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6話 亀裂と修正
5 不確定と確定
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「どうしたのよ、戀」
日曜日。戀はいつものように叔母がマスターを務める珈琲店にいた。
一人でいると、陽菜とここで朝食を取ったのが遠い昔のように感じてしまう。
「うん」
戀は空返事をし、紅茶を口元に持っていく。視線はスマホに向けたまま。店内には相変わらず優しいピアノ曲が流れていた。
この珈琲店の内装は流行のレトロアンティーク喫茶というものだった。
温もりを感じる板張りの内装は、ニスによってキラキラと光を反射している。オレンジ色のライトは料理を美味しそうに見せており、優しい雰囲気を醸し出していた。
7時台は客も少なく、叔母が暇そうにしている。もう少ししたら常連客がモーニングを頼みにやってくることだろう。
「行き詰っちゃったわけ?」
客があまりいないからか、モーニングセットを持ってカウンターの向こうから叔母が戀の隣にやってくる。
「なんとも言えないね」
呟くように返事をする戀。隣でモーニングに手を付け始める彼女。
「探していた女子高生グループには会えたんでしょう? 何か有力な手掛かりはなかったの?」
あったと言えばあったと言えるし、ないと言えばないと言えた。
結論から言えば陽菜の兄は誰とも接触しておらず、彼をつけているような人物も見かけなかったとと彼女たちは言う。だがそれは彼女たちから見えた範囲でのこと。
他に何か気づいたことがあれば、都度連絡をくれる手はずになっている。
考え方の方向性が間違っているのだろうか?
戀は叔母の質問へはすぐに答えずに熟慮する。
自ら姿を消したのであれば不自然な点が多いことから、拉致されたと考えてきた。そして生きている可能性を信じて、陽菜の兄に記事にされた人物を拉致したと考えられる相手から外したのだ。
そもそも陽菜の兄が記事にした相手は政治家。ドラマじゃあるまいし、暴力団と繋がっていて陽菜の兄を殺害させ、何処かに埋めたなどとは信じがたい。
そんな危ない人物であれば他のライターにも目をつけられていただろう。
そこで戀は汚職事件発覚の経緯について検索してみる。誰でも知っているような大きな事件ばかりのようだが、その経緯についてはなかなか興味深い。
国税局での調査だったり、別件逮捕でそれに関する資料が出てきたケース。
一般からのタレコミに関しては報告できるホームなどが開設されている。だがもっと気になるのは、汚職事件には大手が名を連ねておりその会社は今も存続しているということだ。
会社が関わっていたとしても、直接関わった人間だけが逮捕される。それは当然のことだろう。では会社はイメージダウンしているのかと言われたら、そこはどうなのだろうと思う。
汚職事件に関わる会社というのは、そもそも金で人を動かせると思っているのではないか?
自分が金でどうにかなるのだから、しごく当然とも思える。
となれば、普段からそれが見え隠れしているのではないだろうか?
