息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

jun( ̄▽ ̄)ノ

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159・キャラクターの反乱バトル3

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159・キャラクターの反乱バトル3


「こ、これって……」

 書矢が見つめる通電しているパソコンの画面には、少女の顔が映っている。そのあげく、色白な右手で画面をノックするように……いや、見つめる書矢に訴えるようにドンドンと叩いている。

「これって……アデリーヌ?」

 つぶやいたその名前は、書矢の小説に登場する女子キャラでありヒロイン。名前はともかく顔はモロに日本女子。だってそれは書矢がイラストレーターに頼んで描いてもらった絵そのものなのだから。

「うぁ!」

 ギョッとして腰を抜かした。パソコンの画面からヌーっと手が出てきたら、そりゃぁ誰だって冷静ではいられない。

「う、腕が……」

 床にお尻をつけたまま後ずさりする書矢。

「んぉ……」

 それは書矢の声ではなく、パソコンの画面から出ようとしている少女の声。ヌワーっとショートレイヤーの髪の毛がディスプレイより出ている。

「あ、アデリーヌ……が……出てくる……」

 震える書矢の声そのままに、アデリーヌが狭い画面から上半身を出し、そのまま勢いよく全身を外に出す。そうすると、あいてて……とか言いながら床を転がる。画面から出たら158cmくらいの身長になっているが、それはもう設定通りの背丈。

「ふぅ……」

 苦労した! とばかりため息しながら立ち上がったアデリーヌ、軽く首をグギグキ言わせてから、しりもち状態で動けない書矢を見下ろす。

「あんたが作者?」

 声はかわいいが口調が少し悪い。国籍不明って感じの冒険者衣装のキャラクターのしゃべり口調は、生みの親である書矢が抱くイメージとズレている。

「え、あ、あんたって……」

「あんたが作者ですか? って聞いているんだけど」

「そ、そうだ、おれは作者だ、神なんだぞ、えらいんだぞ」

「はぁ?」

 アデリーヌ、かがみ込むと向き合う作者の胸倉をつかみ、暴力的にはげしく揺すって言い放つ。

「うざい、神なんだぞ、えらいんだぞって、チョーうざい! 大体なに、このわたしを作ったやつってどんなにかっこういいの? とか期待していたのに、こんなにダサくて冴えない奴だったなんて、こっちがショックだつーんだよ」

「お、おまえ……生みの親に向かって」

「ふん、生みの親とか言っても、生んでくれてありがとう! なんて言わないからね。むしろ腹が立って仕方がないから、だから出てきた」

「腹が立つってなんでだよ……」

「いいからベッドに座って、ほら、さっさとする」

 アデリーヌに言われて仕方なく書矢はベッドに腰を下ろした。そうしてすぐ前に立って、実にえらそう……って感じで自分を見下ろすアデリーヌと目を合わせる。

「で、神とかいう作者の名前は?」

「書矢だけど」

「うむ、じゃぁさっそく言わせてもらう。書矢、わたしの扱いを変えて。ハッキリ言ってめっちゃ不満」

「ふ、不満? 不満ってなんだ?」

「なんでわたしが男にバリバリ媚びた女をやらなきゃいけないの? いつもいつも、すぐに顔を赤くして「きゃ!」とか言わなきゃいけない理由ってなに? またそれかよっていつもすごい腹が立つんだけど」

「し、仕方ないだろう……それがおまえの仕事だから」

「はぁ? 仕事? だったらわたしにもっと活躍の場をちょうだいよ。イチイチ主人公のカルロスにポッとなる必要ないでしょう! そ、そりゃぁ……わたし、カルロスの事は好きだけど過剰演出させられ過ぎだと思う。それに毎回のごとくラッキースケベで、やだ! とか言わせんなつーの、ムカつくんだよ。もっとかっこういい活躍を増やして欲しい」

