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8・ホストに夢中な女6
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8・ホストに夢中な女6
(ん……)
目に見えるのは暗闇、いやそれは暗い部屋の天井と脳が理解し、夢が破けてしまった実感が後から強制的な実感として広がっていく。
「ぅ……」
なぜかという理由はわからないが、奇妙な気分にふさわしくツーっと涙が出る。そして左手を額に当てた詩空は少し間を置いてから言った。
「ねぇ、息吹……いるんでしょう?」
姿勢はそのままで目をやったりすることなく放たれる声には、見えなくても見えていると確信ゆえの音色あり。
「あぁ、いるよ」
詩空の内面より舞い戻った息吹、返事をした後に電気をつけて欲しいと頼まれたので応じる。入り口ドアのそばにあるスイッチに右手の中指を当てると、パチっと音を立たせた。すると真っ暗がパッと消えて室内は明るさに包まれる。
「ぅん……」
まぶしい! と両目を綴じて表情を歪めた詩空、10秒くらいしたら両目をパチパチさせながら体を起こす。ベッドから下りてまっすぐ立ち、入り口ドアの前に立っている息吹を見つめる。
「息吹……」
「うん?」
「わたしの中から……つよい感じが消えちゃったよ」
「つよい感じとは?」
「マーズとかホストクラブにこだわりたいってキモチが弱まったってこと」
「そうか……でもそれは……いい事だろう? それで詩空は前を向いて生きていけるだろう? ホストクラブに行かなくても、マーズ火山の顔を拝まなくてもだいじょうぶな心を持ったと言えるだろう?」
息吹は詩空から感謝の言葉をかけられたいとは別に思っていなかったが、自分の中にあった依存が消えた事をうれしく思うと言われるのだと思った。それであれば苦労も報われると勝手にひとりでホッとする。
「そんなわけないよ、息吹……」
「え?」
「ホストクラブとかマーズの事が消滅ってくらい記憶から消えたならよかったよ。だけど、依存が切れたというだけでホストクラブやマーズの事は覚えている」
「だからどうだっていうんだ?」
「こんなのさみしくてイヤだよ。だって代わりになるモノがないんだもん。ホストクラブに行かないとかマーズを忘れるとか、それで健全な生活って言われてもさみしさを埋められなかったらとても損したような気がする」
「損って言い方はまちがっていると思うけどな」
「むぅ……」
ここで無言の見つめ合いが生じた。言葉がない1分くらいのモノだが、ひどく重く苦しい感じに満ちる。それならいっそ100万語の語り合いをやった方がマシだという空気が室内を埋めていく。
「息吹……」
「なんだ?」
「お願い……抱いて、責任とって」
「責任?」
「ホストクラブへの情熱を消され、マーズへの関心をそがれても、わたしの胸の中にあるさみしさは消えていない。こんなの逆効果だよ。だから責任を取って抱いて。わたしの中にあるさみしさを消して」
詩空、言うが早いかパジャマのボタンに手をかけていた。向き合う男の返しというタイミングを奪い取り、意識やら何やらすべてを自分に向けさせんとボタンをゆっくり外し始めた。
ひとつ、そしてふたつめとボタンが外れるとプクッとやわらかそうな谷間が顔を見せはじめ、さらにボタンを外すと谷間のインパクトは豊満な乳房というふくらみ具合へ移行。さらにさらに丸いボタンを外すとパジャマが割れて上半身があざとい見え隠れという感じのオーラを纏う。
「息吹に抱かれたい」
言いながら何ら迷うことなくクッとパジャマを広げ脱ぎ始める。するとためいきが出るようなすごい美爆乳って色白バストがフルっと揺れ動く。それは円錐型と釣り鐘型のいい所取りをしたようなうつくしい豊満。
「わたし……おっぱい大きいよ、今のところ105cmでブラはIカップ」
パジャマの上を床に落とした詩空、豊かな乳房を隠さずまっすぐ立って見せる。ジーっと女だけが持つ魔力とも言える目力を息吹に向ける。
「わたし……本気だから」
