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1話 親友の好きな人 【Side:青城 紅】
4 気の合う二人
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「昨日は”日本から帰国する外国人旅行者が憂鬱になってしまう理由”に興味が湧いて動画を視ていたの」
「へえ」
【荻那 馨】は勉強家であると思う。彼女が興味を向けるものは、一般的な”女子学生のイメージ”を払拭するようなものばかり。
「先日は日本人と米国人の感覚の違いを視ていたんだけれど、それに関係していることだったから余計に興味が湧いたわ」
荻那は恐らく”相手に合わせて話題を選べるタイプ”の博識な人物なのだろうと思った。
「なかなか興味深いな。その感覚の違いとは?」
「これは食べ方の話になるけれど、日本人は『不衛生なものに不快感を持つ』けれど『米国人はマナーの悪さに不快感を持つ』みたいなの」
例えば日本人は『指を舐める』ことや『箸をなめる』ことに嫌悪感を示す。たしかに想像すると気持ちが悪い。
しかし米国人は平気でソースのついた指を舐めるし、海外は土足で家に入ることも当たり前だ。
だが一方で、麺類を食べる時にすする、音を立てることに不快感を示す。
そこが両者の感覚の違いというヤツなのだろう。
「なるほど。それでそこから帰国後の憂鬱とどう関係してくるんだ?」
「日本では靴を脱いで上がるところが多いわよね。特にホームステイなどをしてしまうとその習慣になれてしまう」
「うん」
「するとね、自分の家に帰った時に”綺麗にしている家”に他人が土足であがり込むことに不快感を覚えるようになるんですって」
確かに日本でも似たような感覚はあるだろう。しかしそれは相手に対しての不快感というよりは、ここに土足であがって良いのだろうかという不安だろう。
日本人は生活の中で自然と床の種類を見分けているものだと思う。モップ掛けできそうなフローリングや石という素材でできた床を靴で踏むことにはためらいはない。それは店などの床を視れば一目瞭然。
ただし、絨毯となると話は別。雨の日などは特に汚れるのではないかと懸念してしまうし、ホテルの床も当然罪悪感が芽生えることもある。
飲食店で出されるおしぼり。あれも日本の文化らしく、食事前に手を拭くことに慣れてしまうと辛く感じてしまうようだ。
ゴミ箱がなくても街が綺麗なのは、そもそも日本人は清潔にすることが当たり前であり、汚れていることが不快に感じやすい民族なのかもしれない。
そしてそれは水の豊富な日本だったからというのも否定はできないだろう。
「外国人は香水の匂いがするけれど、日本人は体臭も少ないし清潔な匂いがすると言っていたのも印象に残ったわ」
「そういう話を聞くと、日本人は恵まれているんだなと思うよ」
「そうね。毎日気軽にお風呂に入れるのは幸せよね」
嬉しそうに笑う荻那は可愛らしい。ぼんやりと荻那の方を見ていると、こちらに視線を移した彼女と目が合う。
「どうしたの、そんな見つめて」
「か……楽しそうだなと思って」
一瞬、『可愛いから』と言いそうになり『楽しそう』と変えたのはセクハラだなと思ったからだ。
「え、あ、うん。楽しいよ、青城くんと話すのは」
言い回しに違和感を持ったが気づかないフリをする。明確にしないのは触れられたくないことなのだろうと判断したから。
「あの……青城くんっておつき合いしている人とか、いたりする?」
「いや?」
恋愛相談だろうかと思った紅は正直に否定する。
「それは、”今は恋愛はいい”とかそういう理由で?」
「そういうわけじゃないが、何故そう思う?」
紅から見て、荻那は聡明だ。むやみに他人のプライベートに踏み込んでくるタイプではない。だから異性でも一緒にいて楽な存在だと感じていた。
「青城くんって結構告白されること多いから。それなのに誰ともつき合わないのは何故かなって、ちょっと気になって」
荻那の返答に紅はため息をつく。多いのかは分からないが、確かに『好きだ』と言われたことは何度かある。
