R18【同性恋愛】リーマン物語if1『いじめてあげる』

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2章『二人で探る幸せの場所』

10:元気がないのは誰のせい?

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****♡Side・塩田

「やっぱり、何か嫌な事あった?」
「なんで? ないよ」
「べったりだから」
 塩田がソファーに身を沈めると、彼は塩田の膝に跨り子供のように抱きついて来た。塩田の首に腕を回し、さっきから大人しくしている。そんな彼の背中を、ただ優しく塩田は撫でていた。
「イヤ?」
 顔をあげることなく、更にぎゅっと腕に力を入れる彼。
「イヤではないが、心配だ。社長に何かされたんじゃないかと」
と答えると、
「平気、神流川がいるから」
 神流川は社長秘書の名。
 皇は気づいていないが、彼もまた皇に想いを寄せている。自分が好かれていることに全く気付かないのは考え物だな、と塩田は思っていた。

「甘えたいのか?」
「うん」
「わかった」
 可愛すぎて襲いたくなるのを耐え、塩田は目を閉じる。
 誰かのために、こんなことをするのは初めてだ。甘えるのは子供だけの特権じゃない。要は甘え方が変わるだけだ。
 彼の香水の香りが、鼻先をくすぐる。ほんのり甘い香り。相手をイメージさせる香りは、人をドキドキさせることも出来るし、切なくもさせる。
 優しく背中を撫でていると、湯が張られたというお報せの音楽が流れた。
「風呂、行こうか。皇」
 彼が抱えているものを、自分は何も知らない。

「一緒に?」
と問われ、
「ああ」
と短く返す。
 今までは何にも興味が持てなくて知ろうともしなかったことを、知っていかなければならないと思った。別に自分の怠慢を悔いているわけではない。好きだから知りたいと思った。
 社長、課長、そして副社長である皇の間には、なにかあるらしい。
 それは雰囲気やちょっとした会話や態度でそう感じるのだが、具体的な何かを知っているわけではない。

「もう、ほんと今日はどうしたんだよ」
 身体を洗い終え湯船に浸かると、彼が黙って抱きついて来る。まるでサルやコアラのようだ。何かあったとしか思えず、ついそう口にしてしまうと、
「だめ?」
と聞かれる。

 ダメだと思ったことは一度もない。
 ただ、いつもと違うと心配になってしまう。

「何かあったんだろ?」
 皇は怒られた子供のように上目遣いで塩田を見つめると、
「俺は無力だと思って」
と、目を伏せた。

 仕事でなにか失敗でもしたのだろうか。仕事には大きく分けて二種類があると思う。人間相手か、それ以外か。
 皇の立ち居振る舞いは他社の重役たちからとても評判が良い。普段から一目置かれている人間は、少々対応で失敗したところで許されるものだと思っていた。
「仕事?」
「そう……なるのかな」
 その反応から塩田は、苦情係の課長に関係することなのだと察したのだった。
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