息吹がアクションを起こさないので、先につぶやいたのみならず、105cmの乳房をフルフルっと揺らしながら上半身を軽く曲げるとパジャマのズボンを脱ぐ。そしてズボンを蹴るように脱ぎ飛ばすと、先ほどの夢にて濡れてしまっている白いパンツに手をかけ、そのままグイっと脱いで全裸になる。覆い隠すものは何もないというグラマーな体をまっすぐ立って相手にしっかり見せる。
「息吹……女にここまでさせて何もしないなんて……ないよね?」
詩空は息吹にラブ目線を送る。すごい爆乳だが性経験を持っていない。それでいて息吹に抱かれるならだいじょうぶ! と勝手に安心しきった感じと同時に、乱用のごとく放出されているフェロモンによってお盛んなメスライオンみたいなオーラが立っている。
「詩空」
息吹がゆっくりと全裸の女に歩み寄り始めた。
「ん……」
顔を赤くする詩空だが、反射的に動きかけた腕やらにストップをかけ、両足の緊張による震えもできるだけ見られないようにとがんばってまっすぐ立つ。
息吹、素っ裸の女を間近かつ真正面に見つめる。そうしてスーッと動かした右手を、ドキ! っとする詩空の谷間に当てる。するとプクッとやわらかい弾力が快感に書き換えられ息吹の手に返ってくる。
「詩空」
「な、なに?」
息吹、相手が半熟のうっとり目というのを見つめながら、動かした右手ではとても包み込めない豊満なふくらみをギュッと掴む。
「ぁ……んぅ……」
詩空の両足がブルッと震え鳥肌が立つ。
「詩空」
息吹、やわらかい弾力を揉み解しながら見つめる相手の顔に近づく。そしてキスされるのだと思って両目を閉じた詩空と額を合わせる。そして小さな声で決して小さくはない疑問を投げかける。
「詩空、おれに抱かれて何が解決するというんだ」
「え、え?」
「おれはおまえの側にずっといてやるって事ができない。それでも抱くっていうのは、一時の慰めに過ぎない」
「いいよ、それでもいいから」
「いーや、それでダメなんだ、それでは何も解決しない」
息吹、赤い顔で抱かれたいと見つめる詩空をベッドに押し倒した。あんぅ! という声が漏れると同時に豊満な乳房が大きく揺れ動く。
「詩空」
すぐさまあがって両手をベッドにつけ、全裸で真っ赤な顔をする女を見て息吹は言い渡す。
「詩空にとっての解決策はおれに抱かれることじゃない」
「じゃぁ何だって言うの?」
詩空は自分を見下ろす相手の腕をつかみ、体を沈めて欲しいと引っ張る。話し合いなんかどうでもいいからセックスがしたいと動作で訴える。
「せっかくホストクラブやマーズ火山への依存が切れたんだ。ここでおれに抱かれて慰めてもらうとかいうのは、あたらしい依存を作るだけ。だから詩空がやるべきは、あたらしく正しい恋を見つけるように前向きに生きる事だけ」
「正しい恋?」
「あぁ、そうだ。おべっかとかじゃなく下心でもなく、詩空という女に偽りない本心を向けられるという、そんな男を見つけるようにがんばれ。そういう男を掴みたいと前を向いて生きる以外に解決策はないんだ」
息吹はそう言うと、反論しようとした詩空のやわらかい唇にピッと人差し指の腹を当てる。そしてやさしい手つきで髪の毛を撫でながら続ける。
「まぁ……おれみたいな男が言っても似合わないし恥ずかしいとは思うが、でもついでだから言わせてもらえば……この世は持ちつ持たれつ。自分の努力で探し、そして自分の何かを与えて初めて得られる。まっとうな心で何かを与えなきゃ、詩空はまっとうな何かを得られないってことだ」
「いい格好しい……」
「だよな、自分でもそう思う。でも……仕方ないだろう、ずっと寄り添ってやれないんだから適当な事とかしたくないんだよ。もし寄り添えるんだったら、正直に言えばやりたい。やっておれの女にしたい。なんでそれが許されないんだくそったれ! ってキモチなんだよ、本心っていうのはな」
息吹は言うと体を起こしベッドから下りる。そして部屋の入り口に向かっていき、電気のスイッチに指を左の指をかける。
「もう……おれが詩空にしてやれるとかいうのは終わった。だからもう行く」
「え、ちょ、ちょっと待ってよ」