「ごめ、聞かれたくないことだった?」
「いや」
慌てる彼女に対し、紅は立ち止まる。荻那もそれに合わせるように立ち止まったのだった。
「へえ」
【荻那 馨】は勉強家であると思う。彼女が興味を向けるものは、一般的な”女子学生のイメージ”を払拭するようなものばかり。
「先日は日本人と米国人の感覚の違いを視ていたんだけれど、それに関係していることだったから余計に興味が湧いたわ」
荻那は恐らく”相手に合わせて話題を選べるタイプ”の博識な人物なのだろうと思った。
「なかなか興味深いな。その感覚の違いとは?」
「これは食べ方の話になるけれど、日本人は『不衛生なものに不快感を持つ』けれど『米国人はマナーの悪さに不快感を持つ』みたいなの」
例えば日本人は『指を舐める』ことや『箸をなめる』ことに嫌悪感を示す。たしかに想像すると気持ちが悪い。
しかし米国人は平気でソースのついた指を舐めるし、海外は土足で家に入ることも当たり前だ。
だが一方で、麺類を食べる時にすする、音を立てることに不快感を示す。
そこが両者の感覚の違いというヤツなのだろう。
「なるほど。それでそこから帰国後の憂鬱とどう関係してくるんだ?」
「日本では靴を脱いで上がるところが多いわよね。特にホームステイなどをしてしまうとその習慣になれてしまう」
「うん」
「するとね、自分の家に帰った時に”綺麗にしている家”に他人が土足であがり込むことに不快感を覚えるようになるんですって」
確かに日本でも似たような感覚はあるだろう。しかしそれは相手に対しての不快感というよりは、ここに土足であがって良いのだろうかという不安だろう。
日本人は生活の中で自然と床の種類を見分けているものだと思う。モップ掛けできそうなフローリングや石という素材でできた床を靴で踏むことにはためらいはない。それは店などの床を視れば一目瞭然。
ただし、絨毯となると話は別。雨の日などは特に汚れるのではないかと懸念してしまうし、ホテルの床も当然罪悪感が芽生えることもある。
飲食店で出されるおしぼり。あれも日本の文化らしく、食事前に手を拭くことに慣れてしまうと辛く感じてしまうようだ。
ゴミ箱がなくても街が綺麗なのは、そもそも日本人は清潔にすることが当たり前であり、汚れていることが不快に感じやすい民族なのかもしれない。
そしてそれは水の豊富な日本だったからというのも否定はできないだろう。
「外国人は香水の匂いがするけれど、日本人は体臭も少ないし清潔な匂いがすると言っていたのも印象に残ったわ」
「そういう話を聞くと、日本人は恵まれているんだなと思うよ」
「そうね。毎日気軽にお風呂に入れるのは幸せよね」
嬉しそうに笑う荻那は可愛らしい。ぼんやりと荻那の方を見ていると、こちらに視線を移した彼女と目が合う。
「どうしたの、そんな見つめて」
「か……楽しそうだなと思って」
一瞬、『可愛いから』と言いそうになり『楽しそう』と変えたのはセクハラだなと思ったからだ。
「え、あ、うん。楽しいよ、青城くんと話すのは」
言い回しに違和感を持ったが気づかないフリをする。明確にしないのは触れられたくないことなのだろうと判断したから。
「あの……青城くんっておつき合いしている人とか、いたりする?」
「いや?」
恋愛相談だろうかと思った紅は正直に否定する。
「それは、”今は恋愛はいい”とかそういう理由で?」
「そういうわけじゃないが、何故そう思う?」
紅から見て、荻那は聡明だ。むやみに他人のプライベートに踏み込んでくるタイプではない。だから異性でも一緒にいて楽な存在だと感じていた。
「青城くんって結構告白されること多いから。それなのに誰ともつき合わないのは何故かなって、ちょっと気になって」
荻那の返答に紅はため息をつく。多いのかは分からないが、確かに『好きだ』と言われたことは何度かある。
「ごめ、聞かれたくないことだった?」
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