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6章 入学試験 2次試験編
48話 一回戦
しおりを挟む抽選後、俺は1人寂しく部屋の隅で涙を流していた。
他のみんなはハイタッチを交わし同じブロックになれたのを喜び合っている。
そう、俺だけAブロックだったのだ。他のみんなは全員Bブロックなのにだよ!!
気まづそうなエルが何か言いたそうに近づいてくる。後ろではバルトとシロネが笑いを堪えているのが見える。くっそ後で覚えてろよ……
「俺のことは気にするなエル……1人は慣れてるから」
「決勝で会おうねーー」
そう言うと俺以外の全員がBブロックの会場に行ってしまう。いざ、1人になると辺りは静まり返り、その静けさが悲しみを運んでくる。
俺はアイテムボックスからOOPARTSオンラインの時作ってもらったトマトジュースを取り出しちびちび飲む。
恐らく、移動が完了したのか。それぞれの控え室にアナウンスが入り、トーナメント表が各控え室にあるマジックミラーというアイテムに映し出される。
Aブロックには俺の他にハヤトの名前もあったが当たるのはブロックの決勝だ。どうせならブロックが違った方が熱い展開だったなぁと思いながら俺はトーナメント表の一番下に位置しハヤトは一番上、時間がかなりあるので俺はハヤトの試合でも見ようと思い控え室を出る。
闘技場までのさっきまでの道を途中で右に逸れ、受験生の観戦スペースまで移動する。1回戦からハヤトの試合なだけあって受験生用観戦スペースにも人が結構いた。
選手はもう入場しており、闘技場の中央で審判に説明を再度されているところだった。
あと、10分後ぐらいに開始らしいのでトマトジュースを飲みながら隅の空いてるスペースに座る。ちなみにトマトジュースはペットボトルのやつだ。街を散策してみてもペットボトルらしき入れ物は一切見なかったし、空き缶などあっちの世界にあったものがないこともあるので。こういった物の管理はしっかりしないといけない。なのでアイテムボックスにゴミ枠を新たに作ってある。
やっぱりうまいな……
このトマトジュースはOOPARTSオンラインの結社<クラン>にいた頃に、庭で栽培していたトマトで作ったものだ。最初はバフ効果などをつけようかとも迷ったがそれを付けると味が悪くなるので止めた。美味しければよかったのでその考えはすぐに捨てたんだったーーまぁ後々にアップデートで味を調節できるアイテムも出てきたが、その頃には大量のトマトジュースを作って持っていたが、それを1個々調節するのが面倒くさすぎて途中で放棄したんだっけ……
そんな懐かしさに浸りながらトマトジュースを飲み終えアイテムボックスにしまうとちょうどトーナメント1回戦が始まろうとしていた。
1人はハヤトで、もうひとりは貴族のやつだった。貴族なのに若干細身で(偏見)、なおかつ顔もそんなにいいと思えるほどでもない感じのやつだ(あくまでハヤトを基準とした場合)。前歯が出ており、短髪茶髪で、目が細く持っている武器は短剣だ。
あまり、ハヤトを良く思っていないのかこっちから見ると確実に睨みつけているとしか思えなかった。
何かやられた過去でも持つのだろうか……
ハヤトはハヤトで何にも持っていない素手だ。なんの動揺もない綺麗な公爵スマイルで表情を一切崩さない。
多分相手が睨んでいる理由はそこだろう。お前ごとき素手で十分と捉えたのか、何か隠し持っているのではないかと捉えているのかは知らんが。どっちだろうと目を細め、睨むことにはなるだろうな。
「さぁあああやってまいりましたー!!Aブロック2次試験トーナメント第1回戦はなんとあのゾルディ公爵家の末っ子ハヤト・ゾルディ選手だー!!!!」
「「「うぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」
