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6・ホストに夢中な女4
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6・ホストに夢中な女4
本日、詩空はとりあえず喫茶店のアルバイトがあったので何とか助かった。マーズ火山の事を考えればポーっとなるところを、仕事によって律せられる。また消費者金融のカードを使うということも、もうちょい後でいいやと思ったので使っていない。でも本人は、あと数日したら病気が暴れ出すかもと心配はしている。
「さてと……」
本日の夜、息吹は四次元にて夜の繁華街にたどりつく。彼にとってそれは慣れてしまったから毒々しいとは全然思わない。夜専用の魔法がわざとらしい事も知っているので、それらの演出に心が躍るようなはずもない。
「ここが詩空の通うお店、そしてマーズ火山とかいうのがいるところか」
お目当ての店を目の前にすると、自分がホストとして働いていた事がふっと浮かぶ。まるで一週間前に卒業した学校と対面するようなキブンが胸に沸く。
「ふむ……」
誰に見られることもなく、誰に気にされる事もなく、誰に声をかけられる事もなく、悠々と色艶バツグンの店内へと入った。
「ふむ……」
竜宮城を気取ったみたいな空間が目の前に出現。きらびやかな空間にいくつものテーブルがあり、夢に浸りたい女が横にホストを置き自己満足という栄養を得るための会話にいそしむ。そしてホストは女の欲に寄り添いながら巧妙な煽りを入れる。それは出来るだけ高い酒に女を引っ張ろうという営業努力。
「マーズ火山はどこだ」
詩空より授かった中古のスマホに映る画像と店内を見比べながら歩き回っていたが、話声を耳にして立ち止まる。
「こいつか」
お目当ての男を発見して息吹は目を向ける。売れっ子爆進中だった彼の目からすると、マーズ火山はまだ主役のオーラが浮かび始める手前のくらいのモノ。息吹に言わせればよくてBプラスくらいなモノ。しかし仕事は上手だと目に映る。ホストに必要な器量はばっちり備えており、女への配慮はかなり鍛えられていると受け取る。
「あと1年くらいすれば出世コースに入るかもな」
マーズ火山に対してそういう感想を抱く息吹だった。そして仕事中というサマでは本当の姿が見えないので、終わるまではホストクラブの盛り上がりを見つめる事にした。
マーキュリー息吹。そんな名前のホストが死んでまだ時間はあまり経っていない。しかしそれでも立場が変わればなんとやらであり、客観的に見るとホストクラブの印象に新鮮味を感じた。
「なるほど……ホストのときは一生懸命やってプライドもあったけど、客観的に見ると白い目で見られるような感じもあるというわけか」
夢、夜を照らす色鮮やかなライトみたいな夢時間。そこで働くホストたちと、ホストに酔う女たちの姿を息吹は閉店まで眺めていた。
そして閉店。客が帰って夢という言葉の勢いがしぼむと、ホスト達は後片付けに入る。もっともそれは念入りにやるものではない。店内の清掃は開店前の方が神経を使うからだ。そしてマーズ火山は仲間とかんたんな会話をするのだが、いいタイミングで息吹が望んだような会話をやってくれた。つまりほんとうの姿をスマホで撮影させてくれた。
「なぁマーズ、おまえあの爆乳って食わないの?」
「爆乳って?」
「詩空ちゃんって爆乳」
「あぁ、あれはダメ。体は食いたい部類だけど、中身がダメ」
「なんでよ、おれだったらもうとっくに食うけど」
「いや、だってさぁ、あの爆乳って肝心なところで変に固い。酒に弱いような印象だけど実は強い。それでいて金遣いはしょぼいから安い酒ばっかり飲む。以前に冗談っぽくシャンパンタワーやってみたいとか言っていたけど、ああいう女はやらない。つまりいい男にチマチマ付きまとうだけでの一番うざいタイプ。おれを気にいているとか言いながら、おれを大物にしようって気もない。たまに来て4、5万使う程度なんてしみったれと同じだよ」
「でもそういう女って一途が多いと聞くぞ」
「いらねぇ、だってあいつあまり育ちがよくない。だってさぁ、食器と見ると飯粒が残っているわけ。箸の使い方もなんか変。食いながらしゃべることは少ないとしても、会話中にスマホを見る事はけっこうある。なんていうのかなぁ、乳の大きい女子高生止まりって感じなんだよ。男と女の大人のダンスとかできないタイプ。いつまで経ってもいっしょに下校した思い出が忘れられないってやつだな」
「くく、たしかにそんな感じだな」
「会話して見つめるとさぁ、自分はお姫様ってまちがいなく勘違いしている。ま、それはおれの仕事がよくできているって事なんだけど、おれとしてはあの女の眼球に映る自分を見ているわけであって、おまえの顔じゃないからって話。ああいう女は乳を見る事はあっても顔なんか見る必要ない。ぶっちゃけ乳と下の穴があればオーケー」
「ハハハ、詩空ちゃん可哀想」
「可哀想だなんて言って欲しかったら、一晩で20万くらいは使えって話だよ」
こういう会話をばっちり撮影できた。これはいい絵が取れたと息吹は思ったが、マーズと同僚を責めるという気は湧かなかった。かっての自分はあまり大っぴらに人の悪口を言わないようにしていたものの、マーズと同僚の会話は以前同じ世界にいた自分には納得できるところがあったりした。
「おれもけっこうゲスかったって事かな……」
息吹、いい絵が取れたのでそそくさと退散。気の毒な事を言われまくった詩空の家に向かう。
「まだ起きているか」
部屋の電気がついているので、ひとまずベランダから小さい方のドアをコンコンとノックした。
「あぁ、息吹、入ってもいいよ」
午前2時に詩空は部屋の中へ息吹を入れる。
「いまちょっといいか?」
息吹が聞くと詩空はかまわないよと答えてから、ずっと仕事を探しやっていて疲れたとベッドに寝転がる。
「仕事探し?」
「もうちょいアルバイトを増やすか、お金のいい仕事をしたいと思って」
「それって何のために?」
「やっぱりもう少しお金が欲しいから」
「ホストクラブのためか?」
「ぅ……ん……」
「なぁ詩空、一週間毎日のように朝から晩まで働くのはけっこう。それがアルバイトってカタチでもまぁいい。けど何のために? という理由が弱いと、後で自分は空っぽになるぞ。明確もしくは立派な目的がないと路頭に迷う」
「息吹の言う通りかなとは思うけど……」
「でな、さっきマーズ火山の姿をスマホに収めてきたんだけど、どうだ、見る勇気ってあるか?」
「マーズの?」
「そ、ある意味では真の姿ってやつ」
「見たいような見たくないような……」
「でも、そこまでぞっこん入れ込んでいるなら、真の姿を見るのも悪いことではないと思うが」
「見る、見てみたい!」
「よし」
息吹はスマホを渡すと部屋の中央に立ったまま、詩空のマーズ火山とかホストクラブに対する熱に水がかかることを期待した。今は生活が本格的にゆがむ一歩手前。ここで持ち直せば詩空はキズを背負わなくて済む。
再生中、詩空は無言だった。その結果、お古のスマホから男たちの会話する声が聞こえる。それは先ほど息吹が聞いたのとまったく同じ。
「ん……」
動画の観覧が終わると同時に、詩空は力抜けたような手からスマホを離す。そうして再び体をベッドに横たわらせると、右手の甲を額に当てた。
「あ、あは……なんか思ってた通りだよ」
笑い声にかすかな泣きが混じっている。
「多分、こういう風に思われているんじゃないかって思ってはいたんだ。本心からステキな女の子だと言っているわけがないともわかっていたつもり。だけど、実際目の当たりにするとすごいショック。やっぱり……胸が痛いよ、息吹」
詩空の目からジワっとあふれる涙。そんな痛々しい姿を見ろしながら息吹は女に向かってつぶやく。
「詩空……たしかにマーズの言っていることはひどいんだが、でもな……どんな仕事をやる人間であっても聖人君子とかひとりもいない。どんな仕事をやるにしたって人間は光と影を持つ。だからマーズが悪いというより、おまえが目を覚ませばいいんだ」
