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7章 魔導学園 1年生編
82話 幕引き
しおりを挟む俺はバルトの魔法が消失したのと同時に立ち上がっていた。身体強化系魔法を使ったおかげで何とか立てるまでは出来た。
だが、この状態は1分も持ちはしない。
そしてすぐ落ちている斧を拾い上げその斧に付今使用できる分全ての付与スキルを叩き込む。
付与スキルによってそこら辺に落ちている石ころのように軽く、耐久度に切れ味、ダメージ量や属性耐性など恐らく10以上のスキルが付与されている。
俺も無我夢中で何が付与されているのかさえもう分からん。完全にスキル量と魔力量が空になった俺はそのままバルトの元へ走り出す。
身体中が傷だらけで重症だが身体強化の影響で全力疾走することは出来た、痛みはなくなりはしないので走り方が覚束ない。
いつものスピードでは無いが殆ど遜色ないほどの速度でバルトを攻撃する寸前の魔物の背後から振り上げている両腕に斧を振りかざし右腕の方から斬りかかる。
流石に身体強化で強化された腕は生半可な力では斬れない。こちらも身体強化しているとはいえレベルが違う。
その差は付与スキルで埋められていると思っていたのだがどうやらそれでもまだ足りなかったようだ。
うぐぅ!!
右腕はまだ簡単に斬れたのだが左腕に斬り入れた瞬間右腕よりも抵抗力が上がり斧が左腕半分入ったところで止まってしまう。
恐らくもう付与スキルか身体強化系魔法が切れたに違いない。
だが!ここで止まっては——
「はぁぁあああああああ!!!!!」
残り半分のこり1秒でいい!もう少し保てやこの野郎がぁああああ!!
全身の力を一瞬抜きそこから一気に力を入れる0から100の差いや1000の差ぐらいの力の入れようで無理やり残り半分を殴り千切るように斬る。
自分でも想像以上の力が湧き、傷口からは傷ついた時以上の血が流れ出し止まっていた小さな傷口でさえ再び出血するほどだった。
魔物の腕は両断され弧を描きながら宙を舞う。
斧を振り終えた後そのまま地面に吸い寄せられるように倒れこみ気を失う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ここは……痛っ!」
俺は目を覚まし起き上がると自分の部屋のベットの上にいた。最後に兄ちゃんに魔法を託してそれから……
それ以降の記憶がないらしくいくら過去を遡ってもどうしてもそこで止まってしまう。
「もう少し寝ていなさいバルト」
「父さん……」
ベッドの横には血だらけの父さんが座ってこちらを心配そうな表情で見つめている。
「助けが遅れてすまんなバルト。アギトは生きているしあの魔物は何処かに逃げられてしまった。父さん達が到着した時には既に斬り落とされた両腕とお前達2人の姿しかなかったんだ」
そうか、父さんが俺達を抱えて運んでくれたのか。
「村の人達の力も借りて魔物を探し出そうとは思ったんだがもう日も落ちているからな捜索は明日になったよ」
「ありがとう父さん。心配かけてごめん……」
「いいんだ……お前達はまだ子供だ親には遠慮なくていい。それにな、村の人もみんな躍起になって抑えるのが大変だったんだぞ」
父さんは優しく微笑むと頭を撫でながら当時の様子を語ってくれる。
「兄ちゃんの様子はどう?」
「まだ、意識は回復しないが命には別状は無い。ただ……」
神妙な面持ちで形相が険しくなる。
「もしかすると今後お兄ちゃんは魔法やスキルを使えなくなるかもしれない。使えても攻撃系の魔法、スキルの威力は下がっていく一方だろう」
その事実を聞かされ胸が焼かれるように熱くなり今日の戦闘時よりも強い痛みが心を襲う。
「ど、どうしてだよ!」
つい、声を荒げてしまい父さんを驚かせてしまうがこれだけはどうしても聞かなくては多分今日は安心して眠れないだろう。
「実を言うとお兄ちゃんの攻撃系統の魔法、スキルの威力の低下は今日だけの原因では無いんだ。1ヶ月前ぐらいからスランプに陥ったってお兄ちゃんから相談を受けててな実際に見てやったんだ。父さんは魔法は使えないが魔法が使える母さんよりも詳しいからなまじかで見てやれば原因が分かると思ったんだ。そして、お兄ちゃんが放った攻撃系の魔法やスキルは全て威力が下がっていた。補助系、いわゆる付与系のものや身体強化系の持続時間も著しく落ちていた」
「それって……」
「そうだ、父さんと同じだ。父さんも幼少期の頃は魔法やスキルを周りの子達よりも使えていたがいつしかお兄ちゃんと同じように威力が落ちついには使えなくなってしまった。父さんが発症し始めたのがお兄ちゃんよりも若い時だったからまさかお父さんと同じとは思いもしなかった」
「じゃあどうすれば!!」
俺は必死に訴えかけるが父さんは何も答えてくれない。父さんの魔法やスキルが使えない原因は未だに分かっていない。持続時間は短いが付与系、身体強化系の魔法やスキルを駆使し戦闘技術はかなり秀でていたので父さんは国で騎士までの地位を築いたのだ。
「父さんなりにどうにかしてはやりたいがこれはお兄ちゃん本人の問題でもあるしあまり他の人が言うのも逆に危険だったりする。だからなお父さん達と村の人達でルーエを募ってなお兄ちゃんを魔導学園に行かせることにしたんだ」
魔導学園……憧れてはいたがお金が無いので殆ど諦めていたところに兄ちゃんが行く。俺は嫉妬心が湧き出ると思っていたが意外と歓迎している自分がいた。
早く兄さんにはどうにか魔法やスキルがもっと上達してほしいという思いは強い。例え治らずとも魔導学園に行けば経験を積むことができるし卒業すれば様々な職業につくことができるので悪いことでは無いのだ。
「村の人達はいいの?」
「ああ、村のみんなは全員一致でルーエを払うといってくれたんだ」
父さんは若干涙ぐみながら俺の前にいるので必死に堪えていたが村の人達は本当に仲が良く団結力が強いし父さんと母さんにもかなりの信頼を置いてくれているんだ。
「ピンチはチャンスに変えろ」これが俺達の村での考えで今回も兄ちゃんには皆この思いを託すつもりだったに違いない。
「でも……試験は……」
「大丈夫だ父さんの仲の良い冒険者が結構いてなその人達から推薦してもらうつもりだ」
そっか……それなら……
安心と疲れから俺はそのまま眠ってしまった。
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