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4章 入学試験編 1次試験
37話 裏口
しおりを挟む俺は今1次試験のスタート地点に立っていた。本当に合格印付きスクロールを奪うとスタートに戻るのか……
やはり、チームメイトがゴールしている状態で俺だけがスクロールを奪うと俺だけスタート地点に飛ばされた。ここは予想通りだった。
ま、あとはシロネと一緒にゴールしてウタゲ先生に頭下げて入学許可を得れば完了だ。なんかあの人なら許してくれそうだし。
そう考えてると、影に隠れていたシロネが姿を現す。
「まさか、わしを入学させる方法がここまで強引だとは思わなかったのじゃ」
「いや、だってあの時咄嗟に思いついたんだからしょうがない。我ながら妙案だった」
「じゃが、残り日数大丈夫かの……こっから何日でーー」
シロネが気にしている日数はこっからは関係ない、というよりこれまでは俺自身の試験だったのでシロネの手助けは受けていなかった。
だが、今はシロネの試験と言っても過言ではないだろうか。つまるところ、こっからは俺とシロネ二人でどうにかすることになる。
「シロネの影属性があるじゃないか」
そう言って、シロネも理解したのか悪巧みする子供のようにシロネは笑う。
「確かに、これはわしの試験でもあると解釈してもいいの~じゃが、一つ聞きたいことがある」
「何かあるのか?」
「いや、このことは別に良いのだが。先程使用したスキル、お主はあそこまで広範囲使ったとこ見たことないのじゃがーーあれはどうやったのじゃ?」
うーむ。俺は顎に手をやり考えるふりをする。
実際のところ確かに、今の俺のレベルではあの広範囲に及ぶスキルは発動することができない。
本当のことを話すか否か……ただ、嘘つくとバレそうだしなぁーー仕方ない、話しますかな。
「課金アイテムだ」
俺はドヤ顔でいい放つ。これならば嘘もついていないし、シロネにはそれなりに強いアイテムとだけ言っとけば何とかなりそうだ。
ぶっちゃけ課金アイテムの存在はこちらの世界において、重要な、切り札的存在になるので極力誰であろうと情報は漏らしたくない。弱いアイテムならいいんだが、流石に中以上のアイテムは隠しておきたい。
「か、か……きん?」
やっぱりシロネは知らなそうだ。さっきからどういうアイテムかを模索しながら唸っている。
今回使ったのは中の下くらいのアイテムなので話てもいいだろう。
「えーっと、このアイテムは俺が元いた国に売っているアイテムでその総称を課金アイテムっていうんだ」
「ほう、アキトの国のアイテムじゃったのか……」
「で、今回使ったのが<範囲の拡大/フォーカスレンジ>って言って範囲魔法、スキルの効果範囲を2倍するアイテムだ。本来俺のスキルは自分を中心にして半径50mまでしか届かなかったが、このアイテムの効果で100m、彼奴らの元まで届くようになったんだ」
ま、ーー重ねがけ出来ないから中の下止まりである。
「因みにあのスキルの効果時間は3時間だ」
これがレベル100になると効果時間は1週間になる。この効果時間はOOPARTSオンラインの時は特に気にする部分じゃなかったけどこっちの世界では重要なポイントになってくる。
「なかなか便利なアイテムじゃの……」
「わしは理由を聞けてスッキリしたのじゃ、ぼちぼちゴールまで行くとするかの」
俺達は木の影の上に立ち、シロネがスキルを発動する。
「では、行くのじゃ。影魔法<影転送/シャドウワープ>」
その瞬間俺達は影の中に吸い寄せられるように入って行く。どこか生暖かい感触が肌に伝わり体が身震いする。
その差0コンマ1秒、気がつくとさっきまでいたゴール地点の近くの木の影の上に立っていた。
今だに、受験生はまだ俺のスキル効果時間内なのであの体勢でずっといたようだ。それを眺めていると一人の赤い髪の少女(ウタゲ先生)が俺達に勘付いたのかこちらに一直線で走ってくる。
だいぶご立腹の様子で、顔を真っ赤にして走って来るので、かなり怖い。
そのまま蹴りでもかまして来るかと思いきや意外と冷静で、俺の前で急停止し、胸ぐらをつかんでくる。ウタゲ先生の顔がすごく接近しきて若干驚いたが、その息の荒さからかなりの焦りと怒りが見て取れる……と観察している場合ではない。
「どうしたんですか?」
と、胸ぐらを掴まれているのでうまく声が出せず、ダミ声になってしまった。
「どうしたもこうしたもねえ!!何だあれはすぐに解け!!」
