【異性恋愛】思い出の中の、あなた。その想い

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一章:佳奈編

6・馬鹿正直な人

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 一志は自己愛の強い男で、他力本願な人でもあった。
 佳奈とは真逆と言ってもいいかもしれない。
 二人が合うはずなどない。

 そんな一志の長所と言えば、嘘をつかないところ。
 悪く言えば、馬鹿正直で空気が読めない。

「あの時の真実なんて聞かなければ、あそこまで嫌悪しなくて済んだのかな」

 佳奈は、何故一志が自分に近づいてきたのかを知ってしまっていた。
 彼女との進展に利用されただけだったなんてと、ショックを受けたのだが……。

────それよりも、一志の神経が理解できない。

 佳奈を利用し彼女とうまくいかなくなった時、SNSでたまたま佳奈を見つけたらしい。佳奈の愚痴のような呟きを見て、声をかけて来たのだという。
 それだけならまだしも。

『佳奈が好き。付き合おう』
と。

 どんな脳内をしていたらそんなことが言えるのだろうか?
 かつて自分に好意を抱いていた女なら、簡単に落とせるとでも?
 それは、利用されていた事実を知らなければこそ。
 自分から真実を告白しておいて、何故まだ好かれていると思えるのだろうか?

────頭、おかしいよ。

 佳奈は冷たくあしらったが、一志は尋常じゃないくらいしつこかった。
 こんなことになるなら、連絡先など教えるのではなかったと心から後悔する。
 毎日毎日、佳奈の仕事が終わるころ連絡は来た。
 ストーカーなのか? と思うほど。

 一志のせいで自分の時間が持てなくなった佳奈は、発狂寸前であった。
 付き合いをOKすれば少しは落ち着くかと思ったが、一志はただエスカレートしただけに過ぎない。

『佳奈、好きだよ』
(ごめん、わたしはあなたが嫌い)
『佳奈、可愛い』
(気持ち悪いから、やめて)

 心の声が漏れそうになりながらも、佳奈は耐えた。
「好き好き煩い。わかったから黙って」
 もっと中身のある会話がしたい、と佳奈は憂鬱だった。
 しかし一志がこうなのには理由わけがある。
 彼女と上手くいかなくなった理由の一つが、相手に想いをちゃんと言葉にしなかったからだった。

────そんなの、わたしの知ったことではない。

 言葉を求める人もいれば、そうじゃない人もいる。
 人それぞれ求めている者は違うし、好きでない人に好きと言われたところで虫唾が走るだけ。
 反省して次に生かすことは悪いことじゃない。
 でも、相手にそれが合っているのか見極めるべき。
 彼がしていることは、バカの一つ覚えだ。

────そんなだから、彼女とも上手くいかなかったんだよ。

 相手が迷惑に思っているかどうかも分からず、一方的に気持ちを押し付けるなんて。
 それどころか、一志は嫉妬深く佳奈がちょっとでも他の人と話をしていると相手に憎しみを向けた。
 佳奈を相手から引き離すために、相手の悪口ばかり言うようになっていったのだ。

「友達でも何でもない、ただの知り合いにまで……。クレイジーだよ……」

 佳奈は一志の言動を思い出し、吐き気と頭痛がした。
 解放されるまで実に三年の月日を要したのだ。
 二度と関わりたくないと思っている。
 しかしあの彼に出会うには、一志との再会は必須の出来事。

「どっちにしろ……」

佳奈は一志がいたから出逢えた彼とは、一志がいたから結ばれなかったことを思い深いため息をついた。
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