【異性恋愛】蜜と林檎と片想い

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
13 / 16
4話 初恋と彼 【Side:柊木 蜜花】

1 親友と自分

しおりを挟む
「青城くんとのデート、楽しかった?」
 週明け。校内で会った荻那に問う、蜜花。荻那は一瞬戸惑った表情を見せる。
「デート、デートなのかな。近くに出来た喫茶店に行っただけだよ」
 その後、彼がどんな格好だったや、どんな話をしたなどと報告を受けた。
 彼女の好きな相手が自分の好きな相手でなければどんなにか良かっただろうか。
「蜜花はどうだった?」
「どうって?」
「有馬と話したんでしょ?」
「ああ、有馬くん」
 確かにあの後、有馬と一緒には帰ったが。

『有馬くんは馨ちゃんと青城くんをくっつけようとしてるの?』
『無論、そのつもり』
 一言で言えば変な人だ。もっと言えばどうかしている。自分の好きな人と親友を、自らくっつけようとしているのだから。
『馨ちゃんは良いかもしれないけど、青城くんは?』
『どういう意味だ?』
 有馬は確かに人気がある。特に他校生に。きっと彼女たちは容姿に騙されているのではないかと思った。
 悪い人ではないが、変人としか言いようがない。いや、クレイジーだ。

 ──高身長だし、イケメンだとは思う。

『青城くんの意思は無視なの?』
『紅だって満更でもないだろ』
『何を見て、そう思うの』
 許せないとまでは言わないが、紅の意思は尊重する気がないのだろうか。せめて本人の意思確認はすべきだろうと思った。
『紅が仲の良い女子は荻那だけだ、今のところ』
『青城くんは女子が苦手なの?』
『いや、女子がと言うよりは』
 そのあとを濁した彼。
 腑に落ちないことだらけだ。

『それはそれとして、紅は俺たちをくっつけようとしてる』
 有馬の言葉に蜜花はゲンナリした。
『わたしはくっつく気ないけど?』
『安心しろ。その意思は尊重する』
『そもそもなんで青城くんはそんなことをしようとしてるの』
 大方原因を作ったのは有馬だろう。
『俺が君を好きだと言ったから』
『なんでそんな嘘つくの』
 やはり有馬はどうかしている。

「有馬くんはトチ狂った人って印象」
 蜜花はゲンナリした表情を浮かべ、片手の平を軽く上に向けた。理解に苦しむと言ったところか。
「有馬、何したの……一体」
「黙ってれば、素敵なイケメンだけどね」
 荻那が『どういうこと?』と腕組みをして首を傾げる。

「あ、青城くん」
 蜜花と話していたはずの荻那の視線は廊下の先に向けられていた。
「陛下……」
「陛下?」
 荻那につられて紅の方に視線を向けた蜜花。思わず呟いた言葉に荻那が反応する。
「いや、青城くんって陛下みたいだなと思って」
 廊下ですれ違う生徒たちに声をかけられる度に軽く手をあげ、にこやかに会釈する紅。その様子はまるで皇族が国民に手を振っているように見えた。
「青城くんはファンサに余念がないから」
 ぎゅっと拳を顔の横で握る荻那。それはまるで決断力のポーズに見えた。 
「あれってファンサービスなんだ」
 こっちは総理かと思いながら。

 紅がこちらに近づいてくるのを待っていた荻那は、途中で有馬が合流したのを見てあからさまに嫌な顔をした。
「おはよう、青城くんと有馬」
「おはよう」
 爽やかに挨拶を返す紅。蜜花もそれにならう。
「なんだ、あからさまに邪魔モノ扱いして」
 有馬は笑っている。
「気のせい、気のせい」
 『蜜花、またね』と言われ軽く手をあげ、その場を後にした。

 ──馨ちゃんには笑顔を向けるんだね、有馬くんは。

 紅が複雑な表情を浮かべて二人を見ていたことを思い出しながら。
「そりゃそうだ」
 有馬は紅に対して『蜜花が好き』とカミングアウトしているのに、その本命の前で他の女子と親しくしているのだから。

 ──あれじゃあ、青城くんが有馬くんの嘘に気づくのも時間の問題だと思うんだけど。
 
 もし、嘘だと知ったら紅はどうするのだろうか。不仲になってしまうこともあり得る。

 ──有馬くんは自業自得だけど、青城くんが傷つくのは嫌だな。

「あのトチ狂った人をなんとかしないと」
 蜜花は新たな悩みにため息を漏らしたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...