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────変わりゆく僕らの日常▼前編▼
■22「それは、振り出しに戻る」
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****♡side・咲夜
「ああ、義父さん?進路のことで話があるんだけど」
咲夜は、実父の遺品を漁りながら義父に電話をかける。何か手がかりがあるかもしれないと思っていた。
『くー』に繋がる何が。そう言えば『くー』の父は自分を引き取りたいと言っていたと、義父と母の会話を思い出す。もしその人物が大物なら、道が拓けるかも知れない。
「K学にいきたいんだ。うん、このままがんばれば推薦とれそうなの。いいよね?」
受験はまだ先だが、早めに言うことが重要だ。義父は進路に関して、咲夜の思うようにしなさいと言った。受かれば、また進学先の近くにマンションを借りてくれるとのこと。
葵が進学すれば実家から遠くなるため、その折りには話をつけて同居すれば良いとまで言ってくれた。もちろん馴染みのお手伝いさんに一緒に引っ越して貰えるよう交渉するとも。
「えッ!?」
電話を切って、ホッとしたのも束の間。
父のアルバムを見て驚愕した。
「全然気づかなかった」
隣に住む、この家のお手伝いさんをしてくれている初老の夫婦が、自分の実父の両親であったのだと、ここで初めて気づいた。二人がどんな思いで側にいてくれたのだろうか、と思ったら泣きたくなった。
「あれ?そう言えば..父もK学卒業生なんだ……」
父の学生時代のものは高校の卒業アルバムだけが手元にあった。何故、他のものがないのかはわからない。咲夜はとりあえず、隣の夫婦に会いに行くことにした。
「あら、咲夜くん」
出迎えてくれたのは奥さんの方。夕飯のカレーのいい匂いがした。彼女が料理を咲夜の家で作ることは、ほぼない。隣に住んでいるのであれば、その方が楽なのだという。
「これ」
と咲夜は父のアルバムを彼女に渡した。
「え?」
「今まで気づかなくてごめんなさい」
咲夜が頭を下げると、アルバムと咲夜を交互に見て、口元に手を充てた。彼女の頬に涙が伝う。
「おばあちゃん」
「あなた!あなたッ。咲夜が……」
彼女が奥に居るだろう夫を呼びつけ、咲夜を抱き締めた。
**
「どうして言ってくれなかったの?」
母の希望で父方の親戚とは、縁を切っていたことを知る。そう聞くと、父の弟の連絡先を知っているのは、単に運が良かっただけなのだと気づいた。どおりで叔父から滅多に連絡がないはずだと納得する。母に気づかれてはならなかったのだ。リビングで三人、カレーを食べながら咲夜は思案する。今日は、習い事で葵は遅くなるらしい。帰りは母と外食をし、送って貰うと言っていた。
「辛いことを思い出させたくなかったの、ごめんね咲夜」
辛いことと言われ咲夜は、父の葬儀に来ていた友人のことを聞きたかったが、聞けなくなってしまったのだった。
****
「どうしたの?霧島」
どよーんと、まるで文字でも背中に背負っていそうなくらい項垂れている昨夜に、クラスメイトが遠慮がちに声をかける。
「片倉に避けられている」
昨日は葵が遅くなり、彼が夕飯を食べるのを眺めていた。その後風呂場に向かうのを見おくって、朝から様子がおかしい。
「ちょっ、娘に口聞いて貰えないお父さんみたいになってるけど、大丈夫?!」
「何故……」
『おはよ、片倉』
朝、声をかけたら真っ赤な顔をして逃げた。
なんなの?チャックでも開いてた?
確認するも、問題なし。
この間のあれが原因なのか?
気持ち良さそうにしてたのに。
「いつも俺にべったりなのに……トイレも一人で行きやがる。いつもだったらトイレ一緒についていかないと、駄々こねるのに」
またして欲しそうな顔をしていたから、違うのかもしれない。むしろなにもしなかったから拗ねているのか? それとも寝てる間に無意識でいたずらしてしまったのか?
「君たちどういう友達関係だよ、片倉が要介護みたいになってるけど?! もしくは3歳児」
クラスメイトが突っ込みを入れてくるが、笑う余裕がない。
「ご飯一人で食べるとかいったらどうしよう」
あんな可愛い子を一人にしておいたら危険だ。すぐに狼がやってくる。おのれ、鶴城め!まだ何も起きていないのに、咲夜は彼に憎しみを抱いた。重症である。
「静かでいいんじゃね?」
「みかんの皮もちゃんと剥けないのに」
そうだ、みかんで釣られて捕獲などされようものなら……。あんなことや、こんなことをされてしまうかもしれない。先に捕獲せねば。俺だってまだ、最後の一線は越えていないというのに!おのれ、鶴城め!打倒、鶴城。
何故か怨みすら沸いてきた。
どうやら葵不足で、脳がイカレている。
「老人なの?片倉は」
「俺がいなくても平気なのか?心配でたまらない」
葵が側にいないと落ち着かない。
触りたい。
抱っこしてすりすりしたい。
ふかふかの……ふかふか?
なんだかわからなくなってきた。
「霧島は片倉の保護者のようだな、オイ」
「泣きそう」
ガクッと机に突っ伏すと、
「衛生兵ー!!もしくは僧侶!ちょっときてー!」
と人を叫ばれた。呼ぶなら医者にしてよと、死人みたいな顔をしていたら、教壇に立った教師が咲夜を見て、ムンクの叫びみたいな顔をする。何てこった。
「ああ、義父さん?進路のことで話があるんだけど」
咲夜は、実父の遺品を漁りながら義父に電話をかける。何か手がかりがあるかもしれないと思っていた。
『くー』に繋がる何が。そう言えば『くー』の父は自分を引き取りたいと言っていたと、義父と母の会話を思い出す。もしその人物が大物なら、道が拓けるかも知れない。
「K学にいきたいんだ。うん、このままがんばれば推薦とれそうなの。いいよね?」
受験はまだ先だが、早めに言うことが重要だ。義父は進路に関して、咲夜の思うようにしなさいと言った。受かれば、また進学先の近くにマンションを借りてくれるとのこと。
葵が進学すれば実家から遠くなるため、その折りには話をつけて同居すれば良いとまで言ってくれた。もちろん馴染みのお手伝いさんに一緒に引っ越して貰えるよう交渉するとも。
「えッ!?」
電話を切って、ホッとしたのも束の間。
父のアルバムを見て驚愕した。
「全然気づかなかった」
隣に住む、この家のお手伝いさんをしてくれている初老の夫婦が、自分の実父の両親であったのだと、ここで初めて気づいた。二人がどんな思いで側にいてくれたのだろうか、と思ったら泣きたくなった。
「あれ?そう言えば..父もK学卒業生なんだ……」
父の学生時代のものは高校の卒業アルバムだけが手元にあった。何故、他のものがないのかはわからない。咲夜はとりあえず、隣の夫婦に会いに行くことにした。
「あら、咲夜くん」
出迎えてくれたのは奥さんの方。夕飯のカレーのいい匂いがした。彼女が料理を咲夜の家で作ることは、ほぼない。隣に住んでいるのであれば、その方が楽なのだという。
「これ」
と咲夜は父のアルバムを彼女に渡した。
「え?」
「今まで気づかなくてごめんなさい」
咲夜が頭を下げると、アルバムと咲夜を交互に見て、口元に手を充てた。彼女の頬に涙が伝う。
「おばあちゃん」
「あなた!あなたッ。咲夜が……」
彼女が奥に居るだろう夫を呼びつけ、咲夜を抱き締めた。
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「どうして言ってくれなかったの?」
母の希望で父方の親戚とは、縁を切っていたことを知る。そう聞くと、父の弟の連絡先を知っているのは、単に運が良かっただけなのだと気づいた。どおりで叔父から滅多に連絡がないはずだと納得する。母に気づかれてはならなかったのだ。リビングで三人、カレーを食べながら咲夜は思案する。今日は、習い事で葵は遅くなるらしい。帰りは母と外食をし、送って貰うと言っていた。
「辛いことを思い出させたくなかったの、ごめんね咲夜」
辛いことと言われ咲夜は、父の葬儀に来ていた友人のことを聞きたかったが、聞けなくなってしまったのだった。
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「どうしたの?霧島」
どよーんと、まるで文字でも背中に背負っていそうなくらい項垂れている昨夜に、クラスメイトが遠慮がちに声をかける。
「片倉に避けられている」
昨日は葵が遅くなり、彼が夕飯を食べるのを眺めていた。その後風呂場に向かうのを見おくって、朝から様子がおかしい。
「ちょっ、娘に口聞いて貰えないお父さんみたいになってるけど、大丈夫?!」
「何故……」
『おはよ、片倉』
朝、声をかけたら真っ赤な顔をして逃げた。
なんなの?チャックでも開いてた?
確認するも、問題なし。
この間のあれが原因なのか?
気持ち良さそうにしてたのに。
「いつも俺にべったりなのに……トイレも一人で行きやがる。いつもだったらトイレ一緒についていかないと、駄々こねるのに」
またして欲しそうな顔をしていたから、違うのかもしれない。むしろなにもしなかったから拗ねているのか? それとも寝てる間に無意識でいたずらしてしまったのか?
「君たちどういう友達関係だよ、片倉が要介護みたいになってるけど?! もしくは3歳児」
クラスメイトが突っ込みを入れてくるが、笑う余裕がない。
「ご飯一人で食べるとかいったらどうしよう」
あんな可愛い子を一人にしておいたら危険だ。すぐに狼がやってくる。おのれ、鶴城め!まだ何も起きていないのに、咲夜は彼に憎しみを抱いた。重症である。
「静かでいいんじゃね?」
「みかんの皮もちゃんと剥けないのに」
そうだ、みかんで釣られて捕獲などされようものなら……。あんなことや、こんなことをされてしまうかもしれない。先に捕獲せねば。俺だってまだ、最後の一線は越えていないというのに!おのれ、鶴城め!打倒、鶴城。
何故か怨みすら沸いてきた。
どうやら葵不足で、脳がイカレている。
「老人なの?片倉は」
「俺がいなくても平気なのか?心配でたまらない」
葵が側にいないと落ち着かない。
触りたい。
抱っこしてすりすりしたい。
ふかふかの……ふかふか?
なんだかわからなくなってきた。
「霧島は片倉の保護者のようだな、オイ」
「泣きそう」
ガクッと机に突っ伏すと、
「衛生兵ー!!もしくは僧侶!ちょっときてー!」
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