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4章 入学試験編 1次試験
39話 超人
しおりを挟む「そういえば僕達もまだ、ちゃんとした自己紹介まだだったね」
メガネくんがそう切り出し、俺らもメガネくんから時計回りに改めて自己紹介をしていく。
「僕は、エルと言います。えっとスルト村出身で、魔法の方が得意です、趣味は僕は光属性が得意なので自分用の部屋の灯を作ったりすることです、よろしく……」
お~なんだろうこの感じーー新しいクラスや学校に言った時のことを思い出す。
皆拍手する。拍手って誰かやんないとやれないよな……一発目叩くの勇気いるよなぁ。
そんな感じで思い出に耽っていると次のエーフが自己紹介を始める。
「私は、エーフと言います。エルと同じくスルト村出身で、得意なことは歌を歌うことです。あと、可愛いものに抱きつくのも好きです。よろしくお願いします」
そう言って頭を下げる。それを合図に拍手が起こる。
次はトルスの番だ。
「俺はトルスという。日々トレーニングをすることが俺の好きなことだ。よろしく」
トルスは短く済ませると、次へと促す。その瞬間拍手が生まれる。
バルトは立ち上がり、元気よく叫ぶ。
「俺はバルト・ベル!!アツタ村出身、好きな食べ物は肉!!それと女ーー」
その瞬間ユイに膝を足の裏側から滑らかに蹴られ、ゆっくりと崩れ落ちる。
膝カックンを初めてくらったのか、よろめきながら立ち上がる。
「ユイてめぇー!!」
バルトには見向きもせずユイがバルトの自己紹介を強制終了させ、そのまま自分の自己紹介に移る。もちろんバルトの自己紹介には拍手が起きなかった。
「私はユイ・ネイトル、シロシ村出身です、趣味は日光浴で自然と戯れることが好きです。よろしく……」
シロシ村は結構有名らしく皆いろいろ話している。拍手をしながら話している。バルトも律儀にしっかり拍手している。
俺はそんな話についていける訳もなく……いや、拍手はちゃんとしているよーー
そんなことを思っていると皆の視線がこちらに注がれる。あ、次俺じゃん。
俺は立ち上がると、ごほんと咳き込み一拍置く。
さて、どうしたものか。好きなものとかはいいんだけど、出身村とか知らんのだが……適当にでっち上げるしかないかーー
「えーっと名前はアキトって言います、好きなことはアイテムボックスいじり、あと最近は朝にいつもやってるランニングにハマってる。出身村はニホン村というとこから来ました、よろしく」
捻りも何もないそのままの事を言う。皆聞いた事ないのか(絶対聞いた事ないだろう)頭の上にクエスチョンマークが浮かんだように考えている。皆の頭の中にこの村の記憶がないことを確認して座る。
よかったぁ~これで知ってるとか言われたら面倒くさいことになっていたとこだ。あれ?拍手ないんだけど……
俺が座り込むと、ホルドさんがこちらに視線を向けて来る。だが、その視線で全てを理解する。
成る程、まだ自己紹介していない奴がいましたねぇ~
「ごめんみんな、もう1人紹介したいんだけどいいかな?」
(おい!!アキトお主やりおったの!!やりおったのじゃ)
シロネがめちゃくちゃ慌てている。久しぶりにこの感じのシロネを見た気がする。
(シロネ、逃げ場はない観念して出てこい)
「もう1人って誰もいないぞ」
トルスが周りを見渡しながら言う。そりゃ影の中にいるからな、見つかる訳ない。
(ほら、時間かけるとさらに出づらくなるぞ)
(わかったわかったのじゃ行くから少し待つのじゃ)
シロネは観念し、影から静かにみんなの視線の死角から登場する。誰も気づいていない。
「俺が、シロネの方へ目をやるとみんながそちらを向く」
その瞬間、この場にいるホルドさんと俺以外全員が息を呑む。そりゃそうだろう、さっきまでいなかった場所に少女が立っているのだからしかも超絶美少女だ。
不意にみんなからの視線がきて驚いたのかシロネの顔が若干赤いーー
「わ、わわわしはシロネ・ラムというのじゃ。1次試験を突破したもの同士仲良くしてほしいのじゃ……」
そう言って頭を下げる。
すると、見たこともない速さでというかもうシロネの後ろにエーフが移動しており、抱きつく寸前だった。
いつものシロネなら容易く回避するだろうが、緊張していて不意を突かれたのか簡単に捕まる。しかもエーフは片手をユイに繋いだ状態で……
そのままシロネを自分の膝の上に乗せる。側から見たらお母さんとその子供だ。
「アキトよ今何か失礼なこと考えておったじゃろ」
俺は咄嗟に顔を逸らす。それを見て反撃しようとシロネが動こうとしているのだが全く抜け出せない。なんという締め付け……エーフ恐るべし。
「よろしくねシロネちゃんでいいのかな?」
「シロネでよい、そっちの方が恥ずかしいからの」
「僕はエル、よろしくね」
「よろしくなのじゃ」
「俺はトルスという、これからよろしく」
「うむ、よろしくなのじゃ」