息吹はこれで話がすんなり終わると思った。詩空という女が考えとか意識を改め、明日からは平穏なニューライフが始まるとふつうに思った。
ところが寝転がる詩空は、白いTシャツの豊満な胸のふくらみに枕をギュッと抱きしめたら、まるで高校生か中学生みたいな駄々っ子をやり始める。
「やだやだ!」
「やだって……なにが?」
「それでもわたしはマーズは好き。マーズをキライになるなんて、あの店に行かずに生活するなんて」
「はぁ?」
「いいもん、どう思われたって。わたしはマーズへの思いを捨てられない」
「おいおいい詩空……おまえ、バカにされたんだぞ?」
「バカにされたって……でも……それでも……」
「それでもなんだ」
「胸のさみしさが薄まるならそれでいい」
「さみしさが薄まるとか言っても、それはただ一瞬の夢だろう」
「夢でもいいの。だって現実がつまらないから」
「ったくおまえは……」
息吹、ここで反射的に体が動いてしまった。ベッドに寝転がっている女の上にまたがると、表情をドキ! っとさせた相手の頬に一発ビンタをかましてしまう。なぜおまえはここまでわからないんだ! と思ったとき、自然とやってしまった行為。息吹の右手の平が女のやわらかい頬をぶったという手応えにしびれる。
「ん……ぅ!」
「あ、わ、わるい……」
ハッと我に返った息吹、すぐさまベッドから下りる。今のはさすがにまずいと思うので気まずくなる。
「息吹……」
「な、なんだ……」
「それなら息吹がわたしを抱いてよ。わたしの体を求めて、わたしからさみしってキモチを追い払ってよ」
「それはムリだと言ってるだろう」
「だったらビンタとかしないでよ、それってただの偽善」
「そう言われたらそうかしれないが」
「わたしマーズの事を追いかけ続けるから、行くなって言われてもあの店に通い続けるから」
詩空の哀れっぽい決意は固い。そして息吹はほんとうに不思議だと言いたくてたまらなかった。なぜ? いったい思考回路にどういう歪みを生じるとそこまで意固地になってしまうのか? と。
(これはもう話をしてもムダな領域だな)
家満登息吹、詩空という女の中に入る決意をした。詩空をゆがめているモノをぶった斬り詩空の思考回路をまともなモノに戻そうと心する。
本日、詩空はとりあえず喫茶店のアルバイトがあったので何とか助かった。マーズ火山の事を考えればポーっとなるところを、仕事によって律せられる。また消費者金融のカードを使うということも、もうちょい後でいいやと思ったので使っていない。でも本人は、あと数日したら病気が暴れ出すかもと心配はしている。
「さてと……」
本日の夜、息吹は四次元にて夜の繁華街にたどりつく。彼にとってそれは慣れてしまったから毒々しいとは全然思わない。夜専用の魔法がわざとらしい事も知っているので、それらの演出に心が躍るようなはずもない。
「ここが詩空の通うお店、そしてマーズ火山とかいうのがいるところか」
お目当ての店を目の前にすると、自分がホストとして働いていた事がふっと浮かぶ。まるで一週間前に卒業した学校と対面するようなキブンが胸に沸く。
「ふむ……」
誰に見られることもなく、誰に気にされる事もなく、誰に声をかけられる事もなく、悠々と色艶バツグンの店内へと入った。
「ふむ……」
竜宮城を気取ったみたいな空間が目の前に出現。きらびやかな空間にいくつものテーブルがあり、夢に浸りたい女が横にホストを置き自己満足という栄養を得るための会話にいそしむ。そしてホストは女の欲に寄り添いながら巧妙な煽りを入れる。それは出来るだけ高い酒に女を引っ張ろうという営業努力。
「マーズ火山はどこだ」
詩空より授かった中古のスマホに映る画像と店内を見比べながら歩き回っていたが、話声を耳にして立ち止まる。
「こいつか」
お目当ての男を発見して息吹は目を向ける。売れっ子爆進中だった彼の目からすると、マーズ火山はまだ主役のオーラが浮かび始める手前のくらいのモノ。息吹に言わせればよくてBプラスくらいなモノ。しかし仕事は上手だと目に映る。ホストに必要な器量はばっちり備えており、女への配慮はかなり鍛えられていると受け取る。