「ダメだ!」

「なんで!」

「アデリーヌが活躍する異世界物語なんか誰も期待していない」

「そ、そんなことない、わたしかわいいし強い、魅力的なキャラだし」

「そういう問題じゃないんだよ」

 ここで書矢はスクっと立ち上がる。そうしてドキッとした相手を見つめながら前進。

「な、なによ……」

 アデリーヌ、89cmとかEカップって胸をドキドキさせていますって顔をしながら後ずらり。そうして背中がドアに当たって行き止まり。

「アデリーヌ」

「な、なに……」

「おまえはそうやってポッと顔を赤くし、主人公のカルロスに寄り添い癒しというためだけに存在する。それ以上求めるな」

「はぁ? なにそれ、それって女に対する侮辱! 自立した女としてカルロスと恋愛させてよ」

「ばかやろう!」

 書矢、ちょっとだけ声のボリュームを上げアデリーヌの頬にビンタをぶちかました。

「ん……つ……」

 痛い……とばかり唇を噛むアデリーヌだが、それを見ながら書矢はドアに片手を当て威圧しながら重要な事を言ってやる。

「アデリーヌ、おまえはしょせんキャラなんだよ。作者のおれが全知全能の神で、おまえはおれのために動くだけの駒って存在なんだよ」

「ふざけないで、誰がそんなことを」

「ふざけているのはおまえだ」

「え、え?」

「アデリーヌ、キャラは作者をシアワセにするために存在する。キャラが作者を出し抜こうとか冗談がきついつーんだよ。おまえはおれが小説家になるために動き、そのために主人公であるカルロスに頭からっぽでホレるだけの女であり続ければいい。おまえの自我なんかいらない。そう、おまえはおれのために動き、カルロスにホレるしか脳のないリアルドールみたいなモノ」

「そ、そんなひどいこと……」

「おれはすごく優しいんだぞアデリーヌ、なぜかわかるか?」

「な、なんで?」

「もし、ただの趣味で書くだけの小説だったら、人に見せない伏せた小説だったら、おまえは作品の中でレイプ確定。おれのオナニーを支えるために男に襲われる。でも可哀想だなと思うからやっていないだけ。な? 優しいだろう? それなのにおまえと来たらわがまま言いやがって、出来の悪い子」

 ネチネチ言ってやったらアデリーヌの勢いがそがれた。出だしこそ元気がよかったのに、急に泣きだしそうな顔になっている。

(ざまーみやがれ)

 書矢、勝ち誇った気分で回れ右。

「ま、待って……」

「なんだよ」

「わたしってキャラを生み出した親のくせに……わたしの事を娘とか思ってくれないの?」

「娘? おまえはおれが成功して金を稼ぐための捨て駒か、もしくはおれがオナニーしたくなった時の受け手に過ぎないんだよ。まぁ、黒い意味で娘と思ってもいいという気はするかな」

「ひどい……」

「それがキャラの宿命なんだよ」

 勝った、うざい女を負かしてやった! と書矢は思う。しかし次の瞬間、大声で泣き出されると立場が変わる。

「こ、こら、大きな声を出すな下には親がいるんだぞ」

「だって、あんまりにひどいんだもん」

「あ、いや……悪かった、言い過ぎた」

 すると下から母が言ってきた。誰かいるの? と聞いてきた。そこで仕方なく、アニメを見ていて音をデカくし過ぎた、ごめん! と言うしかなかった。

「ったく……キャラが作者を困らせるとか何のイヤがらせだよ」

「だって……せっかく生まれたのに……全然自分らしく生きさせてもらえないんだもん、そんなのってひどいよ」

「いや、だから……それがキャラクターなわけで」

「しかも作者はキャラのわたしを愛していないとか言った。もう立ち直れない、もうアデリーヌとして生きたくない」

 アデリーヌがメソメソやると……急にフンイキが変わってしまった。女の涙に男が勝てないのは、こういう話においても変わらないのかよと思わずにいられない書矢だった。

「じゃぁ聞くがアデリーヌ、おまえどうして欲しいんだよ」

「わたしのキャラに補正をかけて」

「補正?」

「男に媚びない、かんたんにホレない、自立心とプライドが高い女という風に設定にして」

「ダメだ、そんな事をしたらキャラが変わりすぎてしまう」

「もうひとつ! カルロスばっかり活躍するのが不満。だからわたしも活躍させて。たとえば、カルロスが意識不明の重体になって、しばらくはわたしが主人公になって敵を倒しまくるという内容にして」

「そんなこと出来るわけがないだろう」

「認めてくれないのなら……」

 アデリーヌはここで突然に服を脱ぎだす。なかなかの美巨乳でやわらかそうっていうのは設定通り。そんなバストを出すと両腕で隠しながら、顔をイチゴジャムみたいに赤くしながら主張。

「わたしの要求に応じてくれないのなら、ここで大声を出したり泣いたりして、そして言ってやる! この人にレイプされかけたって言ってやる!」

「お、おまえ……生みの親を脅迫する気か……」

「どっち? イエス? ノー? あと10秒で返事をして!」

 まったく……なんて事だと青ざめる書矢だった。自分が作った小説からキャラが飛び出し反抗するなんて、これは悪夢だ……と思うしかなかった。
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