息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

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40・先生いっしょに死んでください3

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40・先生いっしょに死んでください3


 ここは霊子が通う学校である。そしてどこの学校にも、ヤンキーという文字を背負う存在はいるわけで、ここも決して例外ではなかった。

「ヒマだよなぁ……なんかおもしろい話とかないのかなぁ?」

 ヤンキーグループのリーダ―こと赤井熱美がぼやく。今日はすこぶるいい天気であると同時に気温も人の味方。そうなると昼休みなんて時空は平和ボケ天国。ヤンキーというのは男であれ女であれ平和をクソな退屈なモノと感じるように出来ている。

 熱美を含めた4人は色々つぶやいてみたがいずれも気乗りしない。このまま人間が腐っていくという落ち込みすら生じてくる。だがそのときフッと、一見もっとも冷静っぽい見た目でありながら人の心を煽るのがうまい青井寒美がつぶやく。

「わたし思うんだけどさぁ……」

 この勿体づけた前置きっぽいつぶやきをすれば、当然だが他の3人は目を寒美に向ける。

「怪椎霊子っておかしくない? あいつ金持ちだってうわさがあって、金遣いが荒いとも言う。でもさぁ、あいつからはアルバイトやっているような感じとか、仕事している立派な女子とか、そういう感じが全然伝わらない。だったらなんであいつは金を持っているの? って話になる」

 すると熱美、たしかにそうだよなぁとつぶやき返す。しかしあの見た目と上品っぽいフンイキからすると、あいつの家は金持ちって事じゃないのか? と結論をこぼしてみる。

 するとどうだろう、突っ込みが大好きな間合白美がすかさず声をだす。金持ちがこんなダサい女子高に来るわけがないじゃんと。

「あ、そう言えばそうだなぁ。ここってお嬢様学校じゃないもんな。だったらなぜ、あいつは金を持っているんだ?」

 ここで寒美がパン! と両手を当ててもっともらしいを主張するような声で言った。

「多分体を売っている。それしかない。だってあいつすごい……まぁ、美人なんだろうしオマケにすごい爆乳。うちのグループですごい巨乳であるはずの黄美よりすごいじゃん。え、黄身ってFカップだよ? それが平凡に見えてしまうくらいなんだから、あいつがその乳で男を誘惑してもおかしくないと思うんだよ、というかそれしかないような気が」

 それを聞いた熱美、まさか……と言いかけた。するとクスっとやった寒美にダメだしをされてしまう。熱美なんて熱量ある名前のくせに、意外と人を疑わない純情だよねぇと。もちろんその声には多少なりとも侮辱する音色が込み。

「よし、そうしたら調査。黄身が怪椎霊子を尾行。学校にいる間も外でも、常に尾行してしっぽをつかむこと。もし怪椎霊子が体を売っているとかいうゲスな女だったら、それはもう地獄に落とさなきゃいけないしね」

「わかった」

 熱美に指名された後野黄美、その一見はもっともふつうでグループ内で一番の巨乳。平均よりわずかに引くめって身長でFカップだから、そのやわらかそうって部分だけは目立つ。しかし他はまったく目立たないし。美人でHカップの爆乳という霊子からすれば、黄身なんて道端の石ころになるだろうというのが熱美の考え。

 こうして黄美の探偵もどきな時間がスタート。ひたすらこっそり後をつけ、どんなこともメモに書き記し、決定的な瞬間が来るのを辛抱強く待つ。すると調査を始めてから二日目、早くもすごい場面に出くわす。

(午後の9時に駅にひとり……あれは男と待ち合わせのはず。誰? 相手によって地獄行き)

 黄美は地味でダサい格好に身を包んでいるので男から声をかけられたりしない。そして熱美が思ったとおり、こっそり見られているなんて疑いを霊子が抱く事もなかった。

「先生」

 霊子がそう言ってにっこり手を振る。

(先生?)