「詩空、ホストクラブやマーズ火山の肩を持つわけじゃないとしても一応言っておく。あれは仕事でやっている、そういう世界でそういう営みだから仕方ない。だからだ、悪いのはあいつらだと言っても始まらない。あいつらに夢を見させてもらったけど、今日からは自立すると考えればいいんじゃないかな。しあわせは掴み取るもんだし、それはみんな同じ。だから詩空も自分から幸せを掴みに行けばいい」
「い、息吹とわたしが一緒になるとかできないの?」
「ムリ。そんな事をして欲しいとも思っていない」
「そんな……息吹と会えなくなったらわたしさみしいよ」
「言っておくがおれもさみしいんだぞ」
「ほんとうに?」
「あぁ、でも詩空、おまえにはまだ未来があるんだから、前向きになれ。おれを忘れられないって言うんじゃなく、おれと過ごした時間に報いようとか思ってみればいい。おまえがステキな恋を見つけて進んでいけるなら、それでオーケー。そうしたらおれの事を思う必要も消えてなくなる」
「息吹、お願い、もうちょっとだけ……あと数日くらい一緒にいて!」
「詩空、善は急げっていうだろう。ウダウダ長引くと感情がこじれて腐れてしまう。だからすっぱりこれで終わり。元気でな」
言った息吹がパチッとスイッチを切れば部屋が真っ暗になる。詩空慌てて全裸のままスイッチに駆け寄った。そしてすぐさま部屋に白い明かりをもたらす。だがそこは見慣れた自分の部屋であって、自分の持ち物があっちこっちにあって、でも家満登息吹という者の姿はない。
「息吹、息吹」
何回か名前を呼んだ。少し間を置いてからまた同じことをした。でも静かな部屋には目に見えないモノが存在しているとは思えない。霊能力があるわけではないとしても、ここに自分が以外の誰かがいるわけではないと断言できると思った。
「息吹……」
終わったんだとはっきり感じさせられた。親が見たらびっくりする全裸で部屋の中央に立ったまま、しばらくはボーッとうつろな目をしていた。だが意外なのかふつうなのか、さみしさは思ったほど凶悪ではない。泣き叫ぶかもなどと考えていた自分の予感は見事にハズレ、なかなかに冷静な自分が立っていた。
「ステキな恋か……まっとうな何かを与えてまっとうな何かを得る……か」
色白むっちりなダイナマイトボディって全裸のままブツブツ言って、まずは机の引き出しから取り出したホストクラブのパンフレットなどをハサミで切り始める。もうこんなモノは大事にする必要はないとかなり細かく切ったら、その残骸をオレンジ色のゴミ箱に陥れる。
裸のまま床に正座するとスマホからホストクラブ情報をすべて消去。一生の宝物とか思ったりしていたマーズ火山の画像も消し去る。
「後は……なんかあったような……」
正座したまま、我ながら大きくてやわらかい弾力と思う片方に手を当て何か忘れていないかと考えてから立ち上がる。
「そうだそうだ、消費者金融のカード。これを捨てなきゃ! 一度も使ってなくてよかった、使っていたら大変だったな」
サイフから取り出した真新しくきれいで危険なカードにハサミを入れようとする。だが、ここで切っても関係が切れるわけではないと気づき手に持つモノをひっこめた。そして面倒などと思わず、明日にさっそく消費者金融に出向いて解約手続きしようと決心。
「善は急げっていうもんね」
パンツにパジャマと纏い直した詩空、パソコンとスマホの連動予定表に消費者金融で解約手続きするべしと書いておいた。
「ふぅ……」
予定の書き込みが終わると、詩空は久しぶりに健康的なキブンだなぁと思った。ホストクラブの事ばかり考えていたときは、寝ても覚めても店の名前や看板が脳内に浮かぶ。夢の中にホストが出て来るは当たり前でシャンパンタワーをやったり、マーズ火山とラブホテルに行ったりもした。
しかし今、ホストクラブに興味なし。マーズ火山もいっさいの関心なし。自分が別の人間になったという表現そのものってフィーリングを噛みしめる。
「さて寝よう。絶対の絶対にマーズよりも息吹よりもいい男をつかまえてシアワセになるんだ。そういう人生を送ってやるんだ」
