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メイド喫茶でアルバイト4

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メイド喫茶でアルバイト4

 本日は土曜日、由良と奏楽がメイドとなって仕事するデビューの日。午後3時から7時までの4時間が初出勤タイム。

「ぅ……お腹が痛くなってきた」

 メイド喫茶が近づくにつれ、由良は豊かなふくらみの下にあるお腹を抑えずにいられない。

「由良、こう考えたらいいんだよ」

「どう?」

「いとしい悠人のためにがんばってみるか! って。いずれ悠人にあたらしい自分って姿を見せるために、やってみせます! 的に」

「あたらしい自分を見せるため……か」

「だからさ、お客さんはすべて神さまだけれど、由良の場合は神さまにして悠人って思えばいいんだよ。悠人のためなら笑顔なんていくらでもあげるよ! とか思えばいいんだよ」

「あぁ、なるほど」

 奏楽のアドバイスはなかなか的確だった。人が何かにがんばるために必要なエネルギー源は実質2つしかない。一つは金、そしてもうひとつは想い寄せる人のため。

「おはようございます」

「お、おはようございます」

 2人はドギマギしながら店の中に入った。そしてすぐ従業員領域に向かう通路に入る。

「けっこうお客さんがいるね」

「いいじゃん、お客さんがいなくてやる事がないっていうよりは」

「奏楽って神経が太いよね。タレントになればいいんじゃないの?」

「由良みたいな巨乳を持っていたら考えるんだけどなぁ」

 小声でペチャクチャやりながら2人は更衣室に入った。すると先着して着替えている、見た感じは18歳くらいの女子と遭遇。

「え?」

 年上女子はちょっと驚いた。どう見ても中学生という2人が入ってきたからだ。

「おはようございます、今日からアルバイトさせてもらう新人です、よろしくお願いします」

 奏楽の堂々とした口調は清々しい。だから由良はお願いしますというところで追いかけ、後は口を結んで相棒といっしょにペコリと頭を下げる。

「あ、あぁ、そうなんだ……ま、まぁ、わたしも昨日が初だったから、あなたたちと変わらない新人なんだけどね」

 年上女子の名前は伊藤舞、高校卒業して大学生という肩書を得た安心したら、社会勉強してみたいと思いメイド喫茶でバイトしようと思ったとのこと。

「で、でも……」

「え?」

「あなた中1なんでしょう?」

「は、はい……」

「いや、その……立派……巨乳だなぁと思って」

 舞は年下女子が着替え中イコール上半身ブラ姿となったのを見て衝撃を受けた。その白いフルカップの豊かさと谷間、舞より3つは上というボリュームなのは確実。

「ま、まぁ……」

 由良が返し言葉に困ってしまうと、すかさず奏楽が横入りし大きな声で言うのだった。

「Fカップですから!」

「Fカップ! 中1で……」

「この子は将来巨乳アイドルになるべく存在なんです、よろしくお願いします」

「中1でFカップだったら巨乳アイドルを目指すしかないわよね、ま、まぁ、がんばって」

「はい、ありがとうございます」

 まるで自分の事を誇ったみたいにえっへん! と得意顔の奏楽、対する由良は顔を赤くし小声で相棒に言わずにいられない。

「余計なことを言うな……ったく……」

 こうして3人はメイド姿になり、戦場たる仕事場に向かっていく。

「あぁ、ちょっと中学生の2人、おいで」

 店長は奏楽と由良を呼び止めると、まずは奥から店内を見てフンイキを飲み込むようにと指示。

「こういう仕事はフィーリングも大事だから、いきなり飛び出すんじゃなく、言うなればアニメの中に入ったようなキブンが高ぶってきたところで出る! 初陣はその方がいいのよ」

 店長の言葉は何か深い! と2人は感心。だから奥から約30分ほど、非日常いらっしゃい! とか、萌え色にハートを染めてみませんか! なんて劇場を見つめる。

「由良、さすがに先輩たちは手馴れているねぇ」

「ほんとう、お帰りなさいご主人様! って、あんな自然な振る舞いでかわいく言えるなんて、いったい普段どこで生活しているんですか? って感じ」

 そうして30分が経過すると、店長は奏楽と由良の2人に戦場最前線へ出るように指示。

「奏楽の方がうまくやれるタイプって気がするから、だからしばらくは由良をサポートしてやって」

 店長に言われた奏楽、全然付き合いがないというのに、人のキャラをよく見抜いているなぁと感心。そうして店の入り口近くに立つ。

 すると少しして20代後半くらいの男性、一見ふつうでオタク趣味とは無縁っぽいのが来店。

(来た……)

 奏楽と由良が同時に緊張すると、男性は店内へ進もうとした時、ド緊張している由良を見る。

「あれ、初めて見る子がいる」

 来た、いきなり由良に試練! この世で重要なモノのひとつには初対面の印象というのがある。最初にしくじるとすべてが壊れる。

「由良、がんばれ!」

 小声を出し肘で由良の腕を小突く奏楽。

「お帰りなさい、ご主人様」

 由良、両目を閉じ、実にかわいくやさしく微笑み、前で色白むっちりな両手を合わせると、クゥっと練習して身に付けた絶妙な角度でペコリとやる。すると中1ながら94cmというふっくら巨乳ってふくらみが、一見必殺! という魔力じみた魅力を客に無料で提供される。

「え、え、きみ、めっちゃかわいいじゃん、し、しかもすごい巨乳っておっぱい……って、きみっていくつ?」

 すると由良、あらかじめ奏楽に言われていたことをすぐさま思い出しやって見せた。年齢を聞かれたら、〇〇歳ですとそっけなく言うのではなく、かわいく言うとかごまかすとかエンターテイナーを発揮するべきと。

「ご主人様、女子に年齢を聞くのは御法度ですよ。でもご主人様なら……秘密の数字をこっそり教えてあげます。わたしの年齢は……」

「年齢は?」

「100-98+19-21+45-11+100+7ってところです」

「え、え、えっとそれは」

 男性が戸惑いながら数を数えようとしたら、すかさず奏楽が横からヌルっと割り込む。

「ご主人様」

「え?」

「まずはお帰りなさいませ、心よりお帰りをお待ちしておりました」

 クッと両手でスカートを持って一礼したら、すぐさまかわいく(あざとく)やんわり拗ねて見せた。

「わたしの事を忘れてもらっては困ります。わたしのハート、ご主人様に届いていないでしょうか?」

「きみの名前は?」

「奏楽といいます。ご主人様の見上げる青いそら、そら見た事かのそら、そらね、それがそらなんだよ……のそらでございます」

「え、なに、きみオモロイね、この巨乳ちゃんと友だちなの?」

「世間では盟友と呼ばれております」

「いいね、おれ、この2人に注文を聞いてもらいたい、よろしく頼むわ」

 こうしてホクホクの男性に2人はついていく。そのとき奏楽は小声で由良に言った。

「初めてにしてはすごい上手にやれたじゃん、ちょっと声が震えていたけれど」

「お客さんは悠人、悠人のためなら笑顔なんていくらでもやさしくしてあげる……みたいな、そんなキモチでやるようにしているんだ」

「いいじゃん!」

 ニンマリする奏楽はうれしかった。由良が意外とやるという事実は、まるで自分が手柄を立てたみたいなよろこびにつながると思わずにいられなかったから。
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