ウタゲ先生の顔と俺の顔はかなり近いのでウタゲ先生が怒鳴ることで、唾が顔にかかり若干の不快感と、満足感を味わいながらも答える。
「解くことは出来ますけど……」
「じゃあ、解け!!」
そう言われ、せっかく課金アイテムを使って効果時間もカサ増しした無意味さを惜しみつつスキルを解除する。
俺はもう一つ課金アイテムを併用していた。<効果時間の増幅/タイムアンプ>というアイテムで現状このスキルを俺は1時間半しか持続出来ない、なのでこのアイテムを使って効果時間を2倍に増やしていた。
OOPARTSオンラインでは、効果時間があるものにはこう言ったアイテムと併用して使うのが一般的で、逆に使わない方がおかしいまであったからなぁ。
ただ、このアイテムは1日に3回までしか使えず、なおかつ次使うまでに効果時間と同じだけ待たないと使えない。レベル100までいくと1回使うと1週間以上のクールタイムがでてしまうので基本的に効果時間が短いスキルや魔法の時間を伸ばすのがベターになっていた。
スキルを解除された貴族達受験生はのそのそと起き上がる人たちもいれば全く起き上がる気配がないものまでいた。
「何人かは窒息しかけてる状態で何とかそれを死なないようシェルが回復魔法で持ちこたえているってかんじだ」
その俺の疑問を解消してくれる答えをウタゲ先生が言ってくれる。
「他にも、女達は自分のメイクが剥がれ落ちて今の顔を他のやつに見せたくないとか、単純に意識がないやつもいるし、死の恐怖で失禁したやつだっている」
「私も極力助けようとは思ったんだがな、あいつらに近づくと私まで重くなるんだ。シェルの回復が遠くからでも効果があってよかったよ」
言いたいことは言ったのかウタゲ先生の掴む力がさらに増す。
今度は俺が窒息しちゃうーと苦しそうな芝居いをうちながら、解放されるのを大人しく待つ。
すると、俺の後方にいるシロネを見てウタゲ先生が眉を動かす。
「そいつは誰だ?」
「やだなぁ~今回の受験生の一人じゃないですか~」
と、何とかごまかしてみる。
「そうだっけか?」
本当に騙されているのかウタゲ先生は首を傾げる。
「はい!」
俺が普段したこともないような笑顔を見せる。その刹那ーー
「んなわけあるかぁあああああ!!!!」
「ふぐぅう」
俺の右腹にボディブローを打ち込まれる。もろに入り一瞬息が出来なくなり、そのまま放り投げられる。
そのまま、俺はうずくまりつつ無言で静かにスムーズな動きで土下座のポーズをとる。
「な、なんだよ?」
これには本当に驚いたようで、ウタゲ先生もじゃっかん動揺している。
「いえ、ここにいるシロネにも入学を許可していただきたくーー」
「なるほどな、そういうことか……」
すると、俺の意図がわかったのか、ウタゲ先生は頭を抑え考え出す。
「はぁ~分かった分かった別に構わん、だからそのスキルを再度発動させようとするのは寄せ」
そう、俺は最終手段に貴族達を人質に交渉しようとしていたのだが、それはウタゲ先生も分かっていたらしく、降参と言ったばかりに了承してくれた。
最終的にかなり強引な手段を取ってしまったーーこれで、借りが一つ出来てしまった。
「ありがとうございます」
「ま、私も最初は受験生を削る気でやってたけど今となっちゃもうどうにでもなれって感じだし、別にいいよ……」
ーーこっち方がじじいには効果的だろうしなーー
最後に凄く小さな声で何か言っていたが、聞き取れなかった。
「そんじゃ、スクロールは持ってるんだろうし一応手続きだけはしといてくれ。さっさとゴール行け、後のことは私たちがやっとく」
そう言い残して、ウタゲ先生はシェル試験官の元へ再び戻って行った。
結構大雑把な人だったけど意外といい先生だったな。俺の中で先生の株が一気に上がる。
「すまんのわしのためにお主に嫌な役を押し付けてしまってーー」
しょんぼりしながら、後ろにいたシロネが言ってくる。
こういうとこほんと真面目だな……まぁシロネなりに思うとこがあるんだろう。
「気にするな、ほら早く1次試験突破だ」
本当なら「友達なんだから」を前につけたかったが、気恥ずかしすぎて言えなかった……俺もまだまだ子供な証拠だ。
ちょうど夕日が綺麗に見える時間帯になり、辺りが紅葉のように木々草花全てが赤く照らされる。
俺は気恥ずかしさの余韻に浸りながらゆったりとゴールに向け歩き出す。
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