。第一王女は常に何かしらの問題を引き起こしたり、逆に英雄と称えられるような功績を重ねていたりしているようだったから、話す機会は減らなかっただろうが。
ベルナデッタはあの王女たちのことを思い返す。
本当に最悪な王女たちだった。第二王女は突然何の前触れもなく、私のシュテルに接触してお茶をしようなどと誑かした。自分が第二王女の卑劣さを教えている時にシュテルが反発してきたことには、途方もない怒りがこみ上げてきた。今まで自分に逆らうことなんてほとんどなかったのに。
その上シュテルに私が嫌いだと嘘をつかせるなんて、幼いくせに本当に下劣な女だ。シュテルを自分の物にしていい気になっているようだから、絶対に後で仕返しをしてやる。
第一王女は突然現れたかと思うと、あろうことか王女とは思えない品のない言葉遣いでこの私を罵り、廊下を引きずり回したのだ。すれ違う使用人たちの困惑した顔を思い出して、再び怒りがこみ上げてくる。そして私を地下の牢獄に投げ込み、ゴミを見るような目を向けながら去って行った。この屈辱は絶対に晴らす。
とにかく、セレーネなどに自分が負けるはずがない。上手く言い逃げて、シュテルの乳母でなくなったとしても城には残ってやる。そしてまたシュテルと話す機会を待つのだ。あの憎らしい第二王女に何を吹き込まれたのかは知らないが、私の可愛いシュテルなら、私の想いを受け止め、許してくれるだろう。
ベルナデッタはふ、と勝利を確信して笑いそうになり、慌てて我慢する。ここは王女たちの暴走に巻き込まれ、罪を被せられた可哀そうな乳母を演じなければならない。
「シュテル様が家族を嫌っていることを案じ、距離を置かせようとしたのです。確かに、侍女がシュテル様の名を騙り過激な手紙を作って送り付けるという悪質な事件は、しっかり侍女の管理ができていなかった私にも責任があります。しかし、全てはその手紙に対して怒りのままに私とシュテル様を攻撃しようとしてきたミティア殿下に非があるのです!ミティア殿下の大切な腕に痣を付けてしまったことは後悔しています……しかし、あちらがナイフを握っていた以上、私も焦ってしまい、手加減をすることができませんでした」
ベルナデッタは責任をミティアに押し付けながら、自分がした明らかな証拠も揉み消そうとする。
セレーネはそんな彼女に怒るわけでも同情するわけでもなく、淡々と質問する。
「侍女はあなたに金を渡されて指示されたことだと言い、シュテルやミティアはあなたがナイフを握って攻撃してきたと言っていました。それにエステルはあなたがミティアにナイフを振り被っているところを目撃したとか」
「そんな……あの侍女がそんなことを⁉自分の罪を軽くするために…そんな子だったなんて。……王妃殿下、シュテル様はミティア殿下に脅されているのです。恐怖で本当のことを言えないのかもしれません。エステル殿下も、私がナイフを取り上げたところを目撃して、勘違いされたのでしょう。扉の近くにいた兵士たちに聞いてみてください、私がミティア殿下を止めようとした声が聞こえたはずです」
「兵士たちは何故そんな状況になっても動かなかったのですか?」
「ミティア殿下は最初普通に部屋の中に入ってきたのですが、シュテル様に近付くと突然ナイフを突きつけてきたのです。兵士が慌てて部屋に入ってきたところ、今すぐ部屋から出ないとシュテル様を刺すと脅し、兵士たちを外に立たせました。誰かを助けに呼んで欲しかったのですが、気が動転していたのかもしれませんね……」
ベルナデッタはかなり良い言い訳だと心の中で笑った。牢屋に閉じ込められた後、侍女からこう言うように指示された紙を受け取った。その紙ももう処分したようなので見つかる心配はない。あの兵士たちがここまで気を利かせてくれるなんて思わなかった。まあかなり高く金は積んであるし、あちらもバレるとひとたまりもないから必死なのだろう。
「ミティアは部屋に来る前に、侍女へエステルを呼ぶよう頼んでおいたそうですが…暴走して犯罪紛いのことをしようとするミティアがそんなことをする理由はあるのでしょうか?」
「……私も詳しいことはわかりませんが、こういう事態になることを見越してわざと侍女にそう頼んだのでは?全て後先考えずに行動したとは思えませんし、こうして私に罪を被せたかったのかもしれません。…ミティア殿下がこんなことをするなんて…王妃殿下、私が悪かったのでしょうか?侍女の様子に気付かず、シュテル様を大切に想い過ぎた故に、こんな事件が……」
被害者ながらも他人のことを想うことのできる、優しい乳母。この演技を嘘と思えるわけがない。それほどまでにベルナデッタは自信があった。
セレーネは無表情でこちらを見つめているが、きっと心の中では私の慈悲深さに感動しているだろう。
だが、まだセレーネはベルナデッタに許しの言葉を吐かなかった。
「……それと、シュテルは家族を嫌いになってなどいない。あなたによって遠ざけられていたのだという証言がありましたが」
……本当に煩わしい王女だと、ベルナデッタは舌打ちをしたくなる。しかしこの程度で自分を追い詰めた気でいるなら、やはりおめでたい王女だ。
ベルナデッタは目を伏せ、ぽろりと目から一粒の涙を流す。
「それに関しては……本当に申し訳ございません。今は覚えていらっしゃらないようですが、シュテル様が今よりもっと幼い頃は本当によく家族に会いたくないと言っていました。しかし、最近は心変わりなさったようです。それを知らない私がミティア殿下に対して神経質になり…今回のような事件が起こってしまったようです」
「……そうですか。あなたの言い分はわかりました」
(――勝った)
ベルナデッタは口元をにやけるのを抑えるので必死だった。さあ、無能なセレーネよ、どちらを選ぶ?先日も問題を起こしていたような王女と、王子の乳母として五年間真面目に城に仕え、完璧な証言が存在するこの私。いくら子供が可愛いからといっても、王妃として見て見ぬふりをするわけにはいかないだろう?
