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1章『いじめてあげる』
16:自分の居場所
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****♡Side・副社長(皇)
──塩田と一緒に暮らす……同棲?
て、ことは帰ったら毎日、家に塩田が居るの?
どうしよう……嬉しい。でも……。
「本気で言ってる?」
「は?」
皇は塩田を見つめ、問いかける。
「やっぱり、嘘とか言わない?」
「言わない」
彼は否定するが意地悪な塩田のことだ、簡単にその言葉を信用することはできない。
「明日になったら、気が変わったとか」
「言わん」
「あッ……ちょっ」
あまりにもしつこかったのだろうか、ムッとした彼にぐいっと引っ張り上げられ、泡がついたまま浴槽へ。
「危ないって」
強引な彼の行動に抵抗すれば、転倒する恐れもあり怪我をし兼ねない。皇は彼に引っ張られるまま、その足の間に腰を下ろした。
「優一、毎日一緒にいよう?」
「うん……」
微笑んだつもりだったが、嬉しさに涙が溢れ、雫となって湯舟に落ちる。
「なんで泣くの」
「嬉しいから」
と返事をすれば、彼が後ろから優しく抱きしめてくれた。
珍しく優しい彼に戸惑う、皇。今日はなんだか彼の様子が、いつもと違って調子が狂ってしまう。
「泣くなよ」
といって、皇の首筋に吸い付く彼。
皇は我が身を抱きしめるその腕に手を添える。
「ずっと側にいてやるから」
**
「なんで、見えるところに痕つけるんだよ」
サーモンマリネを盛った皿をテーブルで待つ彼の前に差し出しながら、皇が文句を言うと、
「俺のだから」
とさらっと、甘いセリフを吐く彼。
──やっぱり、今日の塩田変だよ。
いつもは、そんなこと言わないくせに。
「ほんとに料理するんだな」
彼はテーブルの上で頬杖をつき、皇を見上げて。
手伝わなくて良いと言ったのは自分だ。決して彼が自ら王様のように何もしないでふんぞり返っているわけではない。
「こんなの料理のうちに入らないだろ」
材料を切って、マリネ用のドレッシングに漬け込んで、皿に盛っただけである。
聞けば塩田は生ものやさっぱりしたもの、シンプルなものが好きらしく、料理をしようと一応勉強はしたものの腕の振るい甲斐がない。
「しかも、俺の為だったりして」
彼は冗談のつもりだったようだが、
「そうだが」
と皇が次の料理をテーブルの上に並べながら返答すれば、彼は切なげな笑みを浮かべた。
「塩田?」
その表情の意味が分からず、皇は不安になる。重かったのだろうか、と。
しかし彼は、
「俺は、何もしてやれないのにな」
と呟くように、ため息とともに吐き出した。
確かに塩田は料理はしないし、車の免許もないし、高給取りでもない。でも、浮気もしないし、皇以外に見向きもしない。彼がしないことは皇にとって、彼にできないことを遥かに上回る価値があることをわかっていない。
「なんで、そんなこと言うんだよ」
皇は彼の傍らに立ち、じっと彼を見下ろして。
「事実を述べただけだ」
「塩田は、いっぱいしてくれてるよ」
と、泣きたい気持ちを堪えて抱きつけば、ぎゅっと抱きしめ返してくれる。
──独りぼっちだった、俺の傍にいつもいてくれるじゃないか。
俺の居場所はここだけだよ。
「塩田は、そのままでいい」
部屋には静かな音量で軽快な曲が流れていた。
──塩田と一緒に暮らす……同棲?
て、ことは帰ったら毎日、家に塩田が居るの?
どうしよう……嬉しい。でも……。
「本気で言ってる?」
「は?」
皇は塩田を見つめ、問いかける。
「やっぱり、嘘とか言わない?」
「言わない」
彼は否定するが意地悪な塩田のことだ、簡単にその言葉を信用することはできない。
「明日になったら、気が変わったとか」
「言わん」
「あッ……ちょっ」
あまりにもしつこかったのだろうか、ムッとした彼にぐいっと引っ張り上げられ、泡がついたまま浴槽へ。
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「なんで泣くの」
「嬉しいから」
と返事をすれば、彼が後ろから優しく抱きしめてくれた。
珍しく優しい彼に戸惑う、皇。今日はなんだか彼の様子が、いつもと違って調子が狂ってしまう。
「泣くなよ」
といって、皇の首筋に吸い付く彼。
皇は我が身を抱きしめるその腕に手を添える。
「ずっと側にいてやるから」
**
「なんで、見えるところに痕つけるんだよ」
サーモンマリネを盛った皿をテーブルで待つ彼の前に差し出しながら、皇が文句を言うと、
「俺のだから」
とさらっと、甘いセリフを吐く彼。
──やっぱり、今日の塩田変だよ。
いつもは、そんなこと言わないくせに。
「ほんとに料理するんだな」
彼はテーブルの上で頬杖をつき、皇を見上げて。
手伝わなくて良いと言ったのは自分だ。決して彼が自ら王様のように何もしないでふんぞり返っているわけではない。
「こんなの料理のうちに入らないだろ」
材料を切って、マリネ用のドレッシングに漬け込んで、皿に盛っただけである。
聞けば塩田は生ものやさっぱりしたもの、シンプルなものが好きらしく、料理をしようと一応勉強はしたものの腕の振るい甲斐がない。
「しかも、俺の為だったりして」
彼は冗談のつもりだったようだが、
「そうだが」
と皇が次の料理をテーブルの上に並べながら返答すれば、彼は切なげな笑みを浮かべた。
「塩田?」
その表情の意味が分からず、皇は不安になる。重かったのだろうか、と。
しかし彼は、
「俺は、何もしてやれないのにな」
と呟くように、ため息とともに吐き出した。
確かに塩田は料理はしないし、車の免許もないし、高給取りでもない。でも、浮気もしないし、皇以外に見向きもしない。彼がしないことは皇にとって、彼にできないことを遥かに上回る価値があることをわかっていない。
「なんで、そんなこと言うんだよ」
皇は彼の傍らに立ち、じっと彼を見下ろして。
「事実を述べただけだ」
「塩田は、いっぱいしてくれてるよ」
と、泣きたい気持ちを堪えて抱きつけば、ぎゅっと抱きしめ返してくれる。
──独りぼっちだった、俺の傍にいつもいてくれるじゃないか。
俺の居場所はここだけだよ。
「塩田は、そのままでいい」
部屋には静かな音量で軽快な曲が流れていた。
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