64 / 92
64)そして質問を出す
しおりを挟む
「お前たちさ、さっきの撮影のときの表情、全然駄目だったぞ」
さすがにこの無礼極まりない監督も、実際にうら若い女子を目の前にすると、ちょっと緊張して微妙に声が震えたりしていた。
それが美咲ちゃんとゆかりちゃんの美少女オーラというものか。
ダラダラとしていた空気の漂っていたプールサイドも、二人がやってきて一気に華やいだ。
美咲ちゃんもゆかりちゃんも私服姿だ。何せ、まだ次のテニスのユニフォームは用意出来ていないのだから。
ああ、これが日常の姿なのかって僕はドキドキしてしまう。
美咲ちゃんは全身が黒のいで立ち。半袖のブラウスにズボン。ゆかりちゃんは薄いピンク系のワンピースである。
「俺はね、お前たちにはやる気あるのかな? って疑問に感じてるわけよ」
やはり新監督は美咲ちゃんとゆかりちゃんを説教するつもりのようであった。
「ぶっちゃけ正直言うとさ、俺は建前とかが本気で嫌だから、何でも本音で語るけどね、お前ら、キャメラの前で男たちは何を期待しているのかわかっているのか? ってことが聞きたいの!」
「は、はあ・・・」
当然のこと、二人は戸惑っている。
この無駄な休憩時間にも戸惑っているだろうし、この新監督の態度にも戸惑っているだろう。
なぜか彼は怒っているのだ。完全なる説教モードなのである。
どうしてうちらが怒られないといけないわけ? 美咲ちゃんもゆかりちゃんも内心ではそう思っていることは間違いない。
いや、怒られるというか、それどころではない。
この新監督は二人に何かセクハラめいたことを言わせようとしているのではないかと、僕は緊張して息を飲む。
「なあ、おい、俺の質問に答えてくれよ?」
え? は?
新監督は更に口調を荒げるが、それが二人の反応である。当たり前だ。
「何だよ、俺の質問に答えられないのか? よし、だったら俺がはっきりさせてやるよ! あんなあ、お前たちのファンになるような男たちが思っていることはー、『うわ、可愛いとか、あら、素敵』とか、そんな生温いことじゃねえんだよ。キャメラの向こうの男たちが望んでいることは一つなんだよ、エロだよエロ、セックスなんだよ!」
やはり僕の悪い予感は当たった。新監督は美咲ちゃんやゆかりちゃんに対して、そんなことを言い出したのだ。
周りにマネージャーさんたちもいる。関係者さん一同もだ。さすがに彼らや彼女たちもザワザワする。
しかし新監督はそんなことを気にかけず、更に続けた。
「キャメラの前の男たちは全員、恋人がいない。今、いないんじゃない。産まれてからこれまで、いない。一人もだ! モテない男たちなんだよ。そんな人生、どう思う? 悲惨だろ? でもそれはマジなんだ」
僕は思わず耳を塞ぎたくなる。これは確かに僕の真実でもあるから。
「しかし哀れなことに、そんな男たちにも性欲はある。本当に哀れだよな? 相手はいないのに欲望だけはある」
「性欲というのは厄介ですよ、解消しないといけないの。彼らはお店に行ったりもしてるだろうけど、大体のところ動画だよ。動画を観てさ、その欲望を解消するんですよ。それが恋人のいない男の人生なんです!」
「どうせ性欲が目的なら、もっと直接的に男女が裸で睦合ってる映像を観ればいいんじゃないかって思うよな。いはゆるポルノね、AVってやつだ。しかしあいつらは変態なんだよ。もう、そういうものでは興奮しない。そこで君たちの出番だ」
「あいつらは、君たちの身体で性的に興奮してる」
「でさ、具体的にそれが何を意味しているかわかるかな? 美咲はわかるよな、でもゆかり君のほうはどうかな? うん? 言ってみ?」
「え?」
「男性たちが性的に欲情して、この動画を観ながら具体的にどのような行動に出ているのか、それが俺の質問だよ」
「わ、わかりません」
酷い質問を浴びせかけられたゆかりちゃんはプルプルと首を振る。
ゆかりちゃんは本当にわかっていないのか、それともわかっていない振りをしているのか。そこのところ僕にとっても謎なんだけど。
だからゆかりちゃんの本当のところを知りたい、なんて興味もなくはないのだけど、しかしこのやりとりは許せないよ。
おい、こんなのセクハラじゃないか。職権乱用だ!
