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『bad endにすらならない』
第2話 あなた、ライバルですの?
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「ふぅ」
圭一との夢のようなひとときを堪能したミノリは、もういつ死んでも悔いはないと思っていたのだが、そうもいかなくなった。
ちょ、ちょっ!
誰、あの殿方は!
「まーた、圭一《あのおとこ》のストーカーしてるの?ミノリは。暇ねぇ」
いつの間にか隣に来てた姉がミノリを見つめ肩を竦めた。
「お、お姉ちゃんッ。人聞き悪いこと言わないでよ、私がいつストーカーなんて」
「じゃあ、なんでスマホを圭一《あのおとこ》に向けてるのよ」
ミノリは無意識に握りしめていたスマホを覗きこんだ。そこには圭一の写メが..。
やだっ!こんなにいっぱい、いつの間に?!
無意識って怖いわね。
「ほら、そんなに..と言うかそんなに同じアングルばかり撮ってどうしたいわけ?」
「こ、これは習慣で..」
何故か、アングルのダメ出しをされる。何かオカシイ。
「習慣?立派なストーカーじゃないの。やったわね、ミノリ」
「殺った?ヤった?」
「ミノリ、圭一《あのおとこ》をどうしたいわけ?」
姉は顔をひきつらせた。ミノリはなんだか混乱して連写ボタンを押してしまった。
「...」
「ストーカーもほどほどにしないと、パパに怒られるわよ」
それで済めば良いが。ミノリは連写を解除するのに必死であった。
****
なっ!
ちょ、あの殿方..
イケメン過ぎッ。接近しすぎ!
どういう関係?!
しかも、圭一くんと似合いすぎ!
ミノリはクールなフリをしつつ、二人と距離を詰めてみた。そう、会話を聞くために。
立派なストーカーである。
「あぁ。で、行けそうなのか?」
「それが、ガードが固くて。なんとかなりませんか?」
「久隆が必要としているなら、何とかするしかないな。それより..なにしてんだ?大里」
え?!嘘。気づかれた?!
ミノリは慌てた。
「え、これはその..」
「そんなとこ撮って、何か意味があるのか?」
ミノリは圭一の声を録音しようとしてムービーモードで地面を撮っていた。圭一がそれを不思議そうに覗き込む。
「大崎邸の芝生って素敵だなと思いまして」
苦しい言い訳だが、音声が録れている。今夜はよく眠れそうだ。
「うちの庭師、貸そうか?」
「えっ!」
眉を寄せ、圭一はよっぽど大里邸の庭が荒れ果てているのだと思ったのか気の毒そうな表情をしていた。
「なんなら、俺が行ってやろうか?」
「!」
ど、ど、どうしよう?!
とにかく荒らしておいてって連絡しなきゃ!
「ホントですの?!」
「いいよ」
ミノリは、心の中でガッツポーズをした。圭一と隣の彼が生暖かい目で見ていることも気づかずに。
****
「ええ、可能な限り荒らしてください!」
ミノリは不穏なことを言うと通話を切った。
「また、キチガイみたいなことを言って」
「ひぃっ!」
いつの間に来ていたのだろうか?横に姉が居た。
「ミノリ、あんまりトチ狂ったことばかり言ってるとパパに病院送りにされるわよ?」
「ボコられるみたいな言い方はやめてよ、お姉ちゃん」
ミノリがぷくっとふくれる。
「いや、ミノリよりマシだし、多少ボコられたほうが、マトモになるんじゃなくて?」
「むぅ」
もっともな姉の提案に、ミノリはぐうの音《ね》もでなかったが、圭一がうちに来てくれることには変わりない。
ああッ、今から楽しみ!
新しいお洋服買おうかな?
どんなのが、好みなのかしら?
そもそも、ただの草刈りにくるだけである。しかし、ミノリは妄想...もとい、想像をした。
圭一くんの私服って、いつも黒のスーツよね。
黒好きなのかしら?
当たらずとも遠からずである。
じゃあ、じゃあ。
ピンクのフリルとかどうかしら?
黒に映えるわー。
『ミノリ、可愛いよ』
なんちゃって!
いやいや、圭一くんは、淑女が好きなはず
白のワンピースにしようかな。
うん、いい感じ!
もう一度言う。
圭一は、草刈りに来るだけである。
****
その日は来た。
まあ、当たり前である。約束をしている限り、いつかは来るものである。
「大里、俺さ」
圭一は、いつものように黒のスーツにネクタイをしていたがいつもと少し違った。
な?!
来るなり『結婚しよう!』なんて言い出すわけじゃないわよね?
まだ、ウェディングドレス買ってない!
ゼクシ○もまだよ!
そんなわけ、あるはずない。
何度もいうが、草刈りに来ただけである。
「来るとき、大崎邸の従業員に、墓荒らしに行くのか?って言われたんだけど。何か変?」
え、まだ荒らすんですか?
これ以上、うちの庭を?
正気?!
ミノリは、チラチラと周りに視線を送った。圭一は工事現場にありそうなスコップを持っていた。
自前である。
ん?
何しに来たのかしら?
再三言うが、草刈りである。
「まあ、いいや何処からやる?」
「え?」
ヤる?!庭で?!
そ、そ、そんな!まだ心の準備が!
婚前に子作り?!
あ、既成事実を作るのですね?
そもそも、付き合ってさえない。
再び言うが、草刈りに来ただけである。
圭一との夢のようなひとときを堪能したミノリは、もういつ死んでも悔いはないと思っていたのだが、そうもいかなくなった。
ちょ、ちょっ!
誰、あの殿方は!
「まーた、圭一《あのおとこ》のストーカーしてるの?ミノリは。暇ねぇ」
いつの間にか隣に来てた姉がミノリを見つめ肩を竦めた。
「お、お姉ちゃんッ。人聞き悪いこと言わないでよ、私がいつストーカーなんて」
「じゃあ、なんでスマホを圭一《あのおとこ》に向けてるのよ」
ミノリは無意識に握りしめていたスマホを覗きこんだ。そこには圭一の写メが..。
やだっ!こんなにいっぱい、いつの間に?!
無意識って怖いわね。
「ほら、そんなに..と言うかそんなに同じアングルばかり撮ってどうしたいわけ?」
「こ、これは習慣で..」
何故か、アングルのダメ出しをされる。何かオカシイ。
「習慣?立派なストーカーじゃないの。やったわね、ミノリ」
「殺った?ヤった?」
「ミノリ、圭一《あのおとこ》をどうしたいわけ?」
姉は顔をひきつらせた。ミノリはなんだか混乱して連写ボタンを押してしまった。
「...」
「ストーカーもほどほどにしないと、パパに怒られるわよ」
それで済めば良いが。ミノリは連写を解除するのに必死であった。
****
なっ!
ちょ、あの殿方..
イケメン過ぎッ。接近しすぎ!
どういう関係?!
しかも、圭一くんと似合いすぎ!
ミノリはクールなフリをしつつ、二人と距離を詰めてみた。そう、会話を聞くために。
立派なストーカーである。
「あぁ。で、行けそうなのか?」
「それが、ガードが固くて。なんとかなりませんか?」
「久隆が必要としているなら、何とかするしかないな。それより..なにしてんだ?大里」
え?!嘘。気づかれた?!
ミノリは慌てた。
「え、これはその..」
「そんなとこ撮って、何か意味があるのか?」
ミノリは圭一の声を録音しようとしてムービーモードで地面を撮っていた。圭一がそれを不思議そうに覗き込む。
「大崎邸の芝生って素敵だなと思いまして」
苦しい言い訳だが、音声が録れている。今夜はよく眠れそうだ。
「うちの庭師、貸そうか?」
「えっ!」
眉を寄せ、圭一はよっぽど大里邸の庭が荒れ果てているのだと思ったのか気の毒そうな表情をしていた。
「なんなら、俺が行ってやろうか?」
「!」
ど、ど、どうしよう?!
とにかく荒らしておいてって連絡しなきゃ!
「ホントですの?!」
「いいよ」
ミノリは、心の中でガッツポーズをした。圭一と隣の彼が生暖かい目で見ていることも気づかずに。
****
「ええ、可能な限り荒らしてください!」
ミノリは不穏なことを言うと通話を切った。
「また、キチガイみたいなことを言って」
「ひぃっ!」
いつの間に来ていたのだろうか?横に姉が居た。
「ミノリ、あんまりトチ狂ったことばかり言ってるとパパに病院送りにされるわよ?」
「ボコられるみたいな言い方はやめてよ、お姉ちゃん」
ミノリがぷくっとふくれる。
「いや、ミノリよりマシだし、多少ボコられたほうが、マトモになるんじゃなくて?」
「むぅ」
もっともな姉の提案に、ミノリはぐうの音《ね》もでなかったが、圭一がうちに来てくれることには変わりない。
ああッ、今から楽しみ!
新しいお洋服買おうかな?
どんなのが、好みなのかしら?
そもそも、ただの草刈りにくるだけである。しかし、ミノリは妄想...もとい、想像をした。
圭一くんの私服って、いつも黒のスーツよね。
黒好きなのかしら?
当たらずとも遠からずである。
じゃあ、じゃあ。
ピンクのフリルとかどうかしら?
黒に映えるわー。
『ミノリ、可愛いよ』
なんちゃって!
いやいや、圭一くんは、淑女が好きなはず
白のワンピースにしようかな。
うん、いい感じ!
もう一度言う。
圭一は、草刈りに来るだけである。
****
その日は来た。
まあ、当たり前である。約束をしている限り、いつかは来るものである。
「大里、俺さ」
圭一は、いつものように黒のスーツにネクタイをしていたがいつもと少し違った。
な?!
来るなり『結婚しよう!』なんて言い出すわけじゃないわよね?
まだ、ウェディングドレス買ってない!
ゼクシ○もまだよ!
そんなわけ、あるはずない。
何度もいうが、草刈りに来ただけである。
「来るとき、大崎邸の従業員に、墓荒らしに行くのか?って言われたんだけど。何か変?」
え、まだ荒らすんですか?
これ以上、うちの庭を?
正気?!
ミノリは、チラチラと周りに視線を送った。圭一は工事現場にありそうなスコップを持っていた。
自前である。
ん?
何しに来たのかしら?
再三言うが、草刈りである。
「まあ、いいや何処からやる?」
「え?」
ヤる?!庭で?!
そ、そ、そんな!まだ心の準備が!
婚前に子作り?!
あ、既成事実を作るのですね?
そもそも、付き合ってさえない。
再び言うが、草刈りに来ただけである。
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