 救いようがないほど地味な巨乳女子って格好の黄美は鳥肌が立った。なぜならいま確かに霊子の声で先生という2文字が聞こえたからだ。するとまた別の驚きが沸く。

(えぇ、ま、まさかあれは……)

 黄美がびっくり仰天するのも無理はない。なぜなら突然に現れたのは愚香進という国語の教師だったからだ。地味、冴えない、しかもかなり老けて見えるし、生命力は弱そう。多くの女子はこの男を道端の枯れ葉と認定しているので、まさか怪椎霊子が相手をするなんてと青天の霹靂って電流が走る。

(あ、いや、もしかするとただの大事な話って事だけかもしれない)

 夜の9時に男の教師と女子高生が会う時点でおかしいだろう! とは思ったが、霊子があの男を胸に抱いてオーガズムに達するとは思えないのでもう少し様子見とした。

 黄美が尾行していると気づかない2人が並んで歩く。そこにある年齢差は34歳という呆れるモノであるが、2人の後ろ姿には慣れ親しんだ感が生々しく浮かぶ。しかもそれは友情とか親子もどきではなく、もう少しピンク色が似合うような関係では? と思えてしまう感じ。

(う、うわ……)

 立ち止まった黄美、電柱の後ろから2人を見てごくりと息を飲む。なぜなら教師と教え子って2人はなんのためらいもなくラブホに入っていたからだ。

(ラブホテル……マジで? あの怪椎霊子があんなオッサンとセックスするの? ひぇ~いったいどういう事よ)

 黄美は2人の姿が消えてもラブホテルって建物を見続けた。そしてこれはもう確実だなと結論付けてもいいと納得。

 女がセックスをする理由は3つ。ひとつはマグマのように熱い愛、もうひとつは妊娠を望む。そしてこの2つはワンセットになったりならなかったりと複雑。だがあの2人がそれらを求めてラブホとは思えない。

「金だね、まちがいない。愛情だけであの爆乳があんなどうしようもないくそったれなおっさんを抱くはずがないもの」

 こうして黄美はさっそく仲間にメールでこの事を伝えた。もちろん、2人が歩いている姿、ラブホテルの前でちょっと立ち止まって何やら会話していたって姿は撮影もしている。もうカンペキに証拠ありありだ。

 そうして翌日、4人は昼休みまでガマンにガマンをしてから集まり、さぁどうする! って話にドキドくワクワク。

「しかしあの爆乳があんなおっさんとやるとは……」

「世の中は悪趣味だぁ」

「お金だよ、それ以外に理由なんかない」

 熱美を除いた3人は出だしから盛り上がり、これで怪椎霊子を地獄に落とせると笑ったりする。さっそく本日の学校が終わったら、霊子を呼び出しさんざんなぶってから退学に追い込んでやろうか? なんて話となる。

「待った、待った、いきなり霊子をなぶったらダメだって」

 熱美はちょっとばかりこの場をウロウロし始めたが、それは落ち着かないからではなく、オペラ歌手みたいにやや大げさな手ぶり身振りで力説するのが好きだからという理由による。

「女を地獄へ落とすためには男の協力が必要なんだ。女を攻めるにはパートナーである男から攻める、これが分厚い勝利の法則。まぁ、わたしに任せるべし。悪いようにしないから」

 熱美は冷静にクスっと笑ったが、そこには霊子に軽い復讐をしてやりたいってキモチがあった。

 ヤンキーでありグループのリーダ格でありながら、意外とあまり人を疑わなかった。そんな熱美であるがゆえ、霊子が金のためにセックスをしているとは思いがたいなんて、誰かとよからぬセックスをしているなんて、さすがにそれはないだろうと思ったりしていた。そんな自分はマヌケだったと思うと同時に、よくも人をだましたな! という怒りを晴らしたいとする。だからとっても大げさなアクションで青空を見上げてつぶやくのだった。

「さて、楽しみ。久しぶりに胸が踊るって物語の始まりだよ」
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