客を金でどうにかしようという魂胆など。
人間とは実に不思議な生き物で、自分がしているから出てくる発想というはよくある。例えば、自分が浮気をしているから相手も浮気しているのではないかと疑うなど。
疑心暗鬼に駆られるのは自分がそういうことをしているから。
発想とは自分の思想から生まれるもの。疑うことを知らない人間には『疑う』という発想はでてこない。
会社が日々向上するのは、前例がありそれを改善しようと努めるからにほかならないと思う。
「姫宮さんは政治家に関係することを調べていて、いいネタがあると公言していた。その直後に失踪したわけだけれど」
「ええ、そうなんですってね」
「俺はどうしても自らいなくなったということに関しては、不自然さしか感じていないんだ。とは言え、現段階では事件性を感じられないというか、証拠が何も出てこないんだよ」
戀の言葉に叔母は顎に手をやる。
「そうね。まずは不確実を確実に変えていくというのはどうかしら?」
「不確実を確実に?」
「ええ。つまり……あら、お客さんだわ」
彼女が何かを言いかけたところでカランコロンと店のドアの開く音がした。
立ち上がる叔母の気配を感じながら、戀は再びスマホに目を移したのだった。
日曜日。戀はいつものように叔母がマスターを務める珈琲店にいた。
一人でいると、陽菜とここで朝食を取ったのが遠い昔のように感じてしまう。
「うん」
戀は空返事をし、紅茶を口元に持っていく。視線はスマホに向けたまま。店内には相変わらず優しいピアノ曲が流れていた。
この珈琲店の内装は流行のレトロアンティーク喫茶というものだった。
温もりを感じる板張りの内装は、ニスによってキラキラと光を反射している。オレンジ色のライトは料理を美味しそうに見せており、優しい雰囲気を醸し出していた。
7時台は客も少なく、叔母が暇そうにしている。もう少ししたら常連客がモーニングを頼みにやってくることだろう。
「行き詰っちゃったわけ?」
客があまりいないからか、モーニングセットを持ってカウンターの向こうから叔母が戀の隣にやってくる。
「なんとも言えないね」
呟くように返事をする戀。隣でモーニングに手を付け始める彼女。
「探していた女子高生グループには会えたんでしょう? 何か有力な手掛かりはなかったの?」
あったと言えばあったと言えるし、ないと言えばないと言えた。
結論から言えば陽菜の兄は誰とも接触しておらず、彼をつけているような人物も見かけなかったとと彼女たちは言う。だがそれは彼女たちから見えた範囲でのこと。
他に何か気づいたことがあれば、都度連絡をくれる手はずになっている。
考え方の方向性が間違っているのだろうか?
戀は叔母の質問へはすぐに答えずに熟慮する。
自ら姿を消したのであれば不自然な点が多いことから、拉致されたと考えてきた。そして生きている可能性を信じて、陽菜の兄に記事にされた人物を拉致したと考えられる相手から外したのだ。
そもそも陽菜の兄が記事にした相手は政治家。ドラマじゃあるまいし、暴力団と繋がっていて陽菜の兄を殺害させ、何処かに埋めたなどとは信じがたい。
そんな危ない人物であれば他のライターにも目をつけられていただろう。
そこで戀は汚職事件発覚の経緯について検索してみる。誰でも知っているような大きな事件ばかりのようだが、その経緯についてはなかなか興味深い。
国税局での調査だったり、別件逮捕でそれに関する資料が出てきたケース。
一般からのタレコミに関しては報告できるホームなどが開設されている。だがもっと気になるのは、汚職事件には大手が名を連ねておりその会社は今も存続しているということだ。
会社が関わっていたとしても、直接関わった人間だけが逮捕される。それは当然のことだろう。では会社はイメージダウンしているのかと言われたら、そこはどうなのだろうと思う。
汚職事件に関わる会社というのは、そもそも金で人を動かせると思っているのではないか?
自分が金でどうにかなるのだから、しごく当然とも思える。
となれば、普段からそれが見え隠れしているのではないだろうか?
客を金でどうにかしようという魂胆など。
人間とは実に不思議な生き物で、自分がしているから出てくる発想というはよくある。例えば、自分が浮気をしているから相手も浮気しているのではないかと疑うなど。
疑心暗鬼に駆られるのは自分がそういうことをしているから。
発想とは自分の思想から生まれるもの。疑うことを知らない人間には『疑う』という発想はでてこない。
会社が日々向上するのは、前例がありそれを改善しようと努めるからにほかならないと思う。
「姫宮さんは政治家に関係することを調べていて、いいネタがあると公言していた。その直後に失踪したわけだけれど」
「ええ、そうなんですってね」
「俺はどうしても自らいなくなったということに関しては、不自然さしか感じていないんだ。とは言え、現段階では事件性を感じられないというか、証拠が何も出てこないんだよ」
戀の言葉に叔母は顎に手をやる。
「そうね。まずは不確実を確実に変えていくというのはどうかしら?」
「不確実を確実に?」
「ええ。つまり……あら、お客さんだわ」
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立ち上がる叔母の気配を感じながら、戀は再びスマホに目を移したのだった。
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