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7章 魔導学園 1年生編
79話 昇華
しおりを挟むバルトはその場から再び魔法とスキルを放ち魔物の足を止める。その隙に俺は魔物の左側面からむき出しになっている石を足場に跳びその勢いのまま斧を上空で振り上げ魔物の首元めがけ狂いのない一撃をぶつける。
魔物はさっきから顔を伏せて顔色は伺えないが、この勢いならいくらあの強固な筋繊維があろうとも斧が欠けない限り切り飛ばせる。
「落ちろぉおおおお!!!」
バルトが正面から魔法やスキルで気をそらしていたため魔物も気づくのが遅れたのか体を震わせ俺の攻撃に今ようやく気づく。
だが、もう遅ぇ!このまま首をぶった切ってやる!!
確実に首を持っていくであろう一撃が魔物の首の皮膚に触れようとした瞬間——
「グガァアアガガガ!!」
魔物が突然咆哮したと思ったら俺が振り下ろした斧の刃が数ミリ欠け魔物の首に到達するも首から先に行くことはなく弾かれる始末。
俺はその反動で数メートル吹き飛びなんとか着地するもさっきの傷がさらに開きさらに今の攻撃で手が痺れて痙攣している。
だが、そんなことよりも今奴は俺の攻撃に対し魔法を放ったことの驚きの方が大きい。
魔法やスキルを使える魔物はいるがそれは上位種もしくはそれなりの調教を受けた魔物や成長過程で偶然魔法を発現するきっかけがあったりと別に珍しいものでは無いが今使ったのは人間がよく使う身体強化系魔法。
基本魔物というのは体が頑丈に出来ているそれ故に自身を強化することに魔法やスキルを使うことは殆ど無い。
そして、それがあるとしたら人間に近い魔物もしくは人間に教えてもらいそれを受け入れた魔物だろう。
魔物だってプライドはある。自信の体を強化するなど体が脆い人間がすることであって魔物がそれをやるとなると当然滑稽に映る。そのプライドを捨てさり強くなることだけを極めた魔物程厄介なことはない。
それほどまでの強者と出会ったのか……
だが、まだ発動には時間がかかるのかさっきの隙にバルトから受けた魔法やスキルは効いたのか顔辺りが焼け焦げて原型の顔はもう無くなっていた。恐らく片目の視力もなく鼻も通常の半分程度しか効いていないだろうな。
さっきまでの俺達子供を舐めたような態度は全くなくむしろ本気で戦う意思をその魔物からまじまじと感じさせられる。
「バルト!!あとどのくらい行けるか?」
「まだまだ行けるぜ!!」
あんだけ放ってまだまだかよ……強がりも含め、それでもこれだけの緊張感でここまでの精度の魔法やスキルを放てる強靭なメンタルには恐れ入るよ本当にな……
もう魔法の才能で言ったらバルトがこの村1番、もし生きて帰れたらこの際……
戦いに集中しやがれ俺!そんなことは覚悟の上だ今はどうやって生き残るかだけ考えろや
残りのありったけの薬草を肩の傷に塗り込み魔物と相対する。
さっきまで四足歩行だったのが今は2足歩行に変わっている。だが、さっきよりも倍以上に大きくなったのではないかと錯覚するほどの圧力で、身体強化系魔法を魔物がするだけでここまで変わるのかよ!
恐らくバルトの魔法やスキルも効いて半減程度、俺に限って言えば足手まといも良いところだ。
魔物の目つきは俺らを本気で殺す目に切り替わり、左手を前に軽く出し右腕を腰の位置に持ってくる。そして右足を半歩だけ下げ膝を軽く曲げる。俺達2人を視野に入るよう位置を取りまるで人間と相対している気分に陥る。
どこかで手ほどきを受けたような構えじゃねぇかよ!
さらに魔物の巨大な手の爪はさっきの身体強化系魔法で強化されたのか禍々しいオーラが包み込み恐らくあれに突かれたら一発アウトだろうな。それほどまでの魔力の凝縮量、鍛錬度を感じられる。
「バルト!ここからが本番だと思え、さっきまでとは格段に強くなってやがる!」
「分かってるよ兄ちゃん!この位置からでも十分に伝わってくる」
バルトもこの圧で萎縮するかと思ったら逆に興奮の中に冷静さを保ちつつさらにはこれまで培ってきたであろう鍛錬の成果というべきかさっきよりも凄みが増し魔物同様に圧が重くなってやがる。
俺も斧の重さに慣れてきたのか片手でも十二分に振れるようになってきたので怪我をした肩の逆の腕で斧を掴み、肩の力を最大まで抜き脱力したように構える。腰を少し前かがみに倒し顎を引き魔物を睨むように体勢を取る。
そして、その緊張状態の中一向に3人共動き出さない。というよりもこちらは動き出せない。さっきから何度も行こう行こうとしているのだが本能があの魔物の周囲1m範囲内に入った時点で殺されると警告してくる。
それほどまでの実力差があると……
そして、15分以上俺達も魔物も微動だにせず睨み合うだけで時間を消費する。だがこの15分合わせてもまだ30分も経っていない。助けを頼るにも恐ろしく時間が足りない。
クッソ!活路が見出せねぇ!
その一瞬集中を欠いた瞬間で魔物は息を思い切り吸い込みながら上を向き今度はスキルを発動しようとする。俺は機を突かれ飛び出すのが一瞬遅れたその隙にバルトは俺よりも前に魔物へ接近し魔法を放とうとする。
そのバルトを追いかける形で俺は斧を振りかざし魔物の元へ走り出す。
構えをとったからと言って近接戦と限らねぇだろうが!!
自分にそう言い聞かせ出遅れした分をなんとか取り返すべく全力を振り絞りバルトと横並びになる。
だが、魔物のスキル発動までの時間が魔法よりも早い。しかもそれをギリギリまで悟らせずわざと溜めを長くしていて気づくのが遅れる。
バルトはそのことには気づいていないことにも気づけなく俺だけ回避行動に移ってしまう。
「ブゥガァガァアアアアアアア!!」
そのまま、魔物は溜めたスキルを放つ。上に持っていった顔を下げそのまま口から一直線上に衝撃波が放たれる。大地をえぐり大気を歪ませるほどの威力が近づいていたバルトに直撃し全身を覆われ後方約10m程吹き飛ぶ。そのまま2転3転地に叩きつけられ気絶する。
ギリギリ躱したはずの俺も三半規管を揺さぶられ馬車で酔った時のような気持ち悪さと脳にくる振動で意識を持っていかれそうになるがなんとか耐え忍ぶ。
バルトという戦力を持っていかれたのはかなりやばい。
このままだと——
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