23 / 47
3話 その男、彼女溺愛につき
6・記憶のない時間
しおりを挟む
悠は、ベッドでクッションを背もたれ代わりに座る蓮の上に乗り上げると彼の首に腕を絡めた。
わき腹から背中へ向かう彼の両手が熱を持っている。
愛の行為は映画のようには美しくはない。それでもムードを大事にしてくれる彼が大好きだった。
灯りを落とした間接照明。
衣擦れの音。
静かに流れる音楽。
身体の線をなぞるように蓮の手が上下した。
悠はそんな彼に唇を寄せる。
会社の様子では想像できないほど、彼の愛撫は丁寧。
初めての日のことを何度も思い出してしまうのは、この身体に刻むようにゆっくりと植え付けられたから。
「蓮……」
切ない声を漏らし、悠は何度も彼に口づけた。
こんな姿を元彼女にも見せていたのかと思うと、いささか悔しい。自分は彼が初めてだったのに。
「蓮の初めて、欲しかったな……」
と耳元で囁くと、彼は顔を赤らめ悠を見つめた。
「俺の初めて?」
”そういう意味の?”というように尋ねる彼が可愛い。
「うん。そっちの初めて」
蓮はちゅっと悠に口づけると、
「女性はそういうの、嫌がるんじゃないの?」
と問う。
「あれは、そういう人たちの言動が気持ち悪いのであって、人によるでしょう?」
と彼の髪を撫でた。
蓮は回した腕にぎゅっうっと力を入れると、悠の胸に顔を埋める。
「なあに? 急に可愛いことして」
と悠。
よしよしと後頭部を撫でれば、甘えたように胸にすりすりしている。
「お眠《ねむ》でも、寝かせてあげないよ?」
「そんなんじゃない」
くぐもった声と熱い息。
自分にだけ見せてくれる彼の全てが好きだ。
──甘えん坊の蓮も可愛いんだけれどね。
本人眠たい時の自分、覚えてないのよねえ。
蓮の髪を撫でながら、悠はふとお眠《ねむ》の彼のことを思い出す。
『悠たん。ぎゅってしよ』
ベッドに座る悠の腰に腕を回したと思ったら、そのまま寝てしまうのだ。
非常に困る。
だが、眠い時は本音を聞かせてくれる時でもある。
聞けば素直に答えてくれるのだ。
そう、初デート前のあの時も。
『蓮っていつも社長のことパイパンって言うけど、好きなの?』
『んー? 社長が?』
──いや、待て。
何故、社長の好悪なんか聞くのよ。
そっちじゃないわよ!
『パイパンが』
『うん、好き』
蓮の返事で悠の決意が固まったことは言うまでもない。
そして初めてのあの日、
『えっと……』
と目を泳がせる彼に、
『蓮が好きって言ったから』
とカミングアウトすれば、
『は?! 俺、そんなこと言ったの⁈』
と卒倒しそうな勢いで彼はベッドに額を打ち付けた。
ケガがなくて何より。
それ以来、時々蓮は、
『俺、昨日なにか変なこと言ってなかった?』
と確認してくるが、
『大丈夫、いつも変なこと言ってるから』
と返すと、彼は両手で顔を覆うのだった。
わき腹から背中へ向かう彼の両手が熱を持っている。
愛の行為は映画のようには美しくはない。それでもムードを大事にしてくれる彼が大好きだった。
灯りを落とした間接照明。
衣擦れの音。
静かに流れる音楽。
身体の線をなぞるように蓮の手が上下した。
悠はそんな彼に唇を寄せる。
会社の様子では想像できないほど、彼の愛撫は丁寧。
初めての日のことを何度も思い出してしまうのは、この身体に刻むようにゆっくりと植え付けられたから。
「蓮……」
切ない声を漏らし、悠は何度も彼に口づけた。
こんな姿を元彼女にも見せていたのかと思うと、いささか悔しい。自分は彼が初めてだったのに。
「蓮の初めて、欲しかったな……」
と耳元で囁くと、彼は顔を赤らめ悠を見つめた。
「俺の初めて?」
”そういう意味の?”というように尋ねる彼が可愛い。
「うん。そっちの初めて」
蓮はちゅっと悠に口づけると、
「女性はそういうの、嫌がるんじゃないの?」
と問う。
「あれは、そういう人たちの言動が気持ち悪いのであって、人によるでしょう?」
と彼の髪を撫でた。
蓮は回した腕にぎゅっうっと力を入れると、悠の胸に顔を埋める。
「なあに? 急に可愛いことして」
と悠。
よしよしと後頭部を撫でれば、甘えたように胸にすりすりしている。
「お眠《ねむ》でも、寝かせてあげないよ?」
「そんなんじゃない」
くぐもった声と熱い息。
自分にだけ見せてくれる彼の全てが好きだ。
──甘えん坊の蓮も可愛いんだけれどね。
本人眠たい時の自分、覚えてないのよねえ。
蓮の髪を撫でながら、悠はふとお眠《ねむ》の彼のことを思い出す。
『悠たん。ぎゅってしよ』
ベッドに座る悠の腰に腕を回したと思ったら、そのまま寝てしまうのだ。
非常に困る。
だが、眠い時は本音を聞かせてくれる時でもある。
聞けば素直に答えてくれるのだ。
そう、初デート前のあの時も。
『蓮っていつも社長のことパイパンって言うけど、好きなの?』
『んー? 社長が?』
──いや、待て。
何故、社長の好悪なんか聞くのよ。
そっちじゃないわよ!
『パイパンが』
『うん、好き』
蓮の返事で悠の決意が固まったことは言うまでもない。
そして初めてのあの日、
『えっと……』
と目を泳がせる彼に、
『蓮が好きって言ったから』
とカミングアウトすれば、
『は?! 俺、そんなこと言ったの⁈』
と卒倒しそうな勢いで彼はベッドに額を打ち付けた。
ケガがなくて何より。
それ以来、時々蓮は、
『俺、昨日なにか変なこと言ってなかった?』
と確認してくるが、
『大丈夫、いつも変なこと言ってるから』
と返すと、彼は両手で顔を覆うのだった。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる