息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

jun( ̄▽ ̄)ノ

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39・先生いっしょに死んでください2

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39・先生いっしょに死んでください2


 2人で喫茶店に入った。それぞれが注文したって品が白いテーブルに並んだ。そして紅茶とかコーヒーにシュガーだのレモンだのミルクだのが落とされ、一口味わったところで、では! とばかり霊子が落ち着いたかわいい笑顔を見せながら切り出す。

「じゃぁ、お兄さん聞かせてよ。わたしの何がいけないのか」

 霊子は大変に興味深々だった。いったいどんな風に何を言われるのか、もしつまらない事しか言われなかったら相手を罪人に落としてやろうと思っていたりする。

「その笑顔だ」

 息吹はコーヒーカップを皿の上に置くと、霊子の象徴ともいえるまろやかな笑みがよろしくないと切り出す。

「笑顔、このステキな笑顔? なにがいけないのよ」

「単にまったりかわいいだけなら問題ない。でも霊子の笑みは一周という動きをしている。時計がグルっと回るのと同じで、善人から悪人に向かって一周している最中という気がする。だからだ、おれには霊子の笑みが善人と悪人のハーフという感じに見える」

「ぅ……」

 霊子、一瞬その豊かな胸をドキッとさせた。いきなり胸の内側にナイフの先を入れられたような感じがして戸惑いかける。しかし冷静なそぶりを続けたまま、なぜ悪人なのか言わせることにする。

「言ってもいいか?」

「いいよ、でもつまらないとか的外れだったら許さないからそのつもりで」

「霊子は裏でよくないセックスをし過ぎなんだよ、それがよくない」

「え……」

「相手が誰かは知らないが、きれいなセックスじゃないのは確かだ。そういうのをやりまくって身に付くフェロモンは裏通り臭なんだよ。その見た目の華やかさで隠せるとか言っても、あと数年したら金色が黄色に変わり、さらに数年すると黄色がババ色になるって話だ」

 息吹はここで特に何もないようにコーヒーを飲むが、言われた霊子は表情を変えず固まっていた。まさに超ドストライクという位置にボールを投げつけられたことでショックを受けている。

「なんで……わかるの?」

「おれはそういう女をたくさん見てきたからな」

「お、お兄さんの仕事ってなに?」

「おれはホストをやっていた」

「やっていた?」

「客の女に殺されて一度死んでしまったんだよ」

 通常の人間ならなんだそれは? と脳をゆがめてしまうところである。しかし霊子は息吹が死んで生き返ったとかいう所はどうでもいいとさっくり流せた。問題はそこではないとして気にしない。

「お兄さん、ホストをやっている間に何人くらいの女とやったの?」

「おれはまぁ……モテる人生だったからな、ホストとか以前に小学生の頃から女とやりまくって、生涯においては約500人だ」

「いまいくつ?」

「23だ」

「23歳で500人の女とやるなんて、なるほどそういう事か、それなら納得できるよ」

「どういう意味だ?」

「お兄さんを初めて見た時、なんか胸がキュンとさせられた。危険と格好良さ、泥臭さとまともさ、そういう表裏一体にしびれたんだ。要するにお兄さんもわたしといっしょできれいな人間じゃない、そうでしょう? だからわたしがお兄さんにキュンとなったんでしょう?」

「まぁ、それでもいいよ。もう死んだしな」

「うわぁ……どうしよう、わたし、お兄さんにホレそう」

「ホレられても困る。それに霊子の場合は、おれがどうのとか言っている場合じゃない。余計なお世話かもしれないけど、きれいじゃないセックスを止めた方がいいんじゃないのかな?」

 霊子、ほんのり恋するような目で息吹を見ながらセックスの相手は先生だと自白する。

「たしか……49歳だったかな。わたしがいま15歳だから、34年の差。すごいよね、狂ってるって感じだよね」

「でも金がもらえるからセックスって事なんだろう?」

「まぁね……でも……最初は他にも理由はあったよ。先生は地味でさぁ、しかも国語の教師だから内側人間。なんかあるとすぐショックを受けて自殺しそうな感じ。そういうのをかわいいって思っちゃった。わたしがたのしさを教えてあげたいみたいな気になった。それっておかしい事かな?」