いったい何年ぶりだろうってクリーンでキモチのいい感情を豊かな胸の中に入れ持って、詩空は目覚めのアラームが鳴るまでの数時間をしっかり寝ようとベッドの中に潜り込むのであった。
(ん……)
目に見えるのは暗闇、いやそれは暗い部屋の天井と脳が理解し、夢が破けてしまった実感が後から強制的な実感として広がっていく。
「ぅ……」
なぜかという理由はわからないが、奇妙な気分にふさわしくツーっと涙が出る。そして左手を額に当てた詩空は少し間を置いてから言った。
「ねぇ、息吹……いるんでしょう?」
姿勢はそのままで目をやったりすることなく放たれる声には、見えなくても見えていると確信ゆえの音色あり。
「あぁ、いるよ」
詩空の内面より舞い戻った息吹、返事をした後に電気をつけて欲しいと頼まれたので応じる。入り口ドアのそばにあるスイッチに右手の中指を当てると、パチっと音を立たせた。すると真っ暗がパッと消えて室内は明るさに包まれる。
「ぅん……」
まぶしい! と両目を綴じて表情を歪めた詩空、10秒くらいしたら両目をパチパチさせながら体を起こす。ベッドから下りてまっすぐ立ち、入り口ドアの前に立っている息吹を見つめる。
「息吹……」
「うん?」
「わたしの中から……つよい感じが消えちゃったよ」
「つよい感じとは?」
「マーズとかホストクラブにこだわりたいってキモチが弱まったってこと」
「そうか……でもそれは……いい事だろう? それで詩空は前を向いて生きていけるだろう? ホストクラブに行かなくても、マーズ火山の顔を拝まなくてもだいじょうぶな心を持ったと言えるだろう?」
息吹は詩空から感謝の言葉をかけられたいとは別に思っていなかったが、自分の中にあった依存が消えた事をうれしく思うと言われるのだと思った。それであれば苦労も報われると勝手にひとりでホッとする。
「そんなわけないよ、息吹……」
「え?」
「ホストクラブとかマーズの事が消滅ってくらい記憶から消えたならよかったよ。だけど、依存が切れたというだけでホストクラブやマーズの事は覚えている」
「だからどうだっていうんだ?」
「こんなのさみしくてイヤだよ。だって代わりになるモノがないんだもん。ホストクラブに行かないとかマーズを忘れるとか、それで健全な生活って言われてもさみしさを埋められなかったらとても損したような気がする」
「損って言い方はまちがっていると思うけどな」
「むぅ……」
ここで無言の見つめ合いが生じた。言葉がない1分くらいのモノだが、ひどく重く苦しい感じに満ちる。それならいっそ100万語の語り合いをやった方がマシだという空気が室内を埋めていく。
「息吹……」
「なんだ?」
「お願い……抱いて、責任とって」
「責任?」
「ホストクラブへの情熱を消され、マーズへの関心をそがれても、わたしの胸の中にあるさみしさは消えていない。こんなの逆効果だよ。だから責任を取って抱いて。わたしの中にあるさみしさを消して」
詩空、言うが早いかパジャマのボタンに手をかけていた。向き合う男の返しというタイミングを奪い取り、意識やら何やらすべてを自分に向けさせんとボタンをゆっくり外し始めた。
ひとつ、そしてふたつめとボタンが外れるとプクッとやわらかそうな谷間が顔を見せはじめ、さらにボタンを外すと谷間のインパクトは豊満な乳房というふくらみ具合へ移行。さらにさらに丸いボタンを外すとパジャマが割れて上半身があざとい見え隠れという感じのオーラを纏う。
「息吹に抱かれたい」
言いながら何ら迷うことなくクッとパジャマを広げ脱ぎ始める。するとためいきが出るようなすごい美爆乳って色白バストがフルっと揺れ動く。それは円錐型と釣り鐘型のいい所取りをしたようなうつくしい豊満。
「わたし……おっぱい大きいよ、今のところ105cmでブラはIカップ」
パジャマの上を床に落とした詩空、豊かな乳房を隠さずまっすぐ立って見せる。ジーっと女だけが持つ魔力とも言える目力を息吹に向ける。
「わたし……本気だから」
息吹がアクションを起こさないので、先につぶやいたのみならず、105cmの乳房をフルフルっと揺らしながら上半身を軽く曲げるとパジャマのズボンを脱ぐ。そしてズボンを蹴るように脱ぎ飛ばすと、先ほどの夢にて濡れてしまっている白いパンツに手をかけ、そのままグイっと脱いで全裸になる。覆い隠すものは何もないというグラマーな体をまっすぐ立って相手にしっかり見せる。
「息吹……女にここまでさせて何もしないなんて……ないよね?」
詩空は息吹にラブ目線を送る。すごい爆乳だが性経験を持っていない。それでいて息吹に抱かれるならだいじょうぶ! と勝手に安心しきった感じと同時に、乱用のごとく放出されているフェロモンによってお盛んなメスライオンみたいなオーラが立っている。
「詩空」
息吹がゆっくりと全裸の女に歩み寄り始めた。
「ん……」
顔を赤くする詩空だが、反射的に動きかけた腕やらにストップをかけ、両足の緊張による震えもできるだけ見られないようにとがんばってまっすぐ立つ。
息吹、素っ裸の女を間近かつ真正面に見つめる。そうしてスーッと動かした右手を、ドキ! っとする詩空の谷間に当てる。するとプクッとやわらかい弾力が快感に書き換えられ息吹の手に返ってくる。
「詩空」
「な、なに?」
息吹、相手が半熟のうっとり目というのを見つめながら、動かした右手ではとても包み込めない豊満なふくらみをギュッと掴む。
「ぁ……んぅ……」
詩空の両足がブルッと震え鳥肌が立つ。
「詩空」
息吹、やわらかい弾力を揉み解しながら見つめる相手の顔に近づく。そしてキスされるのだと思って両目を閉じた詩空と額を合わせる。そして小さな声で決して小さくはない疑問を投げかける。
「詩空、おれに抱かれて何が解決するというんだ」
「え、え?」
「おれはおまえの側にずっといてやるって事ができない。それでも抱くっていうのは、一時の慰めに過ぎない」
「いいよ、それでもいいから」
「いーや、それでダメなんだ、それでは何も解決しない」
息吹、赤い顔で抱かれたいと見つめる詩空をベッドに押し倒した。あんぅ! という声が漏れると同時に豊満な乳房が大きく揺れ動く。
「詩空」
すぐさまあがって両手をベッドにつけ、全裸で真っ赤な顔をする女を見て息吹は言い渡す。
「詩空にとっての解決策はおれに抱かれることじゃない」
「じゃぁ何だって言うの?」
詩空は自分を見下ろす相手の腕をつかみ、体を沈めて欲しいと引っ張る。話し合いなんかどうでもいいからセックスがしたいと動作で訴える。
「せっかくホストクラブやマーズ火山への依存が切れたんだ。ここでおれに抱かれて慰めてもらうとかいうのは、あたらしい依存を作るだけ。だから詩空がやるべきは、あたらしく正しい恋を見つけるように前向きに生きる事だけ」
「正しい恋?」
「あぁ、そうだ。おべっかとかじゃなく下心でもなく、詩空という女に偽りない本心を向けられるという、そんな男を見つけるようにがんばれ。そういう男を掴みたいと前を向いて生きる以外に解決策はないんだ」
息吹はそう言うと、反論しようとした詩空のやわらかい唇にピッと人差し指の腹を当てる。そしてやさしい手つきで髪の毛を撫でながら続ける。
「まぁ……おれみたいな男が言っても似合わないし恥ずかしいとは思うが、でもついでだから言わせてもらえば……この世は持ちつ持たれつ。自分の努力で探し、そして自分の何かを与えて初めて得られる。まっとうな心で何かを与えなきゃ、詩空はまっとうな何かを得られないってことだ」
「いい格好しい……」
「だよな、自分でもそう思う。でも……仕方ないだろう、ずっと寄り添ってやれないんだから適当な事とかしたくないんだよ。もし寄り添えるんだったら、正直に言えばやりたい。やっておれの女にしたい。なんでそれが許されないんだくそったれ! ってキモチなんだよ、本心っていうのはな」
息吹は言うと体を起こしベッドから下りる。そして部屋の入り口に向かっていき、電気のスイッチに指を左の指をかける。
「もう……おれが詩空にしてやれるとかいうのは終わった。だからもう行く」
「え、ちょ、ちょっと待ってよ」