「あと1年くらいすれば出世コースに入るかもな」
マーズ火山に対してそういう感想を抱く息吹だった。そして仕事中というサマでは本当の姿が見えないので、終わるまではホストクラブの盛り上がりを見つめる事にした。
マーキュリー息吹。そんな名前のホストが死んでまだ時間はあまり経っていない。しかしそれでも立場が変わればなんとやらであり、客観的に見るとホストクラブの印象に新鮮味を感じた。
「なるほど……ホストのときは一生懸命やってプライドもあったけど、客観的に見ると白い目で見られるような感じもあるというわけか」
夢、夜を照らす色鮮やかなライトみたいな夢時間。そこで働くホストたちと、ホストに酔う女たちの姿を息吹は閉店まで眺めていた。
そして閉店。客が帰って夢という言葉の勢いがしぼむと、ホスト達は後片付けに入る。もっともそれは念入りにやるものではない。店内の清掃は開店前の方が神経を使うからだ。そしてマーズ火山は仲間とかんたんな会話をするのだが、いいタイミングで息吹が望んだような会話をやってくれた。つまりほんとうの姿をスマホで撮影させてくれた。
「なぁマーズ、おまえあの爆乳って食わないの?」
「爆乳って?」
「詩空ちゃんって爆乳」
「あぁ、あれはダメ。体は食いたい部類だけど、中身がダメ」
「なんでよ、おれだったらもうとっくに食うけど」
「いや、だってさぁ、あの爆乳って肝心なところで変に固い。酒に弱いような印象だけど実は強い。それでいて金遣いはしょぼいから安い酒ばっかり飲む。以前に冗談っぽくシャンパンタワーやってみたいとか言っていたけど、ああいう女はやらない。つまりいい男にチマチマ付きまとうだけでの一番うざいタイプ。おれを気にいているとか言いながら、おれを大物にしようって気もない。たまに来て4、5万使う程度なんてしみったれと同じだよ」
「でもそういう女って一途が多いと聞くぞ」
「いらねぇ、だってあいつあまり育ちがよくない。だってさぁ、食器と見ると飯粒が残っているわけ。箸の使い方もなんか変。食いながらしゃべることは少ないとしても、会話中にスマホを見る事はけっこうある。なんていうのかなぁ、乳の大きい女子高生止まりって感じなんだよ。男と女の大人のダンスとかできないタイプ。いつまで経ってもいっしょに下校した思い出が忘れられないってやつだな」
「くく、たしかにそんな感じだな」
「会話して見つめるとさぁ、自分はお姫様ってまちがいなく勘違いしている。ま、それはおれの仕事がよくできているって事なんだけど、おれとしてはあの女の眼球に映る自分を見ているわけであって、おまえの顔じゃないからって話。ああいう女は乳を見る事はあっても顔なんか見る必要ない。ぶっちゃけ乳と下の穴があればオーケー」
「ハハハ、詩空ちゃん可哀想」
「可哀想だなんて言って欲しかったら、一晩で20万くらいは使えって話だよ」
こういう会話をばっちり撮影できた。これはいい絵が取れたと息吹は思ったが、マーズと同僚を責めるという気は湧かなかった。かっての自分はあまり大っぴらに人の悪口を言わないようにしていたものの、マーズと同僚の会話は以前同じ世界にいた自分には納得できるところがあったりした。
「おれもけっこうゲスかったって事かな……」
息吹、いい絵が取れたのでそそくさと退散。気の毒な事を言われまくった詩空の家に向かう。
「まだ起きているか」
部屋の電気がついているので、ひとまずベランダから小さい方のドアをコンコンとノックした。
「あぁ、息吹、入ってもいいよ」
午前2時に詩空は部屋の中へ息吹を入れる。
「いまちょっといいか?」
息吹が聞くと詩空はかまわないよと答えてから、ずっと仕事を探しやっていて疲れたとベッドに寝転がる。
「仕事探し?」
「もうちょいアルバイトを増やすか、お金のいい仕事をしたいと思って」
「それって何のために?」
「やっぱりもう少しお金が欲しいから」
「ホストクラブのためか?」
「ぅ……ん……」
「なぁ詩空、一週間毎日のように朝から晩まで働くのはけっこう。それがアルバイトってカタチでもまぁいい。けど何のために? という理由が弱いと、後で自分は空っぽになるぞ。明確もしくは立派な目的がないと路頭に迷う」
「息吹の言う通りかなとは思うけど……」
「でな、さっきマーズ火山の姿をスマホに収めてきたんだけど、どうだ、見る勇気ってあるか?」
「マーズの?」
「そ、ある意味では真の姿ってやつ」
「見たいような見たくないような……」
「でも、そこまでぞっこん入れ込んでいるなら、真の姿を見るのも悪いことではないと思うが」
「見る、見てみたい!」
「よし」
息吹はスマホを渡すと部屋の中央に立ったまま、詩空のマーズ火山とかホストクラブに対する熱に水がかかることを期待した。今は生活が本格的にゆがむ一歩手前。ここで持ち直せば詩空はキズを背負わなくて済む。
再生中、詩空は無言だった。その結果、お古のスマホから男たちの会話する声が聞こえる。それは先ほど息吹が聞いたのとまったく同じ。
「ん……」
動画の観覧が終わると同時に、詩空は力抜けたような手からスマホを離す。そうして再び体をベッドに横たわらせると、右手の甲を額に当てた。
「あ、あは……なんか思ってた通りだよ」
笑い声にかすかな泣きが混じっている。
「多分、こういう風に思われているんじゃないかって思ってはいたんだ。本心からステキな女の子だと言っているわけがないともわかっていたつもり。だけど、実際目の当たりにするとすごいショック。やっぱり……胸が痛いよ、息吹」
詩空の目からジワっとあふれる涙。そんな痛々しい姿を見ろしながら息吹は女に向かってつぶやく。
「詩空……たしかにマーズの言っていることはひどいんだが、でもな……どんな仕事をやる人間であっても聖人君子とかひとりもいない。どんな仕事をやるにしたって人間は光と影を持つ。だからマーズが悪いというより、おまえが目を覚ませばいいんだ」
息吹はこれで話がすんなり終わると思った。詩空という女が考えとか意識を改め、明日からは平穏なニューライフが始まるとふつうに思った。
ところが寝転がる詩空は、白いTシャツの豊満な胸のふくらみに枕をギュッと抱きしめたら、まるで高校生か中学生みたいな駄々っ子をやり始める。
「やだやだ!」
「やだって……なにが?」
「それでもわたしはマーズは好き。マーズをキライになるなんて、あの店に行かずに生活するなんて」
「はぁ?」
「いいもん、どう思われたって。わたしはマーズへの思いを捨てられない」
「おいおいい詩空……おまえ、バカにされたんだぞ?」
「バカにされたって……でも……それでも……」
「それでもなんだ」
「胸のさみしさが薄まるならそれでいい」
「さみしさが薄まるとか言っても、それはただ一瞬の夢だろう」
「夢でもいいの。だって現実がつまらないから」
「ったくおまえは……」
息吹、ここで反射的に体が動いてしまった。ベッドに寝転がっている女の上にまたがると、表情をドキ! っとさせた相手の頬に一発ビンタをかましてしまう。なぜおまえはここまでわからないんだ! と思ったとき、自然とやってしまった行為。息吹の右手の平が女のやわらかい頬をぶったという手応えにしびれる。
「ん……ぅ!」
「あ、わ、わるい……」
ハッと我に返った息吹、すぐさまベッドから下りる。今のはさすがにまずいと思うので気まずくなる。
「息吹……」
「な、なんだ……」
「それなら息吹がわたしを抱いてよ。わたしの体を求めて、わたしからさみしってキモチを追い払ってよ」
「それはムリだと言ってるだろう」
「だったらビンタとかしないでよ、それってただの偽善」
「そう言われたらそうかしれないが」
「わたしマーズの事を追いかけ続けるから、行くなって言われてもあの店に通い続けるから」
詩空の哀れっぽい決意は固い。そして息吹はほんとうに不思議だと言いたくてたまらなかった。なぜ? いったい思考回路にどういう歪みを生じるとそこまで意固地になってしまうのか? と。
(これはもう話をしてもムダな領域だな)
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