そう言って両者と握手を交わし、あと女性陣だが……こちらは問題なさそうだ。
「それじゃ私はご飯作って来るわね♪今日は私の奢りでいいわん」
ホルドさんはやけに嬉しそうに厨房へ向かう。
「アキトちゃん、悪いんだけど倉庫から食材持って来てくれる?」
「分かりました」
そう言って、俺は立ち上がり倉庫へ向かう。
「僕も行くよー」
俺の後をメガネくんも追て来る。
昼なのに少し暗い倉庫の中でホルドさんに言われた食材を探す。前回シロネの事を聞いた倉庫だ。
「アキト本当にありがとうね」
突然、言い出すので少し動作が止まってしまう。
「いや、別に感謝される程でもない……俺は俺がしたいようにやっただけだ」
「そうだとしても、やっぱり3人を代表してお礼はしときたかったんだ」
俺はまた食材探しを再開する。
「それに、まだ合格したわけじゃないだろ。むしろここからだ」
「そうだねーーでも、やっぱり助けられたからさ」
「分かったよその気持ち受け取っておくよ……」
「ありがとう」
それからは特に喋ることもなく黙々と食材を探す。ていうか、これもホルドさんの……な訳ないか。
「なんとか終わったな」
あれから10分少々で全ての食材を見つけ出した。
「終ったねぇ~」
なかなかに量があって時間を取られてしまった。しゃがんで探すことが多かったので腰が痛い。
俺達がみんなの元へ戻るとホルドさんの料理は半分以上完成していた。
「これで大丈夫ですか?」
ホルドさんに持って来た食材を見せる。網状の籠の中には10種類の元の世界で見たこともない食材が入っている。
基本食材は綺麗に並んでおり、名前が書いてあったので分かるには分かったけど果たしてあっているのか……
ホルドさんが籠の上から覗き込み、数秒眺めるそして微笑みながら親指を立てこちらに向ける。
どうやらOKのようだ。俺とメガネくんはほっとしみんなのいる席に着く。
さらに十分ほどが経ち、ホルドさんが料理を持って来てくれる。机の上ぎっしりになるほど料理が置かれ。僕らは唖然としながら見ていた。どれも涎が垂れそうなほど美味しそうな匂いを放っている、絶対美味しいと確信できるのだが、量がおそらく14人前くらいある。
こんなに出してやっていけるのか心配になるレベルなのだが、ホルドさんは終始ニコニコ顔で最初は微笑ましかったのだが、途中から恐怖に変わっていた。
流石に出してもらった以上残すことはできない……
「どうぞ召し上がれ~」
「ありがとうございます」
そう言われ、黙々と食べ始める一同。
「こんなに食べられるの久しぶりだな。めっちゃ食うぜ!!」
「当然!!」
バルトとトルスが勢いよく食べ始める。一心不乱に食べる2人は休憩という言葉を知らないのか一切ペースが落ちない。
結果俺達は通常の1人前を食べ、残りの約9人前を2人で平らげやがったのだ。
「ホルドさんめっちゃうまかったありがとう!!」
「感謝する」
バルトとトルスは食後のデザートを食べながらお礼を言う。
食後デザートを食べながらこれからどうするかを話し合っていた。
「俺はここに決めた、早速宿を移す準備するぜ」
そう言って、バルトは走って行ってしまった。相変わらず忙しないやつだ。
「私たちもここにする」
女性陣シロネを除く2人もどうやらここにするらしい。トルスも同意といったように首を縦に振っていた。
「僕もここにします」
メガネくんが同意しこれで全員がここに集結することになった。
「最後に聞きたいのですが、ここの宿屋の料金っていくらほどですか?」
ぶっちゃけここが一番大事な部分だろう、聞きづらい質問だしな。ホルドさんは黙って俺らを1人々観察するように見る。
「そうねぇまずダブルはシングルの2倍の料金ということだけ抑えてちょうだい~」
「大丈夫安心して、ダブルは2人でその金額だから~」
ダブルを選択していた人たちにウィンクをする。
ぶっちゃけこの辺りの宿屋の相場を知らないからよくわからんがそういえば俺も出世払いとか言われててちゃんとした値段聞くの初めてだ。
「料金はね1日3食付けて5000ルーエよん」
そう言われみんなおし黙る。5000ルーエ日本円で5000円だこの辺りは日本と同じで分かり易い。
「この辺りの宿屋の相場って1泊3食付きで約10000ルーエが一般的ですよ」
メガネくんがとんでもない事を言い出す。
「え?じゃあ半分の値段……」
「私のことは大丈夫よん~人件費は私1人だし、食料も裏にある畑もしくは近くの森で採集してるの、それに私は冒険者資格を持ってるーーだからこそここまで出来るのよん♪」
根菜系は森で採集し、肉魚系は冒険者の依頼の序でに取って来るって感じか。他の宿屋だと商人やギルドなどから直接買い取らないといけない。ホルドさんならではのやり方、というかこの人が超人すぎるだけだ。
そう言うと無言で全員宿屋パイオニアから出て行くのだった。
そう、ここへ自分の荷物を持って来るために……
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