息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

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158・キャラクターの反乱バトル2

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158・キャラクターの反乱バトル2

 
「う~ん……どうして……伸びないのだろう」

 本日の午後9時過ぎ、小説をアップした書矢がため息におぼれる。それはどうしてかと言えば? 思ったほど読者数が伸びないから。

「PVが300でユニークが50とか……そりゃぁ前に書いた文学小説よりは圧倒的にすごい成績だけど、でも……これじゃぁ書籍化なんて夢の夢の夢の夢の夢の夢の夢のまた夢だ」

 ショック、無名作家がハートブレイク。いったいどうしてダメなんだとイスに持たれ部屋のカベを無機質な目で見つめる。

「他のやつが似たようなのを書いていてPV3万、ユニーク5000とか出しているのに、どうしてその1/100って成績に陥るんだ。なにがいけない、っていうかどこに運命の分かれ道があるんだ」

 書矢は考える。そして考えれば考えるほどわからないとキモチがダークに染まっていく。

「待てよ……」

 ここでピーンと跳ねるようにひとつ思いつく。

「ヒロインはかわいってレビューに書かれた。だったら、絵があればいいんじゃないのかな。一応全キャラの絵が必要だけど、まずは何より女キャラの絵を挿入すれば、そうすれば感情移入しやすくなって読者が増えるんじゃないかな?」

 これは我ながらナイスアイデア! と急激に興奮。すぐさまパソコンをツイッター画面に切り替え、自分のつぶやきとして募集をかけた。

「絵を描いてくれる人募集。まずヒロインから、ショートレイヤー、少しムッチリ、ちょいタレ目、バストは89cmでEカップ。他には……モロモロ……」

 こんな風に募集をかけたら光のスピードで食いつきがあった。だから午前2時くらいまでどれにしようかと考え……直感を信じろ! とばかりすぐに決断。即座に募集を打ち切り、選んだ絵師にメールーを送った。

「よし、これで読者数は大幅アップ。累計100万部どころか1000万部に到達しちゃうかも。そうなったらおれだけじゃなく絵師さんもお金が入るわけだから、おれって金を稼いで感謝までされるじゃん」

 うほうほ! とゴリラみたいにはしゃいでよろこんだ。そうしてしばらくという日数が流れると……書矢は天にも舞い上がるキモチでガッツポーズ。

「おっしゃぁ! 読者数大幅アップ! PVが30万でユニークが5万。行くぜ、行くぜ、このまま書籍化まで突き進むぜ」

 うぉぉ! と部屋の中で猛獣みたいに吠える。そうして現実は書矢が期待したとおりに進んでいく。つまりうなぎ上りにどんどんスコアがアップアップ。多くの無名作家が登れないお城とされるランキングの上位が見えてきた。

「ふむ、昨日はPVが300万でユニークが50万。いいねぇ、いいねぇ、最高だねぇ」

 むふふっとHな動画でも見るかのようにニヤつく書矢だった。どうやらやっと小説の神に愛されてきたと笑顔がこぼれる。でもそれはカン違いではなく事実で、まだまだ勢いは止まらない。

「おっしゃぁPV4000万、ユニーク800万」

 まさに神に愛されし者という感じだった。こうなると書矢という無名作家に磁力というパワーが生まれる。ある程度の力をつけると、勝手に事体が上昇していくという力学が生じるせいだ。

「もうすぐ来るはず、絶対に書籍化の依頼がくるはず。おれは待っているよ、いつだってオーケーだよ。書籍化されていきなり100万冊って物語をいまかいまかと待っているよ」

 そのつぶやき通り、書矢の小説が書籍化される可能性は日を追う毎にアップ。それは確かな事だった。

 しかし……一方で書矢にとって書くというのは、熱意の営みではなくなった。絵によって勢いづいたが、売れるためにテンプレ作業さえすればしていればいいって意識が芽生えてしまったのが大きい。

「いやぁ、マジメに苦労するってバカらしいよなぁ、売れたら勝ちなんだからさぁ、必死こいて自分の世界をつくるとか阿呆だよ。テンプレを使って共有財産を借りるだけでビクトリーは目前」

 ムフムフっと寝転びながら両足を伸ばす。その顔には悩みがない。実際、最近の彼は頭を使っていないから疲労が少ない。なぜなら頭を使う必要がないからだった。テンプレでチャチャっと書いてしまえばよい。そのさっくり手軽っていうのはヤクザっぽさすら漂う作業。

「すべてはテンプレさぁ、一からの努力なんてバカのやる事さぁ、後はこの勢いでおれが大金を稼いだらみんながシアワセって話」

 以前に真面目な文学っぽいモノを書いて、この世の誰からも相手にされないというみじめを味わった事のある書矢にしてみれば、これこそ正義と快感があふれ出てとまらなかった。

―そんなある日―

「ったく……いい加減にしてくれよなぁ」

 午後9時に書矢がぼやくの雷が原因。午後の7時くらいからゴロゴロうなりだし、バカみたいに爆音を連発。こうなるとパソコンを1台しか持っていない書矢はつらい。

「スマホなんか文章書きにくい。でも雷でパソコンが壊れたらおれは死んじまうよ、金持ちになれないじゃんかよ」

 今はガマンするしかなかった。いつ落雷でパソコンが殺されるかわからない以上、電源コードを抜きおとなしくしているしかない。早く小説をアップしたいって欲望をグッとこらえる。

「それにしても……ハデな雷ばかり……怖いつーんだよ」

 そうぼやいた書矢、部屋の床に座り目の前に置いてあるノートパソコンにつないでいるヘッドホンを取る。雷が収まるまでは耳栓をしておこうという考えだ。

 だがそのとき……来た。神さま、ぼくは何か悪い事をしましたか? なんて言いたくなるような特大の落雷。一切の冗談が通じないほどの激しさ。

―ドッカーンー

 それはまさに爆弾が投下されたに匹敵する爆音。もし家の外にいて近くに落ちたとかだったら、間違いなく心臓発作で天に還っていただろう。

「ハァハァ……バカか……ふざけんなよ……」

 ハァハァとマジにビビって冷や汗の書矢、ショックが収まるのに2分ほどかかった。そうしてやっと落ち着いてきたので、スマホを使ってオナニーでもしようかなと思ったりする。しかしここで奇妙な事が発生。

「うん?」

 パソコンの電源がついている……と見えた。でもそれは絶対におかしい話だ。電源を切り電源コードを抜きフタをしているノートパソコン、なぜ勝手に電源が入るのだ? と思うが……フタと本体の隙間から確かに光が漏れているではないか。

「なんだ……なんで勝手につくんだ?」

 落ち着いたはずの胸がドキドキしてきた。両手をノートパソコンに向けながら、不健康な奇妙さを感じると思う。なんか怖い……とも思う。だがそれでも見ないわけにはいかないから、えい! とパソコンの蓋を押し上げた。

「ハッ……」

 電源が勝手に入っていた……というよりも、パソコンの15.6インチってディスプレイに映るモノを見て書矢はおどろきで固まってしまった。
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