実況のハイテンションな声が闘技場に響き渡ると歓声もさっきより熱を増す。女性の声も響くのが良くわかるくらい女性率が歓声の女性率が上がった。確実にハヤト効果だろうーーBブロックの方にも人が移っているはずなのだが、さっきよりなぜか増えてるし。
闘技場の後方には控え室にあったマジックミラーの巨大バージョンとでも言うのか……かなり大きいマジックミラーにトーナメント表が映し出されている。AブロックだけではなくBブロックの方のトーナメント表も映し出されており、進行状況が分かりやすくて助かる。
「今日の来賓席にはゾルディ家当主ガルド・ゾルディ公爵様に足を運んでいただいております!」
大きな歓声がまた響く。親に試験を見られるなんて貴族様は大変だなぁと俺はぼーっと考えていた。
来賓席には他にも多くの貴族達がいたので恐らくここにいる親御さんに違いないだろうな。子供が負けたり勝ったりと一喜一憂するだろうが、もう合格は決まっているのでただ疲れるだけになりだけだろうが……
「対しますわぁあああ!!えぇーっとはい!貴族のカーブル・トイ選手ですー!!!」
ハヤトよりは小さいが歓声が上がる。流石に公爵と貴族では格が違いすぎる当然の反応だろう。
そして、紹介のあった両者は向かい会い20m程離れる。そこが初期位置らしい。審判が両者を見交わし、右手を振り上げる。
その振り上げた勢いのまま、手を振り下ろす。
『始め!!!』
「試合開始だぁあああああ!!」
「「「うぉおああああおおおおお!!!」」」
始めの合図と共に両者は後ろに下がる。カーブルはそのままアイテムボックスからマントのような布製の自分を覆える程の大きさの物を取り出し本当にマントのように装着する。この試験では3つだけアイテムを使うことが可能だ。
事前に試験官の厳重なチェックが入る、さらに明らかなアイテムによる差が出ることも考慮してアイテムのランク(レア度)には制限もあるらしい。
武器は学園からの貸出用のみ使用可能で、数にも制限は無い。
アイテムで言うと一番回復薬が無難だろう、回復できるアドバンテージはでかい。そうなると自分で回復魔法や回復スキルを使える人はアイテム選びに幅が利くので有利にはなるだろうな。
俺もアイテムは持っていくつもりだが、ランク制限があるので結構適当に選んだ。ぶっちゃけ負けてもいい試合なのでそこまでしっかりとは選んでいない。
カーブルはその布を自分を覆うように被ると姿が見えなくなる。恐らくだが、あのアイテム<見えざる布/インビジブルカーテン>見えなくなると言っても時間制限があるし、ランクの低いアイテムなので粗が目立つ。
もっとランクが高いものだと、つけている間はずっと見えず、音、匂い、感覚などあらゆるもの遮断することができ、かなり強力だ。
だが、低ランクだからと言って決して侮ることは危険だし、この受験生レベルが相手だったらかなり強いアイテムの部類になってたかもしれないが……
相手が悪い。
「おーっとカーブル選手が消えたぞ~!!」
ハヤトは相手が消えたにも関わらず一切表情一つ変えず、笑顔のままその場から動かない。カーブルはその隙だらけのところに短剣を次々と投げ込む。短剣はさっきの<見えざる布/インビジブルカーテン>に隠されており、そこから短剣を取り出しては投げる行為を繰り返す。
しかし、その投げられた短剣は確実にハヤトの急所に直撃して本来なら倒れているはずだ。しかし、さっきから無我夢中に短剣を投げていたカーブルも気がつく。
そう、短剣は当たっているのにも関わらず一切の傷、ダメージを負っていないのだ。投げられた短剣はまるでおもちゃのようにハヤトに当たってはそのままハヤトの体をつたい地面に落ち、さっきから投げた分の短剣が地面に転がっている。
その焦りでき気づかなかったのだろう、もうすでにカーブルの真上に魔法が展開されていることが……
「つまんない」
そうハヤトが呟くと、上空から大量の水がカーブルに押し寄せる。
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