それに私の話を受け入れることになったら、暴走した王女から王子を守った乳母として名もあがる。ただの乳母といえど、今後城内での地位は揺るぎないものになるだろう。そうしたら、自分とシュテルを阻むものは何もない。
ベルナデッタは高笑いしたくなるのを堪えて、セレーネからの返答を待った。
「では、今回の事件とは少し関係ない質問をしてもよろしいでしょうか」
「……はい、もちろんです」
関係ない質問?何のことだとベルナデッタは眉を顰めた。まあどんなものがきても自分なら受け答えられると、余裕の笑みで質問を待つ。
「ベルナデッタ…あなたがシュテルの乳母として働きたいと言った理由は何だったでしょうか?」
「……五年前にも申し上げた通り、私の一人息子は幼くして病気で亡くなりました。一方私の主人はそれを気にせず毎日毎日知らない女を家に連れ込みました……。私は息子の死に絶望し、身勝手な夫の振る舞いにも耐えきれなかった……そんな時に第一王子殿下の乳母を探しているという話を聞き、自ら申し出たのです。夫から逃げたい思いもありましたが、何より育てきることのできなかった息子を想い、王子殿下を幸せにしたいと感じたのです」
ベルナデッタは当時のことを思い出してグッと唇を噛んだ。
息子の死にも興味がないというように、酒と女に溺れていたあの男。どうして昔はあんな男を好きだったのか。ああ、あの子を思い出すと、シュテルに会いたくなる。今度は死なせない、私が守ってあげるのよ……!
「そうです。私はあなたのその身の上に同情し、あなたならシュテルを不幸にすることはないと思い、シュテルの世話を任しました。ですが……それが嘘ならあなたを乳母にする気なんて一つもありません」
「………は?」
耳を疑った。この女は何を言っているんだ?これが作り話だとでも言うのか。夫に捨てられ子供を失った悲しみを……何一つ経験していないこの女が嘘だと言ったのか‼
ベルナデッタは一気に怒りがこみ上げ、冷静さを失った。
「嘘……何が嘘だと言うのですか?息子を失った私の悲しみを嘘だと言うなら、いくら王妃殿下でも許しません!」
護衛騎士たちがセレーネを庇うようにして、ベルナデッタの前に剣を突きつける。それに怯えてベルナデッタはいくらか冷静になるが、その心には不安が生まれていた。
「あなたは以前息子を何よりも大切にしていたと言っていましたが……大切なら何故放っておいたのです?」
「……え」
「少し調べさせていただきましたよ。といってもモデナ子爵家の使用人からいろいろ話を伺った程度ですが。少しあなたのプライベートに踏み込んだ話を致しますが、構いませんね?」
「……はい。もちろん、です」
プライベートな話とはどういう意味だろうか。よくわからないがここで拒否すると要らぬ疑いがかかることは確実だ。しかし何故?自分は何も間違ったことはしていないはずなのに、何故悪い予感がするのだろう。何を考えているのかわからないセレーネの瞳が、どんどん恐ろしいものに見えてくる。
「あなたは若い頃子爵に一目惚れし、婚約を申し込んだらしいですね。利益のある話にモデナ家は喜んでその婚約を受け入れ、あなたはめでたく子爵夫人になった、と」
ベルナデッタは冷たい目でセレーネを見つめる。何が言いたいんだこの女は。いきなり人の昔話を聞かせてきて…確かにモデナ家の古い使用人ならこのことを知っているだろう。しかし五年前、王家には余計なことを言わないように釘を刺していたのに。それに「めでたく子爵夫人になった」だと?その後の悲惨な生活を知っておいてよくもそんな残酷なことが言える。
セレーネはそんなベルナデッタの心情など知ったことではないというふうに続ける。
「しかし子爵はあなたに冷たくあたり、夜出かけたまま帰らないこともあった。そして子供が生まれた後もそれは変わらなかった。子爵の愛を求めるのに必死だったあなたは、たった一人の幼い息子を使用人に任せきりにしていた。使用人たちが子供を気に掛けるように進言しても、余計なことを言うなと怒鳴ってばかりだったようですね。そして子供が高熱を出した日も、あなたの態度は変わらなかった」
「……そ、れは」
やめてくれ。そう言おうとしたのに喉が枯れたように上手く声が出せない。既にベルナデッタは先ほどの余裕が嘘のように動揺していた。
「明らかにただの風邪ではない、異様な病状に使用人たちはすぐに気が付きました。そして彼らは医者を呼んでくれとあなたに頼み込みました。子爵が家を空けていたのであなたにしか頼めなかったのでしょう。しかしあなたは面倒くさがり、何度お願いされても放っておけの一点張り。使用人たちも料理を作ったり薬を買ってみたりして手を尽くしましたが、その努力も虚しく子供は亡くなってしまった」
「やめて……ください」
「子供が亡くなった後、子爵はあなたにさらに冷たく接するようになり、、あなたは以前にも増して物や使用人に当たるようになった。そしてある日あなたは王子の乳母になると言って子爵家を出て行きました。その際に息子が亡くなった原因は未知の病気ということにして、使用人には王家に本当のことを言うなと告げて。…使用人から聞いた話は以上です」
「なんで……」
「今のモデナ家は酷い有様のようですね。子爵はまともに仕事をする気はなく、子供がいないので一族間で連日相続騒ぎ……今は使用人たちのおかげでなんとか回っているようですが、疲れ切った彼らに自分たちを見捨てた夫人を配慮する余裕などなかったようです」
「黙れ……」
まるで責任が私にあるような言い方をして。全てはあの男が私を愛さなかったのが悪いのに。
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「貴様……!」
「良いのです。ベルナデッタ、言いたいことがあるのなら言いなさい」
「……私は気付いたのよ、本当に愛するべきだったのはあんな男じゃなくてあの子だったんだって。でも気付いた時には全てが遅かった。死んでしまいたいと思うほどに後悔した。だからこそ、シュテルに会った時に大切にしよう、守り抜こうと誓ったのに……」
ブツブツと恨みを吐き出すように喋るベルナデッタを、セレーネは深く青い瞳で見つめる。ベルナデッタはそんなセレーネに怒りが収まらなかった。
「その結果がこれですか⁉ありもしない罪を押し付けられ、消してしまいたい過去を掘り返され……!あなたは何がしたいのよ‼セレーネ・ノヴァ・ロワイヤル!!」
今にもセレーネに飛び掛かりそうなベルナデッタを、今度こそ騎士たちは抑えつける。床に体を押し付けられる屈辱に耐えきれず、セレーネをキッと睨み上げる。だがセレーネはそれに何の感情も表さず、美しい顔で負け犬のように喚く女を見下ろすだけだった。
「ベルナデッタ、あなたはまだ勘違いしているようですね。あなたはシュテルを愛していると思い込んでいるようでしたが、実際は自分の過去の鬱憤を晴らすためにシュテルを利用しているだけです。あなたの眼に映っているもの、あなたが可愛いと思っているものはシュテルではありません。我が身だけなのです」
ベルナデッタが信じられない気持ちで呆然としていると「話は以上です」というセレーネの声とともに部屋の扉が開き、兵士たちが入って来る。兵士たちはベルナデッタを無理やり連れて行こうとするが、ベルナデッタはそれを拒むように声を上げる。
「殿下!私は本当に何もしていません、こんな扱いはあんまりです‼」
「ああ、言い忘れていましたがあなたに紙を渡した侍女と、それを指示した兵士たちは既に捕らえられており、自白しています。想像以上に余罪が多いようで、尋問している者は手を焼いているそうですね」
ベルナデッタは鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。
(この女……今まで全て知った上で私を喋らせていたの⁉)
途端に目の前のセレーネが、ベルナデッタにとって無能な母親から悪魔のような女へと認識が変わった。人生で一度も感じたことのないような悔しさが胸を支配する。
「セレーネ‼今まで私の行動に気付かなかったくせに澄ました顔をするな!見下しやがって、お前も私と同じで子供の世話なんてできていなかったくせに……地獄に落ちればいい‼」
もはや取り繕う必要のなくなったベルナデッタの本性はこの上なく醜かった。兵士から「黙れ‼」と怒鳴られてもこの世の全てを恨むような罵声が止むことはなかった。対してセレーネはそんなベルナデッタに対して、最初から最後まで眉一つ動かすことはなかった。ただその青い瞳で、かつて自分が同情し信頼していたはずの乳母が連れていかれるのを見つめていた。
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乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
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