息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

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154・コロッセオでの戦い4(フェスティバル・オブ・バトル)

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154・コロッセオでの戦い4(フェスティバル・オブ・バトル)

 
「で、今度はおれか」

 グラディアートルと入れ替わって外に出た息吹、興奮冷めやらぬ数万の観客に見つめられながらフィールドの中央に立つ。

「バーバリライオン……おそろしいもんだ」

 背中より刀を抜いた息吹、猛獣とのバトルに身構える。そして空間すべてを制圧するようなうなり声を耳にしたら、先ほどと同じバーバリライオンが出てくるのだと思った。しかしその予想はまちがっていた。

「え……ト、トラ?」

 ゾクっと青白い鳥肌が背中に走る。登場したのは神々しい黄色に黒線にほどよく白が混じったビッグキャット、その中でもとりわけ大きいと名高いアムールトラ。二本足で立てば2m以上はある。

「ぅ……」

 すさまじい威圧感がトラから流れ伝わってくる。その殺気は信じられないほどデカい。無限の闇に引っ張り込まれ極限まで縮められてしまいそう。

「飲まれるわけにはいかない!」

 気合を入れ直した息吹、心臓を冷や水をかけるような目を浮かべるトラと見つめ合う。

―ガルルルゥー

 ゆっくり距離を縮めてくるトラ。自ら前に出るか? と一瞬思ったが、息吹はあえてゆっくり下がる。

(一発勝負)

 息吹が思った次の瞬間、トラが攻撃に出た。信じられないほど大きく太く、さらに言えば極悪な爪を持った前足を動かす。もしそれを顔面に食らったら、脳みそまで貫通してお陀仏確定。

(今だ!)

 シュ! っと空中に舞い上がる息吹、そのまま刀をにぎりトラが振り返るより先に首へと向かっていき振り下ろす。

「斬!」

 刀が入ったと手応えあり……しかし首が太いというか固い。

「ヤバ……」

 このまま斬り通さないと立場が逆転してしまう。

「うあぁぁぁぁぁ!!」

 息吹の体がボッと青白く燃える。そうして熱と力を込めてトラの首へ深く、深く、刀を斬りこませる。

「斬!」

 パワー上げて叫んだところで……刀が振り切れた。ブッシューっと大量の血が噴水のごとく拭きまくり、ゴトン! と巨大な顔面が地面に転がり落ち、そしてズシーン! と胴体が横たわる。

―わぁぁぁぁぁー

 観客から歓声が沸く。しかし彼らは先ほどグラディアートルがドハデにバーバリライオンを倒すって光景を見た。それとの比較があるため、観客の中からは息吹に対する罵声も飛ぶ。

―つまねんねぇぞ、もっとハデに殺せや、楽しませろやー

―必殺技とか出せ! それが無いならおまえがハデに食われてしまえー

 そういう声を聞くと息吹は舌打ちを隠せない。観客ってやつは実に腹立たしいぜと怒りすら湧く。

「でもまぁ、こんな戦い方ではヤバいよな。戦闘ギアを一段上げないとやられちまう」

 おのれに言い聞かせるように言い、今度は大量に出てくるんだよなと身構える。そうするとその通り! とばかり、うなり声の大音響にふさわしく、先のライオンと同じく20頭ほどのトラが湧き出る。

「ゆっくり戦ったら死んじまうってか」

 息吹、実数よりはるかに多く見えるトラの大群が前方向からやってくるのを見ながら構えた。

―がぉぉぉー

 大量のトラが一斉に走り出す。息吹という獲物に向かって突進していく。その光景はまさにこの世の終わり的に圧巻。

「トラの食物になるつもりはない!」

 青白く光る息吹が空に舞い上がる。そうして高い空中から地上より自分を見上げているトラの大群を見ながら刀を振った。

「青竜!」

 放たれるブルードラゴン、その巨大なモノは美しかった。バカみたいに騒いでいた数万の観客が突然ピタッと静まり見入ったほどに。

 グワ―っと口を開けてトラの大群に向かっていくドラゴン。それが固まっていたトラの群に激突。ドーン! と爆弾でも落下したように轟音を立てる。すると大量の砂ぼこりと同時に、砕けたトラの体が舞い上がる。

「おぉ……すごい、なんてうつくしい技。そう思いません?」

 檻の中で拍手をするブ太郎、横にいるグラディアートルを一瞥。

「うむ、たしかに」

 グラディアートルは腕組みをして感心。しかし内心こうい風にも思った。後で一戦交えるというその前にいいモノこと手の内を見せてもらったのはラッキーだと。

「全部……じゃなかったか」

 着地した息吹が目をやると一頭だけ仕留められなかったのがいる。そして特大の猛獣にふさわしく、息吹に恐れたりするわけではなく、向かってくる気マンマン。

「さて……どう倒すか……」

 息吹、トラを見ながらゆっくり下がる。そして先ほどの首が固くて斬りづらかった事を思い出し、同じ事はやりづらいよなぁと内心つぶやく。

―がぉぉー

 息吹に考える時間を与えまいとトラがダッシュ開始。

「できるか……」

 トラに合わせ息吹もダッシュ。そうして巨大な猛獣が息吹に向かって飛ぶ。そおまま抱きつかれたら終わりである。

「チャンス!」

 言った息吹、ズサーっとトラの下へと滑りこむ。そして刀を下から腹に差し込み、ズブズブと斬りながら滑り切った。

 ドサ、ドサ、ドサ、トラの内物が地面に落下。そうしてトラはバッタリ横向けに倒れ起き上がらなくなる。

「ふぅ……」

 立ち上がる息吹、どでかい緊張をくぐり抜けたので深い深呼吸。すると静かだったスタジアムが目を覚ましたかのように沸いた。巨大ハリケーンみたいな歓声と熱気が、人間の持つ異常性を芸術性とアピールしているかのよう。だから息吹、それに包まれると……観客をゲスだと思いながら……自分の中によろしくない興奮が生じるのも事実だと認める。

「……」

 どうしよう……と一瞬思ったものの、この場の異常につられてしまう。息吹は両手を握って両腕を左右に広げたら、天空を見上げて叫んだ。内側に沸いた興奮を一気に吐き出すかの如く吠えた。

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
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