「すいません、監督さん、こういうことは遠慮して欲しいんですけど」
ゆかりちゃんの堅物マネージャーさんが声を上げた。いいぞ、マネージャーさん。こういうときは頼りになるじゃないか。僕は心の中でエールを送る。
「すいませんねえ、言い過ぎましたね、本当に申し訳ない。しかしこれも撮影のために必要な儀式なんです」
白髪サングラスはマネージャーさんの反論を予想していたように、何ら取り乱すことなく、淡々と言い返してきた。
「いったい君たちは何のためにこうやって水着を着て、前かがみになったり、制服姿でスカートをめくったりしているのかってことよ」
「じゃあ美咲、言ってやれよ」
新監督は美咲ちゃんにターゲットを移した。
「お前とは何回か仕事したことあったよな? そのとき教えてやったっけ?」
「わかりません」
「はあ?」
「忘れました」
「何だ、その態度。ムカつくなあ、お前たちみたいな商売の女たちを見て、ヤルことがあるんだよ、男には!」
さすがにこの無礼極まりない監督も、実際にうら若い女子を目の前にすると、ちょっと緊張して微妙に声が震えたりしていた。
それが美咲ちゃんとゆかりちゃんの美少女オーラというものか。
ダラダラとしていた空気の漂っていたプールサイドも、二人がやってきて一気に華やいだ。
美咲ちゃんもゆかりちゃんも私服姿だ。何せ、まだ次のテニスのユニフォームは用意出来ていないのだから。
ああ、これが日常の姿なのかって僕はドキドキしてしまう。
美咲ちゃんは全身が黒のいで立ち。半袖のブラウスにズボン。ゆかりちゃんは薄いピンク系のワンピースである。
「俺はね、お前たちにはやる気あるのかな? って疑問に感じてるわけよ」
やはり新監督は美咲ちゃんとゆかりちゃんを説教するつもりのようであった。
「ぶっちゃけ正直言うとさ、俺は建前とかが本気で嫌だから、何でも本音で語るけどね、お前ら、キャメラの前で男たちは何を期待しているのかわかっているのか? ってことが聞きたいの!」
「は、はあ・・・」
当然のこと、二人は戸惑っている。
この無駄な休憩時間にも戸惑っているだろうし、この新監督の態度にも戸惑っているだろう。
なぜか彼は怒っているのだ。完全なる説教モードなのである。
どうしてうちらが怒られないといけないわけ? 美咲ちゃんもゆかりちゃんも内心ではそう思っていることは間違いない。
いや、怒られるというか、それどころではない。
この新監督は二人に何かセクハラめいたことを言わせようとしているのではないかと、僕は緊張して息を飲む。
「なあ、おい、俺の質問に答えてくれよ?」
え? は?
新監督は更に口調を荒げるが、それが二人の反応である。当たり前だ。
「何だよ、俺の質問に答えられないのか? よし、だったら俺がはっきりさせてやるよ! あんなあ、お前たちのファンになるような男たちが思っていることはー、『うわ、可愛いとか、あら、素敵』とか、そんな生温いことじゃねえんだよ。キャメラの向こうの男たちが望んでいることは一つなんだよ、エロだよエロ、セックスなんだよ!」
やはり僕の悪い予感は当たった。新監督は美咲ちゃんやゆかりちゃんに対して、そんなことを言い出したのだ。
周りにマネージャーさんたちもいる。関係者さん一同もだ。さすがに彼らや彼女たちもザワザワする。
しかし新監督はそんなことを気にかけず、更に続けた。
「キャメラの前の男たちは全員、恋人がいない。今、いないんじゃない。産まれてからこれまで、いない。一人もだ! モテない男たちなんだよ。そんな人生、どう思う? 悲惨だろ? でもそれはマジなんだ」
僕は思わず耳を塞ぎたくなる。これは確かに僕の真実でもあるから。
「しかし哀れなことに、そんな男たちにも性欲はある。本当に哀れだよな? 相手はいないのに欲望だけはある」
「性欲というのは厄介ですよ、解消しないといけないの。彼らはお店に行ったりもしてるだろうけど、大体のところ動画だよ。動画を観てさ、その欲望を解消するんですよ。それが恋人のいない男の人生なんです!」
「どうせ性欲が目的なら、もっと直接的に男女が裸で睦合ってる映像を観ればいいんじゃないかって思うよな。いはゆるポルノね、AVってやつだ。しかしあいつらは変態なんだよ。もう、そういうものでは興奮しない。そこで君たちの出番だ」
「あいつらは、君たちの身体で性的に興奮してる」
「でさ、具体的にそれが何を意味しているかわかるかな? 美咲はわかるよな、でもゆかり君のほうはどうかな? うん? 言ってみ?」
「え?」
「男性たちが性的に欲情して、この動画を観ながら具体的にどのような行動に出ているのか、それが俺の質問だよ」
「わ、わかりません」
酷い質問を浴びせかけられたゆかりちゃんはプルプルと首を振る。
ゆかりちゃんは本当にわかっていないのか、それともわかっていない振りをしているのか。そこのところ僕にとっても謎なんだけど。
だからゆかりちゃんの本当のところを知りたい、なんて興味もなくはないのだけど、しかしこのやりとりは許せないよ。
おい、こんなのセクハラじゃないか。職権乱用だ!
「すいません、監督さん、こういうことは遠慮して欲しいんですけど」
ゆかりちゃんの堅物マネージャーさんが声を上げた。いいぞ、マネージャーさん。こういうときは頼りになるじゃないか。僕は心の中でエールを送る。
「すいませんねえ、言い過ぎましたね、本当に申し訳ない。しかしこれも撮影のために必要な儀式なんです」
白髪サングラスはマネージャーさんの反論を予想していたように、何ら取り乱すことなく、淡々と言い返してきた。
「いったい君たちは何のためにこうやって水着を着て、前かがみになったり、制服姿でスカートをめくったりしているのかってことよ」
「じゃあ美咲、言ってやれよ」
新監督は美咲ちゃんにターゲットを移した。
「お前とは何回か仕事したことあったよな? そのとき教えてやったっけ?」
「わかりません」
「はあ?」
「忘れました」
「何だ、その態度。ムカつくなあ、お前たちみたいな商売の女たちを見て、ヤルことがあるんだよ、男には!」
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる