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97・いけない先生と悪夢9
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97・いけない先生と悪夢9
邪空間……灰色の世界。その世界の道路にうつ伏せとなりながらも、必死に這いずる太一。
「おぉ、まだがんばるか、いいねぇ、いいぞぉ、中野太一」
ヘビ男はここで長めの鉄棒をどこからともなく出現させ手に持つ。そうして顔を汗まみれにしながら力をふり絞って這いずる太一に上から言い下ろす。
「中野ぉ、ここ邪空間はよぉ、おれが出してやるとかおれを殺さない限りは出られないぜ? しかもここにはだーれもいない。おれとおまえの2人だけだ。どこに行っても他の人間なんかいないぞ? おまえの家に行っても空っぽだぞ? なのにおまえ、どこに行こうっていうんだ? まさかお母さーん! とか考えているのかな?」
上から来る言葉はひどい内容だった。死にたくないとがんばる少年の根底を侮辱するような音色に満ちている。
「し、死にたくない……」
疲れ切った声で言いながらズルズルっと這う太一。
「死にたくない、そうか、だからおまえはがんばるのか! えらいぞ、だったらご褒美にもっと試練を与えよう!」
いまやヘビと人間が入り混じったおぞましい顔で赤い目という澱夢、両手に持つ鉄の棒をグワーッと振り上げると、情け容赦なく少年の背中に思いっきり振り下ろす。ドス! っと激痛サウンドが鳴り響く。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
悲鳴を上げ表情を歪める太一、さすがに一瞬は動きが止まった。だが、何もしないでジッとしたまま殺されるくらいなら、動ける限り動きたいと思った、一分一秒でも長く生きるために。
「おらおら、どうした、どうした、もっとがんばって這いずってみろ!」
ドス、ドス、ドス、ドスっと何度も何度も凶悪な振りが少年の背中に下ろされる。その度に痛々しい叫び声が湧き上がる。
「中野よぉ、おまえ少年マンガの見過ぎだろう。あきらめるな、希望は必ずある! みたいなキャッチフレーズに惹かれ過ぎだろう。よーし! ぼくだってがんばればやれるってところを見せてやるぞ! みたいなセリフにシビれすぎだろう。要するにアホなんだよ、おまえは! がんばってもムダなモノはムダ! 潔くきびしい現実を受け入れろってんだよ!」
キャーハハハと笑いながら狂ったように少年の背中を打ち続けるヘビ男。それは元よりほとんど残っていなかった太一の体力をさらに減らす。限りなく減っていく、もう0って数字がすぐそこまで迫っている。
「ぅ……」
太一の目がうつろになりとても危ない状態だ。しかしそれでもこの少年は死にたくないという思いで這いずり続ける。
「おのれ……まだ這いずるか……このガキ……」
ヘビ男は鉄の棒を放り投げた。ガランガランと重たく転がる音が発生したが、それと同時にグッとつよく右手を握る。そうして必死の思いで逃げようとする少年の背中を見つめながら叫ぶ。
「ホープキリング!(Hope Killing)
こうしてガン! と真上から打ち込まれると、太一が絶叫した。
「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そうして突然息が詰まったようになった太一、ブホっと口から血を流し始めた。かなり量が多く生命の危機って表現が冗談ではなくなっている。
「ぁ……ぅ」
目から涙が出てきた。そして灰色世界って視界が不安定に揺らぐ。体の力はもう全部抜けるって一歩手前。
「し、し、死にたく……ない……」
つぶやき這いずろうとする少年、しかしなんと惨い事だろう、ヘビ男は同じ攻撃を少年にくり返したではないか。
「ぁ……」
両目を開けたままガクッと顔が地面についてしまう太一。ダメだ、死ぬ……という思いが胸に沸く。
「どうだ、これでも這いずれるなら這いずってみやがれ!」
ハハハハと笑うヘビ男の声が聞こえると、意識朦朧な少年はとても悔しいと思った。よりいっそう多くの涙が目からつーっと流れ出る。
