少女風呂

アッシュ出版

文字の大きさ
5 / 10

5)少女風呂の少女たち

しおりを挟む
 「お客様、綺麗に身体が洗えましたね。では、ご入浴、お楽しみ下さい」

 その女の子はそう言って、裸の少女たちがぎゅうぎゅう詰めになっているお風呂に入るよう、僕を促す。

 ようやく、この時間が来たのだ。

 「はい、ではそうさせていただきます」

 もちろん、僕の気持ちはその方向で完璧に固まっているのだけど、しかしさすがにすんなりと行動に移しかねた。

 少女たちの綺麗な肌と比べると、脛毛の濃い自分の足がとても不潔な物に見える。
 その不潔な足を少女たちの身体の隙間に差し入れて良いものだろうか。そのような想いに囚われたのだ。

 しかし今更、躊躇していられない。僕は当然、この少女風呂に体をひたすつもりだ! 

 僕は思い切って、この湯船を見渡した。
 さっきまで恥ずかして、まともに見る気がしなかったのだけど、勇気を振り絞る。
 それにこの少女風呂に入るといっても、いったいどこの部分に入ればいいのかって迷いがあったのだ。

 まずは端っこで身体を縮めていようか。
 それとも思い切って、真ん中に、ドシンと位置しようか。
 あるいは、この少女風呂に居る少女たちの中で、最もかわいらしい少女の隣に行こうか。
 僕はそんなことを考えながら、キリリと目を見開いて、少女風呂の少女たちを見渡した。

 少女風呂の少女たちは、本当にかわいらしい少女たちばかりだった。
 最初に少女たちを見たときは、みんな似たような顔をしていて、年齢だけが違うだけに見えた。
 何というか、同じマンガ家が必死に美少女を描き分けようとしても、髪の色とか、髪型だけでしか差異がないなんてことはよくあると思うのだけど、少女風呂の少女たちはまさにそんな感じに思えたのだ。

 しかしこうして間近で改めて眺めてみると、やっぱりそれぞれ個性豊かだった。
 彼女たちは当然、みんな親も違えば、育った環境も違うのだ。
 髪型とか年齢だけじゃなくて、肌の白さも違えば、胸の大きさも違う。みんな可愛らしいとはいえ、それぞれ可愛らしさの種類も違ったりする。

 とはいえ、驚くほど似ているように見えてしまったのには、理由があったかもしれない。それはみんな、表情が同じだってことだ。
 少女たちは本当に僕を歓迎するような眼差しで、こっちを見てくれていたのだ。
 タオル越しではあれ、僕の性器が勃起しているのはバレバレだろう。しかもこれから、そんな僕と肌がべったりと触れ合う女の子もいるわけである。
 しかし誰の目の中にも、僕に対する嫌悪感はない。もしかしたら、その歓迎の表情が、少女たちの個性を消していたのかもしれない。

 そして、その一様に僕を歓迎してくれる表情が、僕を迷わせるのだった。
 もし一人でも、僕を嫌がるような表情をしていたら、その子の近くは選択肢の中から排除するのだけど。しかしみんな、僕を温かい眼差しで見てくれる。

 いったい僕は、どの少女と少女の間に、自分の身体を潜らせればいいのであろうか? 

 この最初の決断はけっこう大きいかもしれない。
 だって万が一、自分の周りの女の子と性格が合わなければ、せっかくの入浴も楽しめないかもしれない。とても気まずい時間を過ごさなければいけなくなるかもしれないのだ。

 いや、でも別に彼女たちと会話を楽しむため、ここに来たわけでもないか。
 僕は少女たちと、肌の触れ合いを楽しむために入浴しに来たのである。

 ならば、どこでもいいか? 

 そうだ、どこでもいい! 

 っていうか、一回入って、それからまた違う場所に移動してもいいのではなかろうか? 

 僕はそんな考えも思いついた。

 そうだよ、どうしてこんな単純なことが思いつかなかったのだろう。

 よし、とにかく入ろう。

 いや、でも待てよ。こんなに簡単に決断していいのか? 
 本当に僕の決意は固まったのか? 

 そんな大袈裟な問題じゃないじゃないか。とにかく入ればいいのだ。

 駄目だ駄目だ、もっとよく考えたほうがいい。

 「お!」

 そのとき、僕は少し体重を移動させようと足を動かしたのだけど、どうやら不運なことにタイルの一部が水に濡れていたようで、その水に足を取られ、バランスを崩してしまった。

 天井と床が逆さまになって、一瞬、上下の感覚を失った。突然の事態に、驚きの声も出ない。

 しかしこのまま転ぶと、硬いタイルで後頭部を痛打してしまうかもしれない。
 僕は自分の運動能力を総動員して、どうにかバランスを取ろうともがく。
 どこか掴めるものはないのか、手を精一杯伸ばした。でも僕の手は空を切るばかり。

 「お客様、大丈夫ですか?」

 そのとき受付の女の子が僕に駆け寄ってくれる。
 僕は何とか彼女の腕を掴むが、彼女の力で僕の体重を支えきれるわけもない。彼女は艶めかしい声を上げて、尻餅をついた。

 しかし彼女の身体が、反射壁みたいな役割をしてくれたようだ。
 僕は何とか、銭湯のタイルで後頭部を痛打するという悲劇からは免れた。
 その代わり僕のバランスは、少女風呂の方に傾いている。

 「おっとっと」

 何とか持ちこたえようと思ったのだけど無理だった。僕の身体は少女風呂の中に落ちていく。
 少女たちは笑い声と共に、キャーという嬌声を上げながら、僕の身体を受け止めてくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...