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7章 魔導学園 1年生編
80話 追撃
しおりを挟む「バルト!!」
バルトの方へ注意を払っていた瞬間に俺の懐まで魔物が潜り込む。
なんて、速さだ!この一瞬の隙にあの距離を詰めるかよぉ!!
魔物だってあれだけのスキルを放って反動や放ち終えた後の硬直だってあってもいいだろうに……それすらも身体強化魔法でカバーしたっていうのかよ!
熟練——というよりも高位な魔法、スキルになるにつれそういうデメリットが減ると聞いたことはあるがここまでとは思いもしねぇよ。
咄嗟のことで腹部を狙った攻撃を両腕を合わせるだけで精一杯だ。これは防御ではなくただ腕を相手の攻撃に合わせているだけなので力も全く入っておらずその状態のまま魔物の右手の殴打をもろに受けその衝撃の反発で自分の腕が腹部に抉り込む。さらに持っていた斧をその衝撃で落としてしまう。
「うぐぅえッ!」
魔物も腹部を狙う際、もし爪で攻撃してしまうと俺の体に突き刺さり抜けなくなるのでダメージはあるがその後の反撃を躱しづらくなる。
だからこの魔物はあえて爪での突き刺しではなく手のひらを畳むという動作を加えた殴るという行為での攻撃を選んだ。
腹部に抉り込んだ腕のおかげで身体内の胃が圧迫され、消化待ちの食料達が逆流しだし俺の食道を駆け上がってくる。
そのまま吐きたいところであったがそんなことをした瞬間死が確定するので何とか気合いで堰き止め逆流を止める。
だが、魔物からもらった反動は大きくバルトよりも森の奥の方まで飛ばされ途中何本もの木にぶつかるがあまりにも勢いが強いためそのぶつかった木をへし折りながら吹き飛ばされ威力が死んだのはちょうど10本目の木をへし折った時だった。
最後の木に背中でもたれ掛かるように立ち上がり、状況を判断しようとするが——
「なっ!!」
「ヴガァアアアア」
俺に休憩という「休」の字もさせないようにすぐさまこちらに魔物が向かってくる。しかも俺が飛ばされている途中から追いかけだしていてもう目と鼻の先にいやがる。
そしてその勢いのまま今度は爪を向け地面と水平に構え、そのまま何の迷いもなく突き放つ。俺は咄嗟に木の裏に頭を伏せながら回り込み回避するが木を抉った魔物の爪は余裕で貫通しもう少し高く位置取っていたら首を持っていかれてたところだった。
木に爪が刺さりその衝撃で木片があたりに飛び散りさらには木が折れ倒れてくる。俺はそれを避けながら魔物の背後へ回り込む。
さっき飛んできた木片を2本両手に持ち、瞬時に木片に付与魔法をかけ強度とダメージ量を上げる。
そのまま振り返った魔物の目玉目掛け木片を突き刺す——
が、片方の木片は魔物の右腕に阻まれ弾き飛ばされ、もう片方の木片は目玉よりちょっと上の人間でいう眉毛あたりに命中する。
だが、人間と同様魔物もそこには骨があり突き刺さるといっても程度が知れていた。
チッ!クソッタレが!!
そのまま俺が地面に着地した瞬間、魔物は上から両手で地面を思いっきり叩くように俺目掛け腕を振り下ろしてくる。
落ちていた木片を再び拾い今度は貫通力と強度の付与をし振り下ろしてくる片手の平に合わせ回避しながらちょうど手の平と地面が接する場所を察知しそこに木片を2つ突き刺しておく。
それを知らない魔物は俺が置いた木片に見向きもせずただ振り下ろす。ここでも俺はわざと魔物に背を向けた状態で回避した。最後まで魔物が木片に気づかないようなるべくギリギリで躱さないと多分こいつはそれさえも避けてくる。
当たれ!!
そう心の中で願いながら擦れ擦れのところで回避するがその衝撃が凄まじく回避は成功するが軽く10mは飛ばされる。
だが、今度は魔物の追撃は無い。これはっ!と思い魔物の方へ顔を向ける。
すると、手の平を地面につけその両手の平から木片が2つ突き出るように魔物の手のひらを捉えていた。
貫通力を上げていたので何とか刺さってくれたか……俺は荒れる息を整えながら観察する。
手の平を貫通した木片は魔物の血で赤く染まっており魔物はその木片を抜きもせずずっと振り下ろした体勢のままで静止している。
俺は緊張からか全身から吹き出る汗を拭いながら次の手を考える。
これだけの運動量と緊迫感で忘れていたがこの辺りは何故だか暑い。この短時間でかなりの熱量の魔法やスキルを放ったから当然と言えば当然だが……
するとゆっくりと魔物は起き上がり首だけこちらに向ける。何ともホラーちっくでありさらに圧力がこれまで以上に膨れ上がっていた。俺は背中から這うように出る冷や汗が止まらず、一瞬狼狽える。
魔物は木片を抜きもせずこちらに向かってくる。しかも今度は両腕に闇属性の何らかの魔法を纏わせこちらにゆっくりと歩いて近づいてくる。
殴る動きを出来なくするつもりだったんだがこりゃまた物騒なものだしやがる。
あんなので突かれたら恐らく木の裏へ回っても無意味か……
俺はさっきまで戦っていたバルトがいる方へ少しずつ後ずさりしながら魔物から遠ざかる。
それを追いかけるように魔物はゆっくりと歩きながらこちらを追ってくる。
そして約30m程移動した時にそれは起こる。
魔物がいきなり左腕を自分の肩の位置まで振り上げ、軽く水平に振り下ろす。本当に軽く思えた動作だったが俺は瞬時に伏せていた。
もうこれは見てからの行動ではなく体が勝手に感じ取った危機感だけで俺の意思とは関係なく脳が命令し実行した、ただそれだけだ。
その刹那、振り払った軌道をなぞるように闇属性の魔法の刃のようなものが辺りにある木ごと俺を狙って切り落とされる。
木や石、葉やその軌道にいた小魔物達を何の抵抗もなく軽く切り落とす。その範囲は魔物の腕先から約50mはある。
俺は地面に伏せそのようなことを考えていた刹那——
目の前には何故だか魔物の足が写りこみそのままこちらに向かってくる。その時、時間の流れがゆっくりと進む感覚に陥るがその事象を無くすことや回避することは出来ず為す術もなく顔面に魔物の蹴りが炸裂する。
蹴り飛ばされた瞬間、目の前の景色がコロコロ変わり自分が今上空に飛ばされていることを確認する。
鼻と頬骨が粉々に折れていて目が片方潰れている。視界が時々周りの景色から真っ白に切り替わりまたちょっとすると景色に戻るのを繰り返す。
そしてそのまま元いた位置に着地するが受け身をとる体力はなくそのままの勢いで地面に着地する。
幸いなことに土が柔らかかったためこれ以上のダメージには殆どならなかったが別にだからと言ってこの状況は何も変わらない。
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