8 / 28
一章:佳奈編
7・佳奈の友人
しおりを挟む
佳奈は何も流されるままに流され、一志に屈したわけではない。
無駄だと思いながらも、一応抵抗はしたのだ。
────所詮話を聞かないやつに、何言ったって無駄なんだよね。
「は?」
佳奈には一志に出逢う前から一人、とても仲の良い友人がいた。
本音で話すことはあっても、彼女は忙しく頻繁に会えるようなことはなかったが。
「彼氏出来たって言ってたけど、上手くいってるわけじゃなかったんだ」
「どう転んでも、上手くいきそうにはないわね。何せ言葉が通じないし」
と佳奈が深いため息をつくと、
「運命的な再会を果たしたって言ってたけど、外国の方?」
「いや、どっちかというと宇宙人」
「なにそれ、グローバル過ぎない?」
と友人が吹き出す。
「うーん、むしろ村って感じかな」
「村? 狩猟民族ってこと?」
友人の中の一志像が段々とおかしくなっていく。
「上手に妬けた試しはないけど」
「ん? 黒焦げ?」
「まあ、あながち間違っちゃいない。飛び火もする」
”メンドクサイ男なのよ”といったところで、注文の品がテーブルに届く。
二人は行きつけの喫茶店にいた。
彼女と待ち合わせするときは大抵ここだ。珈琲メイン喫茶店だが軽食も出していて、中でも自家製ミートソースパスタが人気である。
「頭の中がお花畑なのよ。相手を美化してしまうというか」
「へーえ」
「好き好き煩いしさー」
「可愛いを連呼する女子みたいだね」
「それも言う」
佳奈は、再びため息をつくとホッとサンドに手を伸ばした。
チーズがとろりと滴り落ちそうなほど、たっぷり入っている。
「朝ご飯は?」
「まだだったの。一志が朝っぱらから電話してきて」
「大変ねえ」
彼女が注文したのは、人気のショートケーキ。
いちごがぎっしり詰まった写真映えするスイーツだ。
「電話、なんだって?」
「休日出勤の報告。別にどうでもいいし、勝手に行けばいいのに」
SNS用に写真を撮る客が多い中、彼女はスマホに触れることすらしなかった。
「冷めてるわねえ」
と、彼女。
「熱かったことなんてないわ」
と返事をしながら、佳奈は彼女の手元を見つめる。
その視線に気づいた彼女は、
「ん?どうかした?」
と不思議そうな顔をする。
「撮らないの?」
以前の彼女なら、食べる前の写真を撮っていたはずだ。
しかし彼女は、スマホに触れるどころか、カバンにしまったまま。
「んー。必要ないし」
「まあ、自分で作ったわけじゃないしね」
彼女たちが写真を撮るのは、自分が注目を浴びたい心理が含まれるだろうが、店側からした良い宣伝になる。
しかも、無料で。
レビューが何故宣伝より重視されるかと言えば、自分で自分を宣伝するよりも他人に宣伝してもらったほうが信頼できるから。
いうなれば、”自称素敵”はナルシストのように感じてしまうが、”あの人素敵”は人が注目しやすい。
「なんか最近、店の宣伝になるだけなのが癪《しゃく》だなって思ったの」
彼女はケーキを口に運びながら。
無駄だと思いながらも、一応抵抗はしたのだ。
────所詮話を聞かないやつに、何言ったって無駄なんだよね。
「は?」
佳奈には一志に出逢う前から一人、とても仲の良い友人がいた。
本音で話すことはあっても、彼女は忙しく頻繁に会えるようなことはなかったが。
「彼氏出来たって言ってたけど、上手くいってるわけじゃなかったんだ」
「どう転んでも、上手くいきそうにはないわね。何せ言葉が通じないし」
と佳奈が深いため息をつくと、
「運命的な再会を果たしたって言ってたけど、外国の方?」
「いや、どっちかというと宇宙人」
「なにそれ、グローバル過ぎない?」
と友人が吹き出す。
「うーん、むしろ村って感じかな」
「村? 狩猟民族ってこと?」
友人の中の一志像が段々とおかしくなっていく。
「上手に妬けた試しはないけど」
「ん? 黒焦げ?」
「まあ、あながち間違っちゃいない。飛び火もする」
”メンドクサイ男なのよ”といったところで、注文の品がテーブルに届く。
二人は行きつけの喫茶店にいた。
彼女と待ち合わせするときは大抵ここだ。珈琲メイン喫茶店だが軽食も出していて、中でも自家製ミートソースパスタが人気である。
「頭の中がお花畑なのよ。相手を美化してしまうというか」
「へーえ」
「好き好き煩いしさー」
「可愛いを連呼する女子みたいだね」
「それも言う」
佳奈は、再びため息をつくとホッとサンドに手を伸ばした。
チーズがとろりと滴り落ちそうなほど、たっぷり入っている。
「朝ご飯は?」
「まだだったの。一志が朝っぱらから電話してきて」
「大変ねえ」
彼女が注文したのは、人気のショートケーキ。
いちごがぎっしり詰まった写真映えするスイーツだ。
「電話、なんだって?」
「休日出勤の報告。別にどうでもいいし、勝手に行けばいいのに」
SNS用に写真を撮る客が多い中、彼女はスマホに触れることすらしなかった。
「冷めてるわねえ」
と、彼女。
「熱かったことなんてないわ」
と返事をしながら、佳奈は彼女の手元を見つめる。
その視線に気づいた彼女は、
「ん?どうかした?」
と不思議そうな顔をする。
「撮らないの?」
以前の彼女なら、食べる前の写真を撮っていたはずだ。
しかし彼女は、スマホに触れるどころか、カバンにしまったまま。
「んー。必要ないし」
「まあ、自分で作ったわけじゃないしね」
彼女たちが写真を撮るのは、自分が注目を浴びたい心理が含まれるだろうが、店側からした良い宣伝になる。
しかも、無料で。
レビューが何故宣伝より重視されるかと言えば、自分で自分を宣伝するよりも他人に宣伝してもらったほうが信頼できるから。
いうなれば、”自称素敵”はナルシストのように感じてしまうが、”あの人素敵”は人が注目しやすい。
「なんか最近、店の宣伝になるだけなのが癪《しゃく》だなって思ったの」
彼女はケーキを口に運びながら。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
白椿の咲く日~遠い日の約束
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに姉の稚子(わかこ)と会う。真由子の母、雪江は妻を亡くした水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。実之には俊之、稚子、靖之の三人の子がいた。
稚子と話をしているうちに、真由子は雪江と庭の白椿の木に、何か関係があることに気がつき……
大人の恋物語です。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる