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4章 入学試験編 1次試験
38話 宿屋
しおりを挟む結局、あの後1次試験自体の残り日数はまだあったが合格者数と脱落者数で全ての受験生の結果が出たので強制終了となった。
結果、123人中俺ら6人、ハヤトのチームとその側近にいた人達10名、俺のスキルを受けた約100人中20人、合計36名が2次試験まで残った。本来1次試験でここまでの人数が落ちることはまずなかったららしい。
日付は変わって今、俺達は最初にウタゲ先生が1次試験のルール説明をしたところに合格者が集められている。
昨日負傷した人達は現在療養中で、今回というかこれまで試験官にまで身内を仕込ませていたことが露呈しないよう上から圧力があったらしくそれと引き換えに今回の負傷者には目を瞑れと学園側も強く出ているらしい。
悪い意味でwinwinの条件だ、今回は貴族達もそれで納得したと、ウタゲ先生から個人的に聞いていた。
因みにシロネはまた俺の影の中に入っている。
今は後ろの方で6人固まってウタゲ先生の話を聞いている。
2次試験の概要だ。
次の2次試験まではこれもまた準備が必要で、1週間後に開始するそうだ。試験内容は1次試験同様当日までは教えてもらえない。
一通りウタゲ先生が喋り終わると、壇上の上から降りる。それが解散の合図のように受験生達は皆散っていく。
俺はハヤトの方を何気なく見てみる。すると、最初いた周りの女貴族達はいなくなっており、今はチームメイトが周りにいる。
恐らくあの100人の中にいたんだろうなぁと思いつつこれからどうしようかと考える。
あの残った20人の何人かからの視線を感じながら思い耽っていた。
「アキトこれからどうするよ」
後ろからバルトが何度も俺の肩を叩き聞いてくる。それは他の5人も同じだったのかその答えをじっと待つ。
え……俺これから宿に帰って、ご飯でも食べて、寝ようかと思っていたんだがーーみんな各々宿に行ったり、特訓したり、街を見て回ったりするんじゃないのかね……
「皆さんはどこに宿泊してるんですか?」
メガネくんがそう切り出す。ん?宿泊……そんなの各々適当じゃないの?
そう思っていると、それぞれ愚痴を溢しはじめる。
「俺は妹と来てんだけどよー部屋がそのせいで狭いんだよなー」
バルトよ、お前は一番ダメージを受けたんだ、妹さんにでも介抱してもらうといい。
「私たちが泊まっているとこはご飯が付いてなくて……なかなか大変です」
エーフが言い、トルスが同意と言わんばかりに首を縦に振っている。
この街に、というか帝国は食料系強いんじゃなかったっけ?街に出れば美味しいものはたくさん食べれると思うんだけどなぁ~
「私は近くの森で野宿」
えぇ!!とユイの発言を聞き、俺以外のみんなが驚く。そりゃそうだろうこんな女の子が野宿してるんだ親じゃなくても心配になるのは当然だ。
「大丈夫、私は自然が好きだから……」
しかも一人ときた、自分に置き換えて考えているのだろうか、皆顔が少し青白いーー同じ女性同士思うところがあったのかエーフがユイを強く抱きしめる。
「苦しいぃ……」
こりゃ本気だ。エーフの目がさっきまでの雰囲気と一変して今は何が何でも宿に連れていく目をしている。ちょっと怖い……
「今日はこのまま離さないからね!!」
そう言いエーフは手を掴む勢いで手を繋ぎ、その上、手が離れないよう、魔法をかける始末。
それは、流石にやり過ぎかと思ったのかメガネくんが慌ててやめさせる。結果普通に手を繋ぎ時より抱きしめるというちょっと愛が強い姉妹みたいな関係の完成だ。
「はーどっかに部屋がそれなり広くて、料理が美味くて、自然っぽい木を基調とした宿屋ないかなぁ~」
バルトがわかりやすくため息をつく。なんだ、まるで俺が泊めてもらっている宿屋パイオニアではないか……
(良いではないか誘えば、ホルドも喜ぶのじゃ)
そうだな、流石にユイがあの状態はちょっと心配だし、これも何かの縁と思えばな。
皆が悩む中、俺は覚悟を決め左手を挙手する。全員の視線が一斉にこちらに向き、なぜか緊張感が俺の中に走る。
「俺が泊まってる宿屋は値段の割に料理も美味くて、部屋も別に狭くはないし、自然感というか木造建築だがどうかな」
言った瞬間皆が静まり返る。てっきり何か言われるのかと思ったんだが……
「アキトお前……それほんとか?」
え、何、何なんだよ。皆から向けられる疑いの目。
「ホントだって、今日この後見にいくか?」
ということで6人と影の中1人で、俺達が泊まっている宿に向かうことになった。途中街の出店で買い食いしたり、装飾品を見たりと思えばこの街に来て、全くこういうのをしていなかった。
しっかり街並みを見るのも意外と初だったりする。
出店が並んでいる場所は人だかりができ、混み合っていた。周りの建物も中世ヨーロッパ風のいかにもなファンタジー的な街並みだ。オンラインゲームでよくある始まりの街的なイメージが強い。
道路もしっかりと整備されており、石畳で出来た道が東西南北ある門に十字架状に繋がっており、そこから細々とした道もしっかりと整備されている。街が正四角形に近い形になっており、中央に向けて地表が高くなっている。まだ、元の世界のような排水設備がないのか洪水にならないよう外に向けて水が流れていくような構造になっている。
その水を排出する各出入り口には川が繋がれており、そこから街の中の川へUターンするものとそのまま外の川に行く道、2つに別れている。
ところどころに木々が生え、カフェテラスのような食事処もあり、やはり食に関してはバラエティが豊富そうだ。
そして、全体的に色が白と青を基調としており、時々清掃している人も見かけられ清潔感のある街だ。
軽い軽食がてら出店のご飯を食べ歩き、雑貨屋や武器やなど適当に見て回っていたらもうお昼過ぎになっており、ちょっと急ぎめで宿に向かうことになった。
俺達は最初バルトと出会った通りを抜け、宿屋パイオニアの看板が見えてくる。
街の中では裏側のほうにあるので確かにここは気付かれにくいかもな。
バルトが我先にと走って行き、その後を追って俺達もついて行く。
そのままの勢いで、宿屋の扉を開けるバルト。
その刹那。
「うわぁああ!!」
間抜けに驚いたバルトの声が響く。そこにはホルドさんの姿があった。遠目からでもよくわかるーー
ちょうど扉を開けようとしたホルドさんとバルトのタイミングが合い驚いたのだろう。
いや、まぁそれだけじゃないと思うけど……
そう、ホルドさんはまじででかいのだ。俺とよりも少し大きく大体180cm後半くらいあるだろうか、そしてその筋肉のつき具合によってさらに威圧感を増している。その上女装しているのだから100%バルトが驚いたのはこっちが原因だろうな。
いやんーーと言ってホルドさんはよろけるふりをする。
いや、あなた絶対その程度でよろけないでしょ。
近くにいる俺達に向けバルトが涙目走ってくる。
「アキト騙したな!!俺を罠にはめるとはーー」
まぁ誰しもこの店主を見たらこの反応にはなるだろうな。だがな、バルトよ人は見かけによらないってよく言うだろうーー
「あら?アキトちゃんもう帰りなの~」
ホルドさんが俺を見つけバルトが言おうとしていたことを遮り、話しかけてくる。
「ええ、1次試験が意外と早く終わったので」
そう言って、宿屋の入り口の前に到着する。3、4日いなかっただけでもう懐かしさがある。
宿屋の中に入ると、皆感嘆を漏らす。さっきまでわめいていたバルトも静かになった。
そう、意外にもホルドさんは俺達がいなかった3、4日で1階の内装をリフォームしていた(1人で)
前よりも、少し暗めな雰囲気で、どこか西部劇を思わせるような装飾品、テーブルは四角型ではなく角がなくなり円型になっている。厨房も一新したらしく新しい食器や調理器具が並んでいた。あのギシギシ音がなっていた階段も素材はそのままで直してあったりとかなり変わっていた。
俺達はその円形状の机に座る。
「この子達はどうしたの?」
「試験で仲良くなって、宿屋を探しているって聞いたのでここに連れてきました」
すると、ホルドさんは人数を人差し指で数え始める。少し残念そうな顔をしながら言う。
「ごめんなさいねぇ~全員は難しいかもシングルが4つしか空いてなくて……ダブルならあるんだけどーー」
「私達ダブルでいいよ」
そう言って、エーフとユイがダブルを選択する。同じくバルトもダブルを選んでいる。妹と一緒だからな。
「せっかくだから僕達もダブルにする?」
「問題ない、俺もそっちのほうがいい」
これで、エーフ&ユイペア、エル&トルスペア、バルト&バルト妹ペアが仮で決まる。
あとは、部屋などを見てこっちに来るかどうか決めるらしい。
「良かったわぁ~それじゃまずは自己紹介ね。私はホルドこの宿屋パイオニアの店主よろしくね」
そう言ってホルドさんは右目を閉じバルトに向けウィンクを送る。ウィンクを受けたバルトはホルドさんを直視しないよう頑張っていた。
あとは頑張れバルト!
ホルドさんにロックオンされたバルトは徐々に顔が青褪めていく。
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