3 / 28
一章:佳奈編
2・恋人と彼
しおりを挟むたった一度きりの、海岸デート。あなたは自分のことについて沢山話をしてくれた。あなたが抱えるコンプレックスのことを。
クールだけれど、時々見せる優しさと真っ直ぐに問題と向き合う姿勢が好きだった。
けれど恋は、人を狂わせる。
「たまにでいいから、二人きりで逢いたい」
「わたしには恋人がいるの。あなたも知ってるでしょう?」
「黙っていれば分からないよ」
わたしたちは価値観が違い過ぎた。
────あなたが好き。
でもそれは、今向き合うべき問題を解決してからでないと進めない道だ。
佳奈は、彼と平行線を辿ったあの日々を思い出し深いため息をついた。
好きなら一緒に居るべきだと考える彼に対し、どんなに相手に気持ちがなくても裏切り行為は行ってはならないと考える、佳奈。
佳奈は彼の容姿や性格、言動は好きであったが価値観の不一致だけは許せなかった。
「どうして両想いなのに、ダメなんだよ」
男と女は所詮解りあえない。
佳奈はそんな考えの持ち主であったが、それとは別にいくら説明しても、彼は納得してくれなかった。
「俺が別れさせてやる」
普通の相手ならそれでも良かったのかもしれないが、恋人はどちらかというとストーカー気質で疑い深い男だった。
そのくせ女に対し思わせぶりな態度をとり、トラブルが絶えない。とてつもない、面倒な男だ。
もし彼が恋人に余計なことを言えば更に佳奈へ執着し、面倒なことになるのは目に見えていた。
「自分でなんとかするから、余計なことしないで」
それが佳奈の精一杯だったのだ。
予想通り彼は佳奈の恋人に恨みを抱き、彼の佳奈への好意に気づいた恋人が彼の悪口を言い始めた。
恋人は佳奈と同じグループに所属していたからだ。初めは楽しみにしていた手紙も恨み言でいっぱいになり、佳奈は見るのも嫌になっていく。
だが、それでも強い想いをぶつけてくる彼を嫌いにはなれなかった。
「あいつ、佳奈のこと好きだよな」
恋人はますます佳奈を束縛し、彼と他の友人を交えてすら逢うことが不可能となっていく。
そんな折、
”佳奈がアイツから酷いことされているなら、俺がなんとかしてやるから。すぐ、俺を呼べ”
という勘違いと思い込みによるメッセージが届く。
佳奈はうんざりし始めていた。
どうして愛はこんなにも重いのだろう?
────違う、わたしがあなたをこんな風にしてしまったのだ。
純粋な彼と、不純な恋人。
思わせぶりな態度ばかりとって、女性の心を弄び、
『俺はモテる』
と豪語する恋人を阿保だと思い始めていた。
しかしそれは自分にまったく興味を持たない佳奈を、振り向かせるための策だったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
白椿の咲く日~遠い日の約束
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに姉の稚子(わかこ)と会う。真由子の母、雪江は妻を亡くした水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。実之には俊之、稚子、靖之の三人の子がいた。
稚子と話をしているうちに、真由子は雪江と庭の白椿の木に、何か関係があることに気がつき……
大人の恋物語です。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─
七転び八起き
恋愛
優しい先生は作り物だった。でも私は本当の先生に本気で恋をした。
◇ ◇ ◇
<完結作品です>
大学生の水島白乃は、卒業した母校を訪れた際に、高校時代の担任・夏雄先生と再会する。
高校時代、白乃は先生に密かな想いを抱いていたが、一度も気持ちを伝えることができなかった。しかし再会した先生は、白乃が覚えていた優しい教師とは違う一面を見せ始める。
「俺はずっと見ていたよ」
先生の言葉に戸惑いながらも、白乃は次第に彼の危険な魅力に引き込まれていく。
支配的で時に優しく、時に冷酷な先生。恐怖と愛情の境界線で揺れ動く白乃。
二人の歪んだ恋愛関係の行き着く先は──
教師と元教え子という立場を超えた、危険で複雑な愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる