息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

jun( ̄▽ ̄)ノ

文字の大きさ
7 / 223

7・ホストに夢中な女5

しおりを挟む
7・ホストに夢中な女5


 草木も眠る丑三つ時、息吹は詩空部屋の中に立っていた。部屋の電気は消され、部屋の主はベッド上にてクークーとかわいい寝息を立てている。まるで悩みだの気苦労だの現状がちょっと危なっかしいだのって話とは無縁と言っているような寝顔がとても印象的だったりする。

「まったく……21歳のくせして中身は女子高生って感じだな」

 あきれたような感心するような声を出した息吹、そっと左手を女子の額に当てる。やわらかい前髪と皮膚の間に手の平を軽く当てる。

「詩空、ちょっとだけ中に入るぞ」

 そんな事を言っている息吹の体が次第に透明っぽくなっていく。余計なお世話かもしれないが放っておけないのだから仕方ないと自らに言い聞かせ、詩空という女子の内面世界に進入した。

 パッと周囲が真っ暗になる。そこは何もなく空っぽな領域。いや、かすかに光があるので中に入った息吹が心底困ってしまうような事はない。

「ここが詩空の内面か」

 息吹、かすかな光がある方面に向かって歩き出す。そうしてふと気がつくと、何もない空間だと思いきや左右側面にズラーっと大量の額縁が並んでいる。なんだこれは? いったい何の絵だ? などと息吹は思ったが、それは詩空がホストクラブに入れ込んできた記憶。マーズ火山といっしょに楽しんでいる姿がなどがあるが、それは実際に撮影された写真などではなく、心地よい記憶が内面世界で美化されているということ。

「詩空、おまえはどこまでマーズに抱かれたいっていうんだ」

 横を見つめながら歩き、ほんの少しだが生前の自分がホストだったという事実に罪悪感をおぼえる息吹だった。

「む!」

 歩行を止めた男の眼前にあたらしい光景が登場した。それはずいぶんと明るい空間であり、今までの暗さがウソみたいにまぶしい。それは一見すると健康的なイメージだと思いたくなるが、異常に高い湿気のごとく不快感がすごい。それを具現化していると言わんばかりに十字架が立っており、そこには詩空がパジャマ姿のまま磔にされている。

「詩空」

 立ち止まり、なかなかに高い十字架を見上げ詩空の名前を呼ぶ。

「ぅ……」

 死んでいるみたいだった詩空の目が開く。

「詩空、そこで何をしているんだ」

 息吹が問いかけると詩空はこう答えた。ここがいまの自分にとって最低にして最高の空間であると。

「わかってる……わかってるもん、自分が情けない女だって、マーズに愛してもらえない可能性大だって。でもホストクラブに行かないとかマーズを考えないとか、そんなのまったくつまらないよ。いっさいのたのしみがない人生なんてつらすぎる。だからわたしはホストクラブに行きたいしマーズに抱かれたいって思う」

 つまるところ詩空は依存症たる自分を認めていながら否定しないのだ。この空間が明るいのは全体の何%かはわからないが、いずれにせよ正という部分の心。対する十字架は自分で自分を解放させない意識の産物。

「詩空、せっかく空間が明るくても心が沈んでいたら価値なんかない。実際、ここはものすごい不快感に満ちている。これで何がたのしい? 十字架に磔となって身動きができず、自分がおろかだと自覚してなお縛られ何をどうしたい。詩空、言っておくがおまえはマーズ火山に真心で抱かれることはないぞ」

「ん……」

「一度アタマを冷やせ。しばらくホストクラブもマーズも忘れ、心から毒を抜け。そうすれば間に合う。今のままだと人生が狂うぞ」

「狂ってもいいよ」

 詩空がなさけない方向に走る自分を許すという目をすると、突然にシュルシュルという音が聞こえた。なんだ? と思った息吹だったがその答えはすぐにわかった。詩空を拘束している両手首と足の縄が突然大量のヘビになったせいだ。

「ヘビ……」

 蠢く爬虫類、それは灰色のヘビ。人の内臓が不健康に染まったような感じであり、何匹かが詩空の胴体に向かって這いずりだした。

「んぅ……」

 詩空はヘビが這いずることで感じる事を、不快だけどキモチいい訴えるような目を浮かべる。

「ぅ……んぅ……」

 一匹のヘビがパジャマの隙間から内側へと入っていった。それは詩空が持っている豊満な乳房というふくらみにまとわりついていると上からでも見て取れる。そして爆乳女子はとても恥じらいつつキモチいいと顔を赤くして震える。

 次にもう一匹、別のヘビが下から上へと向かっていく。それは股間の辺りを目指しているように見えたし、パジャマに穴が開いているとは思えなかったが、とにかくスーッと消えたのである。するとその瞬間に! というタイミングで、赤い顔の詩空がこらえきれないとばかり大きな声を出す。

「あぁぁんんん……ん……」

 いったいどういう事かはわからないが、抱かれているような想像を確かな意識をもって快感に変換しているのだろうと息吹は思った。

「詩空、その十字架から下ろす」

 息吹がどこからともなく光り輝く剣を持ち中下段の構えをとり、両足を肩幅よりも 広げ腰を落とす。

「あぁ……んんんぅ……」

 詩空はヘビに絡まられ刺激されよっぽど心地よいと感じているらしく、息吹の姿や声を認識していないようにしか思えない。

「詩空!」

 息吹が十字架に向かって剣を振ろうとしたとき、空間が少し揺れて妙にデカいイヤな音が後方より発生。

「なんだ?」

 振り返ると、ゆっくりと闇から光のこちらに向かってやってくる存在あり。それはとてつもなく巨大なヘビだとシルエットで認識した息吹、剣の持ち方を冗談の構えに切り替える。

「む……ぅ……」

 ヘビの姿がはっきり見えたとき、思わず脳にズキっとショックが走ってしまう。なぜならその10m以上はあろうって巨大なヘビの顔面は人間の男であり、物悲しいグロテスク生物にしか見えない。

「マーズ火山の面ってか」

 息吹、つぶやき終えると同時に襲いかかってきたヘビの顔面に剣の一撃を上から振り下ろす。するとガン! と打撲系丸だしな音が響く。なんともおそろしく固いという事であり、たまらず後ろにさがって身構え直す。

「見た目が精神的にきついから、早く倒さないとな。こいつがいると詩空の現実逃避はいつまで経っても終わらないのだろうし」

 息吹、早い決着を意識する。ところがどうだろう、実際に存在したらネットで大騒ぎになるような巨大ヘビであるにも関わらず、その一瞬の動きが神がかり的に速い。その高速アタックは息吹が何か反応するよりもずっと速かったのである。

「な、なにぃ……」

 気がつくと全身に巻きつかれていた。するとヘビは冷たいという常識がない。むしろ逆であり、なぜかけっこうに生温かい。

「あぁんんんんん!!!」

 十字架上で身悶えする詩空の声が大きくなる。もしかするとマーズ火山と愛し合っているという妄想が息吹に巻きつくヘビに熱とパワーを与えているのかもしれない。いまの詩空は男に抱かれる女そのものとばかり、両目を閉じ大きな声を出し、パジャマから大量に滴り落ちるほど愛液を出している。

「う……あぅぅく……」

 ヘビが息吹の体を締める。ギリギリっという音は締められる者にとっては苦痛と比例する。

「く……ぅ」

 完全にがっちり絡みつかれてしまった以上は腕も何も動かせない。顔はマーズ火山というグロテスクなヘビににらまれると、それによる精神ダメージによって息吹は急降下のように追い詰められていく。

「こ、こうなったら……」

 必殺技のひとつを使うしかないと息吹は決める。そして十字架でオーガズムを味わっている詩空に向かって言った。

「詩空、おれはこのヘビを殺すからな!」

 それは詩空という女子が嫌がりつつ心の拠り所にしている要素のひとつを壊すこと。このヘビを殺せば詩空の中にあるマーズ火山への想いに亀裂が生じる。無我夢中という言葉の温度が大幅に下がるだろうし、場合によっては記憶から完全に消滅する可能性もあったりする。

「息吹ボム!!」

 息吹が叫ぶと同時に全身が燃えるように赤くなり、およそ2秒後に問答無用的な大爆発が生じた。

―ドーン!―

 巨大なヘビの体が粉々になって舞い上がる。何色かよくわからないような液体が飛び散る。そしてマーズ火山の巨大な顔面も能面みたいになって宙を舞う。そしてそれらが一気に地面であろう場所に落下すれば、ドサ! とか、グチャ! って音が鳴るのだった。

「はんぅぅ!」

 突然十字架上の詩空が色合いのちがう身悶えを起こす。それは女という体を快感に包まれるものではなく、何かしら大きなエラーが生じたことでビクンビクンと悶え動いているというモノ。

「ぁ……」

 バラ色の空間から躓いて下水に転落したかのように、詩空は両目を閉じ汗を流しながらしばらく苦しむ。

「ぁんぅ!!」

 ビク! っと大きく体が動いたら、そのまま詩空は動かなくなる。するとまぶしい空間の輝度が下がり始めた。そして空間はプチっと電気が切られたように真っ暗となり、それと並行して詩空の両目が開く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

48歳主婦の宅建試験挑戦―そして年下彼がくれた勇気と恋

MisakiNonagase
恋愛
「お母さん」でも「奥さん」でもない、私の名前を呼び止めたのは、26つも年下の彼だった。 「48歳、主婦。私が手に入れたのは、資格(ライセンス)と、甘く切ない自由だった。」 スーパーのパートに明け暮れる平凡な主婦・中西京香、48歳。 目的もなく始めた宅建試験への挑戦が、枯れかけていた彼女の人生を激変させる。 インスタの勉強垢で出会ったのは、娘よりも年下の22歳大学生・幸正。 「不倫なんて、別の世界の出来事だと思っていた――」 そんな保守的で、誰より否定的な考えを持っていたはずの京香が、孤独な受験勉強の中で彼と心を通わせ、気づけば過去問演習よりも重い「境界線」を越えていく。 資格取得、秘めた大人の恋。そして再スタート、 50歳を迎えた彼女が見つけた、自分だけの「地平線」とは。 不動産、法学、そして予期せぬ情熱が交錯する、48歳からの再生と自立の物語。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

処理中です...