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3話 その男、彼女溺愛につき
4・初めてのデート
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「悪いところあったら直すから」
縋る彼が可愛くて、悶絶したのは秘密だ。
彼の胸の中で思ったことと言えば……
──滅茶苦茶良い匂いがする!
どこの香水使ってるんだろう?
とにかく良い匂いがしたということだ。
「だって、半年も経つのに何の進展もしてない」
と不満を漏らすと、
「今度の休み空いてる?」
と問われた。
「空いてる! どこか連れて行ってくれるの?」
テンションが上がったのは言うまでもない。
「その前に……連絡先知りたいんだけれど」
その後、仲直りをした。数時間……いや一時間もしないうちに『元サヤ』。
むしろ、ここがスタート地点だったと言っても過言ではないだろう。
初めてのデートは遊園地。
待ち時間の長いところは別れる確率が高いとは言うが、彼のことを知りたいと思っていた悠はその時間を有効に使えたと思っている。
たくさんの話しをして、初お泊り。
「蓮、空いたよ」
風呂から出てダイニングリビングに向かうと、キッチンで明日の弁当のおかずの準備をしようとしている蓮がいた。
「ありがとう」
垂れ目の彼が、ニコッと笑う。
「ねえ、蓮」
「うん?」
髪を拭きながら彼に近づくと、
「明日のお昼は外で食べようよ」
「いいけど、どうしたの急に」
彼が悠の提案に反対したことは一度もない。
「蓮とゆっくりお話ししたいなと思って」
と答えると、
「そっか」
と言って、ちゅっと口づけをくれる。
「それでね。仕事終わったら、カラオケ行こう」
「え?」
「三多くんと蒼姫くんを誘って」
”打倒! 三多と蒼姫”と決意を新たにし、悠は決断力のポーズを決めた。
「何か良からぬことを考えてる?」
食材を片付けながら、苦笑する蓮。
「カラオケ勝負! もちろん彼らに拒否権なんかないんだから!」
「止めた方が……」
「三多くんたちの下手くそな歌を笑ってやるの!」
「いや……そもそもあいつらは……聞いてないね」
蓮は悠に向き直ると、
「お風呂行ってくるね」
と肩を竦める。
ポンポンと悠の頭を撫でて、風呂へ向かう蓮。
悠はそんな彼の背中を見送る。
悠はなんとなく寂しさを感じながらリビングへ。
髪を乾かしながら、初めてのお泊りの時のことを思い出す。
「本当に良いの?」
「いいの! 今日は一緒にいたいの」
本当にそれだけのつもりだったのだ。
遠慮がちな蓮。
会社では社長とおかしなやり取りをし、三多や蒼姫と仲が良く、いつも何やら話をしている。自分は恋人なのになんだか距離が遠いように感じていた。
一日話をして知ったのは、彼が控えめな人だということ。
手を繋げば喜ぶし、話しかければ嬉しそうに笑う。
全身で好きを伝えてくるが『男』を感じない。紳士なのだ。
そんな彼のもっと本能的な部分を知りたいと願った。
自分だけの特別な部分が見たかったのである。
縋る彼が可愛くて、悶絶したのは秘密だ。
彼の胸の中で思ったことと言えば……
──滅茶苦茶良い匂いがする!
どこの香水使ってるんだろう?
とにかく良い匂いがしたということだ。
「だって、半年も経つのに何の進展もしてない」
と不満を漏らすと、
「今度の休み空いてる?」
と問われた。
「空いてる! どこか連れて行ってくれるの?」
テンションが上がったのは言うまでもない。
「その前に……連絡先知りたいんだけれど」
その後、仲直りをした。数時間……いや一時間もしないうちに『元サヤ』。
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「ありがとう」
垂れ目の彼が、ニコッと笑う。
「ねえ、蓮」
「うん?」
髪を拭きながら彼に近づくと、
「明日のお昼は外で食べようよ」
「いいけど、どうしたの急に」
彼が悠の提案に反対したことは一度もない。
「蓮とゆっくりお話ししたいなと思って」
と答えると、
「そっか」
と言って、ちゅっと口づけをくれる。
「それでね。仕事終わったら、カラオケ行こう」
「え?」
「三多くんと蒼姫くんを誘って」
”打倒! 三多と蒼姫”と決意を新たにし、悠は決断力のポーズを決めた。
「何か良からぬことを考えてる?」
食材を片付けながら、苦笑する蓮。
「カラオケ勝負! もちろん彼らに拒否権なんかないんだから!」
「止めた方が……」
「三多くんたちの下手くそな歌を笑ってやるの!」
「いや……そもそもあいつらは……聞いてないね」
蓮は悠に向き直ると、
「お風呂行ってくるね」
と肩を竦める。
ポンポンと悠の頭を撫でて、風呂へ向かう蓮。
悠はそんな彼の背中を見送る。
悠はなんとなく寂しさを感じながらリビングへ。
髪を乾かしながら、初めてのお泊りの時のことを思い出す。
「本当に良いの?」
「いいの! 今日は一緒にいたいの」
本当にそれだけのつもりだったのだ。
遠慮がちな蓮。
会社では社長とおかしなやり取りをし、三多や蒼姫と仲が良く、いつも何やら話をしている。自分は恋人なのになんだか距離が遠いように感じていた。
一日話をして知ったのは、彼が控えめな人だということ。
手を繋げば喜ぶし、話しかければ嬉しそうに笑う。
全身で好きを伝えてくるが『男』を感じない。紳士なのだ。
そんな彼のもっと本能的な部分を知りたいと願った。
自分だけの特別な部分が見たかったのである。
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