「ま、不幸体質の女にはよくあることだ、気にするな」

「でもさぁ、変な話だけど……部分的にはマジメってキモチもあったんだよ。遊びでセックスと言われても仕方ないけどさ、先生に色々教えてあげたいというのもウソじゃない。これわかってくれる?」

「わかるよ、狂った芸術ってやつだ」

「うぅん……おにいさん最高。ほんとうにホレちゃうよ」

「で、いつまでそのセックスと関係を続けると?」

「決まってる。わたしが100%飽きるまで。ほら、カンペキに飽きるとすごい様変わりになるじゃん。今まで散々ショートケーキしか食べなかったのに、今度は見向きもしない。ショートケーキが床に落ちたのを見ても可哀そうとすら思わない。そういう風になったら終わりにする。でも今はなんかこう、くすぶっているのがあるから別れない。正直言えばお金も欲しいし」

「じゃぁ、相手が別れたいと言ったら?」

「あ、それはダメ、絶対認めないし逃がさない。だってさ、男は買う側で女は売る側。女が捨てるのは勝利だけど、女が捨てられるっていうのは耐え難い敗北。それをこのわたしに与えようなんて許せるわけがない。でも、お兄さんがわたしと付き合ってくれるなら先生と別れる」

「いらない、遠慮する」

「ロングヘア―が似合う美人ってダメ? それにわたしおっぱい大きいよ? 高1でバスト97cmのブラはHカップ。ね、これって素敵でしょう? 先生何かわたしのおっぱいに頬擦りしたりチュッチュしたりって甘えるのが大好きで、絶対に失いたくないって言うんだよ。お兄さんもこの胸に来ない? お兄さんだったらギュッとつよく抱きしめてあげるよ?」

「いらない。ただひとつ忠告をしておく」

「なに? お兄さんの言うことなら素直に聞こうかな」

「何事もやめ時が肝心。終わりよければなんとやらだ。調子にのっていつまでも続けていると、ましてこういう話だと……おまえ、相当痛い目に遭うかもしれないぞ。この世はやったと同じだけ滑って転ぶように出来ているし、理不尽な事もふつうに起こる。そこは肝に銘じておいた方がいいな」

 息吹、ここでスクっと立ち上がる。そうして伝票を持つと、え? うそ、もう終わり? と言いたげな霊子にじゃぁと言ってレジへと向かう。

「家満登息吹……」

 霊子はうっとりした目をテーブル上のカップに向け落とす。そして少し残っている紅い液体を見つめながら、自分の片手を我ながらほんとうに大きくてすごい弾力って思うところに当てて何回も息吹の名前をつぶやいた。

「あ、だめだ……セックスしたくてたまらない……息吹せいだ、息吹のせいで下品モードにスイッチが入ってしまった」

 イライラとつぶやいた後、仕方ないとばかりスマホを手にしたら、体を求め合うパートナーである先生こと愚香進に電話。

「先生……今晩空いてる? 抱いて欲しい」

 霊子が言うと進、今月はお金に余裕がないと即返しした。

「いいよ、今日はとにかく先生と愛し合いたいだけ。お金はいらない。その代わり熱く抱いてくれたらいいとする」

 そうすると若くてボリュームにあふれる女体の誘惑には勝てないらしい。お金に余裕がないんだ! とか言った時のオーラとは打って変わって、それなら行くよと恥ずかしくなるくらい赤裸々に素直に喜ぶ。

「じゃぁいつものラブホ前で、午後9時に」

 こうして電話を切ったら、冷たくなってしまった紅茶の残りを飲んでからつぶやく。

「国語の先生って罪だわ……生命力が弱そうとか、バカみたいに素直でかわいいとか思わせるんだもん。だから結局、かわいいとか思ってなかなか捨てられない。先生と息吹だったら息吹の方がいいのに、やっぱり先生を抱いてあげたいってキモチにさせられてしまうんだから」
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