(か、体が……)
もう数秒後には体が動かなくなると自覚した。そのとき太一は思い出したのである。
(そ、そういえば……えっと……えっと……)
お守りをくれたあの女性、あの白い着物を着てとても美人だった人、太一がお姉さんと言った人、その人の顔がそれとなく思い起こされると同時に、もうひとつもらったモノがある事をやっとこさ思い出す。
(う、動け……)
もはや力尽きて動けないと思っている右腕が、最後も最後の力を振り絞ることでギリギリに動く。
「ん? 何をする気だ?」
ヘビ男は少年がガクガクブルブル震える右腕を腰に向かって動かすのを目にする。それを止めてもいいのだろうが、どうせ死に損ないの悪あがきと思ったので、どうせなら何をするか見届けてから殺そうなんて思ったりもする。
(ハァハァハァ……)
手に入る力はもう必要最低限以下。いつどこの一瞬でばったり動かせなくなるかわからない。それでも太一は自分の右手をズボンのポケット、右側に入れる。そこにあるのだ、あの女性からもらったもうひとつのモノが。
(て、手が……)
ポケットに入っているモノ、それはブザー。それをつかんで引っ張り出したいと思うが、それをやるだけの力が出ない。いやもうすべての指に力が入れられない。でもポケットから出さなくてもいい、ブザーを押せればいいと指を当て、そしてあの女性が言っていた名前はなんだっけと必死に思い起こす。
(たしか……たしか……閻美……閻美だったはず。閻美って名前を言いながらブザーを押せばよかったはず)
少年は体力0になるその手前、とっても苦しかったが女の名前を言いながらブザーを押した。
「え、閻美……閻美!」
声が出た。そしてボタンを押せたことにより、ポケットの内側からブザー音が鳴る。それを聞いたヘビ男はあきれて笑う。
「いったい何事かと思えばブザーか。中野、ブザーなど鳴らして誰を呼ぶつもりだ。この邪空間には誰も来られないんだよ、バカだなぁ、おまえはほんとうにバカな子どもだなぁ」
ハハハと笑うヘビ男だったが、少年はもう力が0になって動けない。だから今にも閉じそうな目をしながら心の中でつぶやく。
(え、閻美……お姉さん……)
邪空間……灰色の世界。その世界の道路にうつ伏せとなりながらも、必死に這いずる太一。
「おぉ、まだがんばるか、いいねぇ、いいぞぉ、中野太一」
ヘビ男はここで長めの鉄棒をどこからともなく出現させ手に持つ。そうして顔を汗まみれにしながら力をふり絞って這いずる太一に上から言い下ろす。
「中野ぉ、ここ邪空間はよぉ、おれが出してやるとかおれを殺さない限りは出られないぜ? しかもここにはだーれもいない。おれとおまえの2人だけだ。どこに行っても他の人間なんかいないぞ? おまえの家に行っても空っぽだぞ? なのにおまえ、どこに行こうっていうんだ? まさかお母さーん! とか考えているのかな?」
上から来る言葉はひどい内容だった。死にたくないとがんばる少年の根底を侮辱するような音色に満ちている。
「し、死にたくない……」
疲れ切った声で言いながらズルズルっと這う太一。
「死にたくない、そうか、だからおまえはがんばるのか! えらいぞ、だったらご褒美にもっと試練を与えよう!」
いまやヘビと人間が入り混じったおぞましい顔で赤い目という澱夢、両手に持つ鉄の棒をグワーッと振り上げると、情け容赦なく少年の背中に思いっきり振り下ろす。ドス! っと激痛サウンドが鳴り響く。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
悲鳴を上げ表情を歪める太一、さすがに一瞬は動きが止まった。だが、何もしないでジッとしたまま殺されるくらいなら、動ける限り動きたいと思った、一分一秒でも長く生きるために。
「おらおら、どうした、どうした、もっとがんばって這いずってみろ!」
ドス、ドス、ドス、ドスっと何度も何度も凶悪な振りが少年の背中に下ろされる。その度に痛々しい叫び声が湧き上がる。
「中野よぉ、おまえ少年マンガの見過ぎだろう。あきらめるな、希望は必ずある! みたいなキャッチフレーズに惹かれ過ぎだろう。よーし! ぼくだってがんばればやれるってところを見せてやるぞ! みたいなセリフにシビれすぎだろう。要するにアホなんだよ、おまえは! がんばってもムダなモノはムダ! 潔くきびしい現実を受け入れろってんだよ!」
キャーハハハと笑いながら狂ったように少年の背中を打ち続けるヘビ男。それは元よりほとんど残っていなかった太一の体力をさらに減らす。限りなく減っていく、もう0って数字がすぐそこまで迫っている。
「ぅ……」
太一の目がうつろになりとても危ない状態だ。しかしそれでもこの少年は死にたくないという思いで這いずり続ける。
「おのれ……まだ這いずるか……このガキ……」
ヘビ男は鉄の棒を放り投げた。ガランガランと重たく転がる音が発生したが、それと同時にグッとつよく右手を握る。そうして必死の思いで逃げようとする少年の背中を見つめながら叫ぶ。
「ホープキリング!(Hope Killing)
こうしてガン! と真上から打ち込まれると、太一が絶叫した。
「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そうして突然息が詰まったようになった太一、ブホっと口から血を流し始めた。かなり量が多く生命の危機って表現が冗談ではなくなっている。
「ぁ……ぅ」
目から涙が出てきた。そして灰色世界って視界が不安定に揺らぐ。体の力はもう全部抜けるって一歩手前。
「し、し、死にたく……ない……」
つぶやき這いずろうとする少年、しかしなんと惨い事だろう、ヘビ男は同じ攻撃を少年にくり返したではないか。
「ぁ……」
両目を開けたままガクッと顔が地面についてしまう太一。ダメだ、死ぬ……という思いが胸に沸く。
「どうだ、これでも這いずれるなら這いずってみやがれ!」
ハハハハと笑うヘビ男の声が聞こえると、意識朦朧な少年はとても悔しいと思った。よりいっそう多くの涙が目からつーっと流れ出る。
(か、体が……)
もう数秒後には体が動かなくなると自覚した。そのとき太一は思い出したのである。
(そ、そういえば……えっと……えっと……)
お守りをくれたあの女性、あの白い着物を着てとても美人だった人、太一がお姉さんと言った人、その人の顔がそれとなく思い起こされると同時に、もうひとつもらったモノがある事をやっとこさ思い出す。
(う、動け……)
もはや力尽きて動けないと思っている右腕が、最後も最後の力を振り絞ることでギリギリに動く。
「ん? 何をする気だ?」
ヘビ男は少年がガクガクブルブル震える右腕を腰に向かって動かすのを目にする。それを止めてもいいのだろうが、どうせ死に損ないの悪あがきと思ったので、どうせなら何をするか見届けてから殺そうなんて思ったりもする。
(ハァハァハァ……)
手に入る力はもう必要最低限以下。いつどこの一瞬でばったり動かせなくなるかわからない。それでも太一は自分の右手をズボンのポケット、右側に入れる。そこにあるのだ、あの女性からもらったもうひとつのモノが。
(て、手が……)
ポケットに入っているモノ、それはブザー。それをつかんで引っ張り出したいと思うが、それをやるだけの力が出ない。いやもうすべての指に力が入れられない。でもポケットから出さなくてもいい、ブザーを押せればいいと指を当て、そしてあの女性が言っていた名前はなんだっけと必死に思い起こす。
(たしか……たしか……閻美……閻美だったはず。閻美って名前を言いながらブザーを押せばよかったはず)
少年は体力0になるその手前、とっても苦しかったが女の名前を言いながらブザーを押した。
「え、閻美……閻美!」
声が出た。そしてボタンを押せたことにより、ポケットの内側からブザー音が鳴る。それを聞いたヘビ男はあきれて笑う。
「いったい何事かと思えばブザーか。中野、ブザーなど鳴らして誰を呼ぶつもりだ。この邪空間には誰も来られないんだよ、バカだなぁ、おまえはほんとうにバカな子どもだなぁ」
ハハハと笑うヘビ男だったが、少年はもう力が0になって動けない。だから今にも閉じそうな目をしながら心の中でつぶやく。
(え、閻美……お姉さん……)
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