R18【同性恋愛】リーマン物語if2『万年筆が繋ぐ愛』

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
40 / 48
5話『17年前の事件の真相』

7 塩田と板井の思想

しおりを挟む
****♡side・塩田

「ホントは心のどこかでは思ってはいるんだよ。理解しているんだ」
 ”皇とつき合う方が幸せだって”と塩田が続けると、板井は辛そうに眼を細めた。
 塩田はカウンターの椅子の上で両ひざを抱える。
 いつも自分を心配して傍に居てくれる皇。副社長という立場上、部下に平等に接しなくてはならないはずなのに。いつだって塩田には甘い。
「それでも俺は修二が好きなんだ」

 先日、嫉妬で心を乱す彼を見た。
 今まで一度だって酷い言葉を吐いたことのない修二に『淫乱』だと暴言を吐かれたのだ。驚きもしたが、塩田に対し暴言を吐いている彼の方がとても傷ついた顔をして泣いていた。
 自分は感情に乏しいと感じることはある。
 けれども、好きな人を誰にも触れさせたくないという気持ちは理解しているつもりだ。それが深い関係ならなおさら。
 それほどまでに、自分が彼にした仕返しは功を奏したと言える。
 だが喜べない。

「泣くなよ」
 板井の手が優しく塩田の頭を撫でる。
 大きくて暖かい手。修二とも皇とも違っていた。
 それはまるで、下の兄弟を慰める時のような優しい愛情を感じる。自分に兄がいたならこんな感じなのだろうかと塩田は思った。
「泣いてない」
「涙を流すだけが泣いているとは言わないんだよ」
 板井は三人兄妹の長子。きっと妹弟には普段、こんな風に接するのだろう。
「確かに、課長よりも副社長といる方が塩田には合っているとは思うよ。でも、好きってそういう単純なものじゃないだろ」
 板井は冷静で穏やかだ。

 修二は末っ子なのだということを以前何かの話の流れで聞いたことがあった。両親や兄姉に愛されて育ったはずである。甘やかされて可愛がられたはずだ。
 そんな彼は新入社員だった頃にある女性に騙されて責任を取る形で婚姻した。そこに愛があったとは言えない。
 愛する努力はしたと言っていたし、愛していると思い込んでもいたようだ。
 優しくされなかったわけではないが、何処かギクシャクした夫婦関係は彼の求める理想的な家庭とは違っただろう。

 彼の欲しい愛のカタチ。
 それがどんなものだったのか、想定でしかない。
 ただ、満たされなかったのではないかとも思う。
 記憶もないままに子供が出来てしまったのだから。
 それでも、生まれた子は彼に懐いていた。それが唯一の救いだったに違いない。彼なりの穏やかな日々は塩田たちに出会うまで続いていた。

 恋は突然始まるものなのだ。
 塩田も修二も今はそれを理解している。
 きっかけはたった一本の万年筆。
 深い意味があって送ったものではなかった。

 理想的で品行方正とも言える自分の上司が珍しく愚痴っていた。
 そんな彼を慰めるつもりで送っただけなのに。
 修二にとっては、普段無口で人と積極的にコミュニケーションを取ろとしない塩田がしてくれたことを特別に感じたのかもしれない。
 互いに相手の意外性に惹かれたというのであればそれは強《あなが》ち間違ってはいないと思う。
 強く見えた彼が本当は脆くて弱いことを知った。
 だから目が離せなくなったのだろう。

「板井は修二のどんなところが好きなんだ?」
 板井は修二に想いを寄せていた。それはきっと、塩田が彼に惹かれる前から。
「お前なあ……」
 ”失恋した人間にそんなこと聞くのか?”と眉を寄せる板井。
「じゃあ、質問を変える」
「今度はなんだ?」
 板井はため息をつくとビールを喉に流し込んだ。
「俺が皇とつき合っていて、修二が離婚したら……行動に出たのか?」
 板井は恐らく、修二が既婚者だったから諦めたのだと思う。
「どうだろうな。どんなルートを通ったとしても、あの人が惹かれたのは塩田だと思うし」
 
 二人は職場では無口な方だ。
 気が合うからこそ、こんな風に相手の心に触れるような話ができる。
「塩田のような容姿が好みなんだとしたら、俺はどっちにしろ負け戦じゃないのか?」
と板井。
「そんなのやってみなきゃ、わからないだろ」
「お前らしいな」
 いつでも真っ直ぐな塩田に対し、彼はふふっと笑ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

処理中です...