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────1章【久隆と咲夜】
□1「生徒会への偵察」
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『手を取り合うこと』
それはきっと、難しく見えて簡単なこと
だから、僕らが架け橋になろう
今こそ手を取りあって新しい学園を目指そう
僕らはずっとゲームに怯えてきた
そんな学園生活に終止符を打とう
僕たちが証明するから
内部生も外部生も関係ない
仲良くなれること
絆を築けることを
『片倉 葵、応援演説の一説より』
***
久隆はぼんやりと葵の応援演説を眺めていた。何年も続いたこの学園の闇が今、払われようとしている、久隆にとっては恋のライバルになるはずだった者によって。まさかこんな日が来るなんて、想像もしていなかった。
久隆は中庭が見える二階の教室のベランダで手すりに頬杖をついて見下ろしている。いつの間にか紅葉している中庭の木々に気づき思う。たった数か月だというのに、新緑が紅葉するように、自分の置かれている状況もたった数か月で大きく変わった。
「久隆」
「うん?」
久隆が名前を呼ばれて振り返ると、紙パックの飲み物を二つ手にして教室のベランダに出てくる咲夜の姿が目に入る。
「まだらだね」
秋になったばかり、紅葉はたしかに、まばらだ。
「これからどんどん色づいていくよ」
と久隆が飲み物を受け取りつつそう返すと、
「紅葉狩り行きたいな」
と、隣に立つ彼が手すりにもたれた。
「みんなで行こうか」
と久隆が提案すると、
「うん」
と彼は頷いた。
秋はまだ始まったばかり。生徒会立候補選に学園祭。いままでなら、ただの学校行事に過ぎなかったことが、友人や恋人ができたことで楽しみとなった。
「咲夜」
「うん?」
「楽しくなりそうだな」
久隆は言って微笑んだ。
****♡Side・葵
────K学園第二校舎にて。
夏休みが終わり、二学期に入った。十一月に行われる生徒会役員選に向けて、選挙活動が始まろうとしている。
「まずは鶴城先輩が立候補するかを確認するところからだね」
葵は咲夜が作成した計画書を手に、彼と共に生徒会室へ向かおうとしていた。
「中学の時も会長だったし、立候補するんじゃないのかな?」
と、同行した咲夜が予想を立て、
「問題は、風紀だよね」
と葵は返す。
「そうだね。来年も委員長がイイ人だといいのだけど」
コンコンと生徒会室をノックすると、中からお目当ての鶴城が顔を出した。
「よう、卑猥コンビ。どうした?」
鶴城は短く刈った黒髪に、筋肉質の体型。みるからに体育会系という雰囲気だ。
「先輩に用があって来たのー」
そう葵が言うと、
「入れ、入れ」
と快く中に、二人を招き入れてくれた。
「お、有名人」
中に入ると三年生の風紀委員長、美崎が居て、
「ニュース観たぞ?」
と、続ける。
「あ、あれはまあ」
口ごもりつつ葵は先輩たちの向かい側のソファーに腰かけ、苦笑いをした。
「大里に、片倉に本気になるなよって釘刺したんだがなぁ」
美崎は腕を背もたれに置き、足を組んでいる。彼は、金髪で細身な美人だ。
は?!
なんの話?!
「な、何?それ。何時のこと?」
「確か六月だったか?片倉が内部生に絡まれてるって、風紀に苦情に来たんだよ」
うっそ!
あの時そんなことがあったんだ。
「俺はてっきり、大里が大崎に振られて自暴自棄になったのかと思ったよ」
と、美崎。
「いやいや。色々事情があって」
葵は言葉を濁す。
「ほう」
興味津々な彼に、
「おいおい、その辺にしといてやれよ」
と、鶴城が横から助け船を出してくれた。
「で、俺に用があるんじゃないのか?」
と、続けて。
「来年も生徒会入るの?鶴城先輩」
葵は、単刀直入に聞いてみる。
「ああ。まだやり残したことだらけだしな」
「マジ?!やった。これ!」
と葵が計画書を鶴城に押しつけると、
「ちょっ!葵、説明もなしに」
あまりに雑なので咲夜が慌て、美崎が笑っていた。
「お、後援会か。有り難いな」
「で、俺たちに応援演説させて欲しいんだけど」
「それは構わないが、これによると大里と大崎も一緒だが大丈夫なのか?」
「あー。それも話題作りでいいんじゃない?」
葵は大里が”気にしないと”言っていたことを思い出し、そんな風に答える。
「おけ。じゃあ、任せる。これは何かあった時の為に貰っとくよ」
鶴城は計画書を軽く目の高さに上げて。
**
二人はホッとして生徒会室を出た。
「先輩は話のわかる人で助かるね」
と、咲夜。
「あの二人ってさ、付き合ってんのかな?」
と、葵は別のことを考えている。
「え、それはないんじゃない?」
「そっかぁ」
”昼休みに生徒会室で二人きりって、何かありそうなんだけどなぁ”と葵は思っていた。
「早く久隆たちのとこいこッ」
「そだね。今日のお弁当どんなのだろ?」
「楽しみだねッ」
葵と咲夜は手を繋いで待ち合わせ場所へと向かうのだった。
それはきっと、難しく見えて簡単なこと
だから、僕らが架け橋になろう
今こそ手を取りあって新しい学園を目指そう
僕らはずっとゲームに怯えてきた
そんな学園生活に終止符を打とう
僕たちが証明するから
内部生も外部生も関係ない
仲良くなれること
絆を築けることを
『片倉 葵、応援演説の一説より』
***
久隆はぼんやりと葵の応援演説を眺めていた。何年も続いたこの学園の闇が今、払われようとしている、久隆にとっては恋のライバルになるはずだった者によって。まさかこんな日が来るなんて、想像もしていなかった。
久隆は中庭が見える二階の教室のベランダで手すりに頬杖をついて見下ろしている。いつの間にか紅葉している中庭の木々に気づき思う。たった数か月だというのに、新緑が紅葉するように、自分の置かれている状況もたった数か月で大きく変わった。
「久隆」
「うん?」
久隆が名前を呼ばれて振り返ると、紙パックの飲み物を二つ手にして教室のベランダに出てくる咲夜の姿が目に入る。
「まだらだね」
秋になったばかり、紅葉はたしかに、まばらだ。
「これからどんどん色づいていくよ」
と久隆が飲み物を受け取りつつそう返すと、
「紅葉狩り行きたいな」
と、隣に立つ彼が手すりにもたれた。
「みんなで行こうか」
と久隆が提案すると、
「うん」
と彼は頷いた。
秋はまだ始まったばかり。生徒会立候補選に学園祭。いままでなら、ただの学校行事に過ぎなかったことが、友人や恋人ができたことで楽しみとなった。
「咲夜」
「うん?」
「楽しくなりそうだな」
久隆は言って微笑んだ。
****♡Side・葵
────K学園第二校舎にて。
夏休みが終わり、二学期に入った。十一月に行われる生徒会役員選に向けて、選挙活動が始まろうとしている。
「まずは鶴城先輩が立候補するかを確認するところからだね」
葵は咲夜が作成した計画書を手に、彼と共に生徒会室へ向かおうとしていた。
「中学の時も会長だったし、立候補するんじゃないのかな?」
と、同行した咲夜が予想を立て、
「問題は、風紀だよね」
と葵は返す。
「そうだね。来年も委員長がイイ人だといいのだけど」
コンコンと生徒会室をノックすると、中からお目当ての鶴城が顔を出した。
「よう、卑猥コンビ。どうした?」
鶴城は短く刈った黒髪に、筋肉質の体型。みるからに体育会系という雰囲気だ。
「先輩に用があって来たのー」
そう葵が言うと、
「入れ、入れ」
と快く中に、二人を招き入れてくれた。
「お、有名人」
中に入ると三年生の風紀委員長、美崎が居て、
「ニュース観たぞ?」
と、続ける。
「あ、あれはまあ」
口ごもりつつ葵は先輩たちの向かい側のソファーに腰かけ、苦笑いをした。
「大里に、片倉に本気になるなよって釘刺したんだがなぁ」
美崎は腕を背もたれに置き、足を組んでいる。彼は、金髪で細身な美人だ。
は?!
なんの話?!
「な、何?それ。何時のこと?」
「確か六月だったか?片倉が内部生に絡まれてるって、風紀に苦情に来たんだよ」
うっそ!
あの時そんなことがあったんだ。
「俺はてっきり、大里が大崎に振られて自暴自棄になったのかと思ったよ」
と、美崎。
「いやいや。色々事情があって」
葵は言葉を濁す。
「ほう」
興味津々な彼に、
「おいおい、その辺にしといてやれよ」
と、鶴城が横から助け船を出してくれた。
「で、俺に用があるんじゃないのか?」
と、続けて。
「来年も生徒会入るの?鶴城先輩」
葵は、単刀直入に聞いてみる。
「ああ。まだやり残したことだらけだしな」
「マジ?!やった。これ!」
と葵が計画書を鶴城に押しつけると、
「ちょっ!葵、説明もなしに」
あまりに雑なので咲夜が慌て、美崎が笑っていた。
「お、後援会か。有り難いな」
「で、俺たちに応援演説させて欲しいんだけど」
「それは構わないが、これによると大里と大崎も一緒だが大丈夫なのか?」
「あー。それも話題作りでいいんじゃない?」
葵は大里が”気にしないと”言っていたことを思い出し、そんな風に答える。
「おけ。じゃあ、任せる。これは何かあった時の為に貰っとくよ」
鶴城は計画書を軽く目の高さに上げて。
**
二人はホッとして生徒会室を出た。
「先輩は話のわかる人で助かるね」
と、咲夜。
「あの二人ってさ、付き合ってんのかな?」
と、葵は別のことを考えている。
「え、それはないんじゃない?」
「そっかぁ」
”昼休みに生徒会室で二人きりって、何かありそうなんだけどなぁ”と葵は思っていた。
「早く久隆たちのとこいこッ」
「そだね。今日のお弁当どんなのだろ?」
「楽しみだねッ」
葵と咲夜は手を繋いで待ち合わせ場所へと向かうのだった。
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