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6章 入学試験 2次試験編
54話 疑問
しおりを挟む俺はハヤトが跳躍した瞬間、左手に躱す形で移動しハヤトの側面からの攻撃を試みる。ハヤトは跳躍しているので途中で軌道は変えられない。しかし、予想以上の速さの接近で躱すのがギリギリになってしまう。ハヤトが着地すると着地地点にはハヤトを中心にして円状に砂埃が散る。ハヤトは着地した瞬間にその勢いのまま足を限界まで曲げその反動でこちらに方向転換してくる。
拳を構え腕を引き跳躍中なのにも関わらず腰をひねり見事な体勢に持っていく。そのままハヤトは拳を振り抜き俺は咄嗟に腕を出そうと脳が体に命令する。
が、脳が命令しただけで実際には体が勝手に避ける方を選択する。ハヤトから放たれる拳を手で受け流し間一髪で躱す。
すると、俺の後方から轟音が鳴り響く。俺は振り向き後方の状況を確認すると闘技場の石畳が無残にえぐり取られており、もはや修復不可能な状態になっていた。
その時、体の自由が利かないほどの風が吹き荒れ俺は場外ギリギリ石畳の角のところまで吹き飛ばされる。俺はなんとか受け身を取りながら体勢を起こす。
そして、顔をあげると石畳に敷かれていた砂が波を打つような斑模様になっておりハヤトの付近を見ると石畳が削り取られ所々地面が見えている。
会場にとんでもない風が吹き荒れあたりの砂が舞い散り審判も吹き飛ばされ場外に飛び、周りにいた試験官も何メートルか吹き飛ばされており下手したら俺より深傷を負った人もいる、観客も軽いパニック状態になっている。
ハヤトが繰り出したのは拳から放たれる刃の風。
超天気風スキル<季節殺嵐/モン・ススーン>だ、これは瞬間的な台風のような威力のある風が吹きさらし、その風は刃の様に風に触れたものを切り刻む。
「な、な、なんということだぁああ!!とんでもない風により会場はパニック状態だああああ!!!私も何が起こったのか認識するのに時間がかかったくらいです!」
風は徐々に収まってはいるがいまだに気をぬくと足を持って行かれるくらいの風が吹いている。
その中を悠々と歩くハヤト。
……くそっ!!
俺自身こんなに間髪入れず超属性を放つとは思ってもいなかった。もう少し大事に扱ってくると踏んでたのだが裏目に出てしまった。
それにあの出し惜しみ感のなさからハヤトはまだSPやMPに余裕があるんじゃないか思っている。そうなるとかなり分が悪くなる。まぁもしかしたらこれすらブラフでSPやMPに余裕はなくあえて雑に扱うことでこちらに選択肢を絞らせない様にしているのかもしれないがどちらにせよこっちが混乱しているのは間違いない。
すると、やっと風が完全に収まり辺りは静かになる。観客とこの闘技場の間には試験官があらかじめに発動していた結界魔法が貼られており直接的な被害はないが、あの光景を見ればパニックになるのも仕方がない。今は落ち着いたのか逆に皆真剣な表情になりこちらの戦いを見ている。さっきまでの歓声が嘘のようだ。
だがこのスキルが恐ろしいのはこの風だけではない、むしろこの後の方が重要だ。
超天気風スキル<季節殺嵐/モン・ススーン>には追加効果があり、風の中に見えない刃が混ざっており、それが付着するとノコギリでスパッと指を切った時の様な傷を負う。だが、その効果の発動のタイミングはハヤト自身が握っており、いつ発動されてもおかしくないのだ。さっきかなりの間風を受けてしまったので俺の全身には無数の刃がひっついている状態だ。
1つ1つは大したダメージではないがそれが重なれば大ダメージとなる。塵も積もれば刃になるということだ。うん、違うな。
だが、そんなのに怯えて攻撃が弱くなる方が悪手だ。こっちもお返ししてやる。
まずは!!
「重力スキル<地に伏す者/グラビィテオングラウンド>」
再び、ハヤトは地面に伏す形で足を付き両手を地面に付いて支える。これを使ったことにより超属性スキルが本来なら2発撃てたところが後1発だけになる。だが、これでハヤトの動きは封じた。
さらに、ここに追い討ちをかける。
超重力スキル<重力精密操作/グラビティ・プリセージョン>を発動する。このスキルは重力を一時的に操作可能になり、俺を中心にして半径約100mの中にある、物体の重力をいじる事ができる。
そして、今回俺が操作する物体は……そう、
この石畳だ。
発動すると俺が立っている以外の場所の石畳が徐々に動き出す。まだ、この段階ではハヤトには気づかれてはいない。この揺れの警戒はしているようだが、まだこのことには気づいてはいない。
そして意識を集中し、石畳の下にある重力を操作し下に向いている重力をハヤトの頭上50mに設定する。
準備完了。
俺は自分の中で数を数え息を整える。そしてーースキルを発動する!!
さっきまで少し揺れていた地面が一斉にハヤトの頭上めがけ飛ぶ筈だった……
俺の予想では石畳がハヤトに飛んでいき攻撃するものだと思っていたが、石畳はどうやら全てくっついているらしく上手くいかないのが分かった。
なので俺はすぐに予定変更し、さっきは石畳全てを操作していたのをハヤトがいる石畳の列とその両隣だけ残し他すべてをハヤトの頭上に設定する。
すると、折り紙の谷折りの様に石畳が持ち上がり、そのままハヤトを押し潰す形で最初設定したハヤトの頭上めがけ時速約40kmで閉じようとする。
石畳が持ち上がるの光景は凄まじく、敷いてあった砂が舞い散りながら雨の様に降り、さっきのハヤトの攻撃で抉れた部分の崩れた石版が降ってきたりと小さな天変地異が起こっていた。
実況も口を開け何も発せておらず観客も唖然としていた。
そして、徐々に閉まりハヤトが押しつぶされると思った瞬間。
ハヤトはあらかじめ隠し持っていたアイテムをなんとか服から取り出し使用する。それを俺は見逃さなかった。
そのアイテムを使った途端ハヤトは何事もなかったかの様に起き上がりさっきのハヤトの攻撃で抉れた部分が穴になっておりそこを通り抜け脱出する。
その数秒後に石畳同士が重なり閉じそのぶつかった衝撃で砕ける。そしてその瞬間にスキルの効果が解け一気に石畳が瓦解し、降ってくる。
石畳の破片と地面が交わりいたるところにクレーターを作り、まるで隕石が降ってきてるかのごとく辺りは荒れ果てていた。
そして、石畳の崩落がある程度収まると俺はハヤトの元へ近く。
すると、ハヤトはやっちまったという顔をしながら笑っていた。いきなり近づいたから驚いたのかハヤトは若干後ずさるが俺に戦いの意思はないと見るや、警戒心を解く。
「どうして攻撃してこないの?」
戦意がない俺を不思議に思ったのかハヤトが質問する。
「ん、まぁ一つ聞きたいことがあってな……」
「あ、確かに!審判気絶してるからこの後の勝敗はあまり意味ないかもね……」
審判が気絶したら勝敗をどう決めるのかは知らないが俺が聞きたいのはそこではない。
俺は深呼吸を一回はさみハヤトを見据える。
『ハヤトって転生者か?』
俺は確証を持ってハヤトに問う。
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