「詩空、ホストクラブやマーズ火山の肩を持つわけじゃないとしても一応言っておく。あれは仕事でやっている、そういう世界でそういう営みだから仕方ない。だからだ、悪いのはあいつらだと言っても始まらない。あいつらに夢を見させてもらったけど、今日からは自立すると考えればいいんじゃないかな。しあわせは掴み取るもんだし、それはみんな同じ。だから詩空も自分から幸せを掴みに行けばいい」
「い、息吹とわたしが一緒になるとかできないの?」
「ムリ。そんな事をして欲しいとも思っていない」
「そんな……息吹と会えなくなったらわたしさみしいよ」
「言っておくがおれもさみしいんだぞ」
「ほんとうに?」
「あぁ、でも詩空、おまえにはまだ未来があるんだから、前向きになれ。おれを忘れられないって言うんじゃなく、おれと過ごした時間に報いようとか思ってみればいい。おまえがステキな恋を見つけて進んでいけるなら、それでオーケー。そうしたらおれの事を思う必要も消えてなくなる」
「息吹、お願い、もうちょっとだけ……あと数日くらい一緒にいて!」
「詩空、善は急げっていうだろう。ウダウダ長引くと感情がこじれて腐れてしまう。だからすっぱりこれで終わり。元気でな」
言った息吹がパチッとスイッチを切れば部屋が真っ暗になる。詩空慌てて全裸のままスイッチに駆け寄った。そしてすぐさま部屋に白い明かりをもたらす。だがそこは見慣れた自分の部屋であって、自分の持ち物があっちこっちにあって、でも家満登息吹という者の姿はない。
「息吹、息吹」
何回か名前を呼んだ。少し間を置いてからまた同じことをした。でも静かな部屋には目に見えないモノが存在しているとは思えない。霊能力があるわけではないとしても、ここに自分が以外の誰かがいるわけではないと断言できると思った。
「息吹……」
終わったんだとはっきり感じさせられた。親が見たらびっくりする全裸で部屋の中央に立ったまま、しばらくはボーッとうつろな目をしていた。だが意外なのかふつうなのか、さみしさは思ったほど凶悪ではない。泣き叫ぶかもなどと考えていた自分の予感は見事にハズレ、なかなかに冷静な自分が立っていた。
「ステキな恋か……まっとうな何かを与えてまっとうな何かを得る……か」
色白むっちりなダイナマイトボディって全裸のままブツブツ言って、まずは机の引き出しから取り出したホストクラブのパンフレットなどをハサミで切り始める。もうこんなモノは大事にする必要はないとかなり細かく切ったら、その残骸をオレンジ色のゴミ箱に陥れる。
裸のまま床に正座するとスマホからホストクラブ情報をすべて消去。一生の宝物とか思ったりしていたマーズ火山の画像も消し去る。
「後は……なんかあったような……」
正座したまま、我ながら大きくてやわらかい弾力と思う片方に手を当て何か忘れていないかと考えてから立ち上がる。
「そうだそうだ、消費者金融のカード。これを捨てなきゃ! 一度も使ってなくてよかった、使っていたら大変だったな」
サイフから取り出した真新しくきれいで危険なカードにハサミを入れようとする。だが、ここで切っても関係が切れるわけではないと気づき手に持つモノをひっこめた。そして面倒などと思わず、明日にさっそく消費者金融に出向いて解約手続きしようと決心。
「善は急げっていうもんね」
パンツにパジャマと纏い直した詩空、パソコンとスマホの連動予定表に消費者金融で解約手続きするべしと書いておいた。
「ふぅ……」
予定の書き込みが終わると、詩空は久しぶりに健康的なキブンだなぁと思った。ホストクラブの事ばかり考えていたときは、寝ても覚めても店の名前や看板が脳内に浮かぶ。夢の中にホストが出て来るは当たり前でシャンパンタワーをやったり、マーズ火山とラブホテルに行ったりもした。
しかし今、ホストクラブに興味なし。マーズ火山もいっさいの関心なし。自分が別の人間になったという表現そのものってフィーリングを噛みしめる。
「さて寝よう。絶対の絶対にマーズよりも息吹よりもいい男をつかまえてシアワセになるんだ。そういう人生を